0352:藍染VSL
――私の両親は一年前、私の目の前で強盗に殺されました。
その犯人はすぐ警察に捕まったけれど、裁判はどんどん長引いて…その内、冤罪の見解まで出始めてしまった。
憎かった。殺してやりたかった。
私は神様なんて信じない。
もしも神様がいたのなら、私に…私の両親に…あんな仕打ちをするはずがない!
憎しみと絶望感に心を塗り込められ、生きる希望さえ失いかけていた…
でも、やっぱり神様はいたの。
…ううん、それはただの神様じゃない。私の…ミサにとっての神様。
その憎い犯人は死んだ。悪は裁かれたの。
犯人を裁いてくれたのは、キラ――
夜神月。
“感謝”の一言では表せないほどの感情を抱いた。お礼の言葉を伝えたかった。
あなたに感謝している人間がここにいるんだよって――ただ、伝えたかったの。
私は手段を選ばずにキラを探して…そして、会った。
それは…運命だったの。
あなたと同じ力を手に入れた事も、そのおかげであなたに出会えた事も。
あなたは私の神様。かっこよくって、私の百倍頭が良くって…こんなに素敵な人は今まで私の人生で一度も会った事なんて無かった!
だから……貴方を愛した。貴方だけに私の能力も心も体も全てを捧げる。
貴方を信じてる。そうよ!ライトは必ず生きてる!Lの推理が当たってるに決まってる!
ライトが…死ぬはずがないんだから。ライトなら、あんな主催者たちの裏をかくのはごく簡単な事――
Lの考察を聞かされて若干の落ち着きと笑みを取り戻したミサ。
『首輪解除の可能性』 。
普通に考えるなら可能性は限りなくゼロに近い推理である。
何せどんな構造かも全くの謎、動力源も謎、主催者いわく『下手に触れば即爆発』。到底不可能に思われる。
しかし
弥海砂が心酔し、愛し、絶対視している夜神月とその宿敵Lは、
おそらく共に世界で一・二を争うであろう頭脳の持ち主である事はよく知っていたし(ミサの中で月>Lは揺るがないが)、
そんなLの言葉ならば信じられる“重み”がある。
その彼の推理である上、『夜神月の生存』などという甘美な蜜が如き言葉、それはミサの心をとろかすには十分であった。
「あの方が、藍染さんというミサさんのお仲間ですか?」
ライトの生存説を聞くなり淀んで濁っていた瞳に光が戻り、止まっていた思考能力も戻りつつあるミサは、
この舞台のどこかで繰り広げられているだろう月の活躍ぶりに思いを馳せ、心を踊らせ、
顔をほんのり紅潮させた期待に満ちた表情で立ち尽くしていたが…
Lからその問い掛けを聞いて、ようやく我に帰ったように視線をLに返す。
「え?……あ…そういやミサ、藍染さんの事…」
「……忘れてしまっていたくらい、夜神君の件がショックだったんですね」
「………しょうがないじゃない…」
藍染の名を聞かされて初めてその仲間の事を思い出したのか、ばつが悪そうに声をか細くするミサ。
視線を向けたLの目が、そしてLの隣にいる高校生ほどの歳らしき見知らぬ青年の目が、
共にミサ自身の後方に向けられている事を見て、ミサ自身も振り返りそちらに目を向ける。
三人の視線の先、その人物らしき影は遠くからゆっくりとこちらに向かって近付いてくる。
共に行動していたはずのミサが己を置いて一人先を行ったのであろうというのに、その挙動に全く動じていないかのよう、
月の光に照らし出されたその彼の顔・体はある種の余裕を感じさせるほど、悠然と歩を進めている。
「…ミサさん。あなたは今まで彼と行動を共にしていたのですか?」
「え?…ううん、藍染さんとは少し前に大阪で会ったばっかりだよ」
「…そうですか。いえ…後で今までの事、詳しく聴かせて下さい」
「…?うん、いいけど…」
突然のLの問いに小首を傾げるミサだが、目前までたどり着きつつある藍染にすぐに視線を戻す。
「やあ、海砂君の知り合いかな?初めまして」
「…初めまして、Lと言います。こっちが小早川瀬那君です」
「L?…そうか…君は確か、主催者に『人間界最高の頭脳』と言われていたあの時の…」
「はい」
Lたちの前に立つその初対面の謎の男は笑顔。優しい小学校の教師が似合いそうな、そんな印象の笑顔である。
Lは地面に座り込んだまま見上げるように軽く会釈を返し、紹介されたセナも目線を交わして恐る恐るといったような控え目な会釈を返す。
「私の名前は
藍染惣右介。このゲームに抗う者の一人だよ。二人でいる所を見るに…君達もそうなのだろう?」
「………はい。一刻も早く、ゲームを中断させるつもりです」
自己紹介し合う藍染と名乗る男とLを交互に見やるセナ。
Lとミサがどうやら顔見知りであるようなので、その繋がりから来る安堵によるものなのか…
初対面であるにも関わらず、最初に大きな不信や疑いも生まれること無く平和的に仲間が増やせそうな会話の流れになるのを見て、セナは内心ホッとしていた。
…だけど、気のせいか。
セナは二人の会話の最中、ほんの小さな――違和感を感じた。
(…?なんだろう…この違和感。この藍染って人、とても良い人に見えるし…別に変な所も無いし…気のせいかな?)
その疑問は顔には出さず、藍染の方にまた視線を戻すセナ。
「あ、出会ってすぐこんな事頼むのもなんだが…良かったら君達の支給品を見せてくれないかい?」
「支給品…ですか?何故?」
「いや、私はこのゲームの支給品に興味があってね。
見たこともない不思議なアイテムの数々、大変興味深い。脱出や対主催者戦に役立ちそうな物も集めたいしね」
「…………」
相変わらずの一風変わったL独特の座り方。その格好を崩す事無く、藍染の方に顔を向け続ける。
Lの第一印象――この藍染と名乗る人物、なにやら胡散臭い。いや、むしろある種の確信をLは抱いていた。
「……ミサさん」
「…ん?何?」
「もしかして藍染さんに……我々の世界の事、キラの事、話しましたか?」
「え?」
「ん?君達の世界の事?ああ、例のデスノートの事かな?」
「「!!!?」」
藍染の何気無い言葉に、Lとミサ、二人の時が止まる。
「あ…(ヤッ…ヤッバァ!確かLはノートの事なんて…)」
「……ミサさん。何故あなたが『デスノート』の事、知っているのですか?」
「あ…それは…その!(ほら来た!Lにノートの事バレちゃった!あ~ん!なんで藍染さんに口止めしてなかったの私ぃ!)……って…あれ?」
「……ミサさん?」
「なんで…?(なんで…Lがノートの事、知ってるのよ?
あ…もしかしてミサが監禁生活させられてる間に、本部ではそこまで推理が進んでたの?)」
半ばパニック状態で視線をあちらこちらにさ迷わせるミサ。
Lから真っ直ぐに向けられている疑惑の眼差しを受け止める事も出来ず、冷や汗混じりに視線を逸らし続ける。
…が、思いもよらなかったLの一言を聞いてその視線が固まる。
(※原作の補足‥Lがデスノートの存在を初めて知るのは火口を逮捕した時。
その時までミサは捜査本部別室でずっと一人きりで軟禁状態にあったため、その頃の本部内部の状況や外の出来事をミサは知らない。
火口が逮捕されて軟禁が解かれて外に出てからL死亡までの間、ミサは捜査本部内には立ち入っていないので、
デスノートの事を知っているのは月・Lらの捜査本部の人間だけという事になっている)
「何故ですか?答えて下さい」
「え…と………ら…ライトに…聞いたの!そう!ミサ、ライトに面会に行った時に…ライトが教えてくれたの!」
「…………」
「……(う……少し無理があったかな?どうしよう……ミサの事バレたら、ライトが『キラ』だって事もバレちゃうよぉ…!
うぅ…こうなったら………元の世界に帰る前に、ミサが直接Lの口を…)」
「……そうですか。なら知ってて当然ですね」
「……へ?」
ミサ自身、苦し紛れの言い訳だと自覚しつつも『チェックメイト』をひしひしと肌で感じ、もはや自らの手を汚すしかない…
そう覚悟しかけた時、意外すぎるほどのあっさりとしたLの言葉。
「「…?」」
二人のやりとりを眺めているセナと藍染の二人は『何が何やら』といった様子で顔を見合わせ、互いに肩をすくめ合う。
「……あ、そうそう、今は藍染さんの話でしたね。
藍染さん、こちらの支給品を見せるのは構いませんが…そちら側の物も見せて頂きたい」
「…ん?……ああ。それは構わないよ。あともし君達が何らかの能力の持ち主ならば、それも教えてくれないか?」
とんとん拍子に進む会話。
…だが、ここまで読んだ読者の方にはイマイチ理解出来ない点が他々あるだろう。
それは今までは――あえてミサ以外の者の心理描写を極力省いてきたからだ。
では、少し振り返ってみて彼等の心の内部を少しだけ覗いてみよう――
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「…ミサさん。あなたは今まで彼と行動を共にしていたのですか?(だからこそ…今まで生き延びてこられた。いや、そうでなくとも…)」
「え?…ううん、藍染さんとは少し前に大阪で会ったばっかりだよ」
「…そうですか。いえ…後で今までの事、詳しく聴かせて下さい
(…やはり。ならば弥はあの同行者にとって『利用価値』があるからか……もしくは、ゲームには乗っていないか。
弥の持つ『情報』…ノートに興味を持っている可能性もある)」
「…?うん、いいけど…」
「やあ、海砂君の知り合いかな?初めまして(彼は…もしや)」
「…初めまして、Lと言います。こっちが小早川瀬那君です」
「L?…そうか…君は確か、主催者に『人間界最高の頭脳』と言われていたあの時の
(弥海砂の世界の者ならば、ノートの事を詳しく知っている可能性も高いな…これは思わぬ拾い物だ)」
「はい(……初対面にしては無警戒すぎる。こんな敵か味方か詳しく知る術も無い殺人ゲーム…一つ判断を誤れば、即『死』。
弥にこちらの事を前もって聞いていたのだとしても、少なくとも多少の警戒は無意識にするものだ。
だからこそその違和感の無い自然な笑顔もおかしい。危険だ)」
「私の名前は藍染惣右介。このゲームに抗う者の一人だよ。二人でいる所を見るに…君達もそうなのだろう?
(人間界最高の頭脳とやらも脱出派か。ならば…
あの琵琶湖の件をちらつかせれば、簡単に利用できる。私の計画の円滑な進行の為、せいぜい役に立ってもらおうか)」
「………はい。一刻も早く、ゲームを中断させるつもりです
(…二人でいるからゲームに乗っていない?そんなわけ無いだろう。殺人者が手を組む可能性も高いのに。
やはり…藍染惣右介、高い確率で危険人物…となると、やはり弥から『キラ』の不思議な力、聞き出している可能性は高い。
だからこそ弥海砂を『生かして』いる)」
「あ、出会ってすぐこんな事頼むのもなんだが…良かったら君達の支給品を見せてくれないかい?
(中断?ただの脱出が目的ではないのか…少し厄介だな。
まぁ、弥海砂の世界の人間であるなら特に役に立ちそうな能力もあるまい。せいぜいあの『死神の眼』くらいのものか。
…もう一人のセナ君は分からないが…まぁ、一応後で聞いてはみよう。
それよりもまずは支給品。興味を引く者があるなら、仲間のふりをして手に入れるか…無理なら、奪う)」
「支給品…ですか?何故?(支給品……もしやデスノートを求めている?……いや、そうとも限らない。
ノート以外にもこの世界には不可思議なアイテムが多い。それらを集めて、優勝する。そして元の世界に持ち帰る…狙いはそんなところか)
「いや、私はこのゲームの支給品に興味があってね。
見たこともない不思議なアイテムの数々、大変興味深い。脱出や対主催者戦に役立ちそうな物も集めたいしね
(…脱出ではなく中断が目的であるなら、琵琶湖の件は今はまだ出さない方が無難か…
私の計画に下手に支障をきたされでもしたら厄介だ。人間界最高の頭脳とあの主催者に呼ばれる程の人物、過小評価は出来まい。
幸い弥海砂の目的は『夜神月』なる人物とだけの脱出…だった。彼はもう脱落してしまったがな。
しかしこの男の事は聞いていないし、頼まれてもいない。ならば弥海砂の口から計画が漏れる事は無いと思うしな。
まあ万一漏れても…その時はその時でどうにでもなる)」
「…………(支給品……見せて支障の無い物だけなら見せても構わない。いや、むしろ下手に断りでもして警戒されても厄介だ。
………しかし、その前に一応念のために例の件を弥に聞いておくか?
万一、予想できる内の最悪のパターン……力づくの行動に移られてからではおそらく確認出来ない。確認はなるべく早めが良い)」
「……ミサさん」
「…ん?何?」
「もしかして藍染さんに……我々の世界の事、キラの事、話しましたか?」
「え?」
「ん?君達の世界の事?ああ、例のデスノートの事かな?」
「「!!!?」」
「あ…」
「……ミサさん。何故あなたが『デスノート』の事、知っているのですか?
(なんて事だ………弥海砂は、これで確実に『第二のキラ』…!こんな形で決着が付くとは思わなかった…)」
「あ…それは…その!……って…あれ?」
「……ミサさん?」
「なんで…?」
「何故ですか?答えて下さい」
「え…と………ら…ライトに…聞いたの!そう!ミサ、ライトに面会に行った時に…ライトが教えてくれたの!」
「…………(それはありえない。お前は『第二のキラ』だとたった今『自白』したんだ…………
だが………今となっては……夜神月は………『キラ』はもう……)」
「……そうですか。なら知ってて当然ですね」
「……へ?」
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――Lは、もうどうでもよくなってしまっていたのだ。
『夜神月=キラ』に勝つことが完全勝利。だが、その人物は……もう、どこにもいない。もう、一生勝つことは出来ない。
『首輪を解除し、主催者の目を欺いて生存している』
…確かに可能性はゼロではない。
……しかし、限りなくゼロに近い可能性なのだ。
自分の追っていたキラを負かし決着を付けるには…
そのゼロに近い可能性に賭けるしかなく、その上まだこの『殺人ゲーム』にも勝たなければいけない。
今の状況、二つを掛け持つわけには行かない。そんな余裕もない。
共に生き残り、元の世界に帰ってから『決着』を付ける。それが理想。
ならば今『第二のキラ』が確定したところで、大した意味はない。
ゼロに近い可能性の『夜神月生存』がもし有り得るなら、自分が脱出出来れば向こうも脱出出来るだろう。
それならば、その時に改めて今判明した事実を持ってキラを追い詰めよう。
だから……今は――
「…別に…問題ありません。全く…夜神君の口がこんなに軽いとは思いませんでした。今度会ったら注意しておかなければいけませんね」
「…へ?…あ…アハハッ……そ、そうね…(良かった…バレずに済んだみたい…)」
軽くため息を吐いてミサを見上げるL。
そう、これで良い。もし夜神月が生きているなら、この『ゲーム』に勝てれば、ゲームにもキラにも勝てる。
しかし、死んでいるなら……
もう、一生決着は付かないのだ。弥海砂を第二のキラとして裁いても、それは完全勝利ではない。今はもう、どうでもいい。
…それがLの結論だった。
「…弥君、もしかしてノートの件、言わない方が良かったのかな?」
「え?あ、別にもういい…です。アハハ…」
藍染に乾いた笑いを返すしかないミサ。藍染もセナも頭にハテナマークを付けたまま、そんなミサを眺めるだけであった。
「…えっと…Lさん?藍染さんに支給品…見せていいんです…よね?」
しばらくずっと三人の様子を窺っていただけで口を開くこと無かったセナが自分のデイパックを開きながら、Lの方に戸惑いがちに言葉を掛ける。
「…あ、はい(…セナ君の支給品は見せても全く支障は無い。
問題は…こちら。GIカードにノートの切れ端……見せるわけにはいかない)」
『初心(デパーチャー)』以外の物はセナにも存在はまだ教えていない。
その『初心』にしろ、すでに危険だと判断した藍染に見せるのは得策ではない。
L自身の読みでは、藍染は『便利な支給品を集め、それを使って優勝を狙う危険人物』。今は無害を装ってはいるが、その本性は謎なのだ。
キン肉マンが周囲の偵察からまだ帰ってこない現状、もし強奪を狙われ戦いに持ち込まれたら勝ち目無し。
…だがしかし、このまま無警戒を装ったままで流されるままに彼にいろんな情報を与えてしまうのは…あまり好ましくない。
ステルスマーダー――隠れた殺人者は、速やかに排除しなければならない。ならば…!
「……ほう、君の支給品はランタンに簡易テントに…寝袋?他にもいろいろ入っているみたいだが…
どうやら戦いには使えそうに無いものばかりのようだね。せいぜいこの小さな十得ナイフくらいか…(外れだな。下らない…)」
「うわ!いいなぁ~…ミサ、キャンプ結構好きだし」
「……こちらの支給品は、それらだけです。私のは以前、全て奪われてしまいました」
「……え?」
Lのその言葉を聞いて、思わずそう漏らし眉を潜めるセナ。
『初心』の事を口にしなかったL。藍染に全く疑いを持っていないセナにしてみれば、Lの付いた『嘘』の理由が分からなかったのだ。
「…ん?」
「…Lさん、確か『初心(デパーチャー)』があったんじゃあ…」
「………『初心』…?(…隠そうと…した、だと?)」
『初心』なる謎の名を耳にして目を細める藍染。
セナのデイパックから目を離してLの方へ首を向ける。
「………やれやれ、セナ君には口止めしておくべきでしたね…はい。こちらにはあと一つだけ、切札とも言えるアイテムがあります。
しかし切札は隠していてこその切札。味方とはいえ、なるべくなら存在は隠しておきたかったんです。すみません」
「……そうか。確かに賢明な判断だよ(私を警戒している…?いや、嘘とも思えない。相手は『人間界最高の頭脳』らしいからな。
もし嘘ならば『切札』などとは言わない。大した価値が無いものだと言って、私にはその『初心』とやらを見せないはずだ。
私を疑うのなら、狙われてしまう確率をわざわざ上げる発言はしないはず…)」
納得した、というように表情を緩めて笑顔を向ける藍染。
セナのデイパックを藍染の後に覗いていたミサも手を止めキョトンとしたまま二人を見つめている。
「…もし良かったら、見せてもらえないかな?…もう存在は知ってしまったのだし」
「………そうですね、構いませんが……」
「…『が』?」
「……そちらの支給品も、全て見せて頂けますか?それなら条件はおあいこになりますし、互いの『信頼』の証にもなる」
「……ああ、もちろんだよ。切札を見せてもらうんだ、当然の事だね…
(…別に構わない。もし『初心』とやらが魅力的なアイテムならば…いずれ私の物とするのだから。
私を信頼しきっているならどうとでもできるし、もし疑いを持つようなら…
…奪うだけだ。仮にも人間界最高の頭脳、私に疑いを持つようならば計画に支障をきたさぬよう始末するのみ。
Lの私に対する疑いが弥海砂や
小早川瀬那にも伝わってしまえば、まとめて排除すれば良い。
鏡花水月の実験台など、探せば他にいくらでもいる。
私のアイテムを奪おうとしても…私に鏡花水月がある限り、どう相手が頑張っても私の勝ちは揺るがないしな…)」
穏やかな微笑みを浮かべて自身の腰の刀を外す藍染。三人が見守る中、一つ一つ自らの手で見せながらLに手渡していく。
雪走。斬魄刀。核鉄。
盤古幡と首輪は見せなかった。ミサにも秘密にしている物、わざわざ教える必要は無いと判断したためである。
その後Lは核鉄を指先で摘んで顔付近まで持ち上げ、物珍しげに眺めている。
「……どうだい?信用してもらえたかな?」
「……はい。もちろんです」
核鉄を観察し終えて地面に置き、藍染に視線を戻すL。
「…では、こちらもお見せします。これが『初心』です」
懐に手を入れ、一枚のカードを取り出し藍染の眼前に据える。
「………カード?これがかい?」
「はい。あるキーワードを言うと使用できる、不思議な効果を持つカードです」
カードを指先でピラピラと揺らしながら、藍染を見据えるL。
隣でそれを眺めているミサも興味津々といったようにそれを見つめている。
「キーワード?それはどんな言葉なのかな?」
「キーワードは、『初心(デパーチャー)使用(オン)、対象、藍染惣右介』です」
ぱひゅーん
「…………」
「…………」
「…………」
カードの消滅と共に、藍染惣右介は空の彼方へ。
「…………」
「…………」
「…………」
「………ちょ……ちょっとちょっとちょっとぉッ!!!?Lうぅぅッッ!!!?」
「…何でしょう?」
我に帰ったミサが隣のLの肩を掴みブンブン揺らす。
地面に置きっぱなしの藍染の三つのアイテムを何事も無かったかのように拾い集めるL。
「ちょっ…Lさん!?どれだけ重大なミスをしちゃったか!分かってるんですか!!?」
セナもようやく我に帰り、Lに詰め寄らんばかりに声高に問い詰める。
「………正義は必ず勝つ、ですよ。セナ君、ミサさん」
「「…………は?」」
呆気に取られたままの二人を尻目に、立ち上がり服に付いた砂を手でパンパンと払っているL。
「…Lぅ~ッ!!ただ今無事、キン肉スグル!大帰還~~~っ!!!………って…どしたんだ?なんかあった?」
三十分ほどの周囲の探索を終えて帰還したキン肉マンが見たのは、
一人増えた見知らぬ女性とセナの二人に挟まれて、言葉の集中砲火を受けている真っ最中のLの姿であった。
【岡山県北西(藍染のスタート地点)/黎明】
【藍染惣右介@BLEACH】
[状態]やや疲労(睡眠により回復、盤古幡使用可能)
[道具]荷物一式×2(食料残り約5日分) 、盤古幡@封神演義、首輪×2
[思考]1:……え?
2:興味を引くアイテムの収集(キメラの翼・デスノート優先。斬魄刀の再入手は最優先)
3:ルーラの使い手、バーンと同世界出身者を探す
4:能力制限や監視に関する調査
5:琵琶湖へ向かう(斬魄刀を手に入れてから?)
【兵庫県/黎明】
【弥海砂@DEATHNOTE】
[状態]中度の疲労
[道具]荷物一式
[思考]1:茫然自失
2:月と合流し、藍染の能力で共に脱出
3:夜神月の望むように行動
【小早川瀬那@アイシールド21】
[状態]精神不安定
[道具]荷物一式(食料残り1/3)、野営用具一式
[思考]1:茫然自失
2:まもりとの合流
3:これ以上誰も欠けさせない
【L@DEATHNOTE】
[状態]右肩銃創(止血済み)
[道具]ナッパの荷物一式の中身(地図など。食料無し、水ペットボトル一本)、デスノートの切れ端@DEATHNOTE
GIスペルカード『同行(アカンパニー)』@HUNTER×HUNTER、雪走@ONE PIECE、斬魄刀@BLEACH、核鉄XLIV(44)@武装練金
[思考]1:現在の仲間たちと信頼関係を築く
2:沖縄の存在の確認
3:ゲームの出来るだけ早い中断
【キン肉スグル@キン肉マン】
[状態]健康
[道具]荷物一式
[思考]1:何があった?
2:志々雄からたけしを助け出す
3:ウォーズ・ボンチュー・マミー・まもりを探す
4:ゴン蔵の仇を取る
【Lたちの共通思考】1:キン肉マンの志々雄打倒に協力するため、関西中心を捜索
2:午前6~7時頃の大阪市街で剣心・ナルトと合流
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最終更新:2024年06月25日 22:32