第073話 ボス郎が繋ぐ縁 ◆jKyibSnggE
ジャガーが高原池から少し離れた辺りで、最初の放送が流れた。
そして、読み上げられた死者の中には魚住の名前があった。
あの時、カワシマに気絶させられたジャガーが目を覚ましたのは、全てが終わった後だった。
ボス郎は倒れ、カワシマが去ってしまい、全てが終わった後。
ジャガーはミッチーにメモを残すと、(カワシマがどこへ向かったのかも知らないまま)仇を討つべく
カワシマの後を追った。結局は道に迷ったのだが……
「ボス郎……変態だったがイイ奴、いや、イイ奴だが変態だった……」
なぜか言い直すジャガー。
しかし、それに突っ込む者はいない。
しばしの沈黙。
ジャガーは周囲を見回すと何事もなかったように言葉を続ける。
「それにしても、カワシマって名前が呼ばれなかったのはどういうわけだ? 確かに名前を書いたはずなのに……」
デスノートが偽者だと知らないジャガーは、不思議そうに首を捻る。
そもそもノートが仮に本物だとしても、既にハマーに使っているので効果はない。
が、ジャガーは
ルールをキチンと読んでいない。
しかもハマーのことは頭の中からさっぱりと消えているため、何故効果がなかったのか理解できずにいる。
「うーん……」
首を捻りながら歩き続け、そのせいで真っ直ぐ進めずにぐるぐると同じところを回り続ける。
しばらく回り続けたジャガーは、ふと思い立ったように顔を上げる。
「……はっ、まさかこのノート……」
ゴゴゴゴゴゴ
と、どこかの奇妙な冒険漫画のような効果音を流しながら、ジャガーは手にしたノートを疑惑の目で見る。
「まさか……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「にせ……」
――偽物!
「……本名じゃないと効果がないのか!?」
「『にせ』はどこへ行ったー!」と突っ込む者はいなかった。
* * *
デスノートは本名を書かなければ効果がない。
それは確かに正しいのだが……現状では的外れな推測。
しかしジャガーは、その間違いに気づくことはなかった。
「だとすると、カワシマが呼ばれなかったのも頷けるな。カワシマほにゃららって名前なんだろうが……。
例えば『
川島清志郎』とかかもしれないけど、確かめる方法もないしなぁ」
「当たってるよ!」と普段ならばツッコミが入るシーンだが、ツッコミ役が不在なので誰も突っ込まない。
と言うか名簿があるはずなのだが、ジャガーは見ようともしない。存在すら忘れているのかもしれない。
「それにしても、本名じゃなきゃ死なないとは不親切なノートだな」
と、ノートを意味もなくパラパラとめくりながらぼやくジャガー。
その手がノートのちょうど真ん中で止まる。
そしてジャガーは、そこに書かれた文章を読み上げる。
「……ハマー、屋根裏で餓死」
それは、ジャガーが最初にデスノートに書いたもの。
どうやら今まで本気で忘れていたらしく、ポンと手を打って思い出した様子を見せる。
「そう言えばハマーも死ななかったな」
先ほどの放送でハマーの名前は呼ばれなかった。
それも本名じゃなかったからだろう、との結論に達するジャガー。
「ってことは、『ハマー』ってのはあだ名だったのか……本名は何だったかな?」
よく考えればわかることだが、『ハマー』の本名を忘れているということは、放送でその本名が呼ばれたとしても
ジャガーがそれと気づくはずもなく、本当に『ハマー』が呼ばれなかったのかどうなのかは確認できないのだが……
それには気づかずに、思い出したくもないハマーの記憶を辿るジャガー。
部首の「さんずい」が多い名前だった気がするが、思い出せない。
「ま、いいか」
ワリとあっさり諦めるジャガーだったが、それに突っ込むものはやはりいない。
いつもならば(「諦めちゃったよー!」ガビーン)とかピヨ彦が心の中で突っ込んでくれるはずなのだが。
「くっ……ピヨ彦さえいてくれれば…………!」
突っ込み役の不在。
その事実が改めてジャガーに大きくのしかかる。
「このままだとマズイな。ツッコミ不在のせいで俺は……」
そこで言葉を切り、ふらふらと歩き始めるジャガー。
ツッコミ不在のせいでどうなるのか、それは誰にも分からない。
と言うか、たぶん何も起こらない。
* * *
「……」
放送から1時間ほど歩いて、ジャガーはE-03エリアに入っていた。
だがしかし。ツッコミ役どころか、誰にも出会わない。
このまま誰にも会うことなく平瀬村まで行くのか……と落胆しかけた時だった。
「む!? 誰か来る! 誰だ? ピヨ彦か?」
遠くに人影が見えた。
こちらに向かって来ている。
ジャガーはわくわくしながらその人物に向かって駆け出したのだが……
「オッサンかよ……(ボソッ」
「な、オッサン……!」
そこにいたのは、先ほどの放送で気絶から覚めた田岡。
彼は気絶から覚めた後、急いで平瀬村から離れようとしていた。
自分をいきなり気絶させるような輩がいる村には留まっていられないからだ。
幸い何も盗られたり危害を加えられたりした様子はなかったが、そんな幸運が二度続くとは思えなかった。
一刻も早く魚住や湘北メンバーと合流したいと思っている田岡は、彼らを探すべく走っていた。
ちなみに、田岡は気絶していてほとんど放送を聞いていなかったため、まだ魚住の死を知らない。
魚住と縁があったジャガーと出会うことで、田岡にどういう心境の変化があるか、それは分からない。
ただ一つだけハッキリしているのは、「魚住は田岡の存在に気づいていなかった」ということである。
【E-03南部/1日目・午前7時】
【男子17番
ジャガージュン市@ピューと吹く!ジャガー】
状態:健康
装備:なし
道具:支給品一式 DEATH NOTE(複製ver) ハガキ19枚
思考:1.ツッコミ役(できればピヨ彦)を探す
2.平瀬村でピヨ彦と高菜を探す。ハマーは探さない。
3.湘北メンバーに会ったらボス郎(魚住)のことを伝える
4.カワシマ(川島清志郎)が生きていることに気づいたので、出会ったら倒すかも
備考1:DEATH NOTEはジェバンニの複製バージョン。
よって人を殺す機能などは一切なし。
備考2:ジャガーは「DEATH NOTEは本名を書かないと死なない」と思っている。
【男子21番
田岡茂一@SLAM DUNK】
[状態]:疲労
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 拡声器
[思考]:1.突然現われた男(ジャガー)への対処
2.魚住、湘北勢と合流し、彼らを守る
備考:放送をほとんど聞いてないので、その内容(魚住の死を含む)を知りません
最終更新:2008年02月13日 21:27