0336:その光の名は ◆pKH1mSw/N6
二日目の開始を告げる放送は、日本各地に衝撃を与えていた。
世直しマン達がいる福島県も例外ではない。
今回の放送の内容は三つ。
『死亡者の発表』
『禁止エリアの増加』
『一人蘇生ボーナス』
世直しマン達の話題は当然『一人蘇生ボーナス』に集中した。
「人体の蘇生か…完全に死亡したヒトの蘇生など、宇宙広しと言えども存在せんな」
「左様、世直し殿の言う通りだ。人間が死した後、魂魄はソウル・ソサエティに逝くのみ。
生まれ変わるならともかく逆転現象など起こるはずがない。主催者共の罠と考えるべきだろう」
「成る程…蘇生を餌にして殺し合いを加速させるって寸法か。いけすかねェな」
「あの三人組、絶対にぶっ飛ばしてやる!なあイヴ………あれ?」
主催者に対する怒りを募らせたルフィは、そこで気付いた。
イヴが話し合いに参加していない。
見ると、イヴは部屋の隅で震えていた。
その細い体躯をガタガタと揺らしながら、少女は目を瞑っている。
その原因は、呼ばれた脱落者の名前に在った。
―――
夜神月―――
―――
リンスレット・ウォーカー―――
呼ばれた仲間の、名。
このゲームで出会い、共に行動した青年。
もういない。
元の世界で自分に優しくしてくれた女性。
もういない。
仲間が死んだ。仲間が、仲間が―――
怖い怖い怖い
必死に止めようとしたが、震えは全く治まる気配はない。
一層強くなる震えを、
両肩に置かれた、力強い手が止めた。
驚いて目を開けると、目の前にいたのはルフィだった。
決して太いわけではないルフィの手は、それでも確かな存在感を持ってイヴの両肩に存在した。
「イヴ、大丈夫だ。お前には俺達がいるじゃねェか」
ルフィはイヴの両肩をしっかりと握り締め、力強く笑いかける。
その後ろには、ルフィの言葉に頷く三人の姿があった。
ああ、この笑顔を見るとどうしてこんなに安心するんだろう―――
イヴはルフィの目をまっすぐ見て、力強く応える。
「うん、大丈夫………ありがと」
ルフィの力強い笑みが満面の笑みに変わる。
もう、身体の震えは止まっていた。
その光景を微笑ましく見ていた
ボンチューは、ふと表情を険しくする。
蟹座の黄金聖衣が入った荷物を手繰り寄せ、椅子から立ち上がった。
「おいルキア、
世直しマン。気付いてるか?」
話しかけられた二人も既に椅子から立ち上がっていた。
「うむ、家の外に人の気配がするな」
「しかもこの気配はわざと出しているようだな。まるでこちらの反応を待っているかのような…」
世直しマンはそう言いながら読心マシーンを荷物から取り出す。
相手の考えなど、この道具を使えば簡単に判明する。
マシンを起動させ『不審者』の思考を読む。
(―――らかに人が複数いる家。おそらくロビンは他人と行動しないだろうからロビンとは無関係か。
ロビンを見たかどうか聞きたいところだが、もしゲームに乗った集団だったら俺一人ではかなりヤバイ。
リンスレットも死んでしまったし、俺もそろそろ危ないか……いや、まだやるべきことが残っているうちは死ねん。
情報を求めるか、それとも万全を期すか。俺の気配に気付いて出てきたところに声をかけて判断す―――)
世直しマンは『不審者』の思考を読み終わると、安心したように読心マシーンを荷物の中にしまった。
「大丈夫だ。どうやらゲームに乗った人間ではないらしい。ロビンという人物を探しているようだが…」
「なァにィ!?ロビンだってェ!?」
世直しマンの話を聞いていたルフィが叫び、韋駄天の速さで外に駆け出す。
「待てルフィ!いきなり出て行ったら警戒され…」
ボンチューが静止の台詞を言い終わる頃には既にルフィは家の外に飛び出していた。
「ロビンはどこだァァァァァァッ!」
ルフィの大声が家の中にまで響き、
世直しマンが軽く溜息をついた。
「おっさん!ロビンがどこにいるのか知ってンのか!?」
「な、何だ君は!ロビンのことを知っているのか!?」
外で言い争いのことが聞こえてきた。
その声を聞いてイヴがハッとする。
「その声……スヴェン!」
ルフィに続いてイヴも外に飛び出して行き、残された三人は狐に抓まれたような顔をしている。
「どうしたってんだ…?」
「私等もゆくぞ。ゲームに乗った者でないなら問題なかろう」
ボンチューとルキアもそれに続き、
世直しマンだけが家の中に取り残された。
外から聞こえてくる騒音はますます大きくなる。
「スヴェン!会いたかった!」
「イヴ!?無事だったんだな!」
「だから、ロビンはどこにいるんだァァァァァァッ!」
「落ち着け二人とも!見苦しいぞ!」
「ルフィ落ち着け!暴れるなグハァッ!」
「やれやれ」
世直しマンが今度は深い溜息をついた。
~~~~~~~
家の前での騒動が収まった後、居間では情報交換が行われていた。
「イヴ、よく無事だったな。怖かっただろ?」
スヴェンの言葉を、イヴはゆっくりと首を振って否定した。
「ううん、平気だった……信頼できる仲間が、いたから」
腕を組んで佇んでいる鎧を着た剛健な男。
やけに偉そうに構えている黒装束の少女。
照れ臭そうにそっぽを向いている少年。
そして、今にも仲間を捜しに行こうとしている麦藁帽子の少年。
(そうか、良い人間に巡り会えたんだな、イヴ)
スヴェンは万感の思いでイヴを見る。
こいつも成長したんだな…
そして改めてイヴの仲間である四人に礼を述べた。
「イヴが世話になったようで礼を言う。
イヴがまだこんなに元気なのは、あなた方のおかげだ。感謝してもしきれない」
それに対して
世直しマンが代表として答える。
「いや、我々もイヴには助けられて…」
「鎧のおっさん、イヴは仲間なんだから当たり前じゃねェか。
それよりも俺はロビンを捜しに行くぞ!この辺にいるんだろ?」
ルフィは、とにかくロビンを捜したくて仕方ないようでそわそわしている。
その様子にイヴがクスリと笑った。
ルフィをこれ以上待たせるのは可哀相だと思い、イヴはスヴェンを促す。
「じゃあスヴェン、一緒にロビンさんを捜そうよ」
スヴェンは少し思案した後、皆に提案を出した。
「ひとつ、提案がある。2チームに分かれないか?」
スヴェンの理論はこうだ。
六人もの大パーティーで移動していると敵に発見され易い。
戦闘時に互いの動きが把握しきれない。
ロビンを捜すには、2チームに分かれたほうが効率がいい。
そして最も大きな理由は、いつのまにか荷物から消えていた黒の核晶だ。
もし六人で固まって歩いているところで黒の核晶の爆発に巻き込まれたら、一気に全滅してしまう。
それだけは何としても避けたいところだった。
スリーマンセル
「ということで三人一組を提案するんだが、どうだろうか?」
その言葉を受けて
世直しマンが他の四人を見渡す。
「いいと思うぜ。俺はもう足手まといになるつもりはねェしな」
「うむ、それがいい。幸い戦闘が出来る面子が揃っておるしな。私も文句はない」
「スヴェンがそれでいいなら私もいいよ」
「ロビンが見つかるならそれでいいや。早く出発しよォぜ!」
他の四人の意見は賛成。
世直しマンは僅かな不安を感じながら決定を下す。
「皆がそれでいいなら俺も文句はない。
では、チーム分けはどうする?」
その言葉に一瞬の沈黙が流れ……
皆が好き勝手なことを言い始めた。
「私は
ボンチューの見張りを志願する。この助平がもしイヴと二人きりになったら何をするかわからんからな」
「テメェルキア!まだ昨日のこと根に持ってやがるのか!しつこいぞお前!」
「ふん、事実であろう」
「だからそれは誤解だって……」
「それに隊長格の死神である
更木剣八も戦死しておるのだぞ?おぬしは放っておくと不安だからな」
「俺が弱いと言いたいのかァ?上等だ……お前とは一回決着を付けなければいけねえと思ってたぜ……」
「カッカッカ、私に口で勝てると思うておるのか?」
「私はスヴェンと一緒がいい…」
「俺ァどっちでもいいから早く決めようぜ…」
皆の意見を参考に
世直しマンはチーム分けを考える。
ルフィ・ボンチュー・ルキアでチームを組むと保護者役がいなくなるから…
「ではAチームが俺、ボンチュー、ルキア。
Bチームがルフィ、イヴ、スヴェンでいいな」
これなら
ボンチューとルキアの面倒は自分が見れる。
Bチームはスヴェン氏に期待しよう。
チーム分けが終わったところで集合場所を決定する。
集合場所は東京タワー。
次の放送が流されたら、一先ずそこに集合する予定だ。
出発する時になって、しばしの別れの挨拶を交す。
「鎧のおっさん、気をつけろよ。ウォンチューも死ぬんじゃねェぞ」
「だから俺の名前はウォンチューじゃねェって何度言ったら………」
「行くぞウォンチュー」
「またねウォンチュー」
「ルキアッ、イヴッ!お前等までッ!」
「んじゃ、そろそろ行こうぜ。イヴ、スベン」
「違うよルフィ。スベンじゃなくてス・ヴェ・ン」
「コライヴ、俺のときは訂正しなかっただろ!」
「騒ぐな、見苦しいぞウォンチュー」
「ルキアァァァァッ!」
じゃれ合う四人を眺めながら保護者二人は静かに笑う。
「少年少女の未来を護るのも、俺達大人の仕事だよな」
「その通りだ。スヴェン、そちらの二人は任せたぞ」
「あんたこそ、幸運を祈るぜ」
「そちらこそ、な」
絶望だけが支配するこのゲームで覗いた一条の光。
その光の名は、希望と言う。
【福島県北部/深夜】
【世直し組・Aチーム】
【世直しマン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:小程度のダメージ、軽度の疲労
[装備]:世直しマンの鎧@とっても!ラッキーマン
[道具]:荷物一式、読心マシーン@とっても!ラッキーマン
[思考]:1、ロビンを捜す。
2、ラッキーマンを探す。
3、ゲームから脱出し主催者を倒す。
4、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
【朽木ルキア@BLEACH】
[状態]:右腕に軽度の火傷
[装備]:コルトパイソン357マグナム 残弾21発@CITY HUNTER
[道具]:荷物一式、バッファローマンの荷物一式、遊戯王カード(青眼の白龍・使用可能)@遊戯王
[思考]:1、ロビンを捜す。
2、ゲームから脱出。
3、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
【ボンチュー@世紀末リーダー伝たけし!】
[状態]:ダメージ小、軽度の疲労
[装備]:なし
[道具]:荷物一式(食料ゼロ)、蟹座の黄金聖衣(元の形態)@聖闘士星矢
[思考]:1、ルキアを守る。
2、ロビンを捜す。
3、もっと強くなる。
4、これ以上、誰にも負けない。
5、ゲームから脱出。
6、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
【世直し組・Bチーム】
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:両腕を始め全身数箇所に火傷
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(食料ゼロ)
[思考]1、ロビンを捜す。
2、"仲間"とともに生き残る。
3、悟空・自分の仲間を探す。
4、悟空を一発ぶん殴る。
5、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
【イヴ@BLACK CAT】
[状態]:胸に刺し傷(ナノマシンでほぼ完治)、軽度の疲労
[装備]:いちご柄のパンツ@いちご100%
[道具]:無し
[思考]1、ロビンを捜す。
2、"仲間"とともに生き残る。
3、もっと強くなる。
4、ゲームの破壊。
5、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
【スヴェン・ボルフィード@BLACK CAT】
[状態]:肋骨数本を骨折(応急処置済み)
[装備]:ジャギのショットガン(残弾18)@北斗の拳
[道具]:荷物一式(食料一食分消費)
[思考]1、ロビンを捜す。
2、イヴを護る。
3、東京付近に着くことになったら、待ち合わせ場所のレストランでトレインと合流する。
4、第五放送が終わったら東京タワーに行く。
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最終更新:2024年06月18日 23:12