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裏目

「ただいまー、りゅうじくん達と遊んでたらすっか遅くなっちゃった」
「つかさ!今何時だと思ってるの!?いくら大学生だからってこんな遅い時間まで
 遊びほうけるなんていい加減にしなさいよ!」
「うるさいな…お姉ちゃんの願い通りに沢山新しい友達っ作って楽しんでるんだしいいでしょ!
 もしかして今度は友達を作らないでお姉ちゃんみたいになれって言いだすつもり?」
「わ、私はつかさの事心配して…」
「…高校生の時、お姉ちゃんがそれを理由にして私に何をしたか、1日も忘れた事ないから」
「つかさ…」
「…私、多分これからもあの事を恨み続けると思う」
そう言って階段を駆け上がっていくつかさに私は何もいえなかった。

そう、あれは受験も終わって卒業間直になった高校3年生の3学期。
これから知り合いは誰もいない大学に一人入学するつかさを心配して
一人の環境に慣れさせようとこなたとみゆきにお願いして数日間の間
つかさと出来るだけ一緒に行動しない様にしてもらった。
二人ともあまり気乗りしなかったみたいだけど
これもつかさの為と言う私の言葉を聞き入れて
こなたは昼食は1年生のゆたかちゃん達と中庭で一緒に食べる様になって
みゆきも適当に理由をつけて避けるようになって、つかさは独りになった。
正直かなり胸が痛んだけど心を鬼にして私もつかさのクラスには顔を出さずに
自分のクラスで日下部達とばかり一緒にいた。
そして数日後、すっかり落ち込んでるつかさに見かねて私達はつかさを屋上に呼び
今までの事情を説明した。
誤解を解きさえすればまたいつもの4人に元通りに戻れると考えでいたんだけど
今思うと凄く都合のいい思い込みだと痛感する。

ドンッ
気づいたら私はつかさに両手で思いっきり押されて転んでいた
「かがみ!」
「つかささん、何を…?」
「ちょっと、つか…さ…?」
顔を上げた私が見たものは18年間で一度も見せた事の無い物凄い形相に睨んでくるつかさだった。
「……それって…お姉ちゃんがこなちゃんとゆきちゃんに私を無視するように吹き込んでたっていう事…?」
「ご、ごめんつかさ、でも意味も無く無視してた訳じゃ…」
「一緒だよ!!せっかく残り少ないみんなといられる時間を大事にしようと思ってたのにメチャクチャにして!」
「つ、つかささん!落ち着いてください!」
「ゆきちゃんとこなちゃんもだよ!お姉ちゃんに吹き込まれたからってこんなひどい事するなんて!」
私達3人全員に倒して敵意を露にするつかさ。
「私、お姉ちゃんの事大嫌いになっちゃった、これでお姉ちゃんの思い通りベッタリはしないよ、良かったね」
そう言う捨ててその場を後にしようとしようとするつかさ。
「待ってよつかさ!お願いだから話を聞いて!」
それをこなたがしがみ付いて静止するんだけど…
「い、いや!!こなちゃん体をくっ付けてこないで!気持ち悪い!!!」
つかさの示した反応は完全な拒絶だった。
「つ…つかさ…」
つかさは足早に屋上を後にして私達3人だけが取り残された。

「…かがみ…私達がつかさにした事ってイジメと同じ事だったんじゃないかな…」
ショックで膝をついたままそう言うこなた。
「確かに…今思うと、ただの悪戯か愛の鞭かの思惑の違いはあったにせよ実際に行った行動は同レベルだった
 と言わざるおえません…本当につかささんに成長して貰いたいのでしたらもっとちゃんとした手順を踏むべきでした…」
「そ、そんな…つかさならきっと分かってくれると思ってたのに…」
「私ね…中学の頃友達全然いなくて一部の子からは無視されてたんだ…よく考えると私…その時の子達と
 全く同じ事してた」
一緒にいるグループの中で、ある特定の一人を相手にしないようにする。
…典型的なイジメの例と同じだった。
信じていた友達達にそんな事されてしかもそれを頼んでたのが姉だと知って…つかさはどれだけ傷ついただろう…



…これが切欠で私達4人の間には大きな溝が生まれてしまった。
もし高校生活がもうしばらく続いてくれたのなら毎日少しずつ、4人でじっくり話し合って誤解を解く事が出来ただろうけど
都合の悪い事にもう高校に通学する日数はもうかなり限られていて今の私達にそんな時間は残されてなかった。
つかさは、謝りたいと言う私達の言葉にも一切耳を傾けず
結局ちゃんと話し合う機会の無いまま私達は高校を卒業してしまった。
そしてつかさを除いた私達3人も卒業を機に疎遠になってしまった。
お互いの顔を見るたびにつかさの事が思い浮かんでしまってどうしてもぎこちなくなってしまうからだ。

大学に入ってからのつかさは本当に変わった。
今までに無い位活発になって、友達も沢山作ってサークル活動にもせいを出し
合コンにも数え切れないほど出て…最近じゃ彼氏まで作っている。

それに引き換え自分はどうだろうか…
高校の時つかさに心配してた事が、蓋を開けてみればそのまま自分に降りかかってくるなんて
思いもよらなかった。
あの時一人に慣れる必要があったのは…私だった…

いつからか私はつかさが怖くなってあんなに毎日説得しようと必死になってたのが
嘘みたいになってしまった。
高校時代の写真を見て仲良く写ってる4人を見て思わず涙が出る。
こなたとみゆきとはもう心が離れてしまってて、
昔みたいな親密な関係には戻れないだろう。
あの頃の優しいつかさももういない。
いや…大学の友達とかには以前の私達へのと変わらぬ態度で接しているのかもしれない。
だけどそれが私達に向けられる事はもう無い。

しかもそうなってしまった原因は完全に私の行き過ぎたおせっかいが原因なんだから
救いようが無い。
「みんな…ごめんね…」
皮肉にも高校時代、妹に対してしていた杞憂は完全に解決してる。
だけどその代償はあまりにも大きい……






コンコン…ガチャ
「お姉ちゃん、ちょっといい?」
私の返事を待たずにつかさがいきなり入ってきてあわてて涙を拭う
「え、あ…つ、つかさ、いきなりどうしたの?」
つかさから私の部屋に尋ねてくるなんて今はよっぽどの事じゃないかぎりありえない。
一体どうしたんだろう…
「………」
つかさはしばらく何もしゃべらないで私を軽く睨んだままでいる。
「う…」
私、またつかさを怒らせるような事したのかな…
そう思ってると意外な事を口にしてくるつかさ。
「…この前合コンでお姉ちゃんと同じ大学の子と仲良くなったんだけど…
 …良かったらお姉ちゃんに紹介してあげようか?
 まゆみちゃんって言う女の子なんだけど、結構いい子そうだから
 お姉ちゃんとも上手くやっていけると思うよ」
「え…」
「か、勘違いしないでね!べ、別に私はもうお姉ちゃんの事好きでも何でもないんだから!
 そ、そう!ただ何となくせっかく同じ大学なんだしそんな気になっただけだよ!」
「うん…ありがとうつかさ…」
「…それじゃあまゆみちゃんににお姉ちゃんのメアド教えて明日中に連絡させる様に言っとくから」
そういって部屋を後にしようとするつかさ。
「ねえ…つかさ」
「……何?」
「高校の時、つかさに酷い事してしまったのは私も1日も忘れてことないから…。
 つかさに嫌われても当たり前なのは分かってる…一生嫌われ続けても文句は言えない…
 だけどこれだけは言わせて、今は私達こんな関係になっちゃったけど…それでも私は今でも
 つかさの事が大好きよ」
つかさの肩がビクンッと、激しくすくみ上がる。もしかしてまたおた怒らせてしまったかな…?
ただのご機嫌取りだと思われてもしょうがないか…
「い、言いたい事はそれだけ。今晩は冷えるらしいからちゃんと暖かくして寝なさいよね…おやすみ…」
私はそう言ってつかさに背を向けた。



あとはつかさが部屋から出て行ってそれで終わるはず…だったんだけど
予想外の事が起こった。
いきなりつかさが後ろから私に抱きついてきたからだ。
両腕を私の胴体に回して痛い位にギュってしてくる。
信じられない…あの事件以来私には触る事すら抵抗を感じていたあのつかさが…
ああ…つかさに抱きつかれるのって1年ぶりだな…たったの1年前まではまでは
当たり前の様にしてきたスキンシップが凄く懐かしい…
「ヒック…エッグ…お姉ちゃんバカだよ…大嫌い…グスッ」
つかさは私の後頭部に額を当てて、声を押し殺して泣いている。
「つかさ…ウゥ…グスッ」
嬉しさと切なさで思わず私も涙が出てしまうけど
つかさを傷つけてしまった今の私には、
つかさに涙を見せる資格もつかさを抱きしめる資格も無い
私はつかさに背中を向けたまま顔を見られないように体を丸めて、
しばらく二人とも変な体制のまま一緒に声を押し殺して涙を流した。





「ねえ、お姉ちゃん…久しぶりにこなちゃん達に電話してみようか……」
「そうね…もうすぐ春休みだしどうせなら1年ぶりに会って見るのもいいかもしれないわね…」

卒業直前に作ってしまった深い溝
すっかり変わってしまった私達
そして何より各々が他人として過ごした空白の1年

きっと今から頑張っても私達4人は高校生の時みたいな関係に戻ることは出来ないだろう。
あの4人グループメンバーの、自分以外の3人が他の誰よりも一番の大親友だと呼べる様な関係は
とっくに終焉を迎えているからだ。
だけどその関係は無理でも…たとえ一番の親友とまで言える関係には戻れなくても…
今までとは違った新しい関係を築くことは出来るんじゃないか…

私はつかさに見守られる中携帯に手を伸ばすと、かつての大親友だった女の子の名前を久しぶりに…
少し震えながらクリックした。

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最終更新:2008年03月03日 07:41
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