0427:長生きなんてするもんじゃない ◆YR7i2glCpA
人は誰しも、この世に生を受けたからには長生きしたいと一度は思うものだ。
より長く生きたい。
早死にはしたくない。
そしてもし可能ならば不老不死――
そう考える事のない人間は恐らく一人としてこの世にいないだろう。
では、実際に長く、長く長ーく生きたらその人間は何を感じるだろうか?
琵琶湖のほとりに立つ、小さな小さな小屋の中にその男――
アビゲイルは座っていた。
「冥界の預言者」と呼ばれ数百年という長い時を生きてきた彼は一人、考えていた。
(――長生きなんて、するもんじゃないですね。)
アビゲイルは長い時を生きていくうちに、様々な人に出会っていた…いや、出会い過ぎていた。
ダーク・シュナイダー、
ティア・ノート・ヨーコ、カル=ス、アーシェス・ネイ、ガラ…
そしてこの2日間、
アビゲイルはこれまで生きてきた長い年月の中でも体験した事のないほど、濃い出会いと別れを繰り返していた。
リンスレット、
ブルマ、さつき、
クリリン、伊達、飛影、
ヤムチャ、斗貴子、ケンシロウ、洋一…
そして、つい先ほどまで目の前に立っていたサクラ、仙道、香、リョーマ、新八。
時を数刻前に戻そう。具体的には、まだ太陽がこの地を照らしていた頃まで。
……………
「アビ、ゲイルさん…?」
目の前で呆然と
アビゲイルを見つめる五人──失礼、一人熟睡しているので四人。
四人が四人とも、いま
アビゲイルが言った事を理解できていない、そんな顔をしている。
「どうかしましたか?早く逃げないと吸血鬼が飛んできちゃいますよ?それこそぱひゅーんと。」
「いや、いやいやいや。」
少しおどけて見せた
アビゲイルにサクラが突っ込む。
あくまで冷静を保とうとしているが、動揺しているのは誰の目にも明らかだった。
「
アビゲイルさん!
アビゲイルさんも一緒に逃げましょうよ!」
「ええ、逃げますよ。あなたたちが行ってちょっとしてから。」
「それじゃ駄目ですよ!吸血鬼たちがもうそこまで来ているんですよ!?」
サクラと香が必死に止める横で、仙道とリョーマは沈黙を貫く。
「サクラさん、香さん、私は『吸血鬼がもうそこまで来ている』からこそ一旦ここに残るのです…どうかご理解ください。」
「無茶ですよそんなの!」
サクラが今にも掴みかからん勢いで食ってかかる。
香も一応今はサクラを制するような仕草を見せているものの、これ以上
アビゲイルが何か言ったらサクラ側に付きそうな表情だ。
「無茶は承知の上です。」
「だったら!」
このままでは押し問答になる。
と、その時今まで沈黙を貫いていた男二人が動き出した。
「…行こーか。」
「ういッス。」
「リョーマ君!?仙道君も!」
サクラと香の視線が二人に向く。
仙道は荷物をまとめ、リョーマは背負っている新八をしっかりと背負い直していた。
「ちょっと二人とも!」
アビゲイルに食ってかかろうとしていたサクラが、今度は男子二人に食ってかかる。
仙道は一瞬固まったが、リョーマは淡々としていた。
「二人とも何言ってるの!
アビゲイルさんを止めなくって良いの!?」
「…良いっス。」
「リョーマ君!」
叱りつけるような口調で、香も二人に向き直る。
だが、当の二人は至って冷静だった。
「…
アビゲイルさん、ここは
アビゲイルさんに任せます。だから…」
「ええ、勿論分かってますよ。」
「勝手に話を進めないでよ!」
サクラがリョーマに掴みかかろうとした。
だがその手は仙道の大きい手に掴み止められた。
「仙道君!?」
「…サクラさん、俺思うんです。」
その真剣な表情に、サクラも香もひるんでしまう。
「何をよ。」
「
アビゲイルさんは死ぬような人じゃない。」
「え?」
一瞬出す言葉を、女性陣二人は見失った。
「
アビゲイルさん。」
「はい。」
「
アビゲイルさん…あなたがここに残るのはとても危険過ぎる。
でも、敢えてここに残ってその吸血鬼を食い止めるってことは…何か策があると見ていいですか?」
その仙道の言葉を聞いて
アビゲイルはにんまりとその濃ゆい顔に喜色を浮かべた。
「流石です!流石仙道君!分かってたんですねえ。」
「…」
いつになくハイテンションになる
アビゲイルを見て、四人はちょっとだけ固まった。
「はい、私は策――と言って良いのかはこの際置いておきますが、策があるのですよ。」
そう言うと
アビゲイルは大量の荷物を持ち出した。
「さ、皆さんに荷物の分配をしますので受け取ってください。」
四人が口を開くその前に、
アビゲイルはぽんぽんと武器や道具を四人に渡していった。
「あの、おじさん?」
「なんですかリョーマ君?」
「この大きな剣…おじさんが持ってた方がいいんじゃないの?」
リョーマが指したのは雷神剣。
無限刃に比べると二回りは大きいその剣は、確かに
アビゲイルが持っていた方が適任だろう。
だが、
アビゲイルは首を横に振った。
「いえ、私はこの無限刃を持っていきます。相手が『吸血鬼』ならあるいはもしや、ということもありますのでね。」
そう言うとニヤリと
アビゲイルは笑みを浮かべた。
「仙道君、このカードは君が持っていた方が良いでしょう…ですがこの『六芒星の呪縛』はどうか私に預からせて頂きたい。」
『六芒星の呪縛』。
そのカードの有用性を仙道は身を持って熟知していた。
あの
ダーク・シュナイダーを止めた、
切り札とも言うべきカードはもう使用可能になっている。
それゆえに手放すのは惜しいが、この緊急事態だ。
仙道に断る理由はなかった。
…分かっている。
サクラも、頭の中では分かっているのだ。
今この場から6人で一緒に逃げるのと、1人が壁となっている間に5人が逃げるのとでは、どちらが効率が良い事かが。
そしてその食い止める壁役には
アビゲイルこそが相応しい事が。
だが、
分かっているからこそ、嫌だった。
何もできない自分と、仲間を自ら死地に追いやってしまうようなこの現状が。
隣にいる香に目をやると、彼女はもう観念したかのような表情を浮かべていた。
「――
アビゲイルさん。」
「さ、このまま話し込んでぐずぐずしていてもすぐに逃げ出しても、同じ時間に日は沈むんです。急いでください。」
サクラは今居る5人の顔を見ていた。
仙道彰、槇村香、越前リョーマ、
志村新八、そして
アビゲイル。
ちょっと前までは存在する事も知らなかった人達なのに何故だろう、
今は忍者学校の仲間達と同じか、それ以上の信頼を置ける『仲間』となっている。
…やっぱり、誰にも死んでほしくない。
サクラの決意は、固まった。
「…
アビゲイルさん。」
「はい?なんでしょう?」
「…絶対、戻ってきてくださいよ。」
「はい!」
「よろしい、皆様のご理解、この
アビゲイル海よりも深く感謝いたします。」
アビゲイルは深々と5人に頭を下げると、外に送り出した。
夕日が琵琶湖の水面に反射し、きらきらと幻想的な光景を見せていた。
「良いですか、今から言う言葉は是が非でも、心に留めて欲しい事です――しっかり聞いて下さいね。」
目の前の五人の顔を
アビゲイルはじっと見つめた。
――なんと良い顔だ。これなら、彼らなら――
「たとえ何があっても、どんな事が起こっても、決して後ろを振り返ってはいけません。
とにかくただひたすらに、がむしゃらに前に進みなさい…私は必ず、必ずあなたたちの元に帰ってきますから。」
五人は、何も言わずしっかりと頷いた。
夕日に染まる山の中に歩を進める五人の背中を確認すると、
アビゲイルは小屋の中に戻っていった。
……………
――そして今に至る。
目を閉じると、今も瞼の裏に浮かぶ五人の顔。
そして、振り返らずに前へと進んでいく五つの背中。
(――長生きなんて、するもんじゃない。別れが多くて…辛すぎる。)
アビゲイルの目許に小さく光るものがあったのを、見た者は誰もいない。
太陽が、沈もうとしていた。
―――皆さん、ごきげんよう。
【滋賀県/琵琶湖周辺の小屋/日没直前】
【アビゲイル@BASTARD!! -暗黒の破壊神-】
[状態]:左肩貫通創、全身・特に右半身に排撃貝の反動大、無数の裂傷(傷はサクラによって治療済み)
太公望からの情報は香から受け取りました。
[装備]:無限刃@るろうに剣心
[道具]:荷物一式、食料・水18食分、兵糧丸(1粒)@NARUTO、遊戯王カード『六芒星の呪縛』@遊戯王
五光石@封神演義、排撃貝@ONE PIECE
[思考]:1.吸血鬼『DIO』と交渉。無理なら戦闘。危なくなったら逃げる。
2.香、サクラ、仙道、新八、リョーマが逃げるだけの時間を稼ぐ。
3.なるべく早い内に斗貴子を止めたい。
4.首輪の解析を進める。
5.協力者を増やす。
6.ゲームを脱出。可能ならば主催者の打倒。
【滋賀県と京都府の境目付近/日没直前】
【春野サクラ@NARUTO】
[状態]:ナルトの死によるショック中(大分立ち直りました)
仲間の治療のためチャクラを少し消耗、太公望の情報を受け取りました。
[装備]:マルス@BLACK CAT
[道具]:荷物一式、食料・水16食分、ドラゴンレーダー(オリハルコン探知可能)@DRAGON BALL、兵糧丸(2粒)@NARUTO
[思考]:1.決して振り返らない。
2.アビゲイルさん…
3.四国で両津、星矢、麗子と合流(その前に一度兵庫に寄る)
4.四国で合流できない場合、予定通り3日目の朝には兵庫県に戻る。
5.仲間を集める
6.主催者の打倒
【仙道彰@SLAM DUNK】
[状態]:微熱、小疲労、負傷多数(サクラによって治療済み)、軽度の火傷
太公望から様々な情報を得ている
[装備]:如意棒@DRAGON BALL
[道具]:荷物一式、食料・水16食分
遊戯王カード@遊戯王
(「真紅眼の黒竜」「光の護封剣」「闇の護風壁」「ホーリーエルフの祝福」…二日目の真夜中まで使用不可能)
グリードアイランドのカード[漂流]@HUNTER×HUNTER、雷神剣@BASTARD!! -暗黒の破壊神-
[思考]:1、何があっても香を守り抜く。
2、決して振り返らない。
3、四国を巡り、太公望の仲間と接触。太公望からの情報を伝える。
4、追手内洋一を探す。
5、仲間と協力し、首輪の解除。
6、ゲームから脱出し、仲間とともに主催者を倒す。
【槇村香@CITY HUNTER】
[状態]:右足捻挫(治癒済み)、太公望から様々な情報を得ている
[装備]:ベレッタM92(残弾数、予備含め31発)
[道具]:荷物一式、食料・水16食分、ウソップパウンド@ONE PIECE
超神水@DRAGON BALL、アイアンボールボーガン(大)@ジョジョの奇妙な冒険 (弾切れ)
[思考]:1、決して振り返らない。
2、仙道を守る。
3、四国を巡り、太公望の仲間と接触。太公望からの情報を伝える。
4、追手内洋一を探す。
5、仲間と協力し、首輪の解除。
6、ゲームから脱出し、仲間とともに主催者を倒す。
【志村新八@銀魂】
[状態]:小疲労、全身所々に擦過傷、上腕部に大きな切傷、たんこぶ、他骨折等(治療済み)
歯数本破損、貧血、現在の状況が読めていない、爆睡中
[装備]:ディオスクロイ@BLACK CAT
[道具]:荷物一式、食料・水16食分、首輪
[思考]:1.爆睡、ちょっぴりずつ気力体力回復中。
2.もう一度斗貴子に会いたい。
3.藍染の計画を阻止。(藍染が死んだことを知りません)
4.まもりを守る。
5.銀時、神楽、沖田、冴子の分も生きる(絶対に死なない)。
6.主催者につっこむ(主催者の打倒)。
【越前リョーマ@テニスの王子様】
[状態]:小疲労、脇腹に軽度の切傷(治療済み)、新八をおんぶ
[装備]:毒牙の鎖@ダイの大冒険、ヒル魔のマシンガン@アイシールド21(残弾数不明)
[道具]:荷物一式、食料・水16食分、修理されたラケット@テニスの王子様
[思考]:1.決して振り返らない。
2.新八が無茶をしないよう見張る。
3.四国で星矢、麗子と合流。キルアのことをきちんと話す。
4.藍染を殺した人を警戒。
5.斗貴子、まもりを探す。
6.生き残って罪を償う。
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最終更新:2024年07月31日 21:36