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ママ? マスター?

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だれでも歓迎! 編集
  結婚なんてする気など、まったくない。今の仕事は楽しいし、特にいい男がいるわけでもない。自分で働いて、気ままな一人暮らしと洒落込みたかった。でも……。
「んーとぉ……ま、ま……ママー?」
「ママじゃなくてマスター。ちゃんと覚えてね」
 どうしてあたしの家に、こんな小さな女の子がいるのだろう。どうしてママって呼ばれることになったのだろう……。

「いい加減慣れたらどうかしら?」
「そうは言いますけどね、あたしまだ未婚ですから……結婚もするつもりないし」
  あたしの傍らで眠る女の子、名前はソーダ珪灰石。悩みの種筆頭候補。なぜか知らないけど、とある事情からあたしはこの子の保護者となった。
  そして、一緒にお茶をしている……なんというか、不思議な人? 彼女は真珠さん。あたしがソーダを育てる手伝いをしてくれている。
「相手もいないし」
「それは貴女が探していないだけよ」
「い、痛いところ突いてきますね……」
「なかなかのいい女なのに、怠慢な態度を決め込んでいることに対する嫉妬かも知れないわね」
  嫉妬……でも、きっとあたし一人ではソーダの世話をするのは不可能だ。あたしから見れば、真珠さんだって充分魅力的な女性だと思う。
  それにしても……怠慢、かぁ。
「まぁ、そういうこと。それより今日はもう遅いわ。貴女も明日、早いんでしょう?」
「あ、ホントだ」
「明日は爆ちゃんが様子を見に来てくれると言うから、よろしくね」
  爆ちゃんとは真珠さんの親友、爆弾岩さんのこと。この人も真珠さんに負けず劣らずの女性だ。この人たちがいるからこそ、あたしはソーダとの共同生活を送ることができる。
  まだまだ一人で何でもできるわけではない。それが少し、情けなかったりするんだけど……愚痴っても始まらない。今はとにかく頑張らないと、ね。

  あたしの朝は朝食作りとソーダを起こすところから始まる。
「ソーダ、朝だよ」
「んー……やぁー」
「今日もいっぱい遊ぶんでしょ? だからほら、朝ご飯食べよ?」
「むぅ……ん、ママ?」
「ママじゃなくてマスターだよ」
  相変わらずのやりとり。でも寝ぼけ眼のソーダはとても可愛い。こういう顔を見せてくれると、やっぱり癒される。
「ママー……」
  これだけはどうも慣れないんだけどね……。

  ソーダと二人だけの朝食。元は一人きりの朝食だったのだから、これでもずいぶんと明るい食卓になった。
「おいしーっ」
「ありがと。でも慌てずに食べなくていいからね」
「はーい♪」
  フォーク片手に、笑顔を浮かべるソーダ。この子は本当に素直ないい子。少しひねくれ気味のあたしも見習うべきかなぁ。
「きょうねー、パパのとこあそびにいくのー」
  パパ……ソーダや真珠さんたち、宝石乙女と呼ばれるドールシリーズを持つマスターの一人らしいが、あたしはまったく面識がない。ソーダとは仲良くやってくれているようだから助かっているけど。
  で、パパと呼んでいるのだから男なのだろうけど……これがあるからママと呼ばれるのはあまり好ましくない。
「マ、まー……んーと、ますたーもいっしょ、いこ?」
「んー、ちょっと無理かなぁ。お仕事あるから」
「あー、おつとめー♪ ソーダもいくー」
  どこで言葉を覚えてくるかは分からないが、あたしが仕事の話をするとたいていこんな返答だ。でもお勤めって……。
「だーめ。それに約束しているんだから、ちゃんとソーダも行かないと。それがソーダのお勤めでしょ?」
「んー? ソーダのおつとめー?」
「そう。遊ぶことが、ソーダのお仕事」
「はーいっ。じゃあソーダ、いっぱいおつとめするー」
  ……いつしかこの子の扱いにも慣れてしまったようだ、あたし。
「ますたーもおつとめー。がんばるのー?」
「うん」
「えへー、いいこいいこー♪」
  ソーダの小さな手が、あたしの頭をなでる。小さな体で、椅子の上から背伸びをして……あぁー、可愛いなぁ。仕事が休みならもう少しこうしていたいんだけどなぁ。
「ありがと。それより早く食べよう、冷たくなっちゃう」
「はーい」

  まぁなんというか、半年近く一緒にいると、ソーダの愛らしさに今までの悩みもどうでもよくなってくるわけで。
「それじゃあ行ってくるからね。爆弾岩さんの言うこと、ちゃんと聞くのよ?」
「はーいっ。ママもおつとめがんばるー♪」
「大丈夫だって、ソーダはいい子だもんね? それよりママかー、すっかりお母さんが板についてきたんじゃないの?」
「ママじゃなくてマスター。爆弾岩さんもからかわないでくださいっ。それじゃあ行ってきます」
  二人の見送りを受けて出勤。ここからはいつも通りの生活、電車の時間に追われながら忙しく生きる。なんというか、家と仕事のメリハリがついているのはいいことかもしれない。疲れるけど。
  まぁ、だからみんなでまったり家で過ごす夜の時間が、すごく楽しみだ。
「ママー♪」
「だからママじゃないってばーっ」
  ……このやりとり、これからずっと続けることになりそう。

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