第032話 がんばれ高菜 ◆SzP3LHozsw
「ちょっと……これどういうこと……(ガビーン)」
高菜は眼の前の惨状に唖然とせざるを得なかった。
こけつまろびつ、苦労して山を下ってきた高菜は、全身を泥に塗れさせている。
その高菜が見たものは、目的地と定めていた鷹野神社の成れの果てだった。
今や鷹野神社は、咄嗟にはそれが神社であったことさえわからないほど無残な姿へ様変わりしている。
壁板は砕かれ、柱は折られ、床は抜け……神社としての形状は何一つ保っていない。まるで廃墟だ。
辛うじて位置関係からその残骸の群れが神社であったことを教えてくれるが、それも元々ここに神社があったと知っていればの話である。
まだ辺りに粉塵が立ち込めていて、高菜は口の中がざらつくのを感じた。
破壊されてからそれほど時間が経過していないのかもしれない。
気味が悪かった。
どのような意図で、どのように破壊したのかはわからなかったが、こんなことをした人間が近くにいるかもしれないと思うとゾッとした。
高菜は恐る恐る周りを見回す。すると――。
「ぶはぁぶはぁ……た、高菜殿……! ちょ、ちょっと歩くの早いで……ござるYO……!
まあ拙者が……ごぶっ……ほ、本気を出したら高菜殿なんて楽に抜いちゃうん……はぁはぁ……だけどさぁ……。
でもほら……体力温存しとかないと……いざというときに……ゲホゲホ……困っちゃうでしょ?
だ、だから拙者は……フューフュー……ゆっくり歩いてきたんだYO……」
ハマーが現れた。(ガビーン)
高菜と違い、ハマーは全身泥だらけの上、全身汗みずくである。
しかも山を下ってきて疲れきってしまったのか、例によってハァハァしている。
「クサイ!」
高菜は一喝すると共に、ビチーンと遠慮のない平手打ちをかました。
打たれたハマーは一瞬困惑の色を見せた。
「や…やだな高菜殿、拙者はそんなに臭くないYO? むしろほら、ちょっと良い匂いするんじゃない?
いや、するよね? するはずだよね?」
「するわけねぇ!!」
「ヘナップ!(ガビーン)」
再びハマーを容赦なく引っ叩くと、高菜はなんだかやるせない気持ちになってきた。
虚しさと悲しさと恐怖とが綯い交ぜになり、変な気分だった。
自虐的思考が鎌首をもたげる。
――ああ、どうせ私はここで死ぬんだわ。こんなウジ虫を相手にしながら寂しく死んでいくのよ。
――アイドルにもなれず、人前でかわいい服も着れず、人知れず死ぬのよ。
――ウフフ、ある意味私にお似合いじゃない。だってダメダメだもんね私。どうせ生きる価値なんてないんだわ。
ガックリ肩を落とす高菜。
そこにハマーがやってきて、高菜の肩にポンと手を置く。
「元気出すでござるYO、高菜殿。拙者がついているじゃない。何の心配もいらないYO!」
いやらしい笑みを浮かべて、ハマーは励ますのだった。
高菜は「お前が居るから心配なんだろ」と思い、さらに気が滅入った。
【G-06/鷹野神社址/1日目・午前3時ごろ】
【女子5番
白川高菜@ピューと吹く!ジャガー】
状態:健康 精神的に疲労
装備:なし
道具:支給品一式(※
ランダムアイテムは不明)
思考:1.ハマーうざい
2.ジャガー、ピヨ彦、またはまともな人と会いたい
3.殺し合いから脱出したい
【男子27番
浜渡浩満@ピューと吹く!ジャガー】
状態:健康
装備:なし
道具:支給品一式(※ランダムアイテムは不明)
思考:1.不明
最終更新:2008年02月12日 20:44