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続・妙な夢を見た

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 珊瑚に起こされるようになってから、いつも同じ時間に目が覚めるようになった気がする。
 今日もまた、いつもの時間に意識が覚醒し、珊瑚に起こされる前に起きられそうな……。
「マスター、朝ですよ」
 でも、大体珊瑚の方が先に起こして……ん?
 先の声に妙な違和感。
「んー……お姉ちゃんの言ったとおりに起こさないと駄目なのかなぁ」
 なんだ、天が起こしに来たのか。
 だが、何だろう、そうと分かっていてもさっきの違和感がぬぐえない。
 まぁいい、起きてみればその答えも分かる。
「あー……起きてるぞ、て……んっ!?」
 寝返りを打ち、天の方を振り返った。
 ……振り返ったはずなのに、天の顔が見あたらない。
 代わりに見えるのは、金髪ツインテールの少女……ではなく、女性。年齢は19か20ぐらいか。
 何だ、これは。一体何が起こった?
「あ、良かった。マスター起きてたんだね」
「……そうだな。で、どちら様?」
「へ、天河石だよ?」
 さも当然のごとく答える。
「いやいや、俺の知ってる天はもっとちびっ子だ」
「むぅ、またちびっ子って言ったー……いじわる」
 天河石を名乗る女性が、ふくれっ面になる。
 この感じ……確かに俺の知っている天のそれと同じだが、何か違う。
 ……あ、そうか。
「ん、どうしたのマスター?」
 彼女の目。
 いつもの天とは違う、ぱっちりと開いたその青い瞳。

「珊瑚っ、一体何があった!?」
 朝の出来事ですっかり目の覚めた俺。
 まずは居間でテレビを見ていた珊瑚に問いつめる。というか珊瑚は
いつも通りで助かった。
「何があったって、いつも通りだろう?」
 前言撤回、いつも通りではない。いきなりトチ狂った返事が返ってきた。
「ンな訳あるかっ、昨日までちびっ子だった天河石がこれだぞっ!」
「やんっ」
 自称天河石を珊瑚の前に差し出す。
 どうだ、これで珊瑚も驚くだろう。驚くだろうっ。
「主、自分の婚約相手をずさんに扱うな」
「ああ、そうだな。婚約相手をずさんに……はぁ!?」
 珊瑚は、実にあきれた様子でそう言い放った。何、こんにゃく相手?
「……天河石、どうやら主は寝ぼけているようだ。しばらくそっとしておこう」
「はーい。あっ、でもまだ朝のチューがまだだよ?」
「……それは某のいないところでやれと言っているだろう」
 え、何、朝のチュー? 某のいないところで?
「はぁ……黒曜石のところに行ってくる。朝食は台所に用意してある」
「うん、いつもありがとうね?」
「……天河石は早く料理上手くなれ」
 それだけ告げると、珊瑚はあきれた調子で居間を出て行く。
 待て、今こいつと二人きりにされたら一体どうなるか。
「ま、待て珊瑚っ、この状況はっ」
「マスター……こっち向いて?」
「え? あぁ……って、顔近っ! 顔近っ!!」

「お姉ちゃんのご飯、美味しいね」
 ……しちまった。
「でも早くマスターのためにお料理出来るようにならないとっ。マスターも
天河石の料理食べたいって言ってくれたし」
 ……しちまったよ、朝のチュー。
「あっ、マスターの好きなお料理なぁに? まずそれを作れるように……マスター?」
「え? あ、あぁっ、俺の好物は、えー……」
 冷静さを欠いた俺の頭は、好物を思い出すことすらも出来なかった。
 そんな俺を、隣から天の青い瞳が見つめてくる。
「そ、それよりだ、一体俺はどういう経緯でお前と婚約したのかと……うっ」
 それを聞いて、今にも大泣きしそうな顔になる天。
 しまった、いくらなんでもこんな事を聞くのは野暮すぎる。俺はバカか。
「寝ぼけてるっていっても、酷いよぉ」
「ほ、ホントすまん! えっと、その……ほら、お前の口から改めて確認したかったんだよ!」
「……ホント? 忘れてない?」
「大マジ。でもお前の口から聞きたい」
 ごまかすの下手だな、俺。
 だが、天がいつもの素直な性格なら、これで答えてくれるはずだ。
「……天河石と一緒になって5年目の日にね、マスターが指輪を買ってきてくれたんだよ」
 5年!? 俺が気付かないうちに5歳も老けたのかっ!
「それでね……『これからも一緒にいたいから、受け取ってくれ』って……あうぅ、恥ずかしいよぉ」
「そ、そんな台詞を5年前に……」
「……やっぱり、忘れたの?」
「忘れてない」
 そもそも覚えがない、なんて言えない。
 しかし何だ、唐突すぎるというか何というか。
「ちゃんとね、指輪ずーっと付けてるよ。天河石も、マスターと一緒にいたいから。ずーっと」
「そ、そっか。そりゃ良かった」
「うん……ねぇ、マスター」
 顔を真っ赤にした天。目もわずかに潤んでいるような。
 何というか、色っぽい……。
「天河石のこと……好き?」
「えっ、あ、あぁ。もちろん好きだぞ」
 出来るだけ不自然にならないように言う。
「えへへ……じゃあね、愛してるって……言って、ぎゅーってして欲しい」
 ……これはもう、深く考えずに抱きしめてやるのが正解なのではないだろうか。
 そうだ、きっとそうだ。
 これがどんな状況であれ、目の前にいるのが天なのならば、泣かせることはしたくない。
「え、えっと……天」
 天と向き合い、顔をしっかり見据える。
 ……綺麗な、青い瞳。吸い込まれるような、海の色。
「……あ、愛、して……」
 言葉は、自然に口からこぼれて……。

          ◆

「あっ、主ぃーっ!!!」
 ……全ての空間がスローモーションで流れる。
 振り上げられる布団。宙を舞う体。赤面した珊瑚。
 全てを認識した後、俺の背中に強烈な衝撃が走る。
「ぐはっ!!」
 壁に叩き付けられ、そのまま床にダウンする。
「はぁっ、はぁ……い、いい、いくらっ、いくら寝ぼけてるからと言ってだなっ、
だ、だだだ、だき、抱きつくとは、どういう事だっ!?」
 え、何? 俺は珊瑚ではなく天を抱きしめようとしていたはずでは……。
「マスタぁー、どぉしたの?」
「て、天河石、今は主を放っておいてくれ。これは某と主の問題であって……えぇいっ、主ぃ!!」
 途切れそうな意識の中、珊瑚の後ろにいた天の姿。
 いつものツインテールちびっ子で、糸目の顔。
 あぁ……良かった、俺は元の世界に帰ってきたんだ。
 そうか、そうか……。
「主っ、寝るな! 今回ばかりは某も許さんぞ!!」
 珊瑚に襟首を持たれたところで、俺の意識は再び闇の中に沈んだ。

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