0205:前へ前へ





香川で富樫らの姿を発見することのできなかった太公望は、次に愛媛へ行くか徳島へ行くかで迷っていた。
(富樫のことだから確実に直進、であろうな)
軽く口元だけで笑う。
しばし前の放送で禁止区域になった大分から愛媛に人が流れてくる可能性もあり、太公望としてはそちらに行きたい気持ちもあった。
ゲームに乗っている者の存在は怖いが、今は出来るだけ情報を増やしていきたい。
けれど富樫の行動パターンを考えてみると、まず愛媛に進むことはないように思われた。
(分かりやすい奴だからのぅ)
あえて曲がることなどしない、そんな男だ。というか、どちらに進もうかなど考えもせず、ただ真っ直ぐ進んでいるに違いない。
(・・・富樫も分かっていると、そうは思うが、なんとも気恥ずかしいものよ)
富樫と再会したとき、第一声をどうしようか。考えるだけで苦笑いになる。

しかしそんな太公望の微笑ましい不安などかき消すように、県境を越えてすぐの集落にて、一人の男の大きな声が辺りに響き渡った。

「あった!あったぜ!!これで太公望の鼻を明かしてやれるってもんよ!」

がははは、と軒先さえ揺らしそうな富樫の大声である。慌てたようなターちゃんの声が後に続き、太公望は迷うことなく駆け出した。
(まったく、ちっとは周りを気にせんかい!)
だからおぬしは成長せんのだ!
不安などたくさんある。それでも先を見ていられるのは、いつも前向く仲間がいるからなのだろう。


「鼻を明かされに来てやったぞ、ダアホが」
仏壇屋の扉が開いたときの富樫の顔は見物だったと、ターちゃんは後にそう語った。


一刻も早く公主へ届けるようターちゃんに香を託してから、太公望と富樫は地道に海辺を探索していた。
互いにぼそりと「すまなかった」、それだけでもう、すべてのわだかまりは消えたようである。
(しかし、ダイに伝えたことを、富樫にも説明した方が良いかのぅ?)
あのような時間をかけてのやり取りは、もう面倒で仕方がない。
それにダイと同程度の理解力が富樫にあるとも思えない、さりげなく厳しいことを思う。
(いっそ富樫の単純さを利用できたら・・・)
以前あの趙公明との戦いで、味方に対し盛大な嘘をつき通したこともあった。
計画や策のためには必要な嘘もあるのだと、太公望はそういう考えでもって動いている。
ただし、のちに真実を明かした際、相手を傷付けることだけは避けたい。
策士としてではなく、一人の仲間を持つ人間として、彼はそれだけは肝に銘じていた。
(首輪に盗聴器が仕掛けられている可能性は高い。わしが主催者ならば必ずそうするだろう・・・
ならばこれを利用して情報を攪乱することは出来ぬだろうか?)
例えば先ほど富樫と喧嘩したときのように、「一度結ばれた縁を切る」演技をする。
放送を聞く限り、主催者たちはチームで動く者たちを崩壊させたいように思われた。
仲間であったはずの者に裏切られ、絶望し、他の者を殺すように。仲間同士での相討ちさえ期待しているのかもしれない。
そして互いに協力し合い、脱出を試みることなどないよう。
(ならばチームを崩すふりをして、主催者たちを油断させるのも一つの手だ)
しかしチームの崩壊は、すなわちマーダーの思うつぼでもある。迂闊には行動できまい。
(首輪を外し、歩く動物にでも着け、わしらが一箇所にまとまっているとばれぬようにする。
そこに主催者を引きずり込み、仲間全員で倒す・・・はは、何と無茶苦茶な)
奴らをここに引きずり込む方法と首輪を外す方法が分かったならば、この策は使えるかもしれない。
無茶だと笑いつつ、太公望はこれを一応心に留めておくことにした。
小船を探すよりも地道で、運に頼る考えではあったが、幾通りもの策を持っているに越したことはないのだから。

「ぼけっとすんじゃねえ!」
思考がまとまりかけたところで横から肘鉄をくらう。
「ああ、すまぬすまぬ。というかあそこに小船があるぞ」
考えに沈む太公望を不審に思い、富樫までもが集中力散漫になっていたらしい。
斜め前方にぼろい木製の船があることに気付いたのは、意識を現実に戻された太公望の方であった。
これから本州に、しかも大都市の近くへと行く・・・その足がかりを見つけ、富樫は小さく武者震いをした。
(世の中にゃ頭だけじゃ戦えねえ敵もいる。俺がこの腕でこいつを先に進ませてやらぁ。
こいつが自分を見誤らせてまで、俺を前に進ませてくれたように。)

絆は強い。





再!!太公望と富樫


【徳島県・和歌山県寄りの海岸/1日目・日中】

【太公望@封神演義】
[状態]:健康
[道具]:荷物一式(食料1/8消費)、五光石@封神演義、鼻栓
[思考]:1.目の前の小船で和歌山へ向かう
    2.バギの習得を試みる
    3.新たな伝達手段を見つける

【富樫源次@魁!!男塾】
[状態]:健康
[道具]:荷物一式(食料1/8消費)、爆砕符×2@NARUTO、鼻栓
[思考]:1.目の前の小船で和歌山へ向かう
    2.男塾の仲間を探す
    3.本州での戦いを覚悟

(ターちゃんは『小さな成果と次なる努力』に繋がるため、省略)


時系列順で読む


投下順で読む


161:動き出す計画 太公望 239:その鏡真実を映さず
161:動き出す計画 富樫源次 239:その鏡真実を映さず

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2024年02月23日 22:56