0370:歎きの咆哮 ◆8ANllGuljM
「 な ん で だ あああああああああああああああああああ」
東京ドーム付近から発せられたその叫びは、誇張無く東京中に響き渡った。
「あああああああああああああああああああああああああああああ」
胸の内に湧き上がる、やり場のない怒りと悲しみとを、ただひたすらに吐き出す。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
しかし、その声は辺りに虚しく響き渡るばかりだった。
これまで、仲間と共に様々な冒険を繰り広げてきた。
ピンチも何度もあったけれど、仲間と一緒に乗り越えてきた。
今回だって、誰一人欠けることなく切り抜けられる。
そして、これからも。
そう、どこかで高を括っていた。
「きっと仲間と共に何とかできる」と。
しかし、現実はその儚い願いを無情にも打ち砕いた。
ルフィ達は
世直しマン達とは別行動をとり、ロビンを探しながら東京タワーに向かっていた。
だが、結局ロビンを見つけることはできず、集合場所の東京タワーにも、第五放送よりも前に到着してしまったのだった。
スヴェンは
世直しマン達が到着するまでの間、東京タワー周辺でロビンの捜索をすることを前もって提案していたが、
東京タワーに興奮したルフィがそれを何処まで覚えていたかは甚だ怪しいものである。
それとも、『高いところから探した方が、ロビンもすぐに見つかる!』というルフィなりの考えがあったのだろうか。
「うお~~~、たっけ~~~~!!」
タワーの展望台で東京の町並みを見渡すと、南には海が見え、西には富士山が見える。
日本が縮小されているせいなのだが、この眺めは本物にも勝るとも劣らない。
「ん~、でもやっぱ一番上まで登んねぇとな!」
そう思いつくや否や、ルフィはタワーの外へと飛び出した。もちろん目指すはタワー頂上の先端部。
そのとき、ふと下を見ると、タワー入り口までは一緒にいた筈の二人の姿が見えない。
「あれ?お~~~い、イヴ~~~~~!! スベ~~~~~~~ン!!」
大声で呼んでみたものの、返事は無い。
東京タワーの構造上、階段は外部に通じているので声は聞こえるはずだし、エレベーターに乗っているなら、
エレベーターが動くのが見えるはずなのにもかかわらず、である(もちろんルフィはそんなことまでは考えてはいないが)。
「おっかし~~な~~?あいつらだけでどっかに行っちまったのかぁ?」
考えながらもルフィはタワーの頂上を目指してサルのように鉄骨を登ってゆく。
「そ~いや、二人の仲間と近くで待ち合わせしてるとか言ってたな~~。じゃ、二人で迎えに行ったんだな!」
一応の結論を得て納得はしたものの、そこから新たな不安が生まれてくる。自分がいない時に、もし敵にでも見つかったら・・・
「でもまぁ、あの二人なら大丈夫だろ。」
イヴは一見子供だけれど、羽やハンマーを生やせたりできる。
スヴェンは、そのイヴより強いってイヴが自分で言っていた。
それに、トレインって奴は、スヴェンと同じか、もっと強いらしい。
だから、あいつらに何かあるワケがない。
そう、高を括っていた。
ルフィは、あっという間にタワーの頂上まで登りきった。
「お~~~い!ロビ~~~~~~ン! イヴ~~~~~~~~~!! スベ~~~~~~~~~~ン!!!
聞こえてたら返事しろ~~~~~~!!!」
遥か彼方まで届くであろう大声で呼びかけたものの、返事は無い。
そして驚異的な視力のルフィが目を凝らしても、辺りで動くものといえばカラスとスズメとノラ猫ぐらいしか見当たらない。
「あいつら・・・どこ行ったんだ!?」
ルフィが途方に暮れている、その時。
「カッ」
眩い閃光と共に
「ズッドオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォン!!!!」
耳を劈くような爆音が轟き。
そして、北の空に、巨大なキノコ雲が立ち上った。
「・・・まさかっ!」
ルフィはイヴとスヴェンが誰かと戦っているのだと直感した。
そして、全速力で、正に飛ぶ勢いで爆発のあった場所へと駆けつけた。
爆発からものの数分。だが、そこには巨大なクレーター以外何も残ってはいなかった。
クレーターの周辺は凄まじい熱気が立ち上り、時折瓦礫が崩れる音が、遮蔽物の消滅した周辺へと響き渡る。
辺りには、人――というよりも、生物の気配は全く無い。
もしこの爆発に巻き込まれていたのなら、誰であっても無事には済まないだろうことは明らかだ。
それでも、まだ2人が巻き込まれたかどうかは分からない。
きっと、2人とも無事だ。
そう、高を括っていた。
いや、そう信じていたかっただけだ。
そして、放送の時間が訪れた。
――良い朝だ、諸君。
呆然とクレーターに立ちすくむルフィの耳に、バーンの声が響く。
――まずは脱落者からお伝えしよう。
底知れぬ不安と、わずかな希望。呼ぶな。呼ばないでくれ。
――
世直しマン、
「 ! 」再会を誓い合った仲間の死。だが、それはまだ始まりに過ぎない。
――イヴ、
「 なんで・・・ 」その身を案じていた、仲間の死。
――
ニコ・ロビン、
最後に、ルフィの心に止めを刺すかのような、探し求めていた仲間の死。
そして、
堪えていた何かが、溢れた。
その感情が悲痛な軋みに耐え切れず、一気に爆ぜた。
「 な ん で だ あああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
バッファローマンが死んだときに、もう誰も仲間を失くさないと、
仲間を守ると心に誓った筈だった。
だが、あれから数時間のうちに、これだけの仲間が死んでしまった。
世直しマン。強くて頼りになるやつだったのに。
イヴとスヴェン、そしてトレイン。一緒に、"偉大なる航路"に行くんじゃなかったのか?
ロビン。すぐ近くにいる筈だったのに。探せば見つかる筈だったのに。
皆死んでしまった。
なんでだ。
同じ疑問が、ぐるぐると頭の中を駆け回る。
なんでなんだ。
怒り。悲しみ。後悔。無力感。あらゆる負の感情が押し寄せてくるようだ。
何よりも仲間を大切に思っていた。
絶対に守るんだと決めていた。なのに。
なのに。
なんでだ。
なんでだなんでだなんでだなんでだなんでだなんでだなんでだなんでだなんでだなんでだ
なんでなんだ。
同じ疑問が、ぐるぐると頭の中を駆け回る。
――『ウソになっちまったのは、おれが弱かったからだ』――
その時ふと、自分がイヴに言った言葉を思い出した。
・・・そうだ。
答えなんてはじめっから知っている。
おれは弱い。仲間を守れる力も無い。
だから。
おれは。
仲間を守るためには。
もっと。
もっと。
「もっと強くならないといけねぇんだ!!」
「・・・おれには強くなんかなくたって、一緒にいて欲しい仲間がいるから・・・・・・!!」
「おれが誰よりも強くならなきゃ、そいつらをみんな失っちまう!!!」
そうだ。おれには止まっているヒマなんて無ぇんだ。
放送では、昨日闘ったバケモノ――たしか、ペッコロとフレなんとかだったか?――の名前は呼ばれなかった。
ということは、あいつ等は死んでねぇってことになる。
世直しマンがやられたのなら、相手はあいつらか、他の相当強ぇ奴ってことだ。
ルキアとボンチューも、生きていても無事かどうかは分からねぇ。
そうだ。おれにはやることがある。
守らなきゃなんねぇ仲間がいる。
倒さなきゃなんねぇ敵がいる。
なら、こんなところでゆっくり待っている場合じゃねぇ!
なにより、じっとなんかしていられるワケがねぇっ!!
「 ゴムゴムのぉ・・・バズーカ!!! 」
どごぉぉぉぉん・・・!!
ルフィはそれまでの落ち込みを吹き飛ばすかのような勢いで、クレーターの中心の地面を思いっきり殴りつけた後、北へと走り去った。
ルキアと
ボンチューの元へ。仲間の元へ。
そして、後にはひとつの記号が残されたのだった。
( ↑ )
ド―――――z____ン!!
それは、待ち合わせた仲間が来たときのための、書置き。
東京ドームそばの、巨大なクレーター。
その中心には、北を指した、巨大な矢印が刻まれていた。
ルフィが北へと走り出したのと同時刻、同じく北へと走る者がいた。
友情マン、全宇宙でもっとも"仲間"が多いヒーローである(尤も、彼にとっての"仲間"はルフィにとっての"仲間"とは意味が異なるのだが)。
ルフィの咆哮は、悟空の元へと走る彼の耳にもはっきりと聞こえていた。
(今の叫び声・・・やはり何者かがいるようだな。東京ドームを迂回して正解だ。
さて、あんな大規模な爆発の中でも生き残っている者となれば、ただ者ではあるまい。
爆発が支給品によるものであるか、自身の能力のものであるかは分からないが・・・
危険な存在があの場所に今も「生きて」うろついている可能性は非常に高い。
これはどうあってもカカロット君と潰し合って貰わないといけないな・・・)
【東京都・東京ドーム周辺/朝・放送直後】
【モンキー・D・ルフィ@ONE PIECE】
[状態]:両腕を始め、全身数箇所に火傷
[装備]:無し
[道具]:荷物一式(食料半日分)
[思考]1、ルキア、ボンチューと合流する為に北へ。
2、"仲間"を守る為に強くなる。
3、"仲間"とともに生き残る。
4、悟空・仲間を探す。
5、悟空を一発ぶん殴る。
【友情マン@とっても!ラッキーマン】
[状態]:肉体的、精神的に軽度の疲労、空腹(野草を食べてほんの少しは回復)
[装備]:遊戯王カード@遊戯王(千本ナイフ、光の封札剣)(ブラックマジシャン、ブラックマジシャンガール、落とし穴、は24時間後まで使用不能)
[道具]:荷物一式(食料なし)、ペドロの荷物一式(食料なし)、勝利マンの荷物一式(食料なし)、青酸カリ
[思考]:1.悟空を東京ドームへとけしかける。
2.食材・食料の確保。できれば力づくで奪うような手段は取りたくない。
3.悟空をサポート、参加者を全滅させる。
4.最後の一人になる。
※東京ドーム周辺には巨大なクレーターができ、中心には北を指した巨大な矢印が残っています。
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最終更新:2024年07月12日 06:46