0346:墓前の誓い
富士樹海。香と仙道が出会った場所。二人は再び、この地点にたどり着いた。
「仙道君、さっきの放送は聞いた?」
「はい、聞きましたよ。洋一君はまだ生きているようですね。この辺りにはいないようですが。」
「ええ、それはよかったんだけど……」
言葉に詰まる香。何やら言いづらそうにうつむく。
「『ご褒美』のことっすか?」
「え、ええ……あれって、本気……かしら?」
香の動揺を知ってか知らずか、仙道が答える。
「本気かどうかは分かりませんが、アイツらに人を生き返らせる能力があるのは本当でしょうね。
デスマスクさんも言ってたっす。ハーデスに一度生き返らせられたって。」
「そ、そう……」
そう言うと、香は黙ってしまった。
『ご褒美』はあくまで優勝者に与えられるもの。そして、生き返らせることができるのは、たった1人。
(分かってる、これがアイツらの手なんだって……ただ、殺し合いを煽りたいだけなのよ。
そして、あたし達の命はもはや、
デスマスクさんや
太公望さんの希望をも背負ってるんだって……
でも……)
香の目から、一筋の涙がこぼれる。
(でも、ほんの一縷の望みがあるなら……
また、リョウに会えるっていう可能性が、わずかでもあるなら……あたしはそれを信じていたい……)
そんな香を見て、仙道は何一つ言葉をかけることができなかった。
大切な人を生き返らせたい。そんな気持ちを責めることはできない。
こんな人の気持ちを踏みにじるような「エサ」を用意してくるとは……
仙道は主催者に対し怒りを燃やしつつ、言葉を発するわけでも、手をかけるわけでもなく、ただ、香のそばで立ち尽くしていた。
何分経っただろうか。ふと、脇を見ると、何やら光るものが見えた。
「香さん、あれ、なんでしょうかね?」
漆黒の森の中に、一筋の月の光が照らす「何か」は、どこか幻想的な美しさを醸し出していた。
「……何かしら?綺麗ね。」
光るものに近寄り、拾ってみる仙道。
「…………これは、ビンのかけらっすね。」
香は何かに気づいたように動き出すと、数メートル先の木の裏に回った。
そう、
デスマスクと3人で三井を埋葬した場所だった。
見ず知らずの自分達を助けるために、特別な力もないのに、命を懸けて守ってくれた三井。
ビンのかけらの"光"は、そんな三井から、不甲斐ない自分に対する叱咤激励のメッセージのように思えた。
香はそこにしゃがみこみ、手を合わせ、目を閉じて誓った。
「……ごめんね、三井君。あたし、もう迷わない。
仙道君、洋一君、他の生存者と一緒に、必ずこの世界から脱出してみせる。」
そう言った香の顔は、晴れやかだった。
仙道は、ビンのかけらのそばを調べている。
(……今まで暗くて分からなかったが、何か丸薬のようなものが転がっているな。
そういえば香さんが、三井さんが薬らしきものを使って、あの銀髪の男から手を打ち払ったと言ってたっけ。
三井さんの支給品だったのか……?)
辺りを調べてみると、3つほど見つかった。
(
デスマスクさんがいなくなって、香さんを守れるのは俺しかいない。
しかし、この世界で殺人者と渡り合える力は俺にはないし、
このトレーディングカードも使い果たしてしまった。
五光石も俺には使いこなせそうにないし……
せめて『六芒星の呪縛』が使える午前まで、何とか今の装備で持ち堪えるしかない。)
「三井さん、これ貰いますよ。その代わり、香さんは俺が命に代えても守ります。」
決意を固める仙道の表情。もし三井が生きていたら、こう思っていただろう。
仙道ならきっと何とかしてくれる、と。
【山梨県(富士樹海)/深夜】
【仙道彰@SLAM DUNK】
[状態]:疲労大、負傷多数(致命傷ではない)、軽度の火傷、太公望からさまざまな情報を得ている
[装備]:如意棒@DRAGON BALL
[道具]:支給品一式
遊戯王カード@遊戯王
「光の護封剣」「真紅眼の黒竜」「ホーリーエルフの祝福」「闇の護風壁」…二日目の真夜中まで使用不可能
「六芒星の呪縛」…二日目の午前まで使用不可能
五光石@封神演義、トランシーバー×3(故障のため使用不可)、兵糧丸(3粒)@NARUTO
[思考]:1.洋一を探す。
2.太公望の仲間に、太公望から教わったことを伝える。
3.首輪を解除できる人を探す
4.ゲームから脱出。
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:右足捻挫(少し走れる程には回復)、太公望からさまざまな情報を得ている
[道具]:ウソップパウンド@ONE PIECE、荷物一式(食料三人分、※太公望から貰った)
アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険(弾切れ)
[思考]:1.洋一を探す。
2.太公望の仲間に、太公望から教わったことを伝える。
3.首輪を解除できる人を探す
4.ゲームから脱出。
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最終更新:2024年06月19日 23:58