0186:裁断・祭壇 ◆HKNE1iTG9I





「おい、雷電さん…」
「いや、大丈夫だ。問題ない」
 少年、奈良シカマルは同行者に声をかける。同行者の名は雷電。
古今無双の博覧強記を誇る偉丈夫であり、古今東西の武術に通じた豪傑でもある、男塾の知識の大家。
男、雷電は、傍目には何の動揺も無いかのように、微塵も揺るぎはしていないかのように。しかし。
先ほどの放送、剣桃太郎の名前が呼ばれた瞬間の雷電の様子を知るシカマルは理解していた。
雷電の心を走る、例えようが無いほどの痛苦を。身を引き裂かれるような痛みを押し隠し、今の彼があるということを。

(18人も死んでる…いや、殺されたって言うのかよ…ったく、メンドクセェな)

 シカマルは歯噛みする。自分の見通しの甘さに対して。

(確かに…考えてみれば当然のことか。あそこには、どう見ても殺し合いとは縁の無い連中も大勢いた。まるで里の連中のように。
 そんな奴らが、殺し合いの場に投げ込まれて平静でいられるわけがねぇ。
 守るために殺すか、生きるために殺すか。それとも狂っちまって、殺すために殺すか…ったく、メンドクセェったらねぇぜ)

 今、自分が持っている支給品、仙豆。これは間違いなく、どのような参加者も喉から手が出るほど欲しがる一品だろう。
これは確実に争いの火種となりうる。もし、仙豆の存在が他の参加者に知られれば、だが。

 幸いなことに、今、仙豆の存在を知っているのは自分と雷電の二人だけだ。
そして仙豆は、争いの火種となりうるのと同様に、争いの火種をかき消す救いともなりうる。この場で廃棄するわけにはいかない。

 二人の男は歩みを進める。二人の影も、それに続いて…

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(よかった…キルアは無事か…)
 少年、ゴン=フリークスは大きく息をついた。あくまで、密やかに。決して、誰にも気付かれないように。
湧き出てくるのは、微かな安堵。自分の親友が生きていたという事実。
そして先程までの、もしもという想像が妄想であったということに対する、感謝。
(もう18人も…)
 少年、ゴン=フリークスは大きく息をついた。あくまで、しめやかに。疑いようの無い、鎮魂の思いを込めて。
湧き出てくるのは、確かな怒り。大勢の人間が、塵のように死んでいったという事実。
そして先程までの、もしもという想像がいつでも現実に変わりうるという事実に対する、恐れ。

 キルアは強い。いつも冷静沈着で、自分のように自ら窮地に突っ込んで行ったりはしない。それは確信。

 だが。
 それでも。

 俯くゴンの脳裏によぎるは、自分の父親、ジン。そしてジンの教え子だったという、腕利きハンター、カイト。

 カイトはすごいハンターだった。でも、自分たちを庇って、癒えない傷を負った。だからこそ、不安が消えない。消えてくれない。
不安は、まるで纏わりつく影のように。不安は、常に自分と共にある。そう、まるで影法師であるがの如く。

(キルアは絶対生きてる!もしかしたら怪我をしてるかもしれないけど、こんな訳の分からないゲームなんかで絶対に死んだりしない!!)

 少年、ゴン=フリークスは顔を上げる。見つめるものは彼方の未来。
だがその様はまるで、自らを縛ってやまない不安の影絵から逃れようと闇雲に足掻いているかのように。

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 進むこと数刻。シカマルと雷電が見た光景。
それは一人の男が、まるで生贄に捧げられたかのごとく、天高く串刺しにされていたというもの。
(惨いことを…)
 男、雷電は数秒の黙祷を捧げる。ふと隣をみると、同行者、奈良シカマルも同じように目を瞑って祈りを捧げていた。
その様子は、まるで何かの神聖な儀式。供物に捧げられたのは、昨晩までは笑い、泣き、生きていたであろう人の形の残滓。人間の…亡骸。
(剣殿…お主の最期はどうだったのだ。男として、悔いの無いものを遂げられたのか…)
灼熱が込み上げるのを感じながら、あくまで表には出さず、雷電は問う。男塾一号生筆頭、今は亡き剣桃太郎に対して。
怒りの矛先は、主催者に対してか。それとも、このような残虐な所業を行う、悪魔に対してのものなのか。

(これは…土遁の術によく似てやがるな…まさか、大蛇丸って野郎か?)

 奈良シカマルは考える。最善手とは何か、を。

 そして、一薙ぎの風が流れ―――

人知れず、シカマルは苦笑。傍らの男に声をかける。この男を埋葬してはどうか…と。
このような無惨な状態のまま放置しておくのも心が咎めるし、このような非道なオブジェは、更なる悲劇の引き金となるのも確実だろう。
なにより、そのようなことは、この死んでいった男も望んではいまい。
勿論、雷電に異論などあるはずも無かった。

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「しっかし、誰にも会わねぇな」
「うむ、しかし、ここが最大の都市であるのも事実」

 埋葬が終わり、しばし。雷電とシカマル、二人が話すのは、今後の行動について。

「なぁ、雷電さん。オレとしては、ここで一旦別行動をとらねぇか?」
「別行動、とは?」
「雷電さんは、ここで他の参加者を待つ。オレは、移動しながら他の参加者を探す。
 効率的に仲間を集めねぇと、ある程度状況が出来上がっちまったらどうしようもなくなるぜ?」
「ふむ…」
「オレは、東北ってトコに行ってみようと思ってる」
「そうだな…それもよかろう」

 雷電とシカマル、二人が話すのは、今後の行動について。


 物陰からその様子を眺めるのは、少年ゴン=フリークス。
(別行動か…もしとるなら、移動するほうについていったほうがキルアに会いやすいよね)
 自分のデイパックを掴み、すぐに行動に移れるように身構える。

 彼は知らない。探し人、キルア・ゾルディックの居場所は何も。

 誰も知らない。シカマルが。雷電が。ゴンが。
 彼らが探し人に会えるのか、ということは。





【東京都/午前】

【ゴン=フリークス@HUNTER×HUNTER】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(食料一食分消費)、テニスボール×3@テニスの王子様
[思考] 1:キルアを捜す
   2:奈良シカマル・雷電を尾行し、情報を集める

【奈良シカマル@NARUTO】
 [状態]:健康
 [装備]:無し
 [道具]:荷物一式(食料一食分消費)、仙豆(一粒)@DRAGON BALL
 [思考]:1.東北に移動
     2.知り合いとの合流(男塾メンバー含む)

【雷電@魁!!男塾】
 [状態]:健康
 [装備]:木刀(洞爺湖と刻んである)@銀魂
 [道具]:荷物一式(食料一食分消費)
 [思考]:知り合いとの合流(うずまきナルト、春野サクラ含む)

【備考】ゴンのテニスボールですが、あとの二つはデイパックの中に入っています。


時系列に読む


投下順に読む


0121:shadow 雷電 0260:(無題)
0121:shadow 奈良シカマル 0194:殺し屋と忍者と伏兵と
0121:shadow ゴン=フリークス 0194:殺し屋と忍者と伏兵と

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最終更新:2024年04月19日 10:13