かた(方(名詞))

辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 名詞 ① 方向を示す。
(イ) (その方向に存在する具体的な物の名などを連体修飾語として伴って) その方向。
※古事記(712)中・歌謡「はしけやし 我家(わぎへ)の迦多(カタ)よ 雲居立ち来(く)も」
※万葉(8C後)五・八九二「父母は 枕の可多(カタ)に 妻子(めこ)どもは 足(あと)の方に 囲(かく)み居て」
(ロ) 方位。方位を示す修飾語を伴うことが多いが、陰陽道でいう場合などは、単独で用いられる。 ※古事記(712)中「南の方より廻り幸(い)でましし時」
※竹取(9C末‐10C初)「此の吹く風はよきかたの風なり、あしきかたの風にはあらず」
② その場所や地点。
(イ) (人を表わす連体修飾語を伴って) その人のもと。
※伊勢物語(10C前)一九「昔、をとこ、宮仕へしける女の方に」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)黒羽「黒羽の館代浄坊寺何がしの方に音信(おとづ)る」
(ロ) 場所。 ※土左(935頃)承平五年一月一六日「霜だにも置かぬかたぞと言ふなれど波のなかには雪ぞ降りける」
※更級日記(1059頃)「母、尼になりて、同じ家の内なれど、かた異に住み離れてあり」
③ 二つに分かれたものの一方。
(イ) 一方の側。人数を二組に分けたりする場合にいうことも多い。組。仲間。
※万葉(8C後)一三・三二九九(或本歌)「隠口(こもりく)の 初瀬の川の 彼(をち)方に 妹(いも)らは立たし 此の加多(カタ)に 我は立ちて」
※源氏(1001‐14頃)絵合「ひだりみぎとかた分たせ給ふ」
(ロ) (その組、仲間の意から) 味方。 ※両足院本毛詩抄(1535頃)一六「かまいて二心せいで武王のかたをせい」
④ 抽象的に、ある方向をさし、その方面に関する事物を表わす。連体修飾語を伴う。
(イ) その方面。それらに関する点。
※枕(10C終)三三「烏帽子に物忌つけたるは〈略〉功徳のかたにはさはらずと見えんとにや」
※栄花(1028‐92頃)月の宴「和哥のかたにもいみじうしませ給へり」
(ロ) そのような有様、様子、おもむき。 ※源氏(1001‐14頃)帚木「あまりむげにうちゆるべ見放ちたるも、心安くらうたきやうなれど、おのづから軽(かろ)きかたにぞおぼえ侍るかし」
※方丈記(1212)「様(やう)変りて優(いう)なるかたも侍り」
(ハ) そのようなこと、もの。 ※枕(10C終)一一九「思ひかはしたる若き人の中の、せくかたありて心にもまかせぬ」
⑤ 方角を示すことによって、間接的に人をさしていう。敬意をもった表現で、方角、場所などを表わす連体修飾語や、その人の呼称を表わす語を伴ったり、敬意の接頭語が付いたりする。 ※伊勢物語(10C前)二九「春宮の女御の御方の花の賀に召しあづけられたりけるに」
※虎明本狂言・夷大黒(室町末‐近世初)「又それにみえさせ給ふはいかやうなる御かたにて候ぞ」
⑥ 手段。方法。やりかた ※竹取(9C末‐10C初)「ある時はいはん方なくむくつけげなる物来て、食ひかからんとしき」
※宇津保(970‐999頃)吹上上「ゆく春をとむべきかたもなかりけり今宵ながらに千世は過ぎなむ」
⑦ (時間的な方向の意から) 頃。時節。 ※仏足石歌(753頃)「大御足跡を 見に来る人の 去にし加多(カタ) 千代の罪さへ 滅ぶとぞいふ 除くとぞ聞く」
※徒然草(1331頃)四九「忽にこの世を去らんとする時にこそ、はじめて過ぎぬるかたのあやまれる事は知らるなれ」
接尾辞 ① 他人の氏名などに付け、その人のもとに身を寄せていることを表わす。 ※鱧の皮(1914)〈上司小剣〉一「標札を出しとくか、何々方としといて貰はんと困るな」
② 人を数えるのに用いる。現在ではきわめてていねいな、改まった表現で、「一(ひと)」「二(ふた)」「三(さん)」に尊敬の意を表わす接頭語「お」をのせた形にだけ付く。 「おひとかた」「おふたかた」「おさんかた」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「いまひとかたは、ぬしつよくなるとも、かはらずうちとけぬべく見えしさまなるを頼みて」
③ 数量などを表わす名詞に付いて、だいたいそのくらいの意を表わす。→方(がた)(二) ※内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉八「程なうして印度米は、価格の三割方(ガタ)下落せんず」
語素 ① 方向を表わす。 ※伊勢物語(10C前)二一「いづかたに求め行かむと門に出でて」
② 名詞や、動詞の連用形などに付いて、ある一方の側、またそれに属する人たちを表わす。→方(がた)(一)② 「売りかた」「買いかた」
※万葉(8C後)一三・三二九九(或本歌)「初瀬の川の 彼(をち)可多(カタ)に 妹(いも)らは立たし 此のかたに 我は立ちて」
※浮世草子・好色万金丹(1694)三「あの客はわたくし方の一旦那、大印子(おほいんつう)有にて」
③ 名詞の下に付いて、それをする係であることを表わす。主として近世に使われた表現で、敬意は含まない。「まかないかた」「会計かた」「衣装かた」など。 ※上杉家文書‐明応六年(1497)七月五日・大関政憲外三名連署役銭注文「銭定可納分〈略〉一 壱貫九百文一之渡 此内二百苅奉納方 蔵本方 蔵人方あつかい」
④ 動詞の連用形に付いて、それをする方法の意を表わす。「書きかた」「作りかた」「教えかた」「買物のしかた」など。
⑤ 動詞の連用形、また動作性の漢語名詞に付いて、それをする意を表わす。 「打ちかたやめ」「事件の調査かたを頼む」
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉七「当春中所持の蒸気船亜人へ売払ひ方(カタ)に付家来村田蔵六花押これある証書を遣し」
広辞苑 名詞 ①方位。方角。方向。方面。 竹取物語「唐の―に向かひて伏し拝み給ふ」
②所。場所。 蜻蛉日記中「いかで涼しき―もやあると」
③手段。方法。 源氏物語若紫「ともかうも、ただいまは聞えむ―なし」。
「無念やる―ない」
④(動詞連用形に付いて)しよう。しぶり。方法。また、すること。 「話し―」「撃ち―止め」
⑤仲間。組。 源氏物語賢木「左右にこまどりに、―分かせ給へり」。
「東―」「母―」「味―」
⑥それに関係する人。それをする人。かかり 「寺―」「 囃子 (はやし)―」
⑦頃。時分。 伊勢物語「神無月のつごもり―」「暮れ―」
⑧(貴人を、その居所の方向で間接的にさしたことから)人を、敬意をもっていう語。 「あの―」
⑨住んでいる所。身を寄せている家。 「何某―」
大言海 名詞 (一){向フトコロ。ムキ (カハ)アタリ(ハウ) 伊勢物語、第八段「信濃ナル、淺閒ノ獄ニ、タツ煙、ヲチかた人ノ、見ヤハ咎メヌ」
「東ノ方」左ノ方」
(二)其方ノ人。クミナカマ 著聞集、十一、畫圖「天福元年ノ春ノ比、院(後堀河院)藻壁門院、方ヲ分チテ、繪ツクノ貝覆アリケリ」
「敵方」身方」勘定方」
(三){爲ベキテダテ。タヨリ方法(カタ)ノ一轉セル、(カタ)ノ意ナラムカ) 竹取物語「アル時ニハ、言ハムかたナクムクツケゲナルモノ來テ、食ヒカカラントシキ」
「造リ方」()方」歌ヒ方」方ヲツクル」

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最終更新:2024年03月20日 19:24