0308:ポップ・ウソップ冒険記~unbalanced of fierce attacker~  ◆2XEqsKa.CM





ポップは頭に響く声に眼を覚まさせられた。


―――――以上だ。
順調にゲームが進行している現状、大変喜ばしい。
今回の放送が諸君の助けとならん事を余も切に願っておるぞ。

フ…それではまた六時間後。諸君たちの更なる幸運を祈る――


(………肝心なところを聞き逃しちまった)
舌打ちしながら、自分が置かれている状況を整理する。
周囲は民家のようだ。
異世界に連れて来られて殺し合いをやらされていた事を思い出す。
ウソップと蝶々覆面の変態のことを思い出す。
そして自分が気絶した経緯も思い出した。

「ウソッ…「眼を覚ましたか?」

いきなり後ろから声を掛けられた。
振り向くと、そこには。

「―――放送は聴いたか?」

変態がいた。

「聴いてねぇ………ウソップは?」
心臓が激しく鼓動しているのを悟られないように静かに聴く。さっきの放送でウソップの名も呼ばれたんじゃないのか?
目の前の男は危険だ。
ただのマーダーではない。戦闘における駆け引きから推測すると、参加者の中でも頭脳派に分類されるだろう。
弱みは見せられない。
自分を何故殺さなかったのか、何故民家まで運んできたのかなど疑問はあるが、それでもこの男には気は許せない。

蝶々覆面は黙って自分を見据え、言った。
「放送の内容は、
禁止エリアは『愛知県』と『高知県』。青森から鹿児島までを結ぶ電車の存在。
死者は24人。名前はここに書き記してある」

そういうと蝶々覆面は自分に参加者リストを投げつけた。
「24人ね………生き返らしたり殺したり、バーンの野郎は何考えてんだか」
軽口を叩く。まだ内容は見ない。返されなかった質問を再度ぶつける。
ウソップは何処だ?」

しばしの沈黙、そして。

「殺した」

「………な、んだと?」
「殺した」
蝶々覆面は、何も感じ取れない、虚ろな表情で此方を見据え。

即座に杖を構え―――杖が無い。

「いたぶり殺してえって訳かい………!」

武器を奪い、目覚めるまで起こしておいたのはそのためか。
だが、杖がなくとも魔法は撃てる。一泡吹かせてやる!

ガラッ


ウソップ様参上~!おっポップ、やっと起きやがったか!?」

「………」
「………」
「え………何この空気?」

「冗談かよ………」
一気に脱力する。
「いや、冗談ではない」
その隙をつかれ、首輪の上、喉を掴まれる。
蝶々覆面は、無表情。
武藤カズキが死んだ」
「………!?」
いきなり知らない名前が出てきた。喉を掴まれているので、言葉は出せない。
「パピヨン!?な、何してんだお前ぇ!」
ウソップの声が聞こえる。

「………俺の名を呼ぶ男はもういない。生かす術もない。ならば―――世界に興味など、無い」

ここで初めて蝶々覆面の表情が崩れた。

手に力が込められる。気道が閉まる。

そして、手は放された。

「な―――?」
呪文も唱えられず、死を覚悟していた。だが―――またも、生かされた。
こいつは何がしたいんだ?

「だが―――貴様は今言ったな。『生き返らせたり殺したり』と。詳しく話せ」

「………俺が元いた世界に、このゲームに参加してる、フレイザードって奴がいた」

ポップは何時でも攻撃できるよう、蝶々覆面からある程度距離をとり、話した。

その残虐な性格。
その炎と氷で出来た容貌。
そして、その死に様。

「死んだ人間が参加してるのかぁ!?」
ウソップが素っ頓狂な声を上げる。
「人間じゃねえ。怪物だ」
「ふん………ホムンクルスとも違うようだな。完全に無がベースか」
蝶々覆面は特に興味もないように言うと、考え込む。

「そいつは、禁呪法とやらで生み出されたのだろう?一度死んだそいつを主催者…バーンが再び生成した可能性は?」
蝶々覆面の質問を受け、ポップは即答する。
「ある。だが、その時は性格も変わってるだろうがな」
あの時はかなり焦っていたから何も考えずに『生き返らせたり』という表現を使ったが、バーンがこのゲームの為に再び造った可能性もあるのだ。

「そうか…残念だな。ならばやはり」
「ハッ!待てよ、そういや俺の支給品に………」
蝶々覆面の言葉を遮り、ごそごそとバッグを漁るウソップ
「あ、ポケットに入れてた…これだ!」
ポップと蝶々覆面の方に一枚のカードを向け、声を張り上げるウソップ

「ウソ~ップレターカード!」

【死者への往復葉書】
『亡くなった人の名前を書いて手紙を街にあるポストにしたためておくと、次の日の午前0時にはポストに返事が届く。
同じポストには一日一枚までしか入れられない。また、複数の名前を書いても最初に書かれた人の名前だけが適応される。10枚セット』

「これは………本当なのか?試させろ」
目の色を変えてウソップに詰め寄る蝶々覆面。
「わ、分かったよ。一枚だけだぞ!」
ウソップがなにやら呪文らしきものを唱えると、手紙の束が出現した。
外見上は唯の手紙だ。蝶々覆面は立ったまま何事かを一枚の手紙に書き込み、ウソップに渡す。
「投函してこい。プライバシーの尊重を忘れずにな」
「んな!?何で俺が………うおっ行くからそんな表情で見ないでくれ!」
こちらからは見えなかったが、どうにかして脅されたウソップは慌てて民家を出て行った。
「さて、俺はこのゲームで成す事を決めた…貴様と、ウソップのおかげでな」
両手を広げ、天を仰ぎながら言い放つ姿は、主催者達に戦線布告しているかのようで。
「俺は武藤を甦らせる。手段は選ばない!」

そして何より、純粋だった。


~~~ここまでの冒険を記録しますか? ~~~

 >はい
  いいえ

【冒険の書1】ポップ セーブ





冒険を再開しますか?


 >はい
  いいえ

【冒険の書3】パピヨン ロード


(………)
パピヨンは思考を止めない。
否、止められないのだ。
周囲には人影はなく、薄暗い闇だけが在り。
リビングしかない旧式の民家の前に佇むパピヨンは、思考を止められない。
(武藤…武藤…武藤…武藤…武藤…武藤、カズキ)
自分がまだ人間のときに出会い、初対面から敵だった男。
親すらも呼ばなかった自分の本当の名前を呼び、そして自分を殺した男。
偽善者。錬金の戦士。人間でもホムンクルスでもない第三の存在、ヴィクター。
その男が、死んだ。
自分が死亡を確認したヒソカの名も呼ばれたのだ、もう疑う根拠は無い。
武藤カズキは―――死んだ。
「………嬉しくないぞ、武藤カズキ…」

何故、自分は何よりも先に武藤カズキを探さなかった?
何故、自分はこんな舞台の端で留まっていた?

後悔などというには強すぎる、怨念にも似た感情がパピヨンの内に渦巻く。

〝お前とはいずれ必ず決着をつける。そうしないと俺の心が羽撃(はばた)けない〝

「………羽撃け、ない」

空高く舞う鳥のように、蝶が舞う事はもう出来ない。

「勝ち逃げか、武藤!貴様は死んではいけなかった、俺と―――」

言葉は誰にも届かず、唯々反響する。空間ではなく、パピヨンの精神を。

「俺と―――決着を…」

闘う力の持ち主なら、武藤カズキに匹敵、或いは上回る者も大勢ここには居るだろう。
しかし、パピヨンにとってはそれは問題ではない。

「貴様の代わりなど………いない」

蝶野攻爵』の名と自分に対する意味を捨て去るために、武藤カズキとこそ、戦う意義があったのだ。
他の者では『臨死の恍惚』は味わえても、決してそれは達成できない。
自分を『蝶野攻爵』として見てくれた、武藤カズキとの決着以外では。

どうする?自分は、どうする?
目標を失った。死んでしまおうか。
「NON!」
ならば、臨死の恍惚を全身に受けながら、ゲームに乗って暴れまわろうか。
「だがNON!」
どうする?自分は、どうする?

「"蝶野攻爵"ではなく、"パピヨン"としての俺さえ、もはや世界の誰からも必要とされていない」

「どうせ俺を必要としなかった世界だ。全て燃やして―――焼き尽くしてやる!」

自分と世界の最後の繋がりを失い、既に人間への未練もない男は―――今一度、世界の破壊を、決意した。

世界への興味などないが、感情はある。徹底的な―――疎外感。

殺戮を。快感も怒りも悲しみも恐怖もない、劫火の殺戮を以て。
動物も植物も鉱物も大地も空気も海も、一つ残さず破壊して。

せめて、疎外感を和らげよう。

ウソップは「材料集め」などと言って村を探索しに行った(電柱もポストも知らなかったのには驚かされた)。
奴は後回しだ。

民家の敷居を跨ぐ。魔法使いは、起きていた。

精神も肉体も、壊すとしよう。


~~~ここまでの冒険を記録しますか? ~~~

 >はい
  いいえ

【冒険の書3】パピヨン セーブ





「で、これからどうするんだ?」
ウソップはガラクタを弄りながら二人に話しかけた。
パピヨンは黒死の蝶を弄びながら話す。
「日付が変わり次第電車で本州に向かう」
「な、なんだってーー!冗談だろ?だってここは…」
「待て、ウソップ
ウソップは言いかけてポップに止められる。
「………何か考えがあるのか?」
パピヨンが黒死の蝶を変形させて文字を作る。
「ああ、俺達だけの力では首輪を外すのは難しそうだからな」
"それもあるが、電車の中なら禁止エリアに入っても首輪が爆発しないということに興味がある"
「で、でもよ………」
なるべく鹿児島から離れたくないウソップは言葉を濁すが。
"万一鹿児島が禁止エリアになっても、首輪さえ外せれば関係ない。
それより、首輪を外せる可能性のある人間が知らないうちにいなくなる方が厄介だ"
この言葉に心を動かされたのか、渋々首を縦に振った。
「その意見には同感だ。だが、アンタの都合に合わせてるようでどうも気にいらねえな」
ポップはいかにも信用してなさそうな目でパピヨンを睨みつける。
「フン…安心しろ、首輪を外すまでは付き合ってやる。あの手紙の礼代わりにな」
パピヨンはそう言うと立ち上がり、玄関に向かいながら言った。
「貴様等は寝ておけ。見張りをしておいてやる」

パピヨンが去った後、ポップウソップに声をひそめて話しかけた。
「信用できるのか?あいつ」
ウソップはガラクタとガラクタを組み合わせながら答える。
「大丈夫だと思うぜ?そこまで悪い奴じゃなさそうだし」
いきなり襲ってきた奴がか?と首をすくめてポップは横になり、部屋の隅に置いてあった杖を油断なく持ち、
同じく部屋の隅に置いてあったおしゃぶりをしゃぶりながら浅い眠りについた。

パピヨンは冷たい風に吹かれながら考える。

(死後の世界…か)

不治の病に侵されていた人間時代(現在も病には侵されているが)、幾度となく夢想した。
死への恐怖を紛らわせるために。
だが、頭のいい自分は、すぐに"そんなものはない"と結論付けてしまった。
そしてホムンクルスになる道を選んだのだ。

それが今、現実に存在を試されている。まだ"在る"と決まったわけではないが。
(もしそんなものが現実にあるのなら―――そこで武藤と決着をつけるのも悪くはない)
しかし、やはり臨死の恍惚を伴った最高の戦闘は味わえないだろう。なにせ"死んで"いるのだから。
やはり武藤を此方にどうにかして引きずり出したい。
「ククッ…」
あれだけ忌避していた死を、覆そうとしている。愚かな行為だと分かってはいるが――

「だが俺はパピ☆ヨン!不可能など無いッ!」

高らかに叫び、ポーズをとるその姿は


…どう見ても変態だった。


~~~ここまでの冒険を記録しますか? ~~~

 >はい
  いいえ

【冒険の書2】共用   セーブ





【鹿児島県南部/夜】

【ウソップ@ONE PIECE】
[状態:健康
[装備]:賢者のアクアマリン@HUNTER×HUNTER、いびつなパチンコ(特製チクチク星×3、石数個)、大量の輪ゴム
[道具]:荷物一式(食料・水、残り3/4)、死者への往復葉書@HUNTER×HUNTER (カード化解除、残り九枚)
    手作りの作品や集めたガラクタなどの数々
[思考]1:午前0時になったら電車で本州へ
   2:ガラクタで何かを作る
   3:ルフィ・ロビン・ポップの仲間との合流
   4:アイテムを信じて仲間を探す

【ポップ@ダイの大冒険】
[状態]:健康 (MP中量消費)
[装備]:魔封環@幽遊白書、ウソップ作の仕込み杖(投げナイフを使用)
[道具]:荷物一式(食料・水、残り3/4)
[思考]1:脱出の鍵を探す。午前0時になったら電車で本州へ
   2:ダイ・マァム・ウソップの仲間との合流
   3:フレイザードを早めに倒す
   4:パピヨンはあまり信用していない

【パピヨン@武装錬金】
 [状態]:中程度の疲労
 [装備]:核鉄LXX@武装錬金(ニアデスハピネス大~中量消費)
 [道具]:荷物一式(食糧二食分消費)×2
 [思考]:1、武藤カズキを生き返らせる
     2、首輪を調べる
     3、午前0時になったら電車で本州へ
     4、死後の世界の存在を信じる(もし無ければ……)
     5、午前0時になったらポストに手紙を取りに行く
♯手紙の内容は、原作で『パピヨンとカズキしか知らないこと』を質問した形の内容です。詳細は次の書き手さんに任せます。


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最終更新:2024年05月28日 21:54