第016話 孤高の傭兵 ◆SzP3LHozsw
「チ、簡単には外れそうもないか……」
海坊主は、太い首に嵌められた首輪を一撫ですると、さも面倒くさいといった風に顔を翳らせた。
指先で確かめただけだが、首輪の出来は『プロ』の目から見ても上出来と言わざるを得ないほどである。
複雑な作りになっているのは確かなようだった。無理に手を出せばドカンといくというのも本当だろう。
せめて工具でも揃っていれば話は別なのだろうが、生憎と手元にそんな気の利いた用意はない。
首を締め付ける息苦しさは忌々しかったが、安易に今すぐ解体というわけにはいかないようだった。
渋々、海坊主はここで首輪を外すのを諦めた。
ガードレールに腰掛けて、海坊主は腕を組む。その顔は渋いままだ。
背中へ吹きつける海風も、今は煩わしいだけだった。
海坊主は腹を立てている。
海坊主は元々生粋の傭兵である。謂わば戦闘のプロだ。
盲目となり、喫茶店のマスターに納まった今でも、腕は衰えていないし、プロとしての誇りも捨てたわけじゃない。
裏の世界では未だ現役だし、世界№1のスイーパーは俺だという自負もある。
それが、碌な戦闘経験もなさそうな一般人を相手に殺し合えと言われたのだ。海坊主の誇りは踏み躙られたようなものだった。
「フン! くだらねえ」
誰に言うでもなく、呟いた。
優勝しようと思えば、それは可能だろう。それだけの経験も、実績もある。――しかし、だからこそくだらないと思った。
仕事じゃないのだから金にはならない。また、殺し合わねばならない理由とてない。
すべてが無意味なのである。
スイーパーといえど、罪のない者を無意味に殺生するのは気分のいいことではなかった。
誰が何のために画策したことかはわからなかったが、無性に腹が立った。こんなことに巻き込んだ奴等を、捻り殺したいと思った。
海坊主はやおら立ち上がると、スッと足を上げ、それまで腰掛けていたガードレールを思い切り蹴った。
ガードレールが轟音とともに飴細工のようにひしゃげた。
あとには海坊主の巨大な足の形が、くっきりと型取られていた。
「……まずは首輪を外す道具を手に入れるか。どう動くかはそれからだな」
そう言うと、進路を北西に取った。
【D-08/車道/1日目・午前1時30分ごろ】
【男子02番
伊集院隼人@CITY HUNTER】
状態:健康
装備:なし
道具:支給品一式(※
ランダムアイテムは不明)
思考:1.首輪を外す道具を探すため、鎌石村に向かう
2.主催者達を殺す
最終更新:2008年02月11日 22:48