0241:ポップ・ウソップ冒険記~頑張れ愉快な仲間たち~  ◆HKNE1iTG9I





「何者だ?」
 怪人、蝶々覆面(パピヨンマスク)の男こと、蝶野攻爵は言葉を発する。

(オイ、ウソップ!!どうすんだ?)
(なんつーか、見るからに怪しい奴だな…少し様子を見たいところだが)

 視線を注ぐは、おしゃぶりの大魔道士、ポップと、偉大なる嘘吐き、キャプテン・ウソップ

「出てこないなら、敵とみなす」
 怪人、蝶々覆面(パピヨンマスク)の男こと、蝶野攻爵は言葉を発する。
何者かより注がれている、気配を朧ながらも感じ取って。
それは、何より、警戒心の表れ。先程、実力を認めていたほどの連れの死を見てから、拭えない緊張。
湧き上がるのは、疑念の影か。未来への覇気か。
それとも。久々に感じた、臨死の恍惚への果てない憧憬か。

(気付かれてるぜ。こっちから攻撃を仕掛けるか?)
(うーむ、アイツが乗ってるのかどうかが問題なんだよな~)
 対する二人に欠けていたもの。それは、このゲームに対するリアリティ。
放送でしか、他人の死を実感したことが無い者、放送ですら、仲間の死を聞いたことが無い者しか持ち得ない、幸福な、楽観。
それは、絶望を知らない者か、絶望を乗り越えていける強さを持つ者だけが携える希望の光。

 故に、相容れるはずも無く。この出会いと展開は、いわば必然。

「…行け、黒死の蝶…」
「チッ!!下がってろ、ウソップ!!」

 湧き上がるのは、確実な死を告げる蝶の群れ。それが、彼らの開戦の狼煙。

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「閃光呪文(ギラ)ッ!!」

 呪文と共に閃光が奔る。閃光は過たずに漆黒の蝶を射抜き、蝶はその場で爆風と共に四散する。

「ギラッ!ギラッ!ギラッ!ギラッ!」

 迫るは、雲霞の如き蝶の群れ、暗雲と見紛うほどの黒い雲を、数条の白光が奔る、奔る
だが。黒は白を呑み込まんと、覆いつくさんと、塵へと還さんと、迫る、迫る。

(クソッ!このままじゃ押し切られる!!)

「飛翔呪文(トベルーラ)!!」

 一拍。ポップの身体は見えない何かに弾き飛ばされたかのように。重力の枷から解き放たれたかのように。
物理法則を無視したかのごとく上昇し、黒く蠢く蝶の群れから離れる。と、同時。

「爆裂呪文(イオラ)ァッ!!!」

 その手に光球を生み出し、眼下に広がる黒のベールへと、その光球を投げ込む。

――爆発――

そして

―――誘爆―――

 一帯を、墨染めの煙が塗りつぶす。その様は、黒き蝶の断末魔にも似て―――

「重力呪文(ベタン)ッ!!」

 爆炎と爆煙。それが晴れる間もなく、次の一手。それは、広範囲に亘って強力な重圧をかける呪文。
大地がきしむ。大地が叫ぶ。炎が、煙が。まるで、見えない何かに押しつぶされるかのように、悲痛に形を変えていく。
目標を、視覚では捉えられずとも。それが範囲攻撃であるなら、それこそ空でも飛ばない限り、この避けることは出来ない…ッ!!

―――ガッ!!!―――

 それは、一瞬。頭上から降り注いだのは、猛禽の爪の如き、手刀の一撃。
防いだのは、刃。仲間、ウソップが作った仕込み杖に内包されていた、ナイフの刃。

 頭上にいたのは、蝶々覆面の男。その踵に蝶の羽を生やして。

 ポップは理解する。先程の蝶の群れが、攻撃の一手であると同時に、目眩ましの一手でもあったことを。
同時に、相手の身体、手刀が刃物並みの切れ味を持っている、特異な身体であるということも。

(チッ!!フェンブレンの野郎ほどじゃねェけど、厄介な身体だな…シグマとフェンブレンを足して二で割ったような相手か?)

 目前に居るのは、不敵に笑う覆面の男。その様、まるで動じた様子も無く、泰然自若として。
だが、大魔道士の心を挫くには、些かの役を果たすことも出来ず―――

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(クソッ!!やはり総量制限が厳しい!!)

 パピヨンは、内心焦っている。その身を焦がすほどの痛痒と共に。
この忌々しい制限さえなければ、あの男の妙な力ごと爆破することが出来るのに、と。
だが、それは今の自分の武器、ニアデス・ハピネスを全て使い切ることを意味している。
それは、自殺行為。臨死の恍惚を知る彼ではあるが、賭けと無謀との違いは理解している。

 それ故に、今の一撃で仕留められなかったのは大きい。
これで、必要最低限の消費で相手を倒す、という方法はとり辛くなった。
相手に、自分の身体能力を知られてしまったために。

ただ、消費を厭わなければ、仕留めることができる。それは、揺ぎ無い確信。

「氷結呪文(ヒャダルコ)ッ!!」

 牽制に放った黒死の蝶は、謎の光線の迎撃を受け、凍結する。
凍結した蝶に対し、追加で黒死蝶を放ち、目前で爆破。
凍結から解放された蝶を誘爆させ、爆風に乗った氷の破片で簡易的な手榴弾のように攻撃を仕掛けるも。

「火炎呪文(メラゾーマ)ッ!!」

 相手が生み出した炎の壁に遮られ、道半ばで蒸気へと変貌、霧散していく。

「行け、黒死の蝶―――」

 ならば、次の一手。今回は、数ではなく、スピードを重視した攻撃。数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。

「火炎呪文(メラミ)ッ!!」

 だが。その攻撃も、相手が生み出した炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。

また、数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。また、炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。
また、数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。また、炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。
また、数匹の蝶を生成すると、最高速で発射。また、炎の壁に遮られ、その場で爆発して消える。

 ―――広がる、爆煙―――

 ………これも、全ては次への布石。
生死をかけた刃の上、パピヨンマスクは華麗な舞を踊り続ける―――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(うおーい、なんだあのバケモンじみた闘いは…?!)

 宙を覆う黒煙。それが晴れたときには、蝶々覆面の男の周りには、再び夥しい蝶の群れ。
相手の攻撃による誘爆を恐れているのか、男を中心として、少し離れた辺りにも、高速で舞う黒い塊が見える。
恐らく、あれは迎撃用の蝶。相手の攻撃を迎撃するのと同時に、今、男の周囲で待機している蝶の群れを叩きつける心積もりだろう。
先程の、爆煙による撹乱は、恐らくそれの準備を目的としたもの。それが、ウソップの推測。

「閃光呪文(ベギラマ)ッ!!!!」

先手を打ったのは、大魔道士。走らせるのは、熱量を帯びた閃光が一条。

「ニアデス・ハピネス!!!!」

迎え撃つのは蝶人パピヨン。周囲を衛星のように旋回していた黒死蝶を用いて、純白の閃光を掻き消す。
―――と、同時に。それまで纏っていた黒衣の如き蝶の大群を、叩き付けるかのように相手に放つ。それは、大魔道士の想定の範囲内。

―――煙の奥には、既にポップの姿は無かった。

「アンタの得意な目眩まし、こんどはコッチが利用させてもらうぜっ!!
 爆裂呪文(イオ)ッ!!」

 ポップが放つ爆裂呪文。それは、何故か、自分の真横に。
そこにいたのは、パピヨンマスク。爆発音と共に、蝶人パピヨンは大きくよろめく。

「さっきの黒い蝶の群れも布石…アンタなら、さっきみたいに二段構えの目眩ましでくるってのが見え見えなんだよ!!
 イオッ!!イオッ!!イオッ!!イオッ!!」

 体勢を崩したパピヨンに連続して放たれる光球。迎撃も間に合わず、回避に専念せざるを得ないパピヨン。
これも、天才と呼ばれたパピヨンの想定の範囲内。

 ポップの死角、背後に小さな蝶が二匹。今までのコト、そして今の行動、すべてはこの必殺の一撃を隠すための布石。
避けようも無い「死」が大魔道士に忍び寄り―――

「必殺!!チクチク星!!」
第三者の介入により、その「死」もまた、虚空へ解けて消えた。

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 背後で起こった爆発は、一瞬、大魔道士の脳髄を揺さぶり。大魔道士は緩やかに落下していく。
それを見送りつつ、闖入者へと視線を向けるはパピヨンマスク。未だ、その表情には不敵な笑みが張り付いたまま。

「待て待て待て待てぇ~い!!それ以上やると、このキャプテン・ウソップの十万人の部下が黙っちゃいないぜッ!!」
 偉大なる嘘吐き、キャプテン・ウソップは虚勢を張る。震える足を押し隠して。震える心を噛み殺しつつ。
「何だ?貴様も混ざりたいのか?」
 対するは、体勢を整えなおしたパピヨンマスク。

「これ以上、俺の仲間に手を出すなら…アンタみたいな御洒落サンでも容赦はしねぇぞ!!」
 構えるは、手製のパチンコ。あまりに頼りない、その武器を手に。
抱いているのは、仲間への思い。何よりも頼るべき、その武器を胸に。
だが、自分の言葉への反応は、予想とあまりに異なって…

「ほう…貴様にもこのマスクの御洒落が分かるのか?」

それが、彼らの停戦の狼煙。

「あぁ、この偉大なるキャプテン・ウソップの目は誤魔化せなぁ~い!!蝶は華麗なる変身の象徴!!
 ならば、何故その覆面が御洒落でないことがあろうか?!(え、なんだ?マスクを褒めるのって効果大?)」
「フム…こんな無粋なゲームで、この御洒落を理解できる人間に二人も会うとはな…」
「無粋なゲーム?アンタはこのゲームに乗ってるんじゃないのか?(上手くいけば戦闘回避できる?ドキドキ)」
「いや、俺は少し別口の用件があってな…」
 言葉と同時に、残り少ない黒色火薬が、砂絵のように文字を描いていく。
『どうも、参加者は盗聴されているらしい。俺はこの首輪を分解・調査してみようと思っている』
「別口の用件?俺たちは、このゲームをどうにかしてやろうと思ってるんだけど…(首輪を調査?!こりゃいい!!)」
「フン…殺す気が失せた。元々、参加者を殺すために鹿児島に来たのではないし、この御洒落が分かるやつを殺すのは惜しいしな」
「って、アンタ!もしかしてこの舞台の元になった世界の出身者か?
 (ツイてるぞ!!これで、ポップを説得して首輪の調査を一緒にさせてもらえば!)
 なら、少し詳しく話を聞かせてくれ!!(ますますココに留まる理由が出来るじゃねェか!!!)」

 煌くは、ウソップの支給品。賢者のアクアマリン。

「ああ、だがNON!!俺ばかりが一方的に情報を与えるのも、一方的に縋られるのも真っ平ゴメンだね」
 と、パピヨンは胸の前で十字を組む。それは拒絶の仕草。だが、
「おおっと!誰が一方的にと言った?このキャプテン・ウソップが見抜いた、この世界の秘密の一端と交換でどうだ?(ゲ。雲行きが怪しいぞ…)」
「…詳しく聞かせろ」
「いや、交換条件だね(て、そうでもない?!)」

―――賢者のアクアマリンを持つ者は、知性溢れる友人を何人も持つことが出来るという。

 奇しくも、この場に揃ったのは。科学に精通した、錬金術師。魔術に精通した、大魔道士。

 そして、狙撃手にして、偉大なる嘘吐き。

 この出会いも、蒼の宝石に導かれたものか―――その答えは、未だ爆煙の中に―――





【鹿児島県南部/夕方】

【ウソップ@ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:賢者のアクアマリン@HUNTER×HUNTER
    いびつなパチンコ(特製チクチク星×3、石数個)、大量の輪ゴム
[道具]:荷物一式(食料・水、残り3/4)、死者への往復葉書@HUNTER×HUNTER
    手作りの作品や集めたガラクタなどの数々
[思考]1:できる限り鹿児島に滞在する。
   2:アイテムを信じて仲間を探す
   3:ルフィ・ロビン・ポップの仲間との合流

【ポップ@ダイの大冒険】
[状態]:気絶(脳震盪)、MP中量消費
[装備]:魔封環@幽遊白書
    ウソップ作の仕込み杖(投げナイフを使用)
[道具]:荷物一式(食料・水、残り3/4)
[思考]1:脱出の鍵を探す。
   2:ダイ・マァム・ウソップの仲間との合流
   3:フレイザードを早めに倒す

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:中程度の疲労、胴体に軽い火傷(再生能力により、しばらくしたら回復)
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス大~中量消費)
 [道具]:荷物一式(食糧二食分消費)×2
 [思考]:1、首輪を調べる。
     2、知り合いとの合流



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0230:大賢者ウソップ? ウソップ 0308:ポップ・ウソップ冒険記~unbalanced of fierce attacker~
0230:大賢者ウソップ? ポップ 0308:ポップ・ウソップ冒険記~unbalanced of fierce attacker~
0230:大賢者ウソップ? パピヨン 0308:ポップ・ウソップ冒険記~unbalanced of fierce attacker~

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最終更新:2024年04月06日 00:25