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私の大学生活

今日は入学式。今日から私も大学生だ!!


私は本命の大学に落ちて、滑り止めの私立に行くことになった。
けど、そんなの気にしていたらどんなに楽しい大学生活も楽しめないだろう……。


初めての一人暮らし……不安はないと言えば嘘になる………。
今までずっと一緒にいたこなたやつかさもいない………。
寂しくないと言えばこれも嘘だ。

けど新生活への期待がそんなものを吹き飛ばしてくれる。
たくさんのいい友達に囲まれて、サークルに飲み会……。

もしかしたら彼氏も……。


かがみ「―――って何想像してんのよ!!学校は勉強する所じゃない…。でも、………。」

今まで、私に彼氏がいたことはない……けど機会がなかった訳ではない。
実際、高校時代だけでも何度か告白された……。
相手が相手だったのもあるが、やはり、つかさやこなたを放っておくことはできないと、いつも断ってきた。

かがみ「こなた………。」

一番の親友の名前を呟く。私はこなたを今までで一番の親友だと思ってた……そしてこれからも……。
けど、こなたにとっての私はそんなんじゃなかったみたい……。

―――卒業式の日。私はこなたに呼び出された。


かがみ「どうしたのよ、こんな所に呼び出して……。」
こなた「ん~ん。別に、深い意味はないよ……。ただ……。」


こなた「かがみん……私のこと好き?」


不意の質問に答えが出ない……こなたはどんな答えを期待しているのだろうか……。

かがみ「す、好きに決まってるじゃない。アンタは私の一生の親友よ。」

とりあえず、自分の正直な気持ちを伝える………。

こなた「私も好きだよ、かがみん。けどね……」
こなた「私はそれだけじゃ我慢できないんだ。」

その言葉が何を意味しているかすぐにわかった…。

こなたの今までに見たことのない表情。
こなたが近づいてくる……。

かがみ「ダメよ、こなた……そんなの絶対だめ―――。」


――――――。

かがみ「はぁ…はぁ…。」

無意識のうち私は走っていた。

後ろを振り返る。こなたの姿は見えない。
多分、追いかけてこなかったのだろう……。

かがみ「…でも、まさかこなたが……。」


私たちは本当に仲が良かった。三年の冬にはレズ疑惑が発覚したくらいだ……。
だけど、私は全然こなたをそんな対象として見ていなかったし、こなたもそうだと思っていた…。
それだけにショックは大きい……。

その後、こなたの様子を見に行こうか迷ったが、
もしこなたを見つけてもなんて言葉をかけていいか分からない。

その日はそのまま帰り、結局連絡も取らぬまま今日に至った…。


かがみ(最後の最後になんて事してくれたのよ、あのバカ……。)

3年間の思い出がよみがえる……どの場面にも浮かんでくる一人の少女……。

かがみ「電話してみようかしら……いいわよね、別に喧嘩したわけでもないし…。」

携帯を開く……画面に浮かび上がる文字は……。

かがみ「―――ってもうこんな時間!?」

やばい、急がないと遅刻だ…入学式で遅刻なんてかっこ悪すぎる……。
私はダッシュで家を飛び出し、大学へ向かった……。


司会「ただいまから2008年度DQN大学入学式を……。」

かがみ「ふぅ……ぎりぎりセーフね。」

ふと周りを見渡す。新入生の人数分だけ用意されているはずの椅子の半分も埋まっていない……。

かがみ「みんな、どうしたのかしら……。」

式が始まる…。続々と入ってくる新入生たち。

前で誰かが話していてもおかまいなしに……。

かがみ(全く…遅れてきたんだからもっと申し訳なさそうにしなさいよ…。)


学長「君たちは、未来を作る人であります。ですから………。」


DQN1「ねぇー、君。どこから来たの?」
かがみ「うるさいわねー。前で人が話してるのに、真面目に話聞きなさいよ。」
DQN2「おーいDQN1、もうだりーから、飯食いにいこーぜ!!」
DQN1「おー。」
DQN2「何話してたんだ?あの子結構かわいいじゃん。」
DQN1「俺もそう思って話しかけたんだけど、『前で人が話してるのに、真面目に話聞きなさいよ。』だってさ。全く、何しに大学来てるんだか…。」
DQN2「勉強だろ?」
DQN1,2「ぎゃははははは。」

かがみ(全く…私たち新入生のための式典なのに失礼な人たちね…。)


私以外のほとんどの人が真面目に話を聞いていない。
寝るのはまだいい、けど、大きな声で騒いだり、携帯電話を触るのはさすがに失礼すぎる……。

かがみ(まぁ、この手の式典って退屈なものだけど、それにしてもひどすぎるわ…。)


入学式が終わり、オリエンテーションが始まる。
すでにこの時点で複数人で行動している人も少なくない。

かがみ(同じ高校だった人同士かしら…でもまぁ、友達なんてすぐできるわよね。)

この時期は、誰もが新生活に不安と期待をもっている…。
周りの人も私と同じく友達がほしいと思ってるに違いない。
きっと、そのうち誰かが話しかけてくれるだろう。

そう安楽的な考えでいた……。



こうして私の大学生活はスタートした。



かがみ「…サークル活動かぁ。高校の時は何にもしてなかったし、大学では何かしてみるのもいいかも」
かがみ「でも、ナンパ系のお遊びサークルじゃなぁ…先輩に無理矢理やられたりするって話も聞くし…」
かがみ「といっても、体育会系なんて無理ね。高校時代、運動部じゃなかった人間がついていけるとも…」
かがみ「文化系って言ってもなぁ…なんか他の人に、オタクっぽいって思われるのも嫌だし、ヘンな思想系の
     サークルに、それと知らずに入っちゃったらヤバいしね」

かがみ「…まあ、無理して入ることもないわね。サークル中心の生活になって、学業が疎かになるのも怖いし。
     私には法曹になるっていう目的があるの! ふつーの大学生みたいに、遊び呆けている暇はないのよ!」

今思えば、果たしてこれが自分の本心だったのか、自信がない。
上手に人付き合いが出来ない自分を、体のいい言葉で正当化していたに過ぎなかったのだろう。


私だって、大学生活には正直いろいろと、希望や期待を持ってはいた。

新しい友達が出来て、一緒に講義を受けたり、たまには講義をサボってふらっと街の方に繰り出してみたり、
高校時代はほとんど縁がなかった男の子たちと、大学に来て仲良くなる機会があったり…
でも、大学では、そういう人との関係は、自分から相当自発的に、アクティブにならないと、作ることが出来ない
ものだ、ということを思い知らされてしまった。
大学でのクラスは便宜的なもので、高校の時みたいに終始、一緒にいるわけじゃない。
必修の英語や、情報処理の講義はクラス毎だけど、週に1~2回、同じ教室にいるだけでは、そんなに親密な
関係なんて出来るはずがない。
それでもなぜか、いくつかの集団に分かれて、結構和気藹々とやっていて、少し不思議だったんだけど、
入学式の後、実は学科ごとでのコンパがあったそうなのだ。入学の際に大学から貰った手続書類の中に、
その案内も入っていたんだけど、てっきり見落としていて、入学式が終わったら直ぐに帰宅してしまい、
その存在に気づいたのは翌週だった。

クラスでの付き合いに乗り遅れ、サークルにも入らなかった私は、あっさりと「キャンパスの孤立者」になってしまった。
救いだったのは、大学に入って一人暮らしをはじめたことだ。
実家にいて、家と大学をただ往復し、毎日遅くなることもなく帰宅したら、両親や姉やつかさから何と思われるだろう。
…そんな気苦労を背負い込まず、授業を受け、授業と授業との空き時間は図書館で勉強、終わったら即帰宅。
そんな砂を噛むような大学生活を続けていく中で、いつしか私は、以前はほとんど嗜まなかったインドア系の趣味に没頭していった。


ネットゲーム、2ちゃんねる、ニ○ニ○動画…
高校の頃、こなたがよくこんな話なんかして、突っ込んだり鼻で笑ったりしていたのだが、もともと私には
このテの趣味にはまり込むだけの「素養」はあったのだろう。
人付き合いもなくなり、体裁を繕う必要もなくなった私は、ごく自然にこっちの道に足を踏み入れてしまった。

…こんな生活も、まあ、慣れてしまえばそれなりに快適ではある。
いつしか私は、大学入学当初に感じていた寂しさを、あまり感じなくなっていた。
誰にも気兼ねせず、気ままに過ごす。けど学生の本分として、学業もきちんとする。
頼れる友人などいないのだから、きちんと自制しないと単位落としたり、留年しかねないからね。
一人暮らしだし、時間があるから、よく料理をするようにもなった。もともと食べることは好きだし。
つかさには敵わないまでも、一人暮らしなら、料理くらいできるようにならなくちゃね。
上達するにつれて、そこそこ手の込んだ料理を作れるようにもなった。これはこれで、ちょっと楽しい。

寂しくてきままで、それなりに「快適」な一人暮らしを続けながら、機械的に大学のカリキュラムをこなす日々。
大学生活や大学に「愛着」など生まれるはずもない。
楽しいはずの学園祭の期間は、私にとってはただの休暇だし、学生の溜まり場的な場所は私には縁はないし、
購買部はたまに使うけど、学食なんか、入学して一度も行ったこともない。定期的に使うのは授業のある教室と
図書館くらいだ。
入学する前に、心の中で淡く思い描いていた生活とは似ても似つかぬ、寂しさや空しさを、寂しい、空しいとすら
感じなくなった大学生活。

「…でもまあ、これからの人生でこれだけ自由な時間なんて、あるかどうか分からないからね!」

この言葉は私の本心なのか、自己欺瞞なのか…ああ、やめやめ。考えるだけ辛気臭いわ!


法学部では、3年からゼミがある。これを取るか取らないかで、私はちょっと悩んだ。

うちの学部、ゼミは実のところ必修でない。卒論もない。もともとは司法試験の受験者のため、
カリキュラムで過重な負担をかけるべきではない、という考え方から来ているようなのだが、この
ルーズさが、今の私には有難い。
ゼミが必修で、選択の余地がなければ、きっと私は憂鬱になっていただろう。

もしかすると、今の生活を変えるチャンスなのかもしれない。
「大学で友人知人を作れる最後の機会…卒業後も付き合いのあるゼミが多いって聞くし」
「なにより、大学に入ってこれを勉強しましたって言うからには、ゼミくらいには入っていないと」
「就活のとき、ゼミに入ってませんでしたって言うと評価が悪くなるって聞いた話が・・・推薦状も指導教授から
貰うのが普通みたいだし」

淡い期待らしいものを思い描く私の心の中で、もう1つの声が響く。

「…ここまで2年間、碌に大学の人間と付き合ってこなかったヤツが、いきなりゼミに入ったって、人間関係
つくれるはずないだろう」
「中で浮いたらどうする。ゼミコンパや合宿なんかあったら拷問だぞ。今のお前に耐えられるのか」
「お前は法曹を目指しているんだろ。就活なんか関係ない。学部を出たら法科大学院に入って、司法試験だ!
ゼミでコンパや合宿なんかに参加して、遊んでいてどうするんだ」

…今みたいな生活の「快適さ」に慣れてしまうと、今度は逆に、人付き合いが億劫になったり、自分を
集団に縛り付けることに、否応なく恐怖を覚えたりするのかもしれない。

…結局私は、3年時の履修登録で、ゼミを選択しなかった。
そしてまた、いつもと変り映えのしない、大学の後半生活が始まった。


3年になると、就職活動がらみで、周囲が少し騒がしくなる。
企業のインターンシップへの参加がどうだとか、個別での就職指導がどうだとか…
法曹志望の私はそんな喧騒も何のその。法科大学院進学に備えて勉強に励む毎日。
卒業に必要な単位も、3年終了時にはあらかた揃いそうだ。4年目はそんなに頻繁に学校にこなくて済みそうだ。
進学のための勉強に集中しよう。

ある夜、嫌な夢を見た。
誰だか知らないけど、正座した私に向かって、こんなことを説教している。

「お前は本当に法律家の道に進みたいのか?
大学生活が楽しくないから、法曹志望で学業に専念しなければならないという言い訳をして、
それにしがみついているだけじゃないのか?
遊んでいる暇がないんじゃない、今のお前には、遊ぶ相手すらいないんだろ!」

うるさい! あんたなんかに説教される覚えはない…って叫ぼうとした時、同時に目が覚めた。
開いた目の目じりから、つつっと涙が流れるのに気づいて、思わずぽつんと暗闇の中で呟いていた。
「やっぱり…寂しいのかな、私」


ま、アニメじゃあるまいし、そんな夢を見たところで、明日から生き方を180度変えましょう、って
具合にはならないのが現実。
つるんで嬉しがる年齢じゃないだろ、中学や高校のときとは違うんだから。
時計を見ると朝の5時ちょっと過ぎ。今日は授業はない、もう一眠りしよう…

4年になると「自由」な時間はさらに増えた。学校に行くのは週2日、しかも講義は1コマずつ。
大学にいる時間がぐっと減ったことで、気分はとてもラクになった。なんかヘンな気持ち…
大学生活はともかく、私には「法曹志望」という、人に聞かれても堂々と言える将来の目的がある。
それなりに学業もこなして、相応の成績も取っている。外面だけ見れば、そこそこ申し分のない「学生」だ。
…人生だってこれからが勝負だ。大学生活なんて、長い人生の中のほんの一部に過ぎない。
大学生活が楽しかったからといって、それは、その後の人生の充実を約束するものではない、逆もまた然り!

卒業式。
私にとっては楽しくも辛くもない、実態としては何もなかった、4年間の大学生活だった。

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最終更新:2008年04月19日 15:58
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