第031話 菩薩の前で ◆SzP3LHozsw
長い階段を上り、苔むした古びた鳥居をくぐる。すると眼前に、これまた苔むした古刹が現れた。
先ほど地図で確認したところによると寺の名前はたしか無学寺だったはず。
磯崎泉は石畳を踏んで途中まで近づくと、一旦石灯篭の陰に隠れて素早く周囲を見渡した。
それから健康そうな脚を飛ばして一気に本堂まで走り寄り、壁に背を預けてそっと耳をそばだてる。
音は――大丈夫、しない。中に人は居ない様子である。
安全を確認したのち、泉は戸に手を掛けカラリと引くと、その僅かに開いた隙間へ身を滑らせた。
中に入ると少し慌てた様子で戸を閉める。
明り取り用に設けられた格子窓から僅かに月明かりが差し込み、堂内をぼんやりと照らしていた。
堂内は広い。
手前が板敷きになっていて、その奥は畳が敷かれている。ここからではよく見えないが、さらにその奥には本尊が安置されてるはずだ。
うら寂れてはいるが立派な造りで、元はさぞかし由緒正しき寺なのだろうと推測された。
窓から差し込んでいた明かりが急に翳った。月に雲でも掛かったのかもしれない。
それで堂内が完全な闇となったが、泉はかえってその方が落ち着くことができた。
先ほど地図で確認したところによると寺の名前はたしか無学寺だったはず。
磯崎泉は石畳を踏んで途中まで近づくと、一旦石灯篭の陰に隠れて素早く周囲を見渡した。
それから健康そうな脚を飛ばして一気に本堂まで走り寄り、壁に背を預けてそっと耳をそばだてる。
音は――大丈夫、しない。中に人は居ない様子である。
安全を確認したのち、泉は戸に手を掛けカラリと引くと、その僅かに開いた隙間へ身を滑らせた。
中に入ると少し慌てた様子で戸を閉める。
明り取り用に設けられた格子窓から僅かに月明かりが差し込み、堂内をぼんやりと照らしていた。
堂内は広い。
手前が板敷きになっていて、その奥は畳が敷かれている。ここからではよく見えないが、さらにその奥には本尊が安置されてるはずだ。
うら寂れてはいるが立派な造りで、元はさぞかし由緒正しき寺なのだろうと推測された。
窓から差し込んでいた明かりが急に翳った。月に雲でも掛かったのかもしれない。
それで堂内が完全な闇となったが、泉はかえってその方が落ち着くことができた。
「これからどうしよう……」
ずるずると崩れ落ちるように座り込むと、泉は思った。
頼れるものが一人も居ない状況で、どうやって生き抜けばいいのかを。
ずるずると崩れ落ちるように座り込むと、泉は思った。
頼れるものが一人も居ない状況で、どうやって生き抜けばいいのかを。
「センパイが居てくれたら……」
どんなに心強いだろうか。
泉は不安に震えながら、同じ学校の先輩に当たる瀬戸一貴のことを思い浮かべる。
喧嘩は大して強くないし、優柔不断で少々頼りない。
やることなすこと裏目に出るし、いつも最後には暴走して自分で収拾できなくなってしまう。
その上、妄想好きの大のスケベときている。
はっきり言ってここに一貴が居たしても果たして役に立つかどうか――。
けれども、泉はそんな一貴が好きだった。
どんなに危険であろうと、一貴が側に居てさえしてくれたらそれだけで無条件で安心できるような気がした。
だがここに一貴は居ない……。この島の何処かには居るんだろうが、側には居ない。
それは自分を守るのは自分自身しかないということを意味している。
泉はスカートのポケットに無意識に手を伸ばしていた。
そこにはあらかじめ支給された武器を忍ばせてある。ちょうどテレビのリモコンほどの大きさのもの。『スタンガン』である。
これでどれだけ戦えるかは疑問だったが、それでも何もないよりはマシである。少なくとも気休めにはなってくれた。
スカートの上からスタンガンを握り締める手に思わず力が入った。
泉は不安に震えながら、同じ学校の先輩に当たる瀬戸一貴のことを思い浮かべる。
喧嘩は大して強くないし、優柔不断で少々頼りない。
やることなすこと裏目に出るし、いつも最後には暴走して自分で収拾できなくなってしまう。
その上、妄想好きの大のスケベときている。
はっきり言ってここに一貴が居たしても果たして役に立つかどうか――。
けれども、泉はそんな一貴が好きだった。
どんなに危険であろうと、一貴が側に居てさえしてくれたらそれだけで無条件で安心できるような気がした。
だがここに一貴は居ない……。この島の何処かには居るんだろうが、側には居ない。
それは自分を守るのは自分自身しかないということを意味している。
泉はスカートのポケットに無意識に手を伸ばしていた。
そこにはあらかじめ支給された武器を忍ばせてある。ちょうどテレビのリモコンほどの大きさのもの。『スタンガン』である。
これでどれだけ戦えるかは疑問だったが、それでも何もないよりはマシである。少なくとも気休めにはなってくれた。
スカートの上からスタンガンを握り締める手に思わず力が入った。
カタ……
何かが微かに動く音がした。
泉はハッとなって顔を上げた。
気のせいと思いたかったが、今は神経が張り詰めている。どんなに小さい音でも聞き逃すことはなかった。
音は奥の方で聞こえたようだった。眼を凝らすがよく見えない。
泉はハッとなって顔を上げた。
気のせいと思いたかったが、今は神経が張り詰めている。どんなに小さい音でも聞き逃すことはなかった。
音は奥の方で聞こえたようだった。眼を凝らすがよく見えない。
(……まさかこの中に誰か……?)
泉は取り乱しそうになったが、そこはぐっとこらえ、息を殺し、音の出所を探ることに努めた。
もちろんその手にはポケットから出したスタンガンが固く握られている。握った手にじっとり汗が浮いていた。
もちろんその手にはポケットから出したスタンガンが固く握られている。握った手にじっとり汗が浮いていた。
眼だけで堂内を端から端まで隅々見回していく。
――といっても、殺風景な堂内だ。見回すほどのことでもない。
異変はすぐに感じられた。
ちょうど本尊が安置されている付近、黒い塊が動いた気がする。
タイミングが良いのか悪いのか、そのとき格子窓から月明かりが戻ってきた。雲が動いたのだろうか。
とにもかくにも、明かりは黒い塊を照らし出した。
人だった。人が寝ている。
運の悪いことは続くもので、泉は今度こそ恐慌に駆られ、手にしていたスタンガンを取り落とした。
シンとした堂内にカツンと大きな音が響く。
不味いと思ったが既に遅く、寝ていた男が起き上がった。
眠そうな眼をしばたたかせ、ここがどこなのか理解できないでいるのか、頭を掻きながら放心している。
歳は泉とさして変わらないくらいだろうが、身体は大きく、がっしりとしていて清潔なスポーツマンを連想させた。
そのうちその男が泉の方に頭を振り向けた。
――といっても、殺風景な堂内だ。見回すほどのことでもない。
異変はすぐに感じられた。
ちょうど本尊が安置されている付近、黒い塊が動いた気がする。
タイミングが良いのか悪いのか、そのとき格子窓から月明かりが戻ってきた。雲が動いたのだろうか。
とにもかくにも、明かりは黒い塊を照らし出した。
人だった。人が寝ている。
運の悪いことは続くもので、泉は今度こそ恐慌に駆られ、手にしていたスタンガンを取り落とした。
シンとした堂内にカツンと大きな音が響く。
不味いと思ったが既に遅く、寝ていた男が起き上がった。
眠そうな眼をしばたたかせ、ここがどこなのか理解できないでいるのか、頭を掻きながら放心している。
歳は泉とさして変わらないくらいだろうが、身体は大きく、がっしりとしていて清潔なスポーツマンを連想させた。
そのうちその男が泉の方に頭を振り向けた。
「……誰だ、お前」
男はさして興味も無さそうに呟いた。
【F-08 無学寺本堂内/1日目・午前3時ごろ】
【女子02番 磯崎泉@I''s (アイズ)】
状態:健康 若干の混乱
装備:100万Vスタンガン
道具:支給品一式
思考:1.流川に対処する
2.一貴と合流する
状態:健康 若干の混乱
装備:100万Vスタンガン
道具:支給品一式
思考:1.流川に対処する
2.一貴と合流する
| 初登場 | 磯崎泉 | ストロベリー・パニック! |
| 初登場 | 流川楓 | ストロベリー・パニック! |