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試金石とコタツ

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匿名ユーザー

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「寒い」
しっかりとコタツに入っているハズの試金石がそう漏らした。
コタツに入ってぬくぬくしてるのに寒いとは如何なものか。
とりあえず今は黒い巨人を倒すのに専念する。
何しろ凶悪な巨人だ、少し目を離せば仁義無きドロップキックが飛んでくる。
それに成す術なく吹き飛ばされる我が愛機。もうそうなるのは嫌だ。
しかし、ゲーム機からは悲鳴にも似た爆発音が聞こえるばかりだった……
「うぁぁぁ寒い……」
そう言いながら本日八個目の蜜柑に試金石は手を伸ばした。
食いすぎだ。……かくいう僕も今ので六個目なのだが。
「寒い寒いって、今までそんなんでどう過ごしてきたのさ」
「基本的には暖かい所へ逃げるように移住していった」
「渡り鳥か……」
「そういえば似てるな。そうか、私は鳥、か」
手でひらひらと飛ぶ真似をしてみせる試金石。
とりあえず蜜柑を机においてからにしよう。皮が飛び散る。
「寒いああ寒い。私は寒いの苦手なんだ」
ぷくぅと頬を少しばかり膨らませる試金石。
そんな自然に八つ当たりしてもどうにもならないんだから諦めてほしい。
「じゃあもう寝ちゃいなよそこのカボチャ枕にしてさ」
「それは名案だ。じゃあおやすみー」
コタツで寝ると風邪をひくというが多分試金石は大丈夫だろう。
付近にあった一番大きいカボチャを枕に寝入る試金石。
この寝つきのよさは天下一品で‘おやすみ’を言った直後にはもう寝息を立てていた。
……それにしてもこの無防備な寝顔は人の悪戯心をくすぐる。
思わず頬を伸ばしてみたりして……あ、柔らかい。
フニフニしている。すべすべしている……すべすべふにふに……。
触り心地抜群だ。快感すら覚える。気持ちいい。
……頬でこんなに触り心地がいいのなら。その少し下になる
二つの欲望の塊の触り心地は如何なものか…… (※1)
流石にさわらなかった。そう簡単に命は捨てたくない。死にたくないんだ僕は。
とりあえずやりたい衝動をグッとこらえ、かわいらしい寝顔を眺めることにした。
……マジックで落書きしたくなるのも、人情だよね。
修学旅行ではお馴染みだ。僕は額に‘公正取引委員会’と書かれた経験がある。
……でも何かこの寝顔を見てると激しい罪悪感に見舞われそうでやめておくことにした。
今はただ、そっとしておいた方が身のためなのだろう。



(※1 別ルート)
負けた。完膚なきまでに負けた。僕は欲望には勝てません。
もう迷いは無い。死を恐れて何が成せるというのだ!
今僕は全て遠き理想郷を目指して走る。まるでメロスのように。
柔らかくてすべすべしていて、頬とは違う弾力があるこれ。
パライソはここにある。蓬莱はここにある。アヴァロンはここにある!
思わず二度三度揉む。揉みしだく。この柔らかさがやみつきになる。
しかし、幸せはそう長く続かない。そんなことはわかっている。
そう、いつの間にか後ろには試金石が回りこんでいて
「欲望を抱いて溺死しろ」
そう呟いて周囲に無数のハリセンを待機しているなんてことは想定の範囲内。
我が生涯に一片の悔いは無い。ああ、儚きながらいい人生だっ……た。

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