「置石」
「うん?」
他愛のない会話を始めるときの、いつもの言葉。ときどきとんでもないこと言い出すけど。まぁ、そこは虎眼だし、ねぇ。
だけど、今日は特別な日。なにか特別なことがあるかもしれないとこっそり心躍らせるのは、乙女としてとーぜん、かな。
「ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「行きたいところ?」
「うん。ちょっと厚着してきて。今日、寒いから」
「ん。おっけー」
虎眼は先に行っちゃった。行きたいところかぁ、黒曜石のとこいくにはまだかなり時間があるし。車で行くのかな? でも、厚着って言ってたから……。
よし、こないだ虎眼に仕立てて貰ったダウンジャケットでも着ていこうかな。
「おまた~」
「……お下品」
「……そすか。で、どこいくのよ」
「うん。ちょっと森のむこうにいい場所見つけたから」
そう言って自転車の荷台を軽く叩く虎眼……自転車!!?
「なんで自転車なのよ?」
「まぁ、道細かったし。気分転換に、ね。たまにはいいでしょ」
「……うぅ」
「あぁ、そうか、置石自転車乗ったことないんだっけ」
「ぅ、うるさいなぁ」
「乗れそうもない?」
「そ、そんなことは……ない……けど……」
「無理なら、歩いていけばいいだけだけど?」
む、ちょっとムカついた。
「あ、ちょっとバカにしたでしょぉ? なによ、このくらいできるわよ!」
「そう、じゃぁ、ちゃんとつかまって。振り落とされないようにね」
「うん?」
他愛のない会話を始めるときの、いつもの言葉。ときどきとんでもないこと言い出すけど。まぁ、そこは虎眼だし、ねぇ。
だけど、今日は特別な日。なにか特別なことがあるかもしれないとこっそり心躍らせるのは、乙女としてとーぜん、かな。
「ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「行きたいところ?」
「うん。ちょっと厚着してきて。今日、寒いから」
「ん。おっけー」
虎眼は先に行っちゃった。行きたいところかぁ、黒曜石のとこいくにはまだかなり時間があるし。車で行くのかな? でも、厚着って言ってたから……。
よし、こないだ虎眼に仕立てて貰ったダウンジャケットでも着ていこうかな。
「おまた~」
「……お下品」
「……そすか。で、どこいくのよ」
「うん。ちょっと森のむこうにいい場所見つけたから」
そう言って自転車の荷台を軽く叩く虎眼……自転車!!?
「なんで自転車なのよ?」
「まぁ、道細かったし。気分転換に、ね。たまにはいいでしょ」
「……うぅ」
「あぁ、そうか、置石自転車乗ったことないんだっけ」
「ぅ、うるさいなぁ」
「乗れそうもない?」
「そ、そんなことは……ない……けど……」
「無理なら、歩いていけばいいだけだけど?」
む、ちょっとムカついた。
「あ、ちょっとバカにしたでしょぉ? なによ、このくらいできるわよ!」
「そう、じゃぁ、ちゃんとつかまって。振り落とされないようにね」
「だいじょうぶ?」
「うん!」
必死に自転車をこいでいる虎眼の腰に手を回してしっかりつかまる。背中があったかい。
なんだかひさびさだなぁ。いつも一緒にいるのに、最近はいそがしかったからかな。こうして背中に顔をぴたりとくっつけているとすごく安心する。
「うん!」
必死に自転車をこいでいる虎眼の腰に手を回してしっかりつかまる。背中があったかい。
なんだかひさびさだなぁ。いつも一緒にいるのに、最近はいそがしかったからかな。こうして背中に顔をぴたりとくっつけているとすごく安心する。
「ついたよ」
「よっと、ん? ここは……」
見たことのない風景。森が突然開けてまっしろな広い平坦な空間を作っている。冬空かどこまでも高い。すーっとする風景。
唐突に走りたくなった。広場の真中まで走る。
「あ」
「お」
小さな段差をこえたところで視界に空だけが入る。背中に鈍い衝撃が走った。何が起こったのかよくわからない。
「いったぁ~っ」
「そこはもともと湖で、今は厚い氷が張ってる……って言おうと思ったんだけど。遅かったかな?」
「遅い! ていうか、立てない……」
つるつるすべって立てやしない。ていうか動けない。
「お、おたすけぇ~」
「ん、ちょっとまって」
はやくぅ~。やぁ~、つめたい~。
「よし」
「ん?」
わたしが顔を上げたら、そこには妖精がいた。まるですべるように……いや、実際すべってる。
「……うわぁ」
「おまたせ。ほら、手」
虎眼に岸まで連れて行ってもらって、わたしもスケート靴を履く。
「コレ、どこで手に入れたの……」
「……えと、禁則事項」
「よっと、ん? ここは……」
見たことのない風景。森が突然開けてまっしろな広い平坦な空間を作っている。冬空かどこまでも高い。すーっとする風景。
唐突に走りたくなった。広場の真中まで走る。
「あ」
「お」
小さな段差をこえたところで視界に空だけが入る。背中に鈍い衝撃が走った。何が起こったのかよくわからない。
「いったぁ~っ」
「そこはもともと湖で、今は厚い氷が張ってる……って言おうと思ったんだけど。遅かったかな?」
「遅い! ていうか、立てない……」
つるつるすべって立てやしない。ていうか動けない。
「お、おたすけぇ~」
「ん、ちょっとまって」
はやくぅ~。やぁ~、つめたい~。
「よし」
「ん?」
わたしが顔を上げたら、そこには妖精がいた。まるですべるように……いや、実際すべってる。
「……うわぁ」
「おまたせ。ほら、手」
虎眼に岸まで連れて行ってもらって、わたしもスケート靴を履く。
「コレ、どこで手に入れたの……」
「……えと、禁則事項」
「それじゃぁ、すべろっか」
「う、うん」
「そういえば、スケートも初めてだね」
いまは虎眼の腕をつかんでかろうじて立っている状態。コレハヤバイ。
「両手につかまって」
言われたとおりに向かい合って両手につかまった。どうするのだろう。
「いくよ」
「わっ!!」
いきなり両腕を引っ張られる。虎眼が後ろ向きにもかかわらず、すいすいとわたしを引いていく。
「わ、うわ、あわわわわわ」
ちょ、あぶない。あしがふるえて……。
「うわぁ!!」
「おおっと!!」
ああ、ふたりしてコケてしまった。
「いったぁ~」
本日二回目。
「ふっ、あははは」
「ちょっと、笑わないでよ」
「あ、あはははははっ!! おなかいたい!」
虎眼のこんな姿はじめて見たかも。わたしもつられて笑った。
「ふふ、あははは」
「う、うん」
「そういえば、スケートも初めてだね」
いまは虎眼の腕をつかんでかろうじて立っている状態。コレハヤバイ。
「両手につかまって」
言われたとおりに向かい合って両手につかまった。どうするのだろう。
「いくよ」
「わっ!!」
いきなり両腕を引っ張られる。虎眼が後ろ向きにもかかわらず、すいすいとわたしを引いていく。
「わ、うわ、あわわわわわ」
ちょ、あぶない。あしがふるえて……。
「うわぁ!!」
「おおっと!!」
ああ、ふたりしてコケてしまった。
「いったぁ~」
本日二回目。
「ふっ、あははは」
「ちょっと、笑わないでよ」
「あ、あはははははっ!! おなかいたい!」
虎眼のこんな姿はじめて見たかも。わたしもつられて笑った。
「ふふ、あははは」
しばらく笑いあって、ふと空を見た。
「あ、雪だ」
「ああ、じゃぁ、今夜はホワイトクリスマスになるね」
虎眼が立ち上がって、デニムのズボンについた雪をはたいて立ち上がった。
「さぁ、帰ろうか」
虎眼が手を差し伸べてくる。
「うん!」
私はしっかりと虎眼の手を握った。
「あ、雪だ」
「ああ、じゃぁ、今夜はホワイトクリスマスになるね」
虎眼が立ち上がって、デニムのズボンについた雪をはたいて立ち上がった。
「さぁ、帰ろうか」
虎眼が手を差し伸べてくる。
「うん!」
私はしっかりと虎眼の手を握った。