0418:ヨルヨルユカイ  ◆BfiYd9.rFo




ここは岐阜県と滋賀県の県境に位置する森林。

先ほどまで空を覆っていた薄暗い雲は次第に薄まり、その隙間からは綺麗で真っ赤な夕焼けが顔を覗かせている。
しかし、数時間ぶりに姿を現した太陽は、夜の接近に伴い残念ながらすぐに沈んでいくことになるだろう。


ケンシロウという強敵を倒し、琵琶湖そばの小屋を目指していたDIOとAYAだったが、
忌々しい彼らの天敵、太陽が登場してしまった。そのためやむを得ず、この森中にあった小屋に身を隠すことになった。

この小屋を見つけた時は『ここを拠点にしようか』という案も彼らの頭をよぎったが、
ここはテーブルもなければキッチンもない、本当にただの“小屋”である。そのためここを拠点にすることは賢いとは言えなかった。
ゆえに二匹はここを日が沈むまでの休憩所としたのだ。

足止めをくらった二匹だったが、それでもなおAYAも、そしてDIOも上機嫌である。
それはなぜか?



【AYAの場合】

(もう少し……もう少しで……真中君と……)

AYAの顔は自然と綻び始める。
それもそのはず。彼女の念願は、もはや手に届くところまで来ていると言っても過言ではない。
このゲームの全参加者の中でも最強の部類に入るであろうDIOを味方につけ、そして自身も人間を超越した力を手にしている。
彼女は今、最高の安心感に包まれているのだ。

しかし、返り血を浴びた制服にしても、死人のような顔色にしても、この姿を見て誰が、
『つい一昨日までは小説を書いたり映画の脚本を書いたりしていた、ドジでおっちょこちょいのインテリな女子高生』だったと分かるだろうか。
DIOがディオ・ブランドーでないように、彼女も、もう東城綾ではなくAYAなのだ。
人間“であった”ことなどはどうでもいいのかもしれない。

(抜け目はないはずだわ)
さっきよりも顔がにやついてしまう。
これが明らかに人間の笑みではないのは言うまでもないだろう。
彼女は既に人間の心を失ってしまったのだろうか……

そんなAYAの耳に不意に声が入り込む
「何がそんなに愉快なのかね?AYA?」



※        ※        ※        ※        



【DIOの場合】

吸血鬼にとっての食事。
無論、吸血である。

吸血鬼は生物の生き血を摂取することにより体力などを回復することができ、また気分を高めることができる。
そしてその血の質も十人十色なのだ。
ケンシロウのような誇り高き戦士の血は、それはそれは格別なものであり、
体力の回復、精神の高揚は、恐らく常人の血を数十人分吸っても得られないだろう。

そう。今のDIOはそういう状況にいるのだ。

(柄でもない。クククッ……スキップでもしてしまいそうだ。ケンシロウ。礼を言うぞ!!ハハッ)

DIOのこの歓喜は、100年という長い期間海中に没し、
その後肉体として理想的なジョナサン・ジョースターの肉体を得て地上に舞い戻ってきたときと同じか、いやそれ以上だろうか。
おそらく今のDIOが戦闘を行えば、持てる力を120%発揮できることだろう。


そんな急がず焦らず、ユカイな気分のDIOは、ふと隣に座り込んでいるAYAに視線を移す。
すると驚くことに、今までほとんどポーカーフェイスを保っていたAYAが笑みを作っている。
そのおぞましい笑みがDIOには微笑ましく思え、DIOはまるで園児に声をかける先生のように調子よく訪ねてみる。

「何がそんなに愉快なのかね?AYA?」



※        ※        ※        ※        



AYAはその笑みのままDIOの質問に答える。
「はい。自分の願いがもう目の前にあると思うと、自然と笑みが。」
AYAはこのセリフとともに、先ほどよりもまぶしい笑顔を作ってみせた。

「フハハッ。そうかAYA。君でもそんな風な笑顔を作れるのだな。
そうだ、勝利はもはやこのDIOの手中にある。君の願いが叶うのも時間の問題なのだ。フハハッッッ!!」

(あぁ……なんとも言えない安心。このDIOなら大丈夫だ。いつか嵐の日に真中君が私を守ってくれたときみたい……)
真中淳平との思い出はそれほど過去ではないのだけれど、AYAにとってそれは大昔のことのように思える。


さぁ、大地が太陽と重なり始めてきた。
小屋の中で日の光が入らないようにしているため、太陽の位置は正確には分からないが、日没までもうそれほど時間がないことは分かる。


「さぁAYA!!夜が始まるぞ。我々の時間が始まるぞぉ!!」

琵琶湖まではもう少しだ。
日が沈めばホンの数刻で到着する距離にある。
しかし2匹が焦ることはない。
それは余裕の表れ。

(体がゴムのように伸びる小僧、そして手から光線を放つ男。
 このDIOでさえ過去に苦戦を強いられた敵はまだ生きていることだろう。しかし今のDIOの敵ではないわ)




果たしてこの2匹を止めることができるヒーローは現れるのだろうか……


夜は刻一刻と迫っていた。


【滋賀県北東部/森林/2日目・夕方】

【DIO@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:体力100パーセント、最高に「ハイ!」な気分
 [装備]:忍具セット(手裏剣×8)@NARUTO
 [道具]:荷物一式×6(五食分と果物を少し消費)、マグナムスチール製のメリケンサック@魁!!男塾
     フェニックスの聖衣@聖闘士星矢(半壊)
 [思考]:1.日が沈むまで小屋で待機。
     2.琵琶湖の小屋に移動。付近の地形(湖など)を使った戦闘方法を考える。
     3.夜になったら『狩り』を行う。(急いで実行するつもりはない)

【東城綾@いちご100%】
 [状態]:吸血鬼化、波紋を受けたため半身がドロドロに溶けた、マァムの腕をつけている
 [装備]:双眼鏡
 [道具]:荷物一式×3、ワルサーP38、天候棒(クリマタクト)@ONE PIECE
 [思考]:1.DIOに絶対の忠誠。DIOの望むままに行動する。
     2.DIOを優勝させ、西野つかさを蘇生させてもらう。
     3.真中くんと二人で………

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403:愛をとりもどせ!! DIO 433:その星は誰を照らす
403:愛をとりもどせ!! 東城綾 433:その星は誰を照らす

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最終更新:2024年08月02日 15:43