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貴方の心が見えない

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「時々、君の『愛してる』が上辺だけの言葉にしか思えなくなるんだ」
  突然、というわけではなかった。近頃、旦那様が悩んでいたのは知っていた。
  でも、私に知られたくなさそうな素振りだったから、深く聞きはしなかった。
「僕は、君の過去を知らない」
  私は宝石乙女。数えることも忘れるほどの時を過ごしてきた。
「君が僕だけを愛していたのかを確かめる術は、ない」
  疑われていた。仕方のないこと、と思った。
その一方で、信じて欲しいとも思った。
「君は千の男にも同じ愛を囁いてきたのではないか?
 違うと言われても、僕は信じない。
 だって、君ほどの女性がどうして僕を好きになってくれる?
 どうして僕だけを愛してくれる?
 おかしいじゃないか、僕には何も無い!」
  違う、貴方は特別だった。貴方は貴方だけのものを持っていた。
「時間と距離が欲しい。君から、少し離れたい。
 一週間だけでいい。他で、暮らしてくれないかな」
  頷く以外、出来なかった。
  貴方が、それを望むなら。
  でも。
  もしかすると、これが最後になるかもしれないから。
  一言、気持ちを伝えたかった。
「貴方が私を嫌おうと、貴方が私を憎もうと、私は貴方を……愛しています」
  やっぱり涙は止められなかった。

              *

  黒曜石の家でお世話になり始めて、一週間が経った。
  旦那様は私を信じてくれただろうか?
  私の胸の内を晒せるなら、貴方に会えた喜びを伝えられるなら。
  そう願っては叶わぬ夢と知り、幾度と涙を流した。
「ただいま戻りました。約束の、一週間です」
  旦那様の喜ぶ顔は、凄く嬉しかった。
  旦那様のむくれた顔は、可愛らしかった。
  旦那様の泣き顔は、見ていて身を裂かれるようだった。
  旦那様の笑顔は、誰も敵わぬほど素敵だった。
  あの日常が、続いて欲しかった。
殺生石、気持ちが決まったよ」
  旦那様の答えを聞くまでの一瞬一瞬は酷く長く感じられた。
  もし、この人に別れを告げられたら。
  もし、この人に嫌われてしまったら。
  考えているうちに、旦那様の口が開かれた。
「僕は、君といたい」
  一瞬、理解が追いつかなかった。
「君を僕のものにしたい。
 僕は貴方が好きだ。他の何より誰よりも、大好きだ。
 君が他の男にも愛を囁いていたって構わない。
 君にとって僕を特別な存在にしてやる。
 僕には貴方しかいない。好きなんだ、大好きなんだ。
 君が世界を欲するなら、僕は全ての人間とも戦おう。
 今度は僕の口から言わせてください。
 君が僕を嫌っても構わない。君が僕を憎んでも構わない。
 僕は貴方を、愛しています」
  やっぱり涙は止められなかった。

  貴方を愛して、貴方に愛されて。
  この日常を終わらせるなどと、一体誰が出来ましょうか?

                                  ―――殺生石

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