今日は俺一人、少し早めの夕食。何てったって2週間連続でアルバイトが深夜のシフトなのだ。
ところで、雲母曰く今年の北海道は米が豊作らしい。
「それで何で荒巻丼が出てくるの?」
「旬の味覚だ。食え」
まぁ、秋だし食べ物美味しいし、かまわないんだけどね。
それにしても、今日は黒曜石が急用で出かけてるとはいえ、珍しく雲母がご飯を用意してくれた。それが一番の驚きだ。脂の乗ったいい荒巻がどうとか言っていたけど、俺にはその違いは分からない。
「じゃあいただきます……雲母は食べないの?」
その問いには答えず、ただ黙ってこちらを見つめてくる。こうして見つめられながら食べるというのはどうも……一度体験したフルコースの料理も、常にウェイターさんが遠くから見ていて落ち着かなかったし。
しかし空腹は待ってくれない。雲母の視線を気にしながら、丼に箸を進める。
「おっ、食べるとけっこう違うものだね。ホントに美味しい」
ほっと溜息をつく雲母。作った身として味は気になるところだし、緊張していたんだろうな。
「それにしても、雲母も料理が上手になったんだな。これなら黒曜石が手を放せないときには任せられるよ」
以前の料理に関してはノーコメントとする。耕されたくないので。
「でも珍しいよな、雲母が用意してくれるなんて」
その言葉に『自分が準備して悪いか』と睨みを利かせて見つめてくる雲母。うぅむ、気を悪くさせてしまったか。女心は難しい……これだから俺モテないのかね。
「……アルバイト、大変か?」
突然話を振ってくる。これもまた珍しいような……雲母は聞き上手だし。
「ん? まぁ、ぼちぼち。気遣ってくれてありがとな」
「ぼちぼちじゃよく分からない」
「まぁね。でもぼちぼちだよ、ホントに」
納得行かないのか、雲母が眉をひそめる。
バイトが大変かどうか……それは非常に答えにくい質問だ。確かに大変の一言ですませることもできる。だが雲母や黒曜石たちのためと思って働くと、それほど大変でもない。今日もこの後はバイトが深夜まで続くが、雲母にこうして夕食を作ってもらえれば……まぁ、そういうことだ。
何というか、これって家族を養う父親の気分って奴なのかな。まだまだ若いのになぁ、俺。
そんなこんなで、雲母の視線を感じながらの夕食も、すぐに丼が空となって終わってしまった。おかわりでも……と思ったものの、すでに時刻は出かける時間を指している。残念だな。
「ご馳走様。じゃあそろそろ……」
「食器は片づける」
「ん、じゃあ時間も危ないから甘えさせて貰うよ。ありがと」
「……タダじゃない」
食器ではなく、俺の服の裾をつかむ。
「約束だ。今日は早く帰ってこい」
「え? まぁ、バイト終わったらまっすぐ帰るけど。それでも遅くなるぞ?」
それでも雲母は納得行かない表情を浮かべている。
「仕方ないのは分かってる」
その納得行かない表情に、わずかな影がかかり……。
「……でもたまには、おやすみぐらい言わせろ」
少しだけ寂しそうな雲母の顔が、そこにあった。
普段喋らない雲母が、これだけ話すということ……ずいぶんと寂しい思いをさせていたってことなのか。それは自意識過剰とか思いこみとか、そういう類のものだったかもしれない。でも……。
「……急いで帰れば、みんなが寝る前には帰れるかもしれないな」
俺にできることを、まずはやっていこう。それが家族への気遣いなんだから。
「そうか。じゃあ、待ってる」
そう呟いた雲母の顔には、不満と寂しさと、そして大きな期待が込められているような気がした。
……あぁ、これだから日々の忙しさも苦にならないんだよな。
ところで、雲母曰く今年の北海道は米が豊作らしい。
「それで何で荒巻丼が出てくるの?」
「旬の味覚だ。食え」
まぁ、秋だし食べ物美味しいし、かまわないんだけどね。
それにしても、今日は黒曜石が急用で出かけてるとはいえ、珍しく雲母がご飯を用意してくれた。それが一番の驚きだ。脂の乗ったいい荒巻がどうとか言っていたけど、俺にはその違いは分からない。
「じゃあいただきます……雲母は食べないの?」
その問いには答えず、ただ黙ってこちらを見つめてくる。こうして見つめられながら食べるというのはどうも……一度体験したフルコースの料理も、常にウェイターさんが遠くから見ていて落ち着かなかったし。
しかし空腹は待ってくれない。雲母の視線を気にしながら、丼に箸を進める。
「おっ、食べるとけっこう違うものだね。ホントに美味しい」
ほっと溜息をつく雲母。作った身として味は気になるところだし、緊張していたんだろうな。
「それにしても、雲母も料理が上手になったんだな。これなら黒曜石が手を放せないときには任せられるよ」
以前の料理に関してはノーコメントとする。耕されたくないので。
「でも珍しいよな、雲母が用意してくれるなんて」
その言葉に『自分が準備して悪いか』と睨みを利かせて見つめてくる雲母。うぅむ、気を悪くさせてしまったか。女心は難しい……これだから俺モテないのかね。
「……アルバイト、大変か?」
突然話を振ってくる。これもまた珍しいような……雲母は聞き上手だし。
「ん? まぁ、ぼちぼち。気遣ってくれてありがとな」
「ぼちぼちじゃよく分からない」
「まぁね。でもぼちぼちだよ、ホントに」
納得行かないのか、雲母が眉をひそめる。
バイトが大変かどうか……それは非常に答えにくい質問だ。確かに大変の一言ですませることもできる。だが雲母や黒曜石たちのためと思って働くと、それほど大変でもない。今日もこの後はバイトが深夜まで続くが、雲母にこうして夕食を作ってもらえれば……まぁ、そういうことだ。
何というか、これって家族を養う父親の気分って奴なのかな。まだまだ若いのになぁ、俺。
そんなこんなで、雲母の視線を感じながらの夕食も、すぐに丼が空となって終わってしまった。おかわりでも……と思ったものの、すでに時刻は出かける時間を指している。残念だな。
「ご馳走様。じゃあそろそろ……」
「食器は片づける」
「ん、じゃあ時間も危ないから甘えさせて貰うよ。ありがと」
「……タダじゃない」
食器ではなく、俺の服の裾をつかむ。
「約束だ。今日は早く帰ってこい」
「え? まぁ、バイト終わったらまっすぐ帰るけど。それでも遅くなるぞ?」
それでも雲母は納得行かない表情を浮かべている。
「仕方ないのは分かってる」
その納得行かない表情に、わずかな影がかかり……。
「……でもたまには、おやすみぐらい言わせろ」
少しだけ寂しそうな雲母の顔が、そこにあった。
普段喋らない雲母が、これだけ話すということ……ずいぶんと寂しい思いをさせていたってことなのか。それは自意識過剰とか思いこみとか、そういう類のものだったかもしれない。でも……。
「……急いで帰れば、みんなが寝る前には帰れるかもしれないな」
俺にできることを、まずはやっていこう。それが家族への気遣いなんだから。
「そうか。じゃあ、待ってる」
そう呟いた雲母の顔には、不満と寂しさと、そして大きな期待が込められているような気がした。
……あぁ、これだから日々の忙しさも苦にならないんだよな。
激動の2週間が終わった後、雲母たちの相手をとことんさせられたのは言うまでもない。