私は、元から笑っていたわけじゃないの。
私は笑うことがなかった。
笑うことだけでなく、怒ったり、泣いたりすることもなかった。
そんな私だったから、お姉様たちの手を焼かせたことだろう。
それでも、例外なく私もマスター候補の元へ送られる。
無表情で無愛想な私を見た彼らは、誰もが私を疎ましく思う。
ときにはマスターを放棄して捨てられたこともある。
そのせいか、私は余計に自分の殻に閉じこもってしまった。
笑うことだけでなく、怒ったり、泣いたりすることもなかった。
そんな私だったから、お姉様たちの手を焼かせたことだろう。
それでも、例外なく私もマスター候補の元へ送られる。
無表情で無愛想な私を見た彼らは、誰もが私を疎ましく思う。
ときにはマスターを放棄して捨てられたこともある。
そのせいか、私は余計に自分の殻に閉じこもってしまった。
そんな中、とある時代に彼に出会った。
いつものように、マスターである彼の元に送られてきた私。
そんな私を彼は歓迎してくれた。
初めてのもてなしに、私は面食らって戸惑った。
しかし、そんな私の心境なぞお構いなしに、終始彼は笑顔で私に優しく接してくれた。
いつものように、マスターである彼の元に送られてきた私。
そんな私を彼は歓迎してくれた。
初めてのもてなしに、私は面食らって戸惑った。
しかし、そんな私の心境なぞお構いなしに、終始彼は笑顔で私に優しく接してくれた。
初めのうちは、どのマスターも優しく接してくれていたけど、いずれ見切りをつけられ一線を引かれていた。
それが、彼にはなかった。
毎日、休みなしに私に話し掛けていた。
ときには敷地内の散策にも連れられた。
今思えば、彼は私を笑わせるためにいろんな作戦を考えていたのだろう。
次第に私は心を開いていった……。
それが、彼にはなかった。
毎日、休みなしに私に話し掛けていた。
ときには敷地内の散策にも連れられた。
今思えば、彼は私を笑わせるためにいろんな作戦を考えていたのだろう。
次第に私は心を開いていった……。
ある日、それは突然訪れた。
日々の日課となった彼とのお話。
彼だけが一方的に喋っているけど、私は心の中だけで不器用ながらも笑っていた。
もちろん表情には出すことはできなかったけど。
それだけでも充分楽しかった。
このときが永遠に続けばいいと思った。
でも、幸せを感じるときほど不幸はやってくる。
日々の日課となった彼とのお話。
彼だけが一方的に喋っているけど、私は心の中だけで不器用ながらも笑っていた。
もちろん表情には出すことはできなかったけど。
それだけでも充分楽しかった。
このときが永遠に続けばいいと思った。
でも、幸せを感じるときほど不幸はやってくる。
彼が倒れた。
音も立てずに呆気なく。
あまりにも急な出来事に、私は何が起こったのか理解できなかった。
目の前で意識を失った彼。
彼付きの人が慌てながら助けを呼びにいく。
使用人らによって運ばれていく彼。
私は、それをどこか遠くから傍観している出来事のように感じていた。
音も立てずに呆気なく。
あまりにも急な出来事に、私は何が起こったのか理解できなかった。
目の前で意識を失った彼。
彼付きの人が慌てながら助けを呼びにいく。
使用人らによって運ばれていく彼。
私は、それをどこか遠くから傍観している出来事のように感じていた。
彼の寝室。
彼が目覚めるまでにいろんな話を耳にした。
『旦那様は以前から体調が良くなかったそうな……』
『それなのに仕事は多忙の一方で……』
『あの子が来てからですよね……』
あの子、つまりは私のこと。
彼を苦しめていたのは私、悪いのは私。
邪魔者、役立たず、疫病神、私は……いらない子。
そんな思いが私の中を駆け巡る。
彼が目覚めるまでにいろんな話を耳にした。
『旦那様は以前から体調が良くなかったそうな……』
『それなのに仕事は多忙の一方で……』
『あの子が来てからですよね……』
あの子、つまりは私のこと。
彼を苦しめていたのは私、悪いのは私。
邪魔者、役立たず、疫病神、私は……いらない子。
そんな思いが私の中を駆け巡る。
彼が目を覚ました。
その知らせを受け、使用人のそれぞれの役割の長が集まってくる。
私は部屋の隅でその様子を見ていた。
しばらくして、その人たちは部屋を出て行く。
残されたのは彼と私。
彼は私を手招きする。私はおずおずと彼に近づく。
「おいで」
そう言ってベッドに座るよう私に促した。
「すまないね」
どうして貴方が謝るの?悪いのは私なのに……。
「君を一人残す僕の無礼を許してくれ」
驚愕した。彼はもう長くないと言う。
その事実に自然と流れる涙。初めて流す涙。
「僕のために泣いてくれているのかい?」
気がつかなかった、私にも感情が備わっていること。
「ごめんなさい」
その言葉が私の口から漏れる。
「どうしたんだい? 君は僕に謝るようなことはしていないはずだよ」
彼の言葉に反論するように、私は静かに胸の内を明かした。
「はは。まったく、君は気にしすぎだよ」
私が悪いはずなのに、どうして……。
「いいかい? 僕がこうなってしまったのは君のせいじゃない。僕がこう生きたいと思っただけで、それがたまたまこういう結果になっただけさ」
それでも私は必死に抵抗する。
「仕方ないね。それじゃあ、最期に僕の頼みを聞いてくれるかい?」
最期だなんて言わないで……。
「ほらほら、泣かないで。僕に初めての笑顔を見せておくれ――」
その知らせを受け、使用人のそれぞれの役割の長が集まってくる。
私は部屋の隅でその様子を見ていた。
しばらくして、その人たちは部屋を出て行く。
残されたのは彼と私。
彼は私を手招きする。私はおずおずと彼に近づく。
「おいで」
そう言ってベッドに座るよう私に促した。
「すまないね」
どうして貴方が謝るの?悪いのは私なのに……。
「君を一人残す僕の無礼を許してくれ」
驚愕した。彼はもう長くないと言う。
その事実に自然と流れる涙。初めて流す涙。
「僕のために泣いてくれているのかい?」
気がつかなかった、私にも感情が備わっていること。
「ごめんなさい」
その言葉が私の口から漏れる。
「どうしたんだい? 君は僕に謝るようなことはしていないはずだよ」
彼の言葉に反論するように、私は静かに胸の内を明かした。
「はは。まったく、君は気にしすぎだよ」
私が悪いはずなのに、どうして……。
「いいかい? 僕がこうなってしまったのは君のせいじゃない。僕がこう生きたいと思っただけで、それがたまたまこういう結果になっただけさ」
それでも私は必死に抵抗する。
「仕方ないね。それじゃあ、最期に僕の頼みを聞いてくれるかい?」
最期だなんて言わないで……。
「ほらほら、泣かないで。僕に初めての笑顔を見せておくれ――」
そうして彼は逝った。
◇ ◇ ◇ ◇
「おーい……ってここに居たのか。
寝てるのか……しゃーねぇな。
まったく……寝ながら笑い泣きするやつなんて初めて見たぞ……」
寝てるのか……しゃーねぇな。
まったく……寝ながら笑い泣きするやつなんて初めて見たぞ……」
「おやすみ……天河石」