第025話  青の決意 ◆z.M0DbQt/Q


落ち着いて状況を思い返してみよう。
メガネを月明かりに反射させながら、手塚国光(男子22番)はベンチに腰掛けていた。
自分は確かに全国大会の真っ最中だったはずだ。
全国大会2回戦目。
一度関東大会の初戦で当たった氷帝学園との再戦。
シングルス3。桃城は善戦したが忍足に敗れた。
ダブルス2。乾と海堂は自分達の個性を生かし、向日・日吉ペアに勝利した。
そしてシングルス2。
越前の成長を期待しシングルス2となった俺は、氷帝学園2年の樺地と対戦し、全力を持って彼を倒した。
その試合中に降ってきた雨で残りのダブルス1とシングルス1は翌日に延期になった。
降りしきる雨の中、一人で壁打ちを繰り返す大石を見、竜崎先生に大石のダブルス復帰をお願いして……。
それで、気が付いたらあの体育館にいた。
趣旨のよくわからない説明。
現実感の伴わない状況。
(だが……)
あの死体は。あの血の色は。あの匂いは。
「……どうやら……現実なのだと認識せざるをえないな……」
いつも以上に眉間の皺を濃くし、手塚は小さく呟く。
望もうと望むまいと、すでに自分は“殺し合い”の場に巻き込まれてしまっているらしい。
ならば、問題はこれからどうするか、だ。
体育館にいた頃からどのくらいの時間が過ぎたのかはっきりとはわからないが、手元にある支給された時計は午前0時30分頃を指している。
そして手塚のすぐ目の前にあるのは、人気のない薄汚れた小学校らしき物だ。
先程中を確認してみたが、埃のつもり具合といい汚れ具合といい、随分と長いこと使われていなかったらしい。
ということはここは恐らくG-3にある平瀬村分校跡、という所だろう。
眉間に皺を寄せ、手塚は自分が手にしている物をじっと見つめる。
月の光を小さく反射する、銃器。
『コルト・アナコンダ』。
説明書にはそう記載されていた。
これがこの銃の名前なのだろうか。
いくら老けて見えようと、手塚はただの中学生だ。
もちろん銃など見るのも触るのは今が初めてだ。
左手に収まっている銃はかなりの重量があり、手塚にその存在を訴えかけている。
(……人を殺すための道具を手にすると言うのは、あまり気持ちのいいモノではないな……。だが)
眉間の皺をさらに増やし、手塚は小さく唇を噛む。
越前。菊丸。竜崎桜乃
確認した名簿にあったチームメイト二人と知り合い一人の名。
“青学の柱”を自分から奪い取ると宣言した生意気な後輩。
不真面目でお調子者だが、テニスに賭ける情熱は本物の同級生。
あまり会話を交わしたことはないが、恩も義理もある顧問の孫。
彼らはなんとしても守らなければならない。
自分は青学テニス部の部長なのだ。
部員を守るのは、自分の仕事だ。
悲願であった青学の全国制覇を果たすためにも、何としてでも越前と菊丸、竜崎を探し出さなくては。
彼ら3人と再会し、無事にここを脱出できるまでこれを手放すわけにはいかない。
必要とあらば――――――――使うこともあるだろう。
自分と彼らを守るために。

「……何としてでも……」

彼らと共に帰ってみせる。
たとえこの手を血で汚すことになろうとも。



【G-03/平瀬村分校跡/1日目・午前1時半ごろ】
【男子22番 手塚国光@テニスの王子様】
状態:健康
装備:コルトアナコンダ(弾数6/予備弾24)@CITY HUNTER
道具:支給品一式
思考:1.越前、菊丸、竜崎を捜し出し脱出する
    2.1の目的達成のためには殺人も厭わない

投下順
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時間順
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初登場 手塚国光 悪魔の復活

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最終更新:2008年02月11日 14:56