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踊らされやすい人々

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「主っ、ばれんたいんが都市伝説とは本当か!?」
  俺は盛大にココアを吹いた。
「にゃあぁ~っ」
「あ、すまん天……じゃない。珊瑚、お前は何を言っているんだ」
「この新聞記事にそう書いてあるぞっ」
  差し出された紙切れを見てみる。
  ……バレンタインデーチョコ贈与、政府都市伝説と認定か。
  確かに都市伝説ってことになったんだな、うん。
  しかし隅のブーンチョコとかいう広告は何だよ。思いっきりネタじゃないか。
「都市伝説とはつまり存在しないということなのか!」
  でもそんなネタに珊瑚は思いっきり踊らされてる。
  ちょっと……いや、かなり面白いな。
「そうだなー、そう書いてあるってことはそうなんだろ?」
「な、なんという……つまり黒曜石たちは存在しない行事のために……」
「そういうことになるなー。で、何で珊瑚がひざまずいてるんだよ?」
「……はっ、いや別に某は何もっ!」
  どう見ても何かある感じの珊瑚。
「バレンタインデーないの? じゃあお姉ちゃんと作ったチョこっ――」
「そ、そうか都市伝説なのかっ。それじゃあさっそく黒曜石たちに伝えなければなっ!」
  天の口を塞ぎ、珊瑚はそうそうに退散。
  ……うぅむ、ネタと伝えるタイミングを逃してしまった。
「まぁ、いいか」
  それよりも吹いたココアを拭かないとな……あー、染みになったかなぁ。

    ◇    ◇    ◇    ◇
  どうも面白いことがない今日このころ。
  何か退屈しのぎはないかなぁ……って、珊瑚と天河石
「残念だね、お姉ちゃん」
「それは天河石の方だろう。あんなに張り切ってチョコを作っていたのに」
「お姉ちゃんもだよ?」
「そ、某はそんなに……」
  何話してるんだろ、残念とかチョコとか。
「ねーねー、何かあったの?」
「おぉ、置石か。ちょうどよい、これを見てくれ」
  ん、どれどれー……は? バレンタインデーが都市伝説?
「バレンタインデーがねー、なくなっちゃったんだよぉ」
「天河石は主に渡すためのチョコを頑張って作っていたのだがな……」
「お姉ちゃんもだよ?」
「だ、だから某は……」
  いや、どう考えてもネタでしょこれ。
  それなのにこの二人、本気にしてるわけだ。
  ちょっと、いやかなり面白いじゃん。あたしはこういうのを待っていたのよ!
  これはやっぱり少しいじってみないとねぇ……ふっふっふ。
「あー、それじゃあこの前のあの話も本当なのかもねー」
「む、何のことだ?」
  食いついてきたっ!
「ん、2月14日はチョコレート禁止の日になるんだってー。チョコレート工場はその日は絶対休みで、店もチョコレート関係の物は出しちゃダメ。で、チョコレートを持ってたら逮捕されるんだってー」
「なっ……」
「け、警察さんに捕まっちゃうの?」
  おぉ、思った以上にいい反応。
「うんっ」
  トドメといわんばかりにうなずいてみると、二人とも顔が青ざめていく。
  まさかここまで本気にするなんてねぇ……。
「天河石っ、急いで家に戻るぞ!」
「うんっ、家にあるチョコレート全部隠さないとぉー」
「急いだ方がいいよー。チロルチョコでもアウトだからねー」
「わ、分かった。忠告感謝する!」
  二人で一目散に家へ帰って行く。
  いやぁ、純粋な二人組ですねぇー♪
「……置石」
「うわっ、いきなり後ろから出てこないでよ!」
「どうなっても、助けないから……」

    ◇    ◇    ◇    ◇
「主ぃ! チョコレートが見つかったら逮捕されるぞ!」
  俺は盛大にアンパンを吹いた。
「こ、今度は何なんだよ……」
「お、置石が、14日はチョコレート禁止の日だと!」
「見つかったら警察さんに捕まっちゃうよぉーっ」
  ……この二人は何を言っているんだ。
  だいたい置石が情報源とか、絶対ホラ吹かれたに違いない。
「都市伝説やら禁止やら、この国は横暴だぞ!」
「いや、あの……」
「お姉ちゃんっ、お菓子袋ー!」
「おぉ、仕事が速いな天河石。さっそくチョコを隠すぞ!」
「だから、あのさ……」
「ポッキーはダメかなぁ?」
「ダメだろう、アレのメインはチョコだ。」
「あの、人の話を……」
「……今食べちゃうのは、ダメ?」
「ダメだ」
「……えぇいっ、人の話を聞けぇ!!」
「「は、はいっ!」」
  二人同時にこちらへ顔を向ける。
「ったく……いいか、まず珊瑚の持ってきたその新聞はネタ。そして置石が情報源という時点で逮捕も大嘘。だいたいバレンタインデーがどーのこーのなんて聞いたことねぇよ」
「え……」
「うにゅ……」
  一気に静まりかえる室内。
  お菓子袋の落ちる音が、やたらと虚しく響く。
「し、しかし、主はあの記事を……」
「アレはお前に話を合わせただけだ。本気にしたなら謝るが、せめて嘘と言うまでつき合ってくれ……」
「……バレンタインデー、あるのぉ?」
「ある。さすがにそこまで国は横暴じゃない」
  再び沈黙。
「……あははははは」
  そして珊瑚の乾いた笑い声。
「ははははは……主も人が悪いなぁ」
「だってあまりにもお前が面白かったからな」
「そうかそうか、面白かったか……主ぃーっ!!」
「アッー!!」

「よかったねー、バレンタインデーあるんだよー」
「某は別に……まぁ、よかったな」
  天は嬉しそうに、珊瑚は照れくさそうに微笑む。
  これで俺が酷い目に遭ってなければ、素直に和めたんだがな……。

「さて、某は少し出かけてくるぞ」
「どこ行くのぉ?」
「……ちょっと、置石を懲らしめに」


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