「トリックオアトリートォーっ」
夕食前。完成を待ちながら、何もせずにぼんやりとテレビを
見ていたところだった。
台所から聞こえる包丁の音に耳を向けていたら、明るい声と同時に、
背中に軽い衝撃が走る。
「……天、ハロウィンはもう少し先だ」
「えへー」
当日着るのであろう、ハロウィン用仮装に身を包んだ天。
去年とは違うな……狼の耳か? 頭上のは。
「マスタぁー、似合う?」
「ああ。というか、そういうのは本番まで取っておく物じゃないのか」
「だって待ちきれないんだもんっ」
首に絡めた天の腕に、離れまいと言わんばかりに力がこもる。
衣装に付けられた尻尾が本物ならば、きっと飼い主に懐く子犬のように
振っているんだろうな。
そういえば、去年はトリックオアトリートメントとか、とんちんかんなこと
言ってたな。今年はちゃんと言えたようだ。
「マスタぁー、トリックオアトリートだよ? お菓子かイタズラだよ?」
「だからそれはまだだって言ってるだろ。おとなしくしてろ」
「えーっ、じゃあイタズラするもんっ」
来週というのを聞いていないのか、楽しそうに天が笑顔を向ける。
イタズラするのはいいが、離れるつもりはないらしい。
「イタズラって、何するつもりだー?」
「えー? んーっとぉ……くすぐるーっ」
聞いてみる俺も何だが、イタズラの内容を事前予告するというのはどうなのだろうか……。
まぁ、天のイタズラなんてその程度だ。可愛いレベルだから笑って許せる。
と、天の腕が俺の首から離れる。本気でくすぐる気か?
「こちょこちょー」
「ぶあぉっ!! ちょ、おま! 脇やめろ脇っ!!」
脇に走る、背筋も凍る独特の感触。ダメだ、体が悶えてっ。
「マスタぁーはぁ、ここが弱いんだよねぇー。天河石知ってるんだよー」
「わ、分かったからやめっ、やめっ!」
夕食前。完成を待ちながら、何もせずにぼんやりとテレビを
見ていたところだった。
台所から聞こえる包丁の音に耳を向けていたら、明るい声と同時に、
背中に軽い衝撃が走る。
「……天、ハロウィンはもう少し先だ」
「えへー」
当日着るのであろう、ハロウィン用仮装に身を包んだ天。
去年とは違うな……狼の耳か? 頭上のは。
「マスタぁー、似合う?」
「ああ。というか、そういうのは本番まで取っておく物じゃないのか」
「だって待ちきれないんだもんっ」
首に絡めた天の腕に、離れまいと言わんばかりに力がこもる。
衣装に付けられた尻尾が本物ならば、きっと飼い主に懐く子犬のように
振っているんだろうな。
そういえば、去年はトリックオアトリートメントとか、とんちんかんなこと
言ってたな。今年はちゃんと言えたようだ。
「マスタぁー、トリックオアトリートだよ? お菓子かイタズラだよ?」
「だからそれはまだだって言ってるだろ。おとなしくしてろ」
「えーっ、じゃあイタズラするもんっ」
来週というのを聞いていないのか、楽しそうに天が笑顔を向ける。
イタズラするのはいいが、離れるつもりはないらしい。
「イタズラって、何するつもりだー?」
「えー? んーっとぉ……くすぐるーっ」
聞いてみる俺も何だが、イタズラの内容を事前予告するというのはどうなのだろうか……。
まぁ、天のイタズラなんてその程度だ。可愛いレベルだから笑って許せる。
と、天の腕が俺の首から離れる。本気でくすぐる気か?
「こちょこちょー」
「ぶあぉっ!! ちょ、おま! 脇やめろ脇っ!!」
脇に走る、背筋も凍る独特の感触。ダメだ、体が悶えてっ。
「マスタぁーはぁ、ここが弱いんだよねぇー。天河石知ってるんだよー」
「わ、分かったからやめっ、やめっ!」
さすがに1年以上暮らしていると、弱点というのも分かっていると言うことか。
しかし、この満足そうな笑顔。今日に限り悪魔の微笑みに見えて仕方がない。
いや、ホント苦手なんだよ、敏感なところくすぐられるの。
「い、いいか、安易に他人の弱点を突くのはやめろ。分かったか?」
「えへへー。はぁーいっ」
ホントに分かってるのだろうか、この笑顔は。
いや、むしろ分かっててやるんだよな。末恐ろしい。
「それじゃあねぇ……」
「まだやるのか。いや待て、脇がダメなら足の裏ってのはもっとダメだからな!」
「ちがうよぉー。くすぐるんじゃなくてねぇー……んーとぉ」
口に手をやり、考え込む。
この小悪魔、一体何を言い出すんだか。
「えっとぉー……あっ、おでこに肉ーっ」
「お前、そういうピンポイントで人の羞恥心を突くイタズラはどこから覚えてくるんだ」
大体天河石があの漫画を読むとは思えないし。
「おでこに肉って書いたら強くなるよーって、お姉ちゃんが教えてくれたんだよ」
「何だよ、また置石か? はたまた月長石か?」
「ううん、試金石お姉ちゃん」
そっちかよ。
「ダメ?」
「絶対ダメ。油性で書かれたら職場の笑いモンだ」
「かっこいいかもっ」
「ねーよ」
俺の即答に、肩を落とす天。
こればかりは、いくらしょんぼりされても許す訳にはいかない。
ゆでたまごキャラになるのは何としても阻止だ。
しかし、天の周りはロクな事教えない姉が多いな。油断していたら
どんな知識を身につけてくるか。
「じゃあねぇ、マスタぁーの寝顔を写真で撮るよー」
「それはイタズラか? いや、少し嫌だけど」
「だってぇ、イタズラ思いつかないんだもん。それにねー」
困った顔を浮かべたと思ったら、次の瞬間には笑顔。
相変わらず、見ていて飽きない天の顔だ。
「お仕事とかでね、離れてると寂しいの。だからぁ、その人の写真を持ってると、
寂しいのがなくなるよって、ペリドットお姉ちゃん言ってたの」
……そういうこと、か。
こんな小さな子供だ。そう簡単に自分の寂しさをごまかすのも、難しいだろう。
「あとねぇ、大好きな男の人の寝顔は、とーっても可愛いって言ってたっ。
だからマスタぁーの可愛いお顔の写真、宝物にするのーっ」
……何、可愛い? 何だそれは?
「そういう理由なら、ダメ」
「えーっ、マスタぁーの可愛いお顔見たいよぉーっ」
「ダーメーだ! 夜は早く寝ろ!」
「ぶーぶーっ、マスタぁーのいじわるーっ」
やっぱり、こいつの周りはロクな事教えない姉が多い。
そんな可愛いなんて事、言われたって嬉しくないっての。
……恥ずかしい、だけだ。
「いじわるなマスタぁーにはぁ、おでこにおにくって書いて
寝顔の写真撮るモンっ!」
「そんなこと言ってもダメなものはダ……いや、今のマジ?」
しかし、この満足そうな笑顔。今日に限り悪魔の微笑みに見えて仕方がない。
いや、ホント苦手なんだよ、敏感なところくすぐられるの。
「い、いいか、安易に他人の弱点を突くのはやめろ。分かったか?」
「えへへー。はぁーいっ」
ホントに分かってるのだろうか、この笑顔は。
いや、むしろ分かっててやるんだよな。末恐ろしい。
「それじゃあねぇ……」
「まだやるのか。いや待て、脇がダメなら足の裏ってのはもっとダメだからな!」
「ちがうよぉー。くすぐるんじゃなくてねぇー……んーとぉ」
口に手をやり、考え込む。
この小悪魔、一体何を言い出すんだか。
「えっとぉー……あっ、おでこに肉ーっ」
「お前、そういうピンポイントで人の羞恥心を突くイタズラはどこから覚えてくるんだ」
大体天河石があの漫画を読むとは思えないし。
「おでこに肉って書いたら強くなるよーって、お姉ちゃんが教えてくれたんだよ」
「何だよ、また置石か? はたまた月長石か?」
「ううん、試金石お姉ちゃん」
そっちかよ。
「ダメ?」
「絶対ダメ。油性で書かれたら職場の笑いモンだ」
「かっこいいかもっ」
「ねーよ」
俺の即答に、肩を落とす天。
こればかりは、いくらしょんぼりされても許す訳にはいかない。
ゆでたまごキャラになるのは何としても阻止だ。
しかし、天の周りはロクな事教えない姉が多いな。油断していたら
どんな知識を身につけてくるか。
「じゃあねぇ、マスタぁーの寝顔を写真で撮るよー」
「それはイタズラか? いや、少し嫌だけど」
「だってぇ、イタズラ思いつかないんだもん。それにねー」
困った顔を浮かべたと思ったら、次の瞬間には笑顔。
相変わらず、見ていて飽きない天の顔だ。
「お仕事とかでね、離れてると寂しいの。だからぁ、その人の写真を持ってると、
寂しいのがなくなるよって、ペリドットお姉ちゃん言ってたの」
……そういうこと、か。
こんな小さな子供だ。そう簡単に自分の寂しさをごまかすのも、難しいだろう。
「あとねぇ、大好きな男の人の寝顔は、とーっても可愛いって言ってたっ。
だからマスタぁーの可愛いお顔の写真、宝物にするのーっ」
……何、可愛い? 何だそれは?
「そういう理由なら、ダメ」
「えーっ、マスタぁーの可愛いお顔見たいよぉーっ」
「ダーメーだ! 夜は早く寝ろ!」
「ぶーぶーっ、マスタぁーのいじわるーっ」
やっぱり、こいつの周りはロクな事教えない姉が多い。
そんな可愛いなんて事、言われたって嬉しくないっての。
……恥ずかしい、だけだ。
「いじわるなマスタぁーにはぁ、おでこにおにくって書いて
寝顔の写真撮るモンっ!」
「そんなこと言ってもダメなものはダ……いや、今のマジ?」
次の日、鏡に映った俺の額に、歪んだ線で書かれた肉という文字が
くっきりと浮かんでいた。
まぁ、水性ペンなので何とか落ちたが……。
「主、なかなか可愛い寝顔だったぞ。ふふっ」
「さんっ……天ーっ!!」
だが人に見せびらかしたら、洗い流せたとしても意味がない訳で。
くっきりと浮かんでいた。
まぁ、水性ペンなので何とか落ちたが……。
「主、なかなか可愛い寝顔だったぞ。ふふっ」
「さんっ……天ーっ!!」
だが人に見せびらかしたら、洗い流せたとしても意味がない訳で。