―――『運命が歪む』という言葉は『定められていた不変のもの』が『切り開かれて変わった』という、大いなる矛盾を孕む言葉である。
「命」を「運」んで来ると書いて『運命』とはよくぞ言ったものだが………そもそも運命とはどういうものなのだろうか?
誰に味方するのか? どう転ぶのか? あらかじめ決まっているものなのか? 自力で切り開くものなのか?
………わからないからこそ、人はそれを運命と呼ぶのかもしれない―――
#
「さて………承太郎は見ての通り、仗助にジョルノは腕を落とし、徐倫モドキは沸騰していずれも無力……
ジョニィとかいうやつはよくわからんが、ここにいない以上は数に入らん……
となると、ジョナサンにジョセフ……きさまたちにとどめをさせば、無駄に長く続いたジョースターの血筋も全滅へ一直線というわけだ……」
「そうはさせない……! 二対一だが、ここまで来て綺麗事は言っていられない……ぼくら二人でおまえを倒すッ!!」
「おれたちを吹っ飛ばしただけで生かしといたのは失敗だったって、思い知らせてやるぜッ!!」
ジョースター側の闘志は十分……だが、敵であるDIOは未だに強大。
これまで少しづつダメージを与え、傷の修復にエネルギーを使わせてはいたものの……ジョースター側の被害と比べれば微々たる物。
彼らの闘志など勝負に全く影響しないと判断するDIOの自信を崩すには値しなかった……が!
「わからんやつらだ……きさまら古い世代を大して戦闘力も削がず、痛めつけただけで残しておいたのは何故だと思う?
……スタンド使いですらないきさまらなど、赤子の手をひねるよりも簡単に始末できるからだッ!!」
「そりゃ暗闇で一対一、しかもおまえはスタンド込みでの話だろーが!
こうして明るい場所でおれとじいさん……夢のタッグが実現したからにゃあ、さっきみてーにはいかねーぜッ!!」
「フハハハ、面白いことを言うじゃあないか……だがきさまの記憶力はミジンコ以下か? わたしが時を止めていないという事実が抜け落ちているぞ?」
「……!!」
ジョセフの余裕の笑みと、無言でDIOを睨みつけるジョナサン……
その表情に、むざむざ勝ち目の無い戦いを挑んできたわけではないことをDIOも感じ取ったようだった。
「フムウ、どうもきさまらの眼は何かを企んでいるように思えてならん……
おそらくは時止めの対策でも考えてきたのだろうが、先程と同じく……ムッ!?」
「「………!!?」」
一触即発の状況が動こうとした瞬間……DIOは気付いたッ!
ジョナサンたちのさらに後ろから何かが自分に向かって飛んで来たのをッ!
判断は一瞬………時を止めるべきか、否か?
DIOの答えは―――否!
「どっけェェェェェッ!!!」
飛んで来たもの―――人間の正体は
東方仗助ッ!?
なんと彼は腕のない状態ながらジョルノに無理を言い、自分も同じようにブッ飛んできたのだッ!!
狙いは当然…DIOッ!!
「無謀な……そんな惨めな有様で何ができるというのだッ!」
戦闘不能に近い彼が来たことでDIOが動揺―――しないッ!
その正体を見抜いた故に時を止めるまでもないと判断!
度肝を抜かれたのはむしろ味方のほうだったッ!!
「仗助ッ!? なっ! 何をやってるだァ―――――ッ!」
「オー! ノーッ! 信じらんねー! 何考えてんだこのガキ―――ッ!」
先の言葉に思わず道を開けてしまい、気付いて止めようとするも彼らの手は既に届かなかった……!
……さて、仗助には何か策があって突っ込んできたのか?
なにもない! 見よ! このブザマな姿を!
味方の援護にも、敵の脅威になるでもなく、しかも気まぐれで身をかわされればそのまま通り過ぎてしまうだけの存在ッ!
だが! だからといって仗助がこの戦いにおいて役立たずで終わりはしない! なぜなら!…
「出来損ないのダイヤモンドが! 割れただけでは懲りんというならば……望みどおりこなみじんに砕いてやろうではないかッ!!」
自らの眼前に降り立ち、腰を落とした仗助にDIOは容赦なく攻撃を浴びせようとするッ!!
対する仗助には両腕が無いが…どう攻撃するのか?
右の蹴りか、左の蹴りか、それとも体当たりか!?
「どらあああああああああっ!!!」
意外! それは――――――
髪 の 毛 ッ !
すなわち…
頭 突 き ッ ! !
まさか彼が頭で攻撃してくるとは……!
体当たりか蹴りが来ると予想し、下半身側を警戒していたDIOは虚を突かれた!
仗助の一撃は顎に直撃し……DIOのバランスを大きく崩したッ!!
「へっ……やっぱ『片足』じゃあバランスとりにくいようだな……DIOッ!!」
「グッ、その頭……侮辱されるとあれほど怒り狂うことからてっきり大事にしているのだと思っていたが……
ためらいもせず攻撃手段に使うとは、所詮口だけのぞんざい極まりない扱いだなッ!!」
DIOの言葉に、仗助は口を開いて言い返す。
静かに、しかし腹の底から響いてくるのがわかるほど力強い言葉で。
「どうやらおめーは、おれが髪型をけなされると怒ることは知っていても、この髪型にしてる理由まではしらねーようだな………
おれがまだガキのころ、原因不明の高熱で50日近く生死の境をさまようことになった日…おれとおふくろは『あの人』に出会った……
―――そういや、その熱もおめーの影響かもって承太郎さんが言ってたな………
感謝はしねーが、そういう意味ではあんたのおかげで出会えたってことなのかもなァ―――ッ!」
仗助が語ったのは、大雪の中どこからか現れた学ランにリーゼントの少年の話。
仗助と母親が彼に助けられた―――単純に言ってしまえばそれで済んでしまうほど短い、しかし大切な思い出話。
「結局、あの人にはまだ会えてねーし、どこの誰かも知らねー……
けど…あの人はおれの心の中に焼きついている「あこがれ」で「生き方の手本」なんだ……
だからおれはあの人と同じ、おれの髪型をけなすヤツをゆるさねーんだろう……
そいつはおれの『本能』なんだ………」
「他人が貶すのは許せんが、自分で使う分には何をしても自由と……そんな都合のいい―――」
その反論に仗助は怒りの表情を見せる。
先程の見境なしに切れたときとは異なる、静かな怒りの表情を。
「まだわかんねーか? あの人は自分の勲章であろう学ランを犠牲にしてでもおれを助けてくれた!
あの人は、自分のそれよりも大事なことがあるって理解してたからそうしたんだと思ってる……!
だったらおれも! おれがおれである理由の髪型を犠牲にしてでも、それより大事なおめーを倒すってことを成し遂げるのが………」
「あの人に対する『敬意』ってもんだろーがよッ!!」
仗助の持つ『黄金の精神』は、自分が何もできないまま守られるだけで終わることを決してよしとしなかったッ!
そのためならば一見どうしようもない状況においても……当たって砕けろで、道を切り開くことを選んだのだ!
その姿は役立たずなどではなく―――まぎれもないヒーロー!
仗助が役立たずと呼ばれることがあるとすれば、『黄金の精神』を彼がなくした時だけなのだ!
「……くだらんッ!!」
叫びとともにDIOは仗助の頭を殴り飛ばし……防ぐ手段の無い仗助はなすすべなくそれを食らってしまう!
頭蓋骨を完全に粉砕されはしなかったものの、おびただしい出血がその顔面を真っ赤に染めあげたッ!!
仗助はそのまま吹っ飛んでいったが……
「「うおおおおおぉぉぉぉぉ―――――ッ!!」」
「な、にィッ!!?」
バランスを崩したDIOの体にジョナサンとジョセフが飛びつき、後方へ体ごと押し出すッ!
触れたのは一瞬…波紋こそ流せなかったものの、DIOが倒れるその先にあったのは崩れた地面と……川岸!
彼らは自分たちごと、DIOをティベレ川へと突き落としたッ!!
「おめーが言ってたとおりなら、もう飛び道具はネタ切れだ!
つまり落ちてる最中なら、時を止めてもおめー自身が落ちきってからじゃねえと反撃はできねえッ!
おまけに下はそれなりに深い川……水しかねえし、ひとっとびでこの高さまで跳んでくるのは難しいぜ!
その上で、おれとじいさんを同時に仕留められるかァ―――――ッ!!」
「ほう、おまえらにしてはよく考えたものだ……おそらく発案者は承太郎か、もしくは……」
そう、これこそが彼らの狙い……仗助の一撃が、道を切り開いたのだッ!
ジョセフの叫びにDIOが驚き、そこへジョナサンが答えるッ!!
「思いついたのは……ジョルノだッ! こちらが何も出来ないなら、向こうにもなるべく何も出来なくさせればいい……
時を止める能力に対抗するには『行動を制限させる』必要があると!」
いかに『世界』の射程が10メートルあろうとも、自分だけなら波紋で要所をガードしておけば一撃で倒すことは困難!
さらに空中ならば、拾える瓦礫や割れる床も存在しない!
DIOが地上へと吹っ飛ばされる際、時を止めたにもかかわらず反撃に転じていないことから思いついたジョルノの策だった……!
「所詮そういう姑息な手に頼らざるを得ないのがおまえらの限界というものよ……
第一こんな浅知恵も、全員が着水してしまえば何の意味も持たん………
おまえらの頑張りも全て無駄というわけだッ!!」
「そんなことは承知の上だ……だから、その前に決着をつけてやるッ!!」
二人は理解していた……DIOの言った通り、自分たちにはもう後が無いことを。
背負うは、言葉などでは計り知れない多くのもの……形こそ大きく違えど、DIOにもそれはあるのだろう。
自分たちは『受け継ぎ』、DIOは『奪った』ものが………
ここまで来れなかった者たちの思いもまた受け継ぎ、二人は決戦に挑もうとしていた………!
「「ふるえるぞ(ぜ)ハート! 燃えつきるほどヒ―――ト!」」
波紋を練り、自らの必殺技を繰り出そうとする!
示し合わせたわけでもないのに、まるで十年来の親友のようにその息はピッタリだった!!
―――だがこのとき、ジョナサンたちには誤算があった!
「以前おまえはこのディオにとってのモンキーと、そう言ったのだったか……
だがおまえらの脳ミソはモンキー以下だジョジョ! そしてジョセフッ!」
その誤算とは―――想像を遥かに超える、DIOのしたたかさッ!!
「「刻むぞ(ぜ) 血液(波紋)のビー―――」」
「『世界』ッ!!」
DIOはなんと、『二人の腕を掴んだまま』時を止めた……これならば自分だけ落ちていくということはないッ!
波紋を流される前の一瞬の隙さえ突けば自分はノーダメージ!
ジョナサンとジョセフの息がピッタリだったのが逆にDIOにとって幸いとなったッ!!
「……フフ、ハハハ、フハハハハハハハ!! 頭は残しておいてやろう……
きさまらのボディなどもはや必要ないからな……必要なのは血液とせいぜい足の一本くらいよ……くらえッ!!」
驚愕の表情すら浮かべることができない二人を笑うと共に勝ち誇り……DIOは攻撃態勢に入ったッ!
相手のつま先を足場代わりにし……波紋使いの弱点たる両者の肺をブチ抜くッ!
二人は完全に無抵抗……承太郎も来ていない!!
その攻撃は、まさに勝敗を分ける一撃となった――――――
―――はずだった。
ピシガシグキゴキガキィッ!!
(な…なんだ? 妙だぞ……な…なぜこの腕が『奴らの体に触れた時点で止まっている』……?
なぜ『このDIOの身体が悲鳴を上げている』……?)
時の止まった世界で謎の攻撃を受けたのはこれで三度目―――しかも短い間に立て続けである。
衝撃を受けたDIOの腹がひとりでにブチ抜かれるのと同時にその体は後ろへと倒れ……再び落下し始める。
そして、上向きになったことによりDIOはそれを発見することができた。
そのまま時が動き出した直後、二人の服の腹の部分から『羽虫』が飛び出てきたのを。
そしてその向こう……川岸に立ち、こちらを見下ろすジョルノの姿と……彼の口元が動くのを。
―――最初の時も、腹をブチ抜いただけでぼくに止めを刺さなかった……
―――勝ち誇りたいがゆえに『詰め』を誤る、あなたはそういう人だ……
―――再びどこかで、必ずこんな瞬間が来ると、そう思っていた………
―――『羽虫を踏み潰すのにいちいち理由を求めない』と言ったが、その羽虫に逆に潰された気分はどうだ………?
DIOは結論に辿り着いた―――今の現象は、ジョルノのスタンドによる『反射』だと。
おそらく二人の服の切れ端あたりを虫に変えて、彼らの腹に留まらせていたのだろう。
彼が腕を落とされる直前までジョナサン、ジョセフ共に近づいていないことを踏まえると、地下へ突入してくる前から仕込んでいたということになる。
「い、今……時が、止まっていたのか……?」
「あ、あぶねぇ……なにかわからねーが、助かったッ!!」
そして二人は羽虫について知らなかった……!
敵をだますにはまず味方から……知らせればこの状況で微かに現れてしまうだろう余裕を消し、見事自分を欺いたのだ……!
しかも弱点の中でも問答無用で命を奪える頭や、首輪が爆発する危険のある喉を避け、波紋を使えなくなる肺を狙うと予想して!
(憎たらしいガキがッ…! このDIOから一本取ってやったとでも言うつもりかッ!)
一瞬忌々しげな視線を送るも、現時点ではどうしようもない。
あらためて、気を取り直した二人と相対する……!
彼らも、DIOの視線と表情から薄々感づいたようだった。
「どうやら、ジョルノがぼくたちを守ってくれたようだ……彼の意志に答えるためにもディオ! おまえを……討つ!!」
「DIO――ッ! ここが年貢の納め時ってやつだぜッ! おれたちの波紋でくたばりやがれ―――ッ!!」
「フン! 時止めは無駄になってしまったが……たかが一回きりを凌いだからといって、優位に立ったと思うなッ!
条件は先程と同じ……きさまら二人程度、物の数ではないッ!!」
「「行くぞ(ぜ)ッ!!」」
先に挑みかかってくるのはジョナサン!
だがDIOはその相手を『世界』に任せ……自分はジョセフのほうを向いたッ!
「ぬあんだァ~~~! さっきはおれの相手しないとか言っておいて、今度は自分から来るってのか?」
「きさまなど眼中に無いが……メインディッシュを一番先に平らげるのはマナー違反というものだろう?」
「マナー違反ンン~~? 料理を食うときおれが気にするのはンまいかどうかとムカつく奴が側にいないかってことだけだぜ――ッ!
そしてこのおれをナメるんじゃね―――ッ!!」
軽く見られたジョセフは憤慨(するフリを)しつつDIOの隙を伺うッ!
DIOはそんなジョセフを注視しつつ『世界』を相手するジョナサンにラッシュを浴びせるッ!
「WRYYYYY―――」
「おおおおおおお―――」
ジョナサンはなんと……それを正面から迎え撃ったッ!!
ド ド ド ド ド ド ド ド
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!!!」
「波紋疾走(オーバードライブ)連打ッ!!!!」
バ バ バ バ バ バ バ ッ
壮絶な拳の打ち合いが……スタンド対生身で行われる!
信じ難いことにジョナサンは『世界』のラッシュに対抗できていたッ!
その拳が完全ではないとはいえラッシュでは最強の部類に入る『世界』相手にであるッ!!
「す、すげえ……おれでも凌ぐのがやっとぐらいの連続攻撃に一歩も退くことなく打ち合えているッ!
波紋の威力もさることながら、真に恐ろしいのはそのパワーとスピードッ!
正直……DIOに負けたと聞いていたおれのじいさんがこんなに強かったとは予想外だぜ―――ッ!」
「随分と余裕だなァ、ジョセフ? 100年間でおまえだけだぞ……このDIOと戦う最中によそ見をして、そのままこちらを向かない者はッ!」
一方ジョセフも、DIO相手に善戦していた……いや、その表現は正確ではないかもしれない。
何故ならこの二人はどちらも自分から攻撃しようとはしなかったのだから。
ジョセフはDIOの身体能力を既に十分見ており……隙をつくらぬ限り自分から仕掛けるのは自滅行為だと理解していた!
DIOもジョセフが波紋で急所をガードし、カウンターを狙っているのがわかるため迂闊に攻撃できず…しかしこのまま時間が経てば経つほど有利になるのは自分ッ!
ゆえにお互い手出ししない―――
「ケケケ……そう言うんだったらおまえから攻撃してくりゃあいいんじゃあねーのォ?
ちとシャクだが、おれの波紋はじいさんよりかは弱いぜッ!?」
「ほう……攻撃すればいいと、そういったのか? 本当に、攻撃してもいいのかァ~~ア?」
―――と思いきや、DIOが動いた!
やや小さく振りかぶりつつ、ジョセフの顔面へと拳を繰り出すが……
波紋を込めて突き出された右腕の寸前でその拳は止まるッ!
「ヘヘヘ……どうやら本当に飛び道具は無し! そしておれに直接攻撃する度胸はねーようだなッ!」
「いや……攻撃はするぞ?」
「ほォ~~、どうやってェ~~?」
ジョセフの耳元まで顔を寄せたDIOが囁いた……いや叫んだッ!!
「こうやって……だ―――ただし、相手はおまえではないがなッ!!!」
「―――!?」
ジョセフの肩から向こう……DIOの視線の先にいたのはジョナサン。
―――そう、『視線の先』ッ!!
ド ッ ゴ オ ッ !
「「……!!」」
空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)………DIOの眼が割れ、そこからすさまじい圧力で光線のように体液が発射される!
ジョナサンは気付くことこそできたものの……"やはり"咄嗟に腕でガードしようとしてしまったッ!
体液はジョナサンの左手を易々と貫通し、その先―――脳に迫るッ!!
「ううっ……!!」
このとき、ジョナサンには周囲の光景がやけにスローモーションに見えていた……!
とっさに頭を振りはしたものの、両方共かわせそうにない……!
彼の脳内ではDIOの未知なる技に対して最初から回避を選択するべきだったという後悔しか浮かばず……
片方の体液は左肩を貫通、もう片方はそのまままっすぐ眉間へ――――――
「妙だと思ったぜッ! じいさんに執着してたおまえがおれの相手をするって言い出した時からなぁ~~ッ!!」
―――進んではじかれ、あさっての方角へと飛んでいったッ!!
動いていたのはジョセフ!
彼は自由な左手を後ろ手に回して何かをジョナサンの顔の前に突き出し、空裂眼刺驚を防いでいた……!
何かの正体は……空のショットグラス! 当然ただのではなく―――波紋グラスッ!!
「バカな……ッ!!」
「『きさまなぜわかった』と驚く」
「ジョセフッ! きさまなぜわかった……ハッ!!」
ジョセフの十八番が炸裂し動揺するDIO!
つい先程まで自分ですらその存在を忘れかけていた技に何故初見で対応できたのか!
その理由を、ジョセフが得意満面に喋りだすッ!!
「教えてやろうか……?
今おまえが使ったのはおまえがじいさんを倒した技……
じいさんはそのことを知らねーみてーだったから、さっき話してたときおまえはバカ笑いしたんだろう……?
まったく同じ手で、同じように倒されるじいさんを想像してな!!
この技を使うヤツはやたらと眉間を狙いたがるもんだから、うけるのは簡単だったぜッ!!」
付け加えるならグラスは彼自身の支給品で、暗闇の中DIOに吹っ飛ばされた直後、波紋レーダーで探知するべく取り出していた!
その後蛍が現れ不要になったものの、そのまま捨てずに持っていた…そのため首にかけていた赤石共々デイパックから奪われなかったのである!
だが、何故今この状況まで片手をふさいで持ち続けていたのかというと……
「話自体は前から聞いてたんだが、ハッキリ思い出したのはロードローラーを落とされてからここに来る途中だぜ……
『ディオがジョナサンを殺った必殺の能力』って言ってた奴を見てなぁ―――ッ!!!」
「………!?」
(ここに来る途中………? そんなわけがない。
教会内はくまなく探したが、見つかったのは牛柄の服を着ていたという男の肉片だけ。
トランプ越しの報告でも、新たに入ってきた人物など居ないはず………
そいつはいったい誰で、どこから沸いて出たというのだッ!!)
DIOの考える『そいつ』は沸いて出たわけではなく……ずっと『教会の中』にいた。
『彼』は数時間前に殺害され、犯人がある理由で床内へと引きずり込んだところで別の参加者の方に向かったため、そのまま放置された。
犯人はそのことを誰にも告げず、DIOたちもさすがに壁や床の中までは詳しく調べなかったため、彼の存在は知られぬまま時は流れ……
そして先程、ロードローラーに迫られたジョセフがダメ元で床を砕こうと踏み抜いたとき、偶然その真下にあったのが彼の死体!
彼の体の分だけ質量が別のところに移った石は強度が弱くなっており……ジョセフの一撃で粉砕!
ロードローラー側に集中した『はじく波紋』も合わさり、そのまま勢い余って地下まで突き抜けたことによりジョセフは助かったのである!
そして一緒に落下した彼―――
ストレイツォの死体がジョセフの目に留まり………思考がつながったジョセフは空裂眼刺驚を警戒していたのだ!!
「大変だったぜェ~~? グラスもそうだが策をうっかり顔に出しちまわないようにするのはッ!
だがその甲斐あって、ようやくおめーを『だます』ことができたけどなッ!!」
「ジョナサンの孫ジョセフ……やはり先に始末しておくべきはきさまだったようだ……!
きさまの言う『奴』とは……なにかわからんがくらえッ! そのニヤついた顔を吹っ飛ばしてくれるッ!!」
DIOは再び自らの拳を振りかぶり、ジョセフへと繰り出す。
攻撃部位は――――――宣言通りの顔面ッ!
これまでからは考えられないほど単調すぎる攻撃をジョセフは逆に怪しむッ!
(なんだ……なんか…スゲー嫌な予感がしやがる………けど、やるしかねえッ!!)
波紋でガードすれば相手が自滅するだけのはずだが、この状況でDIOが自暴自棄になったとは思えない。
だが迷う暇などなく……ガードしたジョセフの腕まで拳が到達したとき、彼は『それ』に気づいた。
(こりゃあ……冷てぇッ! 『凍って』やがるッ!? ヤベェ……これも確か話に聞いたことのある………)
見ていたジョナサンもすぐさまそれに気づき、脳裏に浮かんだ言葉を口に出す。
援護しようにも、彼は『世界』の相手で手一杯だった。
「『気化冷凍法』……!」
「ご名答……さて、どうするジョセフ? 先程のように自らに波紋を流し吹っ飛べばまだ間に合うぞ?
ただしそうすればきさまは上空に舞い上げられ、ジョナサンがこのDIOに倒されるのを指をくわえて見ていることしかできなくなる……
それとも、腕と頭の半分を吹っ飛ばされてでもこの場に残るか? あるいはそのほうがこのDIOにとって脅威になるかも知れんぞ?
選ぶのはおまえだッ!!!」
「チッ……チキショオォォォ―――ッ!!!!!」
ジョセフはやはり『はじく波紋』を使った。
殴られた衝撃と波紋のエネルギーが合わさり、ジョセフの身体は下に落ちる二人からすさまじいスピードで離れていく!
今度ばかりはロープを結びつけておくといったトリックも使えず………
残されたのはDIOとジョナサン、ただ二人ッ!!
「ジョジョォ~~! 最後の最後はやはりおまえと俺の一騎打ちというわけだッ!!
思えばジョースターの屋敷でも、俺たちはこうして落下しながら戦った……
だがッ! 今はおまえを助ける慈愛の女神像なんてものはない!
つまり……これでおまえの命運は完全に尽きたッ!!」
「受けて立つぞ、ディオッ!! だが、ぼくは負けるわけにはいかない……
きみとぼく二人だけのはずが、いつのまにか他人や子孫たちにまで大いなる迷惑をかけた青春もこれで終わりだッ!
守護する存在はいなくとも、ぼくにはここまで来れなかった仲間たちの思いがついている……
たとえこの命に代えようとも………おまえだけはここで倒すッ!!」
二人が見ていたのは相手の目か、それともそこに映る自分自身か、あるいは相手よりもさらに遠くにあったものか……それはわからない。
だがこのとき、確かに見たのだ……
一人は星を、一人は泥を。
そして次の瞬間には、どちらも全力で攻撃を繰り出していたッ!
大いなる目的のため……そして何より、目の前の宿敵を打ち倒すためッ!!
しかし……誰が予想しただろうか―――
―――それから数秒もしないうちに、勝負が見えてしまうことになるとは。
(く、まずい……)
右から襲ってきた『世界』の拳を肘で受け流し、続いて左からくるDIOの一撃を足で蹴り上げるッ!
だがそのときには既に体勢を立て直した『世界』の逆の腕が再び迫り、これを腕で受け止めるも今度はDIOが来て……
「どうしたジョジョォ! まるで防戦一方ではないか! 攻撃を繰り出さないとおまえの勝ちはありえないぞッ!!
落下する間に俺を倒すのではなかったのかッ!?」
ジョセフがいなくなったことにより敵はDIOと『世界』、実質二対一の戦いである。
そしてまずいことに………ジョナサンは片腕を負傷している上に人外相手の多対一はさほど経験していない!
せいぜい雑魚屍生人の群れと戦った程度ッ!!
体の一部が欠損しているもののそれでも基本の肉体は同じ、波紋と吸血鬼の能力を抜きにしてもスタンドの差は埋められないッ!
ジョナサンは速攻で相手を倒すどころか、徐々に追い詰められていった!
そして目にも留まらぬ攻防が数回繰り返された後、勝機を掴んだのは……!
「もらったァ! 死ねいッ!!」
「―――しまった……!」
―――やはりDIOッ!
浅い攻撃を繰り出すように見せて直前で引き、ジョナサンの迎撃を空振らせるッ!
ジョナサンが気づいたときには既に背後へと『世界』が回り込み、振りかぶっていたッ!!
(だめだ……こんなところでやられては、これまで頑張ってくれたみんなに顔向けが……
頼む、動け……動いてくれ……ぼくの体!!)
ジョナサンの背中に戦慄が走る、だが間に合わない。
大きく体勢を崩してしまった以上、背後にいる『世界』の攻撃をかわす術は――――――無かった………!!
「百年間の時を越え! これで遂に『真の決着』というわけだ……!!
ジョジョ! 貧弱なる人間の身でよくぞここまで戦ったものよ!
それに敬意を表しおまえたちのことは永遠におぼえておいてやろう……そう、言葉通り『永遠』になッ!!」
DIOが嗤う―――
「ジョセフ……承太郎……仗助……ジョルノ……
F・F……花京院……アナスイ……ジョニィ……すまない………!」
ジョナサンが覚悟を決める―――
「いまこそはっきり言おう―――さらばだジョジョ……我が永遠の友人よ!!!」
『世界』の腕がすさまじい勢いで―――
「あきらめるのはまだ早いぜ、じいさんッ!!!」
―――空を切った
「………!!?」
ありのまま、いま起こったことを話そう。
間違いなくジョナサンの頭を砕くと思われた『世界』の拳が振り抜かれたのは、その手前だった。
何故……? それは『世界』が直前で『後ろに引っ張られたから』である。
誰に……? かけられた声でわかるかもしれないが、先程戦線離脱したと思われていたジョセフである。
では、上空に舞い上げられたはずの彼がどうやって……?
「は……」
それを一番よく理解していたのは、DIOだった―――
「『隠者の紫(ハーミット・パープル)』ッ!!?」
―――遥か上から『世界』の首へと巻きつき、後ろに引っ張って仰け反らせていた紫色の茨を!!
「またまたやらせていただき……って、いんじゃァ~~? バカ言えッ! おれは生涯現役でいく予定だぜ―――ッ!!」
『隠者の紫』は本来ならば、彼の時代から五十年後に発現する筈だった。
だが、その原因はDIOの復活と『世界』の発現である。
時空が歪んだこの地において条件は揃い、DIO本人に近づいたことにより………ジョセフのスタンドは五十年の時を吹っ飛ばして今、目覚めたのだ!
そして、理解したら後は一瞬……上昇するジョセフはほとんど本能だけでスタンドを下まで伸ばし、正にジョナサンの命を刈り取らんとする『世界』の攻撃を逸らさせたのだった!!
「へっへっへっ、さっきから痛かった頭も、熱っぽかった体もようやくスッキリしてくれたぜッ!
そしてぇ~~~ッ、これで最後だ! 決めてくれじいさんッ!!
直接一発ぶちかませないのが心残りだが、あんたにまかせるぜッ!!!」
「一度ならず二度までも……おのれジョセフッ! そんななまっちょろいスタンドごときで割り込んでくるんじゃあないッ!!」
『世界』はすぐさま茨を引きちぎり、再び下へと向かう。
だが予想外の出来事に不意を突かれたDIOの反応が遅れたため、本体ならびにジョナサンとの距離が7メートル近く開いてしまった!
それだけあれば決着までは十分……!
「ジョセフ……本当に、ありがとう……必ず勝ってみせるッ!!」
ジョナサンは決意も新たに、その腕を再びDIOへと突き出す!
―――だがッ!!
「調子に乗るなよジョジョ! さっきからよってたかってこの俺をこけにしくさりやがってッ!!」
「………ッ!!」
ジョナサンの腕は、DIOの超反応によって掴まれていた。
次の瞬間ジョナサンの手が………凍り付いてゆくッ!!
「まだ気化冷凍法が残っているぞ………! 俺自身、まさかこの懐かしい技を使うことになるとは思わなかったが……
おまえにとってはごく最近の話になるのかなァ~~!? さあどうするジョジョォ!
破る方法は考えてきたかァ―――!?」
「………!!」
DIOは知っているッ! このジョナサンが自分の手を炎で包むことで気化冷凍法を破ったのを知っているッ!
だが、火のない今の状況でそれは実行不可能ッ!!
波紋が流れなければ吸血鬼にスタンド使いであるDIOの勝利は絶対……!
果たしてジョナサンは―――なんとこの状況に似つかわしくないことに、穏やかな口調で語りはじめた……!?
「ディオ……きみは、ぼくなどが想像や伝聞でしか知りえなかった『下』から這い上がってきた……
手段は褒められたものではなくとも、その精神力は尊敬に値する………
だが、そんな昔が嫌いなゆえに……きみは自分の後ろを振り返りたがらないッ!!」
「なに………!?」
DIOにはそれがどういう意味なのかわからなかった。
『自分の後ろ』に何があるというのか……『過去』は関係ない、『背後』は川があるだけ。
その意味を理解したのは、ついに二人が白い煙に包まれた水面へと着水した、まさにその瞬間だった。
(……!? 待て、『煙』だと……? こ、これはッ! この川は『水』ではない………!!)
『熱 湯 ッ ! !』
「この熱湯はッ うおおおこの熱湯はッ! 君がF・Fに突きさしたDISCの能力だァァ――――――ッ!!」
「うぬおおおおおおおおお! F・F……徐倫め―――またしても『女』が邪魔をするかあッ!!」
―――ジョルノが暗闇の中で蛍に変えられたのは、自分の道具を除けば床の石をおいて他にはない……柱を変えると崩落の危険性があるからだ。
戦闘の最中、床石が無くなって出来た空洞へF・F弾の当たりそこないが落ちて這いずっていき……さらに下にあった『地下水路』に辿り着いた。
そして水路から川へと流れる水はF・Fと差し込まれたDISCの能力により、熱湯へと変化していったのだ―――!
「UUOOOッ……! ダメかッ…! 凍らない……! 熱を奪いきれんッ!!」
気化冷凍法は生物の体内にある水分を気化させ、熱を奪って凍らせる技である。
だが腕を凍らせても周囲の熱湯に触れた氷はすぐに溶けて水に戻り、能力で熱湯へと変わっていく。
水が熱湯に変わる際の『熱エネルギー』がどこから来ているのかはわからないが……ともかくDIOが気化させる端から水分は熱湯へと戻り、熱を発生させるッ!
ウェザー・リポートの雨による増水はほぼ治まっていたものの、それでも彼らを囲む川は圧倒的水量……『逃走経路』などどこにもないッ!
F・Fが完全に死ねばDISCの効力も消えるだろうが………目の前の男がそこまで待つわけもないッ!
この瞬間、気化冷凍法は『破られた』ッ!!
(こ…こんな! バカなッ! スタンドは……まだ約3メートル、時は……まだ止められん。
な、なんてことだ……このDIOが、追い詰められているだと?
いつのまにかこのDIOがジョースターどもにやられて…ピンチに……ピンチに陥っているだと!?)
最初は自分が圧倒的に優勢だったはず。
ムーロロを通して相手の作戦を盗み聞き、先手を打ってそれぞれと一対一に持ち込み、その全てに勝利した。
だがいざ承太郎を始末しようとした辺りから、全てが狂い始めた気がする。
『偶然』いいタイミングでアナスイが現れ承太郎の始末に失敗、さらに片足を失った。
それを退けた直後、時を止めた瞬間に『偶然』着弾していたジョニィのスタンドによりまたしても承太郎を殺せずじまいに終わる。
その後は問題なく進んでいたはずだったのに……ジョセフが『偶然』の産物で二度の攻撃を防ぎ、ジョナサンを倒せなかった。
そしてこの状況で『偶然』入手し利用したDISCが思いもよらぬ形で自分に牙をむき、危機に陥っている。
「アナスイ、ジョニィ、ジョセフ、そしてこの熱湯………これらが……これらが全て『偶然』だとでもいうのかッ!!?
このDIOの『運が悪かった』と……そんなバカな話があってたまるかッ!!!」
まるで世界そのものを……『運命』を敵に回したような感覚さえ覚える。
世界を支配する能力を持つのは、自分のはずなのに。
「このDIOがッ! きさまらごときにイイィィ―――ッ!」
「……もう二度とそれを受けたりはしないぞ、ディオッ!」
苦し紛れにデイパックを投げつけ、その隙に空裂眼刺驚を撃つが……かわされたッ!
その動体視力と反応速度、そして孫の言葉で…ついにジョナサンは自らを死に追いやった技を回避したのだ!
さらに支給品が零れ落ちる中でも、彼が狙いを違える筈がなかった!
「ディオ……覚えているか? きみが吸血鬼になったあの日、きみは人間には限界があると言った……
その言葉自体は正しいのかもしれない………だが、ぼくが今こうしてここにいるのは人間だから―――皆が助けてくれたからだッ!」
「!?」
腕を大きく振りかぶったジョナサンがDIOに迫り……二人の間になにかが落ちてきた!
「ジョニィやアナスイはぼくらのことなんて碌に知らないはずなのに力を貸してくれて、おまえの手足を砕いた…
承太郎が何度も体を張ったことで、ぼくらは全滅することなく戦いを続けられ…
仗助の渾身の一撃があったからこそおまえを川に落とすことができ…
ジョルノの作戦と生み出した虫が時止めからぼくたちを守り…
ジョセフのひらめきも幾度となくぼくを救い…
徐倫でありF・Fでもある意志そのものがこの川だ―――」
落ちてきたものの正体は赤い石―――エイジャの赤石!
戦闘離脱を余儀なくされたジョセフが放り投げた最後の援護ッ!!
「それが……なんだというのだッ!!」
「わからないのか……? ひとりひとりの人間には確かに限界がある……だが、だからこそ人間は、ぼくらは力を合わせてその限界を越えられるッ!
おまえは従えた者は数多くいれど、終ぞ彼らと力を合わせて戦おうとはしなかった!
いくら人間を超越した力を持とうと、それがおまえの『限界』だッ!!」
残った全ての力を波紋に変え、右拳へと込める……!
「バカなことを……いかに助力があろうが、今ここにいるのはおまえ一人……それでこのDIOを倒せるものかッ!!」
「おまえを倒すのはぼくひとりの力ではない―――」
全力で、拳をDIOの身体へと叩き込む……赤石ごしにッ!
「―――自分ではない誰かのために戦える、皆の『愛』全てだァ―――――ッ!!」
アナスイ、花京院、ジョニィ、徐倫そしてF・F、ジョルノ、仗助、承太郎、ジョセフ、ツェペリ、スピードワゴン、エリナ、父親―――
そして自分自身の全霊を込め、ジョナサンは叫んだ!!
「茜色の波紋疾走(サンセットオレンジオーバードライブ)ッ!!!!!」
―――まるで沈んだはずの太陽が再び現れたかのような眩い光が迸る!!
「ナァァメェェェルゥゥゥなあああああァァ――――――ッ!!」
だが……数々の攻め手を封じられたとはいえDIOもまだ死に体ではない!
運命を敵に回そうが何だというのだ。
今自分たちがいる場所は時間も空間も、全てが歪んでいる世界ッ!
ならば彼らの世界で自分が敗北したのだとしても、その運命が歪まないという道理もない!
「―――全てに勝利し、全てを支配するのは…このDIOだァ―――――ッ!!」
ジョースターたちは既に満身創痍、策も援護も使い尽くした!
目の前のジョナサンにも後はない……彼さえ倒し、血を吸いさえすれば『勝利者』は自分ッ!!
肉体は同じ、自分は吸血鬼……波紋を流されるよりも自分が相手の胸元をブチ抜くほうが速いはずッ!!
「WRYYYYAAAAAA―――ッ!!!!!」
―――現れた光全てを覆い尽くさんとばかりに闇と死を掌る拳が走る!!
両者共に後のことなど考えない……乾坤一擲ッ!
最後の最後で、二人の拳が正面から迫りあったッ!
刹那、勢いは殺されぬまま交差しそのまま相手の胸元へと突き刺さるッ!
ここまできたら技術は関係ない…純粋なパワー比べ!
どちらが先に相手の肉体を砕けるかの勝負ッ!!
ピシピシピシピシィッ!
お互いの肋骨にヒビが入り、砕けていく音が聞こえる!
なんと、この期に及んでまだ互角ッ!
二人は力を振り絞り、吼えるッ!!!
叫ぶのは当然―――
「ジョオジョオオオォオオォ――――――ッ!!!!!」
「ディィィィオオオォオオォ――――――ッ!!!!!」
―――憎き相手の名ッ!!
そして―――
決着が―――
最終更新:2015年05月05日 08:06