長身の陰が2人、夜明け近い町にたたずんでいる。
億泰と、承太郎――に変身中の
オインゴだ。
少し休もう、そう提案したのはオインゴだった。
億泰は「まだまだイケるッスよ」と答えたが、半ば強引に腰を下ろしたのだ。
場所は駅からそう離れていない。
オインゴは疲弊しきっていた。気付かれてしまえば終わりだ。
己の隣にいる男――億泰――のスタンド能力は、未だに分かっていない。
かろうじて戦闘型なのだろう、と推測出来ただけだ。
このまま逃げ切ることが出来るのかどうか、オインゴ自身分からない。
逃げ続けた先に未来があるのかどうかさえも。
当分の間は、この頭の悪そうな顔をした男を騙し続けるしかない。
しかしそれは可能だろうか?どんなきっかけでバレてしまうかは分からない。
「承太郎さん……失礼なんだけどよぉ~」
先ほどからもじもじと物言いた気だった億泰は、ついに我慢できない、とでも言うかのように口を開いた。
「な、なんだ」
オインゴは、もう何度目か分からない、心臓がぎゅっと握り潰される思いで答える。
「その……矢、なんだけどよぉ~。どうも、おかしい気がするんスよね~」
「そ、そうか?」
「くるくるよく動く割に、誰にも会わねえッスよね~」
疑っているのか。オインゴは内心、真っ青だった。
必死にポーカーフェイスを作るも、冷や汗は抑え切れそうにない。
「その矢、壊れてるんじゃないでしょ~ね~?」
オインゴはハッとした。億泰が腕を伸ばし、矢に触れようとしている。
「さ、触るんじゃねえぜ、億泰」
「……承太郎さんよぉ……」
億泰の人相の悪い顔が、更に凶悪さを増す。
「あんた、どっかおかしいッスよ。なんとなく……さっきまで真っ暗で見えなかったけどよぉ~」
ハッとした。白々と夜が明けようとしている。おかしい筈はない!変身は完璧な筈だ!
少なくとも、見た目だけは。
しかし、オインゴは気付いてしまった。そうだ、俺はこの男を今日まで知らなかった。
この男の名は、
虹村億泰。彼が承太郎の知り合いであることは明白だ。
仲間の名、敵対している人間の名も、聞いてもいないのに自分からゲロってくれた。
頭はそうよくない。単純に見える。しかし……。
「あんた、やけに若いんだよなぁ~。それに服も、いつもと違うみてぇだしよぉ~」
オインゴはぶるりと震えた。
「ば、馬鹿言うんじゃねえぜ。オメーは俺の服を全部把握してるとでも……」
「……」
(――マ、マズイ!疑っている!この眼は……マズイぞッ!)
オインゴの顔色がくるくると変わった。蒼褪めたかと思えば紅潮し、
そうかと思えば蒼褪める。
「承太郎さん、アンタまさか……」
逃げるか殺るか、どうする!?しかし殺れるのか!?逃げるにしても、逃げ切れるか!?
オインゴは腹を括り掛けた。しかし、続く億泰の言葉は予想外のものだった。
「スタンド攻撃を受けてるんじゃね~だろうなぁ~!?」
バッと立ち上がり、億泰は周囲を警戒した。
オインゴは呆気に取られ、億泰を見上げる。億泰は真剣な顔で首を左右に動かしている。
「……」
(どうする?ここは乗るべきか?こいつはさっき、承太郎が若すぎると言った。ならば……)
「億泰ッ!お前、どうしたんだ!」
「えっ」
「お前、おかしいぞ!?顔がおかしいッ!!」
「えっ、俺ッスか!?」
「スタンド攻撃だァーーーッ!」
オインゴはそう叫んで、弾かれた様に走り出した。
とにかくこの場を離れたかった。矢の動きにすら関心を払う余裕がなかった。
億泰は咄嗟に状況が飲み込めず、更にきょろきょろと周囲を見渡す。
「……ま、待ってくれよ、承太郎さんッ!」
オインゴから数秒遅れて億泰も走り出す。
奇しくもふたりは、再び駅に向かって走っていた。
音石明の隠れる駅前へ……。
【F-8 駅周辺、海岸沿い/1日目 早朝】
【ダブル"O"ブラザーズ】
【虹村億泰】
[スタンド]:『ザ・ハンド』
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康 。承太郎(オインゴ)への疑惑。
[装備]: なし
[道具]: 青酸カリ、支給品一式。(不明支給品残り0~2)
[思考・状況]
基本行動方針:味方と合流し、荒木、ゲームに乗った人間をブチのめす(特に音石は自分の"手"で仕留めたい)。
1.承太郎さん、待ってくれよぉ~!
2.承太郎さん、なんか変なんだよなぁ。服はともかく、若返った?
3.なんで重ちーや吉良が生きてるんだ……!?
4.その内、仗助や康一と合流出来ればいいなぁ~。
※オインゴが本当に承太郎なのか疑い始めています。
※オインゴの言葉により、スタンド攻撃を受けている可能性に気付きました。ただし確信はありません。
※ 名簿は4部キャラの分の名前のみ確認しました。ジョセフの名前には気付いていません。
【オインゴ】
[スタンド]:『クヌム神』
[時間軸]:JC21巻 ポルナレフからティッシュを受け取り、走り出した直後
[状態]:承太郎の顔に変身中。胃が痛い。
[装備]: なし
[道具]: エルメェスのパンティ(直に脱いぢゃったやつかは不明)、首輪探知機(※スタンド能力を発動させる矢に似ていますが別物です)、支給品一式。(不明支給品残り0~1)
[思考・状況]
基本行動方針:生き残れそうに無いが、変身能力を活かしてバトルを避けたい。
1.やべぇ!疑われてるッ!うまく誤魔化せるかッ!?
2.このまま誰にも見つかりませんよーにッ!
3.とりあえず億泰以外の奴と接触はさける(矢が反応したら、演技でごまかして人のいない方向に逃げる)。
4.億泰のスタンド能力を聞き出したい。(とりあえず戦闘型ではないかと推測)
※ 口からでまかせに、スタンド攻撃を受けていると叫びました。実際に受けているのかどうかは不明です。
※現在は承太郎の顔ですが、顔さえ知っていれば誰にでも変身できます。スタンドの制限は特にありません。
※億泰の味方、敵対人物の名前を知っています。
投下順で読む
時系列順で読む
キャラを追って読む
最終更新:2009年04月24日 17:59