0369:あの男との邂逅 ◆9uVZGZBjOQ
(…!?この小宇宙は!)
制限されているとはいえ、聖闘士は小宇宙を感じる事で敵の接近を察知できる。
この世界では小範囲ならスカウターいらずの便利な能力と言った所か。
長かった夜は終わり、久しぶりに太陽が顔を出した。辺りを照らす光とは対照的に星矢の心は晴れなかった。
何かいやな予感がする…この嫌な小宇宙は誰のものだ?昔のサガじゃない。
デスマスクとも違う。そうだ!この邪悪な小宇宙はあいつの…
と、そう確信したところで放送が流れ始めた。すかさず地図と名簿とペンを手に取る。
このゲームが始まってもう5回目の放送だ。流石に放送前の手際は良くなっている。
――良い朝だ、諸君。ではこれより余が定例の報告を行うとしよう、聞き逃さぬように。
低く、癪に障る声で主催者の1人、バーンが脱落者を次々に読み上げていく。何と言うことはない。これまでと同じ事だ。
いつものように誰かの死を嘆き、悲しみ、そして立ち直る。これまでと同じ流れになるだろう。自分以外は。
だが、黄昏れてる場合じゃない。本当の危機はすぐそこまでやってきているのだから。
前回両津に忠告されたばかりだ。
―――油断するな―――と。
案の定、まもりを除くメンバーは四国全滅の報に呆然として、暫くの間開いた口が塞がらなかった。
麗子と直接面識があった人物が亡くならなかったのは不幸中の幸いか…
しかし、公主、鵺野、乾と立て続けに四国防衛組の名が呼ばれたのでは、
太公望の言葉に逆らい、うかつに四国を飛び出し、人捜しに行った自分たちの行動が如何に愚かであったかが良く分かった。
「鵺野先生…乾…前の放送でわし達が戻っていれば…守れなかった。守れたはずの仲間を…」
今回ばかりはゲームが始まってからの知己を失い、何度も地面を叩くなど、今まで比較的落ち着いていた両津も取り乱せずにはいられなかった。
「両津さん。落ち着いて。何も両津さんが謝る事はないよ。
ターちゃんが第一陣を退けた後、第二陣が来たのかもしれないし、
何より主催者さえ倒せば公主さんや
ターちゃん、他に殺された大勢の人も生き返るんだから。」
「あぁ。勿論だ。彼らの想いはわし達が受け継ごう。
よし、再出発だ。彼らを殺した犯人の手がかりが残っているかもしれないしな。」
両津はクリスチャンではなかったが、死んでいった仲間のために十字を切って祈った。もう、こんな悲劇は最後にしてくれよ、と。
両津たちの心を繋いでいたのが、全員を復活させる事ができるという、
主催者であるハーデスの能力だったのは皮肉な事なのだが、今はその希望に頼る他はない。
幾多もの仲間の
死を乗り越えてきた彼らにとって、これ以上、仲間の死によって精神が傷つく事はなかった。
(今のわしらが奏でる事のできる鎮魂歌は、乾たちの敵討ちをする事くらいだろう。
警官としては不本意だが、殺人者に出会った場合、わしはマグナムを急所にぶち込む覚悟が出来た。)
「あの…みんな。ちょっと話があるんだけど。」
何かを決意したような声で話す星矢に他の4人は、既に四国へ向けて踏み出しかけていた足を止めた。
「何だ?小便ならさっさと済ませてこい。」
「そんな下らない事じゃないよ。ここからすぐ近くにとんでもない邪悪な小宇宙を持った奴がこっちに来ているんだ。」
嫌な予感がして、場を和ませる意味も込めてわざとふざけて聞いた両津だったが、
やはり、と言うべきか、すぐにその重大さに気付き、尋ね返す。
「ま、まさか。その邪悪なコスモの持ち主とやらは、お前が以前話していたあの…」
「そう、石崎さんを殺し、オレ達の支給品を奪った後、キルアを力で従えさせ、
一回は
太公望さんの力もあって捕まったけど、妙な呪文で逃亡し、その後姿を眩ましていた男、
その名前を聞いた後、その場にいる全員は頭に雷でも落ちたようなショックを受け、息も出来ない程に凍りついた。
何だかんだ言ってまもりを除き、ここにいる者全員がここまで本格的な戦闘を行っていなかったからだ。
強力なマーダーの出現に戸惑うのは無理もない。
「それで…四国を襲った可能性のある藍染を全員でぶっ飛ばそうって言うんだな。
ふふふ。いよいよわしの射撃の実力をお目にかける時が来たか。ウデが鳴るぜ。」
このゲームを憎んでいた両津だったが、1日目は歩きっぱなしで戦闘などしておらず、
喧嘩やサバイバル・ゲームが大好きな彼にとっては、“殺し合い”という
ルールでなければ結構性に合っているのかもしれない。
それとも麗子やまもりら女性陣に配慮してわざと明るく振舞ってるのか…
ともかく、両津はドラ○エの主人公になった気分で、マグナムを構えたり、拳で空を切り裂いたり、指をパキパキと鳴らしたり、
まるで子供のようにはしゃいでいた。
「その事なんだけど…藍染はオレ1人に殺らせてくれないか?
あいつはオレの友達を殺した。是非このオレの手で止めを刺したいんだ。」
とんでもないことを聞いた両津は眉を吊り上げながら、怒鳴りたい感情を必死で堪え、マグナムをホルスターに入れ、星矢を宥める。
「星矢…悔しいのはよく分かる。わしもそいつが乾らを殺した犯人なら先を争って止めを刺そうとするだろう。
しかしだな。1人では危険すぎる。お前も単独行動をしたためにこの舞台からいなくなった仲間を何人も見ただろう?
お前はハーデスやバーンとの戦いに欠かせない戦力だ。万に一つの危険でも警戒をした方がいい。」
「そうよ。みんなで戦った方が安全よ。星矢ちゃんだけ危険な目に遭うことはないわ。でも、いつもの両ちゃんらしくないこと言うわねぇ。」
確かに、通常の両津ならこんな“石橋叩き”戦法など取るはずがない。
これは彼が最も嫌っていた行動であり、また既に死んでしまった大原部長の好きな行動だったからだ。
しかし、このゲームが始まってから、彼は変わった。今となっては部長のやってきた行動が如何に正しいか良く分かる。
そして、自分と同じような性格を持つ星矢を放っては置けない。
「心配してくれてありがとう、両津さん。麗子さん。でも、オレにも理由があるんだ。1人の方が都合がいい――ね。
一つは奴の支給品。重力を操る能力を持っているみたいだ。
最低でも10倍までは上げられるらしい。
ダイはともかく、両津さんや麗子さんが耐えられるとは思わない。
そして、もう一つの理由は…」
まるで他人事のように余所見をして遠くを見つめていたまもりの方にチラリと目をやる。
今の行動で勘のいい三人はみんな気付いたらしく、納得のいく表情をしていた。
(なるほど…超重力発生装置かなんかを使ってわし達の動きが止められている間に、
あらかじめ戦闘を避けていたまもりが裏切って、魔弾銃でこちらを襲ってくるかもしれんということか。
この娘が獅子身中の虫である可能性が強いと予想される今、そんな事は防ぎたい。
後ろから飛んでくる矢が一番怖いのは昔からの鉄則。ここは星矢の意見を聞いておくべきか。
だが…一応保険はかけておくべきだろう。)
何かを閃いた両津は“あること”をダイにそっと耳打ちして、星矢の意見に賛同した。
「よし、お前の覚悟の強さは良く分かった。わしらはこれから藍染との接触を避けるため瀬戸内海沿岸を通って行動する。
決して死ぬんじゃないぞ。危なくなったらプライドなんか捨てて逃げろよ。」
「任せといてよ。必ず奴に殺されたみんなの仇はとってやるから。
そっちこそ気をつけてよ。まだ四国に殺人者がいるかもしれないんだからね。
こっちが片付いたら必ず駆けつけるから。」
こうして両津たちは山陽道の更に南の道を通り、四国を目指す事となった。
名残惜しそうに両津たちが見えなくなるまで手を振り続けていた星矢だったが、
完全に姿が見えなくなると、顔を引き締め、女神の血が染み付いた聖衣を纏い、臨戦態勢に入った。
雲行きが怪しくなり、雷音が轟き始める。
間もなく奴がやってくる。あの悪魔が…
市街地のため、数百メートル先も見えない。
あと300メートル…
200メートル…
100メートル…
そして、とうとうあの男は秋風が吹くこの地に姿を見せ始めた。
先に発見され、前の時みたいに逃亡されるのを恐れた星矢は近くの建物に身を潜め、じっとその機を窺っていた。
そして、十分に引き付けると、ぱっと建物から飛び出し、威風堂々と名乗りを上げた。
「久しぶりだな、藍染。オレの名は女神の聖闘士、ペガサス星矢。多くの人々の命を奪った罪、その身で償ってもらおう。
アテナの名の下に、
藍染惣右介、貴様の命、頂戴する!」
突然の出現に多少たじろいでいた藍染だったが、すぐに元の冷静さを取り戻し、星矢を煽り始める。
前の時みたいにキレてくれた方が攻撃を避けやすいからだ。
それに、斬魄刀が無い今、危ない戦闘は避けたかった。
また、前回の放送で、聖闘士とやらに一人復活の話が本当かどうか聞きたいと思っていた所だ。
ある程度情報を引き出した後、以前のように盤古幡を使いつつ、マヌーサでこの場から立ち去るか。
何しろ、こんなところで無駄な戦闘はしたくない。
今は実力差もあり、ちょっと苦しいが、斬魄刀さえ手に入ればこんな少年など鎧袖一触、殲滅も容易い事だ。
「君はたしか…昨日、この私に動きを封じられた少年…
どうした?今日は仲間はいないのかい?いくら君とて1人では私に勝てない…」
「ヘッ!昨日のオレと今日のオレを一緒にするなよ。オレの命の炎はいつも以上に燃え盛っているんだからな!」
―――ついに、伝説の聖闘士と、死神の戦いが幕を開ける―――
【二日目兵庫県/朝】
【四国調査隊】
共通思考1:四国に向かう(数十分後、到着予定)
2:仲間が死んでも泣かない
3:出来る限り別行動はとらない (星矢は別)
4:ハーデスに死者全員を生き返らさせる
【星矢@聖闘士星矢】
【状態】軽い興奮状態
【装備】ペガサスの聖衣@聖闘士星矢
【道具】食料を8分の1消費した支給品一式
【思考】1:藍染を倒す
2:四国へと向かう
3:弱者を助ける
4:沖縄へと向かう
5:主催者を倒す
【藍染惣右介@BLEACH】
[状態]やや疲労(睡眠により回復、盤古幡使用可能)
[道具]荷物一式×2(食料残り約5日分)、盤古幡@封神演義、首輪×2
[思考]1:星矢を尋問した後、逃亡する。
2:L一行を探し出し始末、斬魄刀を取り返す。
3:興味を引くアイテムの収集(キメラの翼・デスノート優先。斬魄刀の再入手は最優先)
4:ルーラの使い手、バーンと同世界出身者を探す
5:能力制限や監視に関する調査
6:琵琶湖へ向かう(斬魄刀を手に入れてから)
7:琵琶湖に参加者が集まっていなかった場合、新たな実験の手駒を集める
【両津勘吉@こち亀】
【状態】睡眠不足による若干の疲労、額に軽い傷
【装備】マグナムリボルバー(残弾50)
【道具】支給品一式×2(二食分の食料、水を消費)、両さんの自転車@こち亀(チェーンが外れている)
爆砕符×2@NARUTO、中期型ベンズナイフ@HUNTER×HUNTER、焦げた首輪
【思考】1: 星矢のためにある事をする。
2:姉崎まもりを警戒
3:仲間を増やす
4:三日目の朝には全員で兵庫に。だめなら琵琶湖に集合する
5:沖縄へと向かう
6:主催者を倒す
【秋元・カトリーヌ・麗子@こち亀】
【状態】中度の疲労
【装備】サブマシンガン
【道具】食料、水を8分の1消費した支給品一式
【思考】1:まもりに僅かな不信感を抱いている
2:四国へと向かう
3:藍染の計画を阻止
4:沖縄へと向かう
5:主催者を倒す
【ダイ@ダイの大冒険】
【状態】健康
【装備】クライスト@BLACK CAT
【道具】荷物一式(2食分消費)、トランシーバー、出刃包丁
【思考】1: 両津からある事を聞かされ、その実行
2:姉崎まもりの監視
3:四国へと向かう
4:ポップを探す
5:沖縄へと向かう
6:主催者を倒す
【姉崎まもり@アイシールド21】
【状態】:中度の疲労、殴打による頭痛・腹痛、右腕関節に痛み(痛みは大分引いてきている)
右肩の軽い脱臼、不退転の決意
【装備】:魔弾銃@ダイの大冒険・魔弾銃専用の弾丸(空の魔弾×7、ヒャダルコ×2、ベホイミ×1)@ダイの大冒険
【道具】:高性能時限爆弾、アノアロの杖@キン肉マン、ベアークロー(片方)@キン肉マン
装飾銃ハーディス@BLACK CAT、荷物一式×4、食料五人分(食料、水は三日分消費)
【思考】1:不明
2:両津達3人に付いていく。大量殺戮のチャンスを狙う
3:殺戮を続行。自分自身は脱出する気はない
4:セナを守るために強くなる(新たな武器を手に入れる)
5:セナ以外の全員を殺害し、最後に自害
6:セナを優勝させ、ヒル魔を蘇生して貰う
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最終更新:2024年07月12日 06:02