0206:彷徨える黒龍、眼前の魔王
第二放送からわずか数分、秋田を行く飛影はイラついていた。
それというのもあの氷女もどき……先程対峙した、
ゆきめのせいである。
雪菜と似た名前のあの女。
自分を捨てた氷河の国の連中に似た、あの女。
そして、今はもう手元にない「氷泪石」。
あの女と出会ったことで、飛影は自分が憎むべき存在と大切なものの存在を思い出した。
大切なもの……氷泪石は必ず取り戻さなければならない。
飛影は探す。あてもなく、ただひたすらに足を動かす。
おそらくは、氷泪石もこの燐火円轢刀のように、どこぞの誰かが所持しているはず。
先程の連中のような雑魚か、それとも飛影が求める強者か。
どちらでもいい。
必ず、取り戻す。
相手が誰であろうが。
もちろん飛影は幽助と決着をつけることも忘れていない。
第二放送では、幽助の名前は呼ばれていなかった。
飛影の目的は、まだどちらも達成可能だ。
「……!」
氷泪石を求め、幽助を求め、強者を求める飛影は、唐突に足を止めた。
あたりに感じる気配……否、前方に見える姿。
視覚で確認できる距離。間違いない、他のゲーム参加者。
それも、かなりのレベル。
一見しただけでわかる脅威を、その二人は持っていた。
「む、誰か近くにいるな」
気配を察知したのは、飛影だけではなかった。
飛影が確認した姿こそ、この異形の二人。
大魔王
ピッコロ、そして氷炎将軍
フレイザード。
青森から南下してきた二人は、ここ秋田で次なる獲物を探していた。
(な!? くそっ、マジかよ)
ピッコロの隣、鎖に繋がれた犬のように扱われるフレイザードは、心の中で舌打ちをした。
秋田に入る前、ピッコロに見せつけられた、確かな実力の差。
大変な奴と手を組んでしまったという事実。
(まだこっちの体力は回復しきってないんだぞ……!)
ピッコロが他の参加者と戦い、消耗するのは喜ばしいが、こちらはそれを生かせる状況ではない。
今のフレイザードの状態では、ピッコロが少々疲弊したくらいでは意味がないのだ。
ただでさえ、ピッコロには前世の実がある。それがあるうちでは、手の出しようがない。
もっと力を蓄え、その上でのチャンスを狙わねば――この大魔王は出し抜けない。
近くにいるのが、程よくピッコロに前世の実を使わせるほどの実力者であればいいのだが――
と、フレイザードが思案するなか、ピッコロが仕掛けるよりも先に、その者は姿を現した。
「ほう」
(……ガキじゃねえか!)
二人の悪の前に、高速の影が移動する。
この二人の異形の姿に恐れもせずに、自ら姿を見せた小柄な少年。
見かけでは判断できない、その奥底から感じる強大な殺気。
「……貴様ら、何者だ? 妖怪か?」
飛影は臆せず話しかける。
目の前の二人は、明らかに人ではない。が、飛影はこの手の姿をした者をごまんと知っている。
魔界の住人か霊界の住人か……そのどちらでもないにしても、飛影がこの二人の姿から恐怖を感じる理由はない。
「ふん、このピッコロ大魔王を目の前にしてそんな口を叩けるとは。貴様もただのガキではないな」
「大魔王だと?」
ふざけた肩書きだ。と飛影は鼻を鳴らす。
この二人が何者にしても、誰もが決定的にわかることが一つ。
それは、三者いずれもが殺気を放っているということ。
常人が介入できるような空間ではない。三人が揃ったその時点で、殺しの舞台は完成された。
(こいつらに言葉など必要ない……相手が殺る気なら、こちらの取る行動も決まっている)
こいつらが氷泪石を持っているならば、殺して奪えばいいだけのこと。
そうでなくても、ひしひしと感じる自分と同質の殺気。
これほどの相手を目の前に、何もしないはずがない。
飛影は早くも臨戦態勢を取っていた。
この一触即発の空気の中、フレイザードは一人次なる行動を考えていた。
(どうする……こいつ、見た限りじゃとてもピッコロの相手にはなりそうにねえ。だがこいつの態度、ハッタリには見えねえ……)
フレイザードは一つの仮説を立てる。
この少年、もしやとんでもない武器を隠し持っているのではないか?
大魔王を名乗る存在を前にしても、臆さないほどの自信を与える何かを……
(だとしたら……ケケケ!! こりゃあチャンスだぜ!)
ピッコロを倒せるほどの支給品を与えられた少年。
それならば説明がつく。そして、飛影の出現はフレイザードにとってチャンスになる。
ピッコロを殺す、絶対的なチャンスがいきなり到来したのだと、フレイザードは確信する。
フレイザードの狙いは、飛影の持ち物、そしてピッコロの命―――
【秋田県南部/日中】
【飛影@幽遊白書】
[状態]少し疲労
[装備]マルス@BLACK CAT、無限刃@るろうに剣心
[道具]荷物一式、燐火円礫刀@幽遊白書
[思考]1、目の前の二人を始末する
2、幽助と決着を付ける
3、氷泪石を見つけだす
4、強いやつと戦う
【ピッコロ@DRAGON BALL】
[状態]両腕に軽度の火傷
[装備]なし
[道具]荷物一式、前世の実@幽遊白書
[思考]1、飛影を殺す。
2、フレイザードを利用してゲームに乗る。
3、残り人数が10人以下になったら同盟解除。バッファローマン、悟空を優先して殺す。
4、最終的に主催者を殺す。(フレイザードには秘密)
【フレイザード@ダイの大冒険】
[状態]重度の疲労、成長期、傷は核鉄で常時ヒーリング
[装備]霧露乾坤網@封神演義、火竜鏢@封神演義、核鉄LXI@武装錬金
[道具]支給品一式、遊戯王カード1枚(詳細は不明)@遊戯王
[思考]1、飛影の持ち物を奪う(叶うならピッコロと相打ちに)。
2、体力を回復させる。
3、回復次第チャンスを見つけピッコロを殺す。
4、残り人数が10人以下になったら同盟解除。ダイ、ポップ、マァム、武藤遊戯を優先。
5、優勝してバーン様から勝利の栄光を。
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最終更新:2024年08月20日 20:47