ける(蹴・蹶)

広辞苑
辞書 品詞 解説 例文 漢字
日本国語大辞典 他動詞 ける(蹴)〔五(四)段活用〕 落窪物語(10C後)二「只今の太政大臣の尻はけるとも、此の殿の牛飼にも触れてんや」
古今著聞集(1254)六「雲林院にて鞠を蹴られけるに」
[語誌]( 1 )文語文法において唯一の下一段活用動詞とされるが、平安時代の用例が少なく、不明な点も多い。和文における表記は「ける」が多いが、「観智院本名義抄」をはじめ、院政期鎌倉期において「クヱル」「化ル」等の表記もみられるところから、上代のワ行下二段活用「くう(蹴)」の未然・連用形「くゑ」が合拗音化して下一段活用の「く(ゑ)る」に変わり(その前に「くゑる」の語形を推定する考えもある)、さらにそれが直音化して「ける」になったものと推測される。
( 2 )江戸中期までは「けら」「けり」等の用例がないところから、四段活用の「ける」が登場するのはそれ以降と考えられる。→くう(蹴)くえる(蹴)
大言海 他動詞 〔古言下二段活用ノ()うノ口語調ニ、くるトナレルガ、(ツヅマ)リテ成レル語ナリ、名義抄「蹢、クル」字類抄「蹴、クル」敎訓抄(四條天皇ノ頃)七、舞譜名目「 𧿕足 (クヱルアシ)、左右アリ」〕
古言、クウコユ。足ノ先ニ力ヲ入レテ、突キ遣ル。此語、口語ニハ、連用形ニ、けり飛ばすナドトモ云ヘド、未ダ全ク、四段活用ヲ成サズ。
落窪物語、二「只今ノ太政大臣ノ尻ハけるトモ、此殿ノ牛飼ニ、手觸レテムヤ」
榮花物語、三十七、煙の後「殿上人ニ、鞠けサセテ御覽ズ」
今昔物語、廿三、第廿語「男ノ尻ヲ、フタト蹴タリケレバ、男、被蹴ケルママニ、忽ニ見エズ」(盜人ナリ)
盛𮕩記、三十七、景時秀句事、相模國、圓子川ニテ、梶原景時「河中ニテ、云云、沛艾ノ馬ニテ、鎌倉殿ニ、水ヲ、ササト()カケ奉リ、云云、梶原「 圓子 (マリコ)川、けれバゾ、波ハアガリケル」ト仕リテ」
宇治拾遺、二、十三條「尻けヨト云ヒツル相撲ニ」尻けムトスル相撲」
蹴・蹶
動詞活用表
未然形 ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし
連用形 たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても
終止形 ける べし、らし、らむ、ましじ、まじ
連体形 ける も、かも、こと、とき
已然形 けれ ども
命令形 けよ

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最終更新:2024年07月06日 17:26