今年の風邪は、頭から来た。顔は熱っぽく、さっきから意識はぼんやりとしてしまう。
せっかくの日曜なのに、頭が痛くて動けたものじゃない。でも動かず
布団に入っていたところで、痛みが和らぐものでもない。
幸い、食欲はある。なるべくたくさん食べておいて、早く風邪を治してしまわねば……。
枕元に置いた読みかけの本に手を伸ばす。と、そこにドアをノックする乾いた音。
「マスター、入りますね」
そういって、ドアを開けたのは黒曜石。
水と薬を置いたお盆を両手で持ち、ドアを開けたままこちらへと歩み寄る。
「もうすぐお昼ですから、これを」
「食前、か。ありがとう」
薬を受け取り、口に放り込む。
口に薬の苦みが広がる前に、今度はコップを受け取って水で流し込む。
良薬口に苦しとはよく言うが、錠剤が溶けたときに広がる苦みはどうも苦手だ。
「そういえば、今日の豆まきの事なんですけど」
「ん、うちでやるのか? それなら俺のことは気にせずやってくれ」
こういった行事を、黒曜石達は毎年楽しんでいる。
それをわざわざ止めさせることもないし、何より楽しんでいるみんなを見るのは、
こちらも気分がよい。
「ありがとうございます。でも、その……もう始まってて」
黒曜石の口から告げられた真実。
確か今日の夕方頃にやるはずじゃなかったのか――それを尋ねようとしたときだった。
「さぁーて、鬼はどこかしらぁーっ」
この声……置石!?
廊下から聞こえる足音。それは真っ直ぐと俺の部屋と向かってくる。
程なくして現れる、足音の主。肩に無反動砲らしき物体を担いだ、ミリタリー的風貌の置石だ。
何事なのかと尋ねる余裕などない。部屋に入って来るや、こちらにその砲門を向けてきて……。
「あれ、鬼はいないみたいね……ま、いっかぁー」
――ま、いっかで引き金を引くなよ。
そんな俺の声は、目の前に広がった無数の豆でふさがれてしまう。
すぐ傍から聞こえる黒曜石の悲鳴。
俺はそれに手を差し伸べることも出来なかった……。
せっかくの日曜なのに、頭が痛くて動けたものじゃない。でも動かず
布団に入っていたところで、痛みが和らぐものでもない。
幸い、食欲はある。なるべくたくさん食べておいて、早く風邪を治してしまわねば……。
枕元に置いた読みかけの本に手を伸ばす。と、そこにドアをノックする乾いた音。
「マスター、入りますね」
そういって、ドアを開けたのは黒曜石。
水と薬を置いたお盆を両手で持ち、ドアを開けたままこちらへと歩み寄る。
「もうすぐお昼ですから、これを」
「食前、か。ありがとう」
薬を受け取り、口に放り込む。
口に薬の苦みが広がる前に、今度はコップを受け取って水で流し込む。
良薬口に苦しとはよく言うが、錠剤が溶けたときに広がる苦みはどうも苦手だ。
「そういえば、今日の豆まきの事なんですけど」
「ん、うちでやるのか? それなら俺のことは気にせずやってくれ」
こういった行事を、黒曜石達は毎年楽しんでいる。
それをわざわざ止めさせることもないし、何より楽しんでいるみんなを見るのは、
こちらも気分がよい。
「ありがとうございます。でも、その……もう始まってて」
黒曜石の口から告げられた真実。
確か今日の夕方頃にやるはずじゃなかったのか――それを尋ねようとしたときだった。
「さぁーて、鬼はどこかしらぁーっ」
この声……置石!?
廊下から聞こえる足音。それは真っ直ぐと俺の部屋と向かってくる。
程なくして現れる、足音の主。肩に無反動砲らしき物体を担いだ、ミリタリー的風貌の置石だ。
何事なのかと尋ねる余裕などない。部屋に入って来るや、こちらにその砲門を向けてきて……。
「あれ、鬼はいないみたいね……ま、いっかぁー」
――ま、いっかで引き金を引くなよ。
そんな俺の声は、目の前に広がった無数の豆でふさがれてしまう。
すぐ傍から聞こえる黒曜石の悲鳴。
俺はそれに手を差し伸べることも出来なかった……。
見渡せば、部屋中に散らばる豆。
大豆、落花生、グリーンピースにエンドウ豆。
一体どんな豆キャノンなんだ……撃った本人はペリドットさんが来る前に逃亡するし。
「ごめんなさい、調子の悪いところにこんな……」
「い、いいんですよ」
黒曜石と共に部屋の掃除をしてくれているペリドットさん。こんな申し訳なさそうな
彼女の顔は、初めて見た気がする。
「それより、やっぱり俺も掃除を」
「マスターは寝ていてください。お体に障りますから」
俺と同じく、豆まみれにされた黒曜石が呟く。
時折、ドレスからこぼれ落ちる豆の数々。せっかく拾い終えた床に再び転がるそれを、
時折悲しそうな顔で見つめる。
そんな顔をされると、やっぱり手伝いたくなっちゃうじゃないか。
だが……軽く頭を振るってみる。
わずかに痛みが走る頭。それと同時に、髪に隠れていた豆が布団に落ちる。
……髪、切ってこようかな。
「そういえば、こういうとき真っ先に来る虎目石ちゃんは……?」
大豆、落花生、グリーンピースにエンドウ豆。
一体どんな豆キャノンなんだ……撃った本人はペリドットさんが来る前に逃亡するし。
「ごめんなさい、調子の悪いところにこんな……」
「い、いいんですよ」
黒曜石と共に部屋の掃除をしてくれているペリドットさん。こんな申し訳なさそうな
彼女の顔は、初めて見た気がする。
「それより、やっぱり俺も掃除を」
「マスターは寝ていてください。お体に障りますから」
俺と同じく、豆まみれにされた黒曜石が呟く。
時折、ドレスからこぼれ落ちる豆の数々。せっかく拾い終えた床に再び転がるそれを、
時折悲しそうな顔で見つめる。
そんな顔をされると、やっぱり手伝いたくなっちゃうじゃないか。
だが……軽く頭を振るってみる。
わずかに痛みが走る頭。それと同時に、髪に隠れていた豆が布団に落ちる。
……髪、切ってこようかな。
「そういえば、こういうとき真っ先に来る虎目石ちゃんは……?」
◇
「もう3発も……誰に使ったかは分からないけど」
「こらぁーっ、解きなさいよ!」
「ダメ。今日は罰として姉さんが鬼役。もちろんこれも没収」
「そんなこと言って、虎目も使いたい……って、何お面頭に付けてるのよ」
「鬼役ですから」
「いや鬼役って、せめて解いて……って、ちょ、それこっちに向けるなぁー!」
「こらぁーっ、解きなさいよ!」
「ダメ。今日は罰として姉さんが鬼役。もちろんこれも没収」
「そんなこと言って、虎目も使いたい……って、何お面頭に付けてるのよ」
「鬼役ですから」
「いや鬼役って、せめて解いて……って、ちょ、それこっちに向けるなぁー!」