いへ

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 人々が寝起きして生活を営んでいるところ。家族などが住んでいるところ。家屋敷、土地などを含んだ空間全体。また、特に自分の住まいとするところ。わが家。 ※古事記(712)下・歌謡「妻が伊弊(イヘ)のあたり」
※土左(935頃)承平五年二月一五日「ふねよりひとのいへにうつる」
※徒然草(1331頃)五五「家の作りやうは夏をむねとすべし」
② ①に住んでいる人々。家族。家人。また、自分を含めた一家。家庭。 ※万葉(8C後)七・一一九一「妹が門(かど)出で入りの河の瀬を早み吾が馬つまづく家思ふらしも」
③ ①の中で、人が住むために作った建物のみを指す。家屋。屋。 ※日葡辞書(1603‐04)「Iyeuo(イエヲ) tatçuru(タツル)〈訳〉家を建てる」
④ 妻。家刀自(いえとじ)
⑤ 先祖から代々伝えてきた家族団体。また、それにまつわるもの。
(イ) 家名・家督・家系をいう場合。
※続日本紀‐天平宝字三年(759)六月一六日・宣命「慈び賜ひ上げ賜ひ来る家なり」
※宇津保(970‐999頃)国譲上「わがいゑつぐべきはこれか」
(ロ) 流儀、芸風などをいう場合。→いえの風(かぜ) ※歌舞伎・幼稚子敵討(1753)二「是は憚(はばかり)ながら印可は家の秘書。読立まする儀は」
(ハ) 家柄、門地をいう場合。 ※宇津保(970‐999頃)俊蔭「家貧しくして、思ふ程にしたてず」
⑥ 得意とするもの。得意芸。お家芸。 ※浮世草子・傾城色三味線(1701)湊「もとより虚(うそ)は我等が家」
⑦ 「いえもと(家元)」の略。 「常磐津の家(いえ)」
⑧ 「いえぼり(家彫)」の略。 ※浮世草子・昼夜用心記(1707)五「目貫は家(イヱ)の連獅子金の無垢」
⑨ 鎧の籠手(こて)の、布帛で仕立てた部分。籠手の袋。
⑩ (「亟」とも) 篳篥(ひちりき)を入れる箱。 ※長門本平家(13C前)一六「漢竹の篳篥の色なつかしきを、紫檀のいへに入て」
⑪ (「奩」とも) 鏡を入れておく箱。鏡箱。 ※俳諧・曠野(1689)員外「家なくて服裟につつむ十寸鏡〈越人〉」
⑫ 小さい道具類を入れておく箱のこと。茶道では、茶入れその他茶器類の容器。
⑬ 旧民法で、戸主の支配権で統率された戸主と家族との共同生活団体。
[語誌](1)現代では「家屋」を意味するイエは多く東北地方と近畿以西で用いられ、その中間の関東・中部ではウチの使用が多い。この分布は「家屋」としてのイエはウチよりも古い表現であることを示す。
(2)上代の文献では「家屋」はヤと表現されることが多く、イエ(いへ)はむしろ「家庭」の意味合いが強かった。
広辞苑 名詞 ➊居住用の建物。うち
①(普通は一家族の)人が住むための建物。
②特に、自宅。わがや 「―に帰る」
➋同じ家に住む人々の集合体。
①家庭。家族全体によって形作られる集団。特に旧民法で、戸主の支配権で統率された、戸主と家族との共同体。
「結婚して―を持つ」
②(「家のうちのあるじ」の意で)妻。主婦。 宇津保物語忠乞「左大臣の―、昔よりよろしからず心聞ゆる人なり」。
「お―はん」
➌代々伝えて来た家、またはそう見立てられるもの。
①祖先から伝え継がれる血族集団。
②祖先から伝え来た名跡。家名・家業や芸術・武術の流儀など。家元。 今昔物語集25「この保昌朝臣は―を継ぎたる(つわもの)にもあらず」。
「―を汚す」
③代々仕えてきた主君の家筋。おいえ。
➍家の状態。
①家産。家の財政。
「―が貧しい」「―を傾ける」
②名門。家柄。 徒然草「―に生れ時にあへば」。
「いい―の子」
➎(出家に対し)在家。俗生活。 徒然草「―にあり人に交はるとも後世を願はんに難かるべきかは」
➏小さな道具類を入れる箱。茶道で、茶入れなどの茶器類の容器。
大言海 名詞 寢戶 (イヘ)ノ義ニテ、 宿所 (シユクシヨ)ノ意カト云フ〕
(一)人ノ、住ムガタメニ作レル建物。 ()ヤケヤカヤカスイハ
古事記、下(履中) 十四 長歌「 火炎 (カギロヒ)ノ、燃ユル 伊弊 (イヘ)(ムラ)、妻ガ伊弊ノアタリ」
字鏡「家、伊戶」
倭名抄、十 十二 「家、人所居處也、伊閉」
(二)吾ガ家。自宅。 萬葉集、十五 二十四 長歌「()シケヤシ、 伊敝 (イヘ)ヲ離レテ」
「家ニ歸ル」家ヲ忘ル」
(三) (ツマ) 宇津保物語、忠杜 廿九 「フビンナルコトナレド、左大臣ノいへ、昔ヨリ、ヨロシカラズ、心キコユル人ナリ」
(四)ウカラヤカラ。家族。一族。 竹取物語「右大臣() 倍御 (ベノミ) 主人 (ウシ)ハ、寳豐カニ、家ヒロキ人ニゾオハシケル」
「家ヲ治ム」家ノ亂レ」
(五)先祖ヨリ相續シ來レル、代代ノ跡。 名跡 (ミヤウセキ) 家名 (ケミヤウ) 「家ヲ繼グ」家ヲ興ス」
(六)家柄。門地。 源、二十九、行幸 十二 「家高ウ、人ノオボエ輕カラデ」
(七)小道具ヲ納メ置クガタメニ、特ニ作レル小箱ノ類。 鏡奩 (カガミノス)ヲ、鏡の家ナド云フ、是レナリ。 萬葉集、四 四十四 「人事ヲ、繁ミヤ君ヲ、 二鞘 (フタサヤ)ノ、家ヲ隔テテ、戀ヒツツ居ラム」
倭名抄、十三「鞘、刀室也、佐夜」
下學集(文安)下、器財門「(サヤ)、刀子家也」

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最終更新:2024年05月06日 20:37