今、俺達は駐車場へと戻ってきている。
本来ならもう少し川原で潜んでいたかったのだが、亀が水の方へ歩んで行ったので慌てて移動することにした。
俺達はこの亀の操縦(って言い方があっているのか分からねーが)方法を知らない。
もしかしたら説明書でも存在したのかもしれねーが、支給された本人が爆散していたことを考えると探すだけ無駄だ。
要するに、行き先は全て亀任せなのだ。再び水に戻られては困る。
陸上ならともかく、水中に潜られたのでは簡単には出られないからな。
ちょうど情報交換も終わった所だったので、水から離れた場所へと移動することにしたわけだ。

ちなみに、シュトロハイムとの情報交換は予想以上に実のないものだった。
既に聞いていた柱の男と波紋使いの話の詳細は有益だったが、それ以外は真面目に聞くのも馬鹿らしくなるような内容だった。
本人はナチスナチスと連呼しているが、大方コイツはナチスの復活を目論み地下で活動しているナチス信者の集団にでも属してるんだろう。
スタンドを知らない人間にもスタンドが見える事には驚いたが、深くは考えない事にした。
『スタンド使いの素質が高い人間にはスタンドが見える』みたいな俺の知らないスタンドのルールがあるのかもしれないしな。
荒木のスタンドでそうなっているかもしれないが、当面の目的はカーズの打倒だ。
荒木についての考察はカーズを倒してからでいい。
それに、余計な事を考えるくらいなら、「全ての参加者が俺のスタンドを見る事が出来る」と認識しておく方が有益だろう。
なお、スタンドのルールについてはシュトロハイムにきちんと説明しておいた。

そして俺がシュトロハイムからあまり有益な情報を得られなかったように、シュトロハイムも俺からほとんど有益な情報を得ていない。
先述したスタンドという存在について知れたぐらいか。
シュトロハイムは信頼出来そうだが口が軽そうだからな(実際初対面の俺にあっさり仲間の名前をバラした)
仲間の情報やパッショーネのことは黙っておくのが得策だ。
スタンドについても、『老化させる能力』とだけ伝えてある。
どの道カーズとの戦闘では使えそうもないし、氷も持ち合わせていないのだ。
巻き込まれない方法を教えておくメリットはない。

亀の中で行った情報交換の時間で最も有益だったのは『支給品の見せ合い』だろう。
先程失ったジープ以外にもシュトロハイムはデリンジャーとヘルメットを所持していた。
そして俺のデイパックにはバイクとスタングレネードが。
それらの支給品と今置かれている状況を考え、俺達は役割分担をすることにした。
支給品を見るまでは必要なかったため調べなかったが、先程まで乗っていたジープにまだ燃料が残っているかもしれない。
もしも残っているのなら、今の内に燃料を補給しておいた方がいいだろう。
小回りが利くバイクはカーズを探すのに役立つこと請け合いだ、亀のおかげで何人同行者ができようと問題なく使えるしな。
だから比較的怪我も軽く足も健在な俺が支給品のバイクに乗って駐車場へ向かい、シュトロハイムは亀の中で待機することにしたのだ。
と言っても、シュトロハイムはただ亀の中で休んでいたわけではない。
襲撃者が現れた際いつでも援護できるように、デリンジャーとスタングレネードを外に向け臨戦態勢をとっている。
最悪の場合は俺ごとスタングレネードの爆発で相手を昏倒させ、亀の中(スタングレネードの効果が及ばない可能性がある)にいるシュトロハイムが外に出てとどめを刺すことにした。
駐車場の状況から見て大きな爆発があったと考えられ、音を聞いてくる奴がいてもおかしくはないからな。策を練るに越したことはない。
勿論そんな奴がいたらとっくに駐車場まで辿り着いて俺を殺していただろうが、ここに向かう途中戦闘を行った奴がそろそろ辿り着くという可能性もある。
何せここには大勢の人間がいて、頻繁に戦闘が行われているのだ。
実際俺も亀の中に入るまでエルメェス・カーズと連戦している。
音を聞いて駆け付けるまで誰にも会わない方が難しいだろう。

「ぐあッ!」
「むう、どうかしたのか!?」
だから警戒をしていたのだが――クソッ、やられたぜ!
無意識の内に『頭部を守るフルフェイスヘルメットがあるし、心臓付近さえ守れば奇襲で即死することはまずないだろう』なんて油断でもしちまったか……
確かに喰らったのは指先だったしダメージ自体はほとんどないが、誰かの仕掛けた“罠”に見事にかかっちまったぜッ。
こんなコンセント、乗ってた時にはなかったからな……おそらく“後から来た誰か”がこれを仕掛けたんだろう。
ちょっとビリっとした程度だったが、あれで終わるわけがねえよな……
「罠だ。お前は“中”から様子を見ていろ」
丁度俺の死角となる方向へ亀の出入口を向け、そちらの方向の警戒をシュトロハイムに任せる。
音を聞いて駆けつけた奴なら気になって調べるであろう横転したジープに、わざわざスタンドで罠を仕掛けたんだ。
ちょっとビリっとする程度で終わってくれるわけがねえ。
幸いなことに、ジープに注意を引きつけている間に遠くから攻撃出来るような武器は支給されていないようだ。
だが、罠の解除を餌にして交渉しようとしてこないことを見るに、この罠を仕掛けた奴に話し合う気は無いらしい。
にも関わらず追撃してこないということが、『すでに追撃が必要ない状況に俺が陥っている』ということだッ!
この罠には、“相手を殺せる威力がある”ッ!

「……誰かいるか?」
気配の察知をペッシに任せ続けてたツケが回ってきたか……
辺りを見回すが、どこに敵が潜んでいるのか皆目見当もつかない。
そして相手の姿を見つけられないのはシュトロハイムも同じらしい。
亀の中にいることがバレぬよう、敵を見つけたとき以外は喋らないよう言ってあるからな。
何も喋らず発砲もしないということはシュトロハイムも敵を見つけていないと考えていいだろう。
もっとも、シュトロハイムは俺と違って“亀越し”なので索敵難易度が大幅に上がっているわけだが。
だから念のため振り返り、担当する警戒方面をシュトロハイムと入れ替えたものの、やはり姿は見当たらない。
(まさか、メローネのように本体は遠く離れた所にいるのか?)
だとしたら不味い。
本体を仕留めて罠を解除するつもりだったのだ、「本体がここには居ません」では打つ手がなくなる。


カタカタカタ……


そんな事を考えていたからか分からないが、俺はしばらくこの異変に気が付かなかった。
シュトロハイムも亀越しの狭い視界ではすぐに気が付く事が出来なかったようだ。
だが、異変は確実に始まっていた。

「何ィィーーーー!?」
長い長い無言の警戒時間の終焉を告げるように、シュトロハイムの絶叫が響き渡る。
背後から敵が現れたのかとスタンドを発現させ慌てて振り返るが誰もいない。
一体、シュトロハイムは何を見たのか……

どんっ

背中に何かが当たった。
しかし、奇襲にしては威力がない。
挨拶で軽く背中を叩く時程度のものだ。
しかも、振り返ってみても相変わらず誰もいないときたもんだ。

「“後ろ”じゃあない、プロシュート! “背中”だアアアアーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

何かが確かに背中に当たったというのに、地面にはそれらしきものは落ちていない。
そして、シュトロハイムのこの発言。
背中に手を回してその意味を理解した。
異変はすでに俺の体で起きていたのだッ!
大破した車の破片が背中に張り付いている。亀からはみ出たシュトロハイムの腕と共にッ!
「ぐおおおおおっ、引きずり出されるッ!」
叫び声をあげるシュトロハイムは、おそらく亀の中で何か物にでも捕まって必死に抵抗しているのだろう。
“だろう”と言ったのは、そちらの方を見ている余裕がなかったからだ。
誰も乗っていないのにジワジワと動いている自動車に、俺の眼は釘付けだ。
幸い、シュトロハイムが抵抗してくれているからか体にかかる負荷は今はまだそんなに大きなものではない。
シュトロハイムが完全に引きずり出され、重みで身動きが取りづらく前に何とかしないとな……!

「振り落とされるな、シュトロハイムッ!」
バイクに跨りながらそう言ったものの、シュトロハイムが落ちることはまずないだろうと考えている。
亀から引きずり出されても俺の背中に否応なしにくっ付き続けるだろうからな、
事故るとしたらシュトロハイムの体重でバランスを崩す恐れのある俺の方だ。
(敵はおそらく磁力使い……射程距離はリゾットの数倍はあるだろうな……
 隠れていたシュトロハイムまで俺にくっ付いてる事を見るに、向こうが鉄製品を操ってるわけじゃあなさそうだ)
仲間に磁力使いがいるからか、比較的早い段階で『磁力』という単語が頭に浮かび、敵スタンドの予想が比較的簡単にできた。
十中八九、敵の能力は『コンセントに触れた奴を磁石にする能力』ッ!
鉄製の破片を鋭利な部分から突っ込ませれば早いのに、奴はそれをしなかった。
そのことから考えると、恐らく細かい磁力操作までは出来ないのだろう。
細かい指示ができない辺り、メローネのベイビィ・フェイスを思わせる。
だとしたらメローネと同じように本体は安全な所にいるはずだ。
様子を見るため近くにいるとしても、俺に向かってくる車の波に飲まれかねない駐車場内にはいないだろうな。
まったく、無人のくせに車は大量に用意されてるとは、荒木の野郎もやってくれるぜ……ッ!
磁力でくっ付き放題の絶好のスポットじゃねえか! 磁力使いにとってはよお!

「待て、プロシュートオオオオオ!!」
シュトロハイムの言葉の意味を理解出来た時、俺は既にバイクごと地面に転がっていた。
出口から出ようとした瞬間、出入口付近に設置されていた自動販売機が顔面めがけて飛んできたのだ。
幸いフルフェイスヘルメットのおかげで鼻血一つ出ていないが、身動きが取れそうにない。
(クソッ……明らかに磁力が強力になっていやがるッ)
車がこちらに向かう速度を見て、今の磁力ならバイクで駆け抜ければ自動販売機が張り付く事はないと判断したのだが……
どうやら磁力が強力になったらしい。
振り向くとシュトロハイムも完全に亀から出されていた。無論、全身を俺にくっ付けて身動き一つ取れないでいる。
後方に見える自動車も、先程よりスピードを上げているように思えた。
(だがッ! テメーが近くにいることは分かったぜ! 近付くほどに強くなるのは俺のスタンドも同じ事だッ!)
威力を自在に上げられるなら、さっさと上げて車で押しつぶしていたはずだ。
なのにそれをしなかったということは、磁力は相手の意思以外の理由で強められたということだ。
恐らく、敵はこの辺りに潜んでいる……
“直”の方が素早い『ザ・グレイトフル・デッド』のように、遠距離まで攻撃出来るスタンドでも近距離の方が威力が上がるからな。

だが、近くにいるのなら好都合。
先程からジワジワ発動させていた『グレイトフル・デッド』で、お前を老いぼれに変えてやるぜ!
威力は落ちてるみてえだが、近いんだったらそんなこたあ関係ねえ! ゾンビみてえに干からびちまいなッ!
「我がナチス軍人に見つけられぬ敵などいなァァァァァァァァァァァいッ!」
背後から突然聞こえる馬鹿の雄叫び。
まだ何とか動けるらしいシュトロハイムが、腕を上げデリンジャーを構えるのが視界の端に映り込んだ。
「馬鹿野郎、撃つんじゃねェェェェーーーーーーッ!」
今度は俺が絶叫する番だった。
予測出来ているだろうと思い、何も言っていなかったのが不味かったのか、
相手の能力に気付いていないらしいシュトロハイムは引き金に掛けた指に力を込める。
その銃口が、どちらに向くかも知らないで。
「がァッ……!」
そしてその弾丸は、案の定目標には辿り着かずに、俺の腕へとめり込んでいった。





 ☆  ★  ☆  ★  ☆





結論から言うと、マライアは繁華街へ行けなかった。
道中で聞いたベンジャミン・ブンブーンのSOS。それが彼女を繁華街から遠ざけた。
『人を襲う気満々の人食いモンスター』がいる所にわざわざ行くほど彼女は愚かではない。
いくら鉄製品が多いだろう繁華街とはいえ、花京院以上に厄介な奴を相手に『バステト女神』で切り抜けられるとは思えなかった。
ましてや支給されたのがただのタバコと望遠鏡だ。
こんな装備では、走れなくなるほど相手に鉄製品が付く前に距離を詰められでもしたら、そのまま殺されてしまうだろう。
そんなわけで、繁華街から離れた位置に飛ばされた己の不幸を呪いながら、繁華街行きは諦めることにしたのだった。
行くとしても、せめて武器を手に入れてからだ。

そしてマライアは一旦食屍鬼街に引き返した。
他の道よりも自分が何事もなく通ってきた道の方が安全だろうと判断したからだ。
運よく誰とも会わずに食屍鬼街に戻ってきたマライアは、次に一番高い建物に入った。
そこで望遠鏡を使い、鉄製品の多そうな場所を行き先に決める。
それが自動車が多く止まっている駐車場だったというわけだ。
戦闘の後のようだが殺人者はすでにいないようだし、遮蔽物変わりに車を利用する際コンセントに気付かず背中を付けてくれるかもしれない。
更には凄惨な現場が周りの注意を引いてくれるため、隠れるのも容易に思われる。
繁華街を除けばこの周辺であそこまで絶好の狩り場となる所はない。
そんなわけでマライアは罠を仕掛けようと駐車場までやってきたのだ。

コンセントの設置場所は、駐車場の中央に横たわったジープに決めた。
死体になった者が生前乗っていたと思われるため、中を調べられる確率が一番高い。
それにあれだけ目立っていると気になるのが人間の心理というものだ。

ジープと凄惨な死体がが注意を引いてくれるため、意外と気付かれにくいだろうと自分自身は駐車場内のトイレに潜む事にした。
あまりに臭いようなら別の場所に行こうと思っていたのだが、不思議な事に異臭は無い。
まるで建設後誰一人利用していないかのような、そんな不自然な臭いの無さだ。
それがこの珍妙な街の秘密を知る手がかりになる気もしたが、逃げられそうになったらすぐ追える場所なら何でも良かったので深くは考えないことにした。

その後、逃走経路の確保なども終え、ただ待つだけの時間が来た。
準備を終えてからそう時間が経たない内に獲物が現れてくれたのだが、死体を埋葬する気らしくジープを調べる気配は全く無い。
とはいえ今の装備で襲いかかるわけにもいかず、黙って待つしかなかったのだ。
「やはり露骨すぎなジープはやめとくべきだったか」だの、「餌としてデイパックでも近くに置いておけばよかったか」だの、
早くも脳内反省会を開いたまさにその時、獲物がコンセントに触れてくれた。
あとは簡単、トイレの中から獲物が逃げないか窺っているだけでいい。
何かの爆発に巻き込まれたらしく、大破した車がここにはいくつも存在している。
おかげでこの場に留まらせるだけで体を重く出来るってわけだ。

勿論、逃げられては意味がないので、獲物が辺りを見回してる内にトイレを出、駐車場を迂回しバレないように出入り口の方へと向かう。
トイレの陰に予め足場を作っておいたので、さほど音を立てずにフェンスを乗り越えられた。
その後は第三者の存在に気をつけながら移動するだけで、これも特に問題なく終えられた。
勿論スタンドが解除されない距離の位置を行ったとはいえ、磁力は軽減されてしまう。
だがそのおかげか相手はこちらの能力に気付く様子もなく、無意味な時間を過ごしてくれた。
バイクに乗られた時は焦ったが、出入り口への到達は何とか間に合う事が出来た。
経過した時間から考えて、出入り口付近まで行けば出入り口横の自販機が張り付く(勿論、張り付きやすいように自販機を固定する器具は壊しておいた)
予定通り自動販売機に押しつぶされ、獲物は見事に転倒した。
慌てて出入り口に向かったためか、スタンドで隠れていたらしきもう一人の男に見つかり攻撃されそうになるも、攻撃手段が銃だったため磁石と化した仲間に向かって発砲してくれた。

――運命は私に味方しているッ!

今のマライアは自信に満ちていた。
スタート地点が鉄製品の何も無い場所だったのも当初はアンラッキーだと思ったが、繁華街に人食いモンスターまで現れると分かった今、人の寄り付かない場所から出発できた自分はラッキーだと思っている。
そもそも殺し合いに巻き込まれなければジョセフ達にやられていたのだ。
その殺し合いにしても、承太郎やDIOと言った強力なスタンド使いが参加している。
最初はそれを嘆いたが、よくよく考えれば参加者の人数減らしは彼らに任せてしまえばいいのだ。
自分は無理せず殺れる相手を殺って装備を充実させておいて、最後の2人になってからゆっくり罠にはめればいい。
わざわざ食屍鬼街を目指す者は少なそうだし、食屍鬼街でスタートしそのまま根城にしている奴がいない(仮にいたとしても、下を移動してた自分を攻撃する力のない奴しかいない)ことも知っている。
つまり自分は、高確率で誰にも会わずにやりすごせる場所を知っていることになるのだ!
何という幸運! 天が味方しているとしか思えないッ!
今ならガラスのシャワーですら無傷のままで抜けられる、そんな不思議な自信がある!
マライアは今、ツキまくっているッ!

(小型で大した威力じゃあなさそうだけど、銃は銃……
 ワラシベ長者っていうのかしら? 煙草と望遠鏡しかなかったのに、たった一度の戦闘で銃が手に入るなんてねえ……
 ククク、この調子で装備を充実させていけば優勝も目じゃないわね)
そう、マライアは今ツイテいる。
だから、傍らに置いた望遠鏡に伸ばした手にいつもより皺ができているのに気付いたこともラッキーと言えるだろう。
肌の手入れには気を使っているのだ、こんな急に皺くちゃになるなんてことはありえない。
だとしたら、これはスタンド攻撃と考える方が妥当である。
獲物がスタンド使いであることは予想していた(だから攻撃されぬよう少しだけ場所を移動しようとした)が、この効果は正直想定の範囲外だ。
『バステト女神』のように本体を殺せば解除できるタイプの能力ならばいいが、アヴドゥルの『魔術師の赤』のようにスタンドで与えたダメージは本体が死んでも残るというタイプだと不味い。
どういう仕掛けか知らないが(水分でも奪われたのかしら?)、これ以上皺皺になり、しかも当分そのままの姿でいるなどという事態は何としてでも避けなくてはならない。
女として、そこは譲れないのだ。

「ふざけやがって、ビチグソがァ……ッ!」
接近しすぎるのは危険に思える。敵スタンドの射程距離が分からない。
だが――奴は今、身動きの取れない状況下にある。
自販機にバイク、そしてどこかに潜んでいたらしき男が何故か分からぬがくっ付いているため立ち上がれないようだ。
スタンドにしても、一番入口に近い位置にあったため既に飛んで行った軽自動車が本体の体を押し潰さぬよう支えるだけで精いっぱいに見える。
まあ、皺にさせる効果はしっかりと発動しているのだけれど。
とにかく、スタンドが動く余裕はなさそうに見えた。

「テメーらの××××切り落として口に捻じ込んでやるッ」
だからマライアの選択は、『接近して早急に息の根を止める』だった。
唯一最初から支給されていた磁石にくっ付く凶器――シャープペン。
普通ならこんなものを飛ばした所で簡単に弾かれてしまうのだが、今の相手にはそれだけの力も残っていないように見える。
車を破壊せず支えているところから見ても、ジョセフと同じで直接的な破壊には向かないスタンドなのだろう。
ならば車を破壊して襲いかかってくることも、シャープペンを撃墜することもないと見て問題ないはずだ。
フェンスで遮られてしまうこの場を移動し、出入り口についたら先端をあちらに向けシャープペンを発射する。
単純だが、確実な作戦だ。

「ぬぐうう~~~ッ、わざわざ姿を見せるとは、コケにしおってぇ~~~~~!」
出入口に一歩足を踏み入れると、台形ヘアーの男が悔しそうな声を上げた。
「立てるか、プロシュート!? 奴に目にもの見せてくれるわァァァァ!」
必死に立ち上がろうともがくが、仰向けになっているうえに重荷を背負う形になっているためか上半身すら起こせていない。
プロシュートと呼ばれた男も、重みに耐えかねているのか返事すらできていない。
肩で息をして、フルフェイスヘルメットで隠した顔をこちらに向けているだけだ。
「おい、何をしているプロシュートォ!」
プロシュートは返事をしない。
確かに、バイクと自販機と大の大人に圧し掛かられているのだ、無事とは言い難いだろう。
だが――何かが引っかかる。
マライアの頭の中で、何かが警告を発している。

「やかましいぜ、シュトロハイム……」
プロシュートが、ようやく重い口を開く。
シャープペンシルを取り出そうとマライアがデイパックに手を突っ込んだ時だった。
「目にものを見せるだなんて、仮にも俺と組んだ奴なら軽々しく口に出していいもんじゃねえ……」
マライアの動きが止まる。
やはりおかしい。
先のジョセフやアヴドゥルと比べると、プロシュートは異常にダメージを負っているように見える。
先程死体を埋葬した時は怪我をしているように見えなかったというのにだ。
「お前まで俺みたいなマンモーニになっちまうぜ……お前は誇り高き軍人なんだろ……?」
そして、気が付いた。
うつ伏せに倒れたプロシュートのポーズの不自然さに。
そして、プロシュートの体の下に出来た“謎のシミ”に。
あのシミはバイクから漏れたオイルなんかじゃあない!
あれは――

「“ビッチに目にもの見せてやった”なら使ってもいい」

あれは血だ!
そう思った時にはすでに、眼前に手首が迫っていた。
切断された手首と重なるようにして存在している、不気味なスタンドの手首が。
「“直”は素早いんだぜ……ッ!」





☆  ★  ☆  ★  ☆





『栄光を掴む』
そのために必要とあらば、手足がもげたってスタンドは解除しねえ。
それが俺の誇りだ。
たとえマンモーニになっちまってても、その信念は曲げたくなかった。

だから、躊躇いなどなかった。
体に張り付いた鉄板の切り口(おそらく爆弾で吹き飛んだ車のボディのどこかだろう)に手首を当て、一気に手首を切り落とす。
情けない話だが、痛くないわけがなかった。
叫び声は上げなかったが、俺の顔は相当無様なものだったろう。
フルフェイスヘルメットのおかげで、その表情を読まれる心配はなかったんだけどな。

とにかく、俺は手首を切り落とした。
切断したのは、既にシュトロハイムに撃たれていたため今後もあまり自由に動かせないであろう左手首の方だ。
飛んできた軽自動車は『グレイトフル・デッド』が体で支えている。
手首を失ったため押し返す程のパワーは出ないが、左手首がない事を隠しながら支えるくらいは可能だった。
あとは体の下に手首を隠し、『グレイトフル・デッド』の老化ガスで相手を誘き出せばいい。
こちらにまだスタンドを使える元気があると分かったら、確実にとどめを刺しに来るだろう。
誰だってそーする、俺もそーする。

案の定奴は現れた。
そのまま隠れ続け、スタンドが解除されるまで老いてくれてもよかったんだが、どうやらそう都合よくはいかないみてーだな。
どのみち敵は女だったようだから、遠距離からの老化ガスじゃ相当時間がかかっただろう。
出てきてくれて助かったぜ……
おかげで直を喰らわせてやれる。

「“直”は素早いんだぜ……ッ! 喰らえ、『グレイトフル・デッド』ッ!!」

己の手首を投げ飛ばす。
と同時に左手首部分にスタンドパワーを集中させ飛距離を伸ばす。
そして、驚愕に染まった女の首を『グレイトフル・デッド』の手首が掴み、“直”のパワーであっという間に敵の女はババアになった。
「ひいっ!」
――そう考えてた時期が俺にもあったんだがな。
やられたぜ。ツイテねえ、全く。
女が無造作に手を払った際、その手からシャープペンが発射された。
手で払われそうになったら、その手を掴んで“直”をお見舞いすればいい。
だが、シャーペンで撃墜された場合、俺にはもう成す術がない。
シャープペンに弾かれ軌道をずらされた左手首は、女の肩を掠めるようにして飛んで行った。
そして、そのまま地面を滑り闇の奥へと消えていく。

「ふ、ふふふ……ツイてる。やはり私は最高にツイテるわ……」
女が喉を鳴らして笑う。
確かに、“直”が当たらなかったのは痛恨のミスだ。
決まれば決着が付いていたはずだからな……
「うおおおおおおおおッ! 立てんッ! 何故だッ、世界一の科学力で作られた俺が何故立ちあがれないィィィィィッ!」
背中でシュトロハイムが暴れている。
そりゃ無理だ。世界一の科学力だか何だか知らねーが、鉄部分が多ければ多いほど俺にくっ付く事になるんだぜ。
ましてや足の一本は急ごしらえ、そんな状態で簡単に立てるほど今の磁力は弱くねえ。
俺の方もバイクや自販機のせいで立ち上がれそうにないがな……
幸い、腕を失くして機動力がガタ落ちしてるとはいえ、敵は『グレイトフル・デッド』の行動圏内。
俺が動いて射程距離に入れる必要は全く無い。
だがしかし、策もねえのにガムシャラに突っ込ませ、距離を取られたら洒落にならねえ。
そうなっちまったら完全に終わっちまう。

「プロシュートって言ったかしら? 最後に言うけど、アナタなかなか“ステキ”だったわよ。
 ほんの十数分の出会いだったけど、その行動ぶりから行動力があって
 仲良しクラブのチンピラにはない修羅場をくぐった経験からくる判断力があるということを私は感じたわ。
 最後には殺し合うけど、恋人になって手を組んでもいいなんて思ったりして。ウフフフ」
近くに停めてある車から順に、すでに数台が俺に向かって飛んできている。
そいつらを防ぐ方にスタンドパワーを使い老化ガスが弱まってきたからか、女に余裕が生まれてきた。
「ナメおってからにィ~~~~ッ! 助ける気など更々ないのだろう、貴様ァ!」
「当然よ。だってあんたら、DIO様の魅力には遠くおよばないもの。
 それに、私の瑞々しい肌を荒らされた恨みがあるしね。残念だけど死んでもらうわ」
右手首から先をどうにかして女にぶつけたい所だが、どうやらそれは無理なようだ。
さっきまでは体の下敷きにして何とか抑えこんでいたが、上半身同士は猛反発するみたいだからな……
おそらく俺と反発して、磁力が及ばない所まで飛んで行ってしまっただろう。
川に入って流されて行った可能性もある。
何にせよ、手首はもう諦めた方がよさそうだ。この戦いでも、その後でも。

「それじゃあさよなら。貴方の最後の抵抗は今後の戦いの参考にさせてもらうわ」
余裕綽綽と言った風に笑いながらも、女は慎重に辺りを見回す。
そして一歩、また一歩と近づいてきた。
そうやって磁力を強め、早期決着を狙っているのだろう。
『グレイトフル・デッド』を向かわせても、辿り着く前に車に押し潰されるだろう。
片手を失ってまで遠距離からの攻撃を選んだのだ、不意を突き一気に距離を詰められるほど『グレイトフル・デッド』は素早くないことくらい向こうも十分分かっている。
その辺はちゃあんと計算しながら歩いているようだ。あまり油断している様子はない。
自分の後ろに鉄製品が来ないかもきちんと確認しているように見えるし、頭も悪くはないようだ。
――隙がない。
おそらく、これ以上の攻撃を加えることはできないだろう。俺にも、シュトロハイムにも。

「恋人になって、手を組む……か」
入口付近に停められていた車全てが、今や『グレイトフル・デッド』へと圧し掛かっている。
体はギシギシと悲鳴を上げてきているが、その程度で意識を失うつもりはない。
マンモーニのまま死んでくなんて、俺は絶対ごめんだぜ。
「こっちから願い下げだぜ、お前のように醜悪な女はな……」
「……ああ?」
上機嫌な女の笑いが止まる。
そんな短気な性格じゃあ一流の殺し屋にはなれねえな。
……まあ、ウチにはもっと短気な奴もいるけどよ。

「自分に自信があるようだから、俺が教えておいてやるぜ……
 テメエは大した奴じゃねえ。女としても、磁力のスタンド使いとしてもだ」
この女を侮辱したいがために上っ面だけの皮肉を言っても、そんな薄っぺらい言葉じゃコイツには効果がないだろう。
だから、心から思う事を言う。あまり言いたくない本音だがな。
「生憎俺は知ってるんでな……お前以上にイイ女を……
 顔はアレだが、誇り高く美しい、尊敬に値する女をな……」
ああ、そうだ。
エルメェス・コステロ
エルメェスは、あのカーズ相手に真正面から挑んでいって命を落とした。
仲間のために、てめえの命も顧みないで。
そんな奴に助けられた命だ、簡単に諦めてやるわけにはいかねえ。
ましてや無様な命乞いをなんて出来ようはずもない。
そんなことをしたら、エルメェスやチームの奴らに顔向けできなくなっちまう。
そうさ、カーズを倒してマンモーニを脱却し、チームの奴らと真の栄光を掴むためにも、俺はここで屈するわけにはいかねえんだ。
体も、心も!
「それに……お前より遥かに凄い磁力使いも知っている……

                  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
                 てめえは雑魚だ。

 いいか、もう一度だけ言ってやる。てめえは雑魚だ。最強でもなければ強運でもねえただの雑魚だ。
 DIOって野郎にいいように使われてるだけなのに、自分までDIOのように凄い奴だと思い込んでいる、ギャングの下っ端のようなどうしようもないクズ野郎だ」
「言うとる場合かーッ! 来るぞッ、車がアアーーーーーッ!!」
シュトロハイムの絶叫を聞き、視線を女から外す。
先程までにじり寄っていた車が、誰か乗っているんじゃないかって程のスピードでこちらへと向かってきていた。
轢かれたらただでは済まないだろう。
「調子に乗りやがって……そのままぐちゃぐちゃのミンチになってくたばりやがれッ、ビチグソどもがアアーーー!」

ドスドスドスッ

「……え?」
女が間の抜けた声を上げる。
その体がぐらりと揺れるが、女は何とか踏みとどまる。
倒れてしまえば楽だったと言うのに。
「な……に……?」
距離からいって大したダメージは来ないだろうと判断し、『グレイトフル・デッド』で先程まで止めていた軽自動車を離す。
体にぶつかるが、せいぜい鈍器で殴られた程度の痛みだった。
真横に飛んできているため、俺の上に乗るシュトロハイムには大したダメージがないように見える(本来なら俺の体と共に車にぶつかったはずの左腕を、今のシュトロハイムは持ち合わせていない)
『グレイトフル・デッド』は、今は猛スピードで飛んでくる自動車を全身を使い受け止めている。
だがそれでも全てを防げるわけではなく、一台の自動車が右足へと吸い込まれた。
調べなくても分かる。
右足に乗りあげた自動車のおかげで、俺の右足はへし折れた。
「何が……起こ……」
だが、重症なのはこちらだけではない。
肩を貫かれた女の方も――いや、何が起きているのか分かっていない分向こうの方が深刻な状況と言えるかもしれない。

「さっきおまえの事『雑魚』だなんて言ったが、撤回するよ……無礼な事を言ったな……」
女の肩を貫通した“それ”が女の目に映る。
にわかには信じがたい。
そう言いたそうに女は“それ”を見つめている。
無理もない。
“血液中の鉄分が磁力に反応し、俺に向かって飛んでいこうとしている”なんて、そう簡単に信じられることではない。
俺自身、リゾットがやってるのを見てなきゃ鉄分で攻撃しようなんて思い付きもしなかっただろう。
「アイツにしか出来ねえと思ってた芸当を、意識をしてたわけでもないのにやってのけちまうんだからな……いやマジに恐れ入ったよ」
切り離した手首から溢れ出る血液を『相手の向こう側』に運ぶ。
それが最後の策だった。
流れ切った血液は“俺の体の一部ではなくなる”からな……反発し合う磁石じゃなくなり、鉄分を含むただの“物”となれば俺の磁力に反応する。
もっとも、俺の磁力が血液中の鉄分を引き寄せられるほどの威力になってないと、固まった血で攻撃することは叶わなかったんだがな。
だから、本当に女がただの雑魚で、対象を『血液中の鉄分をも引き寄せる程の磁力』に出来ない場合、俺はあのまま死んでいただろう。
「だが……お前はツイテない女だ。俺の手首をああやって弾いちまった時点で、ツキには逃げられちまってたのさ……」
この策は成功する可能性が恐ろしく低く、しかも敵の能力に大きく左右されるため、出来る事なら奇襲による“直”でケリをつけたかったんだが……
それが失敗した以上、何とか鉄分で攻撃するほかなくなっちまった。
俺にもシュトロハイムにも攻撃が出来ないと言うのなら、自滅を誘うしかないからな……
だから相手を挑発してスタンドパワーを出来る限り上げさせた。
スタンドは精神力に左右されるからな……怒りやスゴ味でそのパワーが増す事もある。
僅かでも可能性があるならそれをやっておきたかった。
更に、幸運にも血液は相手の肩から背中にかけてベッタリと付着してくれた。
地面に付着した血液だけでは足を抉るくらいしか出来なかっただろう。
だがしかし、背中に付いてくれた今、俺と血液を結ぶ直線状に、女の肩や胸が入っている!

そして俺は賭けに勝った!
女の体に付着した血液は俺の磁力に反応し、直線状にある障害物を突き破ってこちらへと向かう!
血液に『障害物を避けていく』なんて考えられる知能はねえ!
直線上にいた女の肩を、力任せに貫通するッ!

「ぐえッ!」
女の右肩が千切れ、真紅の刃が飛んでくる。
飛来する車を叩き落とすので『グレイトフル・デッド』は手いっぱいなため、刃を防ぐ事は出来ない。
肩から先を持って行かれる覚悟をしたが、予想に反し刃は眼前で墜落した。
見ると、女が白目を向いている。

――痛みで一瞬意識が飛んだか!

スタンドが解除されているッ!
今ならば届く! 奴がスタンドを再開させるよりも早く、命を奪える一撃が!
「外すなよ、シュトロハイムッ!」
言うより早く、シュトロハイムは自由になった右腕を上げる。
目標は足だけ上質のあの女。
銃の中に残ってるのはあと一発。
これを外したら、次弾を装填する前にスタンドを再発動されちまう!
正真正銘、これが最後のチャンスだ!

「ぶぁかめエェェェェェェェェ!
 我がナチス軍人に『銃弾を外す』などという言葉はなアアアァァァァァァいッ!!」
やかましいが、威勢だけの負け犬とは違うらしい。
ナチス軍人を自称するだけあって、銃の扱いにはなれてる、か。
発射された銃弾は女の胸にあっさりと吸い込まれていった。

「ビ、チ……グ……ソ……があッ!」

端正だった顔を醜く歪め、女は倒れた。
スタンドが解除されてるため大丈夫だとは思うが、念のため生死を確認しないとな……
「フン、礼を言うぞプロシュート! 貴様のスタンドとやらが体を張って車を止めたおかげですぐさま銃撃が出来た!
 車が圧し掛かっていては、腕が自由になったところで満足な銃撃は出来なかったろうからな!」
「大声出すなっつっただろ、学習しやがれ馬鹿野郎」
立ち上がったシュトロハイムは、頼んでもいないのに女の生死を確認に向かった。
追撃を加える様子がないことを見るに、女はちゃあんと死んでるらしい。
俺も立ち上がろうと圧し掛かるバイクをどけようとするが、上手く力が入らない。
……少し、血を流しすぎたかもしれねえな。
それに打撲の影響もあるか……
『グレイトフル・デッド』で勢いを殺したから、車が俺達に衝突する時のダメージは二人ともほとんど無かったんだが、
腕で叩き落とせず体で車を止めた時のダメージは丸々俺に来てたからな……

「……プロシュート。貴様は少し休んでおれ」
バイクをどかし、シュトロハイムが手を差し出す。
払いのけて一人で立ってやりたかったが、左手首を無くし右足もへし折れた状態では自力で立つのは難しかった。
仕方なく、シュトロハイムの手を借りる。
「悪いが、もうすぐ夜が明ける……
 そしたら俺は行かなきゃいけねえ……カーズの野郎と決着をつけるために、食屍鬼街へ……」
そうだ、俺は『マンモーニ』を卒業するため、何としてもカーズの野郎を倒さなきゃならねえ。
そのためには休むわけにはいかないのだ。
日が昇ったら奴の居場所を探しはじめなきゃならねえ。
「フン! ぶぁか者めえ、カーズにとどめを刺すのは我がナチスだッ!
 貴様一人で食屍鬼街に行かせるわけないだろうがァ~~~~~ッ。
 日が昇ったら俺も向かうわ! 貴様はのんびり亀の中にいるがいい!」
……確かに、こいつが付いてくることは予想済みだ。
だが、やるべきことを他人に丸投げするってーのは趣味じゃねえぜ。
「それに、『ここは殺し合いの会場で、自分の居場所を伝える事は愚策である』と言ったのは貴様だろう?
 あれだけ派手に音を立てたならさっさと移動せねばならんだろうがア~~~~~~!
 その体で素早く移動が出来ると思っているのか?」
正論だ、クソッタレ。
確かに今、俺はただの足手まといだ。
満足に歩くことすらできないのだ、このまま放っておかれたら騒ぎを聞きつけた人間に魚でも捌くかのようにあっさり殺されてしまうだろう。
コイツにどうこう言える立場じゃねえ。
あっという間にコイツ以上の重傷人になっちまったからな……
「安心しろ、放送はキチッとメモしておくし、向こうに着いたら起こしてやるわ!
 それまで精々体を休めておけい、大事な場面で倒れられたら困るからな」
確かに今は体を休めておくべきか。
『どんな手段を使ってでも自分の手でカーズを殺す』――それが俺の当面の目的だ。
自分の手で倒す際に貧血で倒れましたじゃあシャレにもならねえ。
休む間全ての事をシュトロハイムに任せるのも、“俺がカーズを殺すための一手段”としちゃあ悪くないな。
どうせ今の俺はマンモーニなんだ、情けねえだとか言ってられねえ……
そうだ、俺は無様に地べたを舐めてでも自らの手でカーズを倒す。
慣れ合うつもりはないが、必要とあらばシュトロハイムを頼ってやるさ。
「分かった……だが、大丈夫だろうな?
 仲間の名前が呼ばれたからって、ショックを受けてメモをし損ねるようじゃあ困るぜ」
「フン! 安心しろ、何が起きようとドイツ軍人はうろたえないッ!」
本当かよと思ったが、疑っててもしょうがねえ。
とりあえずはコイツを信じて、まずは体を休めるとしよう。
俺にとっての本当の戦いは、これから始まるんだからな……


【マライア 死亡】
【残り67人】


【G-7・駐車場/1日目・早朝】
【独伊二国同盟】
【プロシュート】
[時間軸]:ブチャラティに列車から引きずりだされた直後
[スタンド]:『ザ・グレイトフル・デッド』
[状態]:背中に傷、左手首喪失、左肩に銃創、右足骨折、全身打撲、貧血気味、マンモーニ
[装備]:スタングレネード、フルフェイスヘルメット
[道具]:基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:『カーズ』を倒したなら『マンモーニ』を卒業してもいいッ!
1.どんな手段を使ってでも自分の手でカーズを倒す。
2.亀の中で少し休む。
3.暗殺チームの仲間を探す。
4.トリッシュを確保する。
5.邪魔する者は倒す。
[備考]:亀の中にいます

【シュトロハイム】
[時間軸]:スーパーエイジャを貨物列車から奪取した直後
[能力]:ナチスの科学力
[状態]:左腕喪失、右足全壊、重機関砲大破、右目完全失明(紫外線照射装置大破)、左半身に軽度の打撲
[装備]:スタングレネード×2、レミントン・ダブルデリンジャー
[道具]:ココ・ジャンボ(プロシュート入り)、基本支給品
[思考・状況]基本行動方針:ゲームを脱出
1.ナチスの科学力は世界一イイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ
2.放送の後、食屍鬼街へ移動しカーズを倒す。
3.『柱の男』に警戒。
4.出来れば2までにJOJO、リサリサ、シーザーらと合流したい。



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キャラを追って読む

76:墓標のない墓場 ルドル・フォン・シュトロハイム 116:まっすぐ
13:一髪の幸運と不安 マライア GAME OVER
76:墓標のない墓場 プロシュート 116:まっすぐ

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最終更新:2009年07月08日 01:22