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寂寥の渦

みさお「よっし! やっと授業終わったぜ」
あやの「みさちゃん、お昼からほとんど寝てなかった……?」
みさお「そうだっけ? あ、そだ。あやの、今日は何か予定あんのか?」
あやの「う〜ん……特に無いかな」
かがみ「あれ? 今日もデートじゃないの?」
あやの「柊ちゃん、そんな毎日デートしてるみたいな言い方しないでよ」
みさお「そうだぞ〜、あやのは週1って決まってんだから」
あやの「みさちゃんまで……」
かがみ「そういえば峰岸のお相手ってどんな人なの?」
みさお「………………」
あやの「………………」
かがみ「あれ? どしたの?」
みさお「いや、なあ……?」
あやの「ねえ……」
かがみ「何よ? 気になるじゃない」
みさお「柊ってさ、5年も同じクラスだった割にはウチらのこと、全然知らないよな」
かがみ「え? いや……何よ急に」
あやの「み、みさちゃん……」
みさお「ってかずっと同じクラスだったこと自体、柊は気付いてなかったんだよな」(2・73)
あやの「みさちゃん、私たちのこと”背景”って言ったくらいだもんね」
かがみ「ああ、いや、それはさ……」
みさお「どうせあのチビッ子たちの方がいいんだろ〜。この薄情者〜」
かがみ「ちょっと待ちなさいよ」
あやの「柊ちゃん?」
かがみ「前から思ってたけどさ、同じクラスだから仲良くするって別に決まってるわけじゃないでしょ?」
みさお「……は?」
かがみ「だからさ、人の交友関係なんてそれぞれなんだから、私が薄情者なんて言われる筋合いないっていうの」
みさお「…………」
かがみ「だろ? 私がどこのクラスの誰と付き合おうが私の勝手じゃない」
あやの「柊ちゃん、それは言い過ぎだと思うわ」
かがみ「峰岸、日下部の肩持ちたいのは分かるけどさ」
あやの「柊ちゃん、友だちは似たタイプが集まるって認めてたでしょ?」(2・92)
かがみ「…………?」
あやの「試験勉強してた時のことよ。あれって泉ちゃんと妹ちゃんを私たちに重ねてたのよね?」
かがみ「うっ……確かに……」
あやの「あの時、ハッキリ”友だち”って言葉を使ってたわ。だけど……」
かがみ「…………」
あやの「さっきのみさちゃんへの言い方——友だちに対する言葉とは思えないわ」
みさお「そ、そうだぞ! あやの、よく言った!」
かがみ「な、なによ、2人して……」
みさお「柊って結構ウチらに対しては距離置くよな」
かがみ「そんな事ないじゃない。もしそうだったら今だってこうやって話してないわよ」
あやの「苗字で呼び合ってるのがその証拠よ」
かがみ「だ、だったらそれはそっちも同じでしょうが。私のこと”柊”って呼んでるじゃないの」
みさお「聞いたか? ”そっち”だってよ。完全に線引いてる証拠じゃね?」
あやの「そうね…………」
みさお「さっきの試験の時の話だけどさ、あやのがお菓子作るの得意だってあの時まで知らなかったんだよな?」
かがみ「……そりゃ……そういう話する機会なんてなかったし」
あやの「5年も?」
かがみ「…………」
みさお「その割には結構ズバズバもの言うよな。特に私にはさ」
かがみ「な、なによ? この上まだ何言うつもりよ?」
みさお「あやのに”私の教育間違ったんじゃないか”とか、無計画で自堕落だとか」(3・27)
あやの「言ってたわね、確かに。それにズボラだとも」(3・67)
かがみ「わ、悪かったわよ……。っていうかよくそんなに憶えてるな」
あやの「言った方は忘れてても、言われた方はよく憶えてるものよ」
かがみ「た、確かに……」
あやの「う〜ん……」
みさお「どした?」
あやの「さっきから考えてたんだけど、やっぱり柊ちゃんから壁を作ってるような感じがしてきたわ」
みさお「たとえば?」
あやの「私たちのこと、”仲いいけどケンカしたことあるの?”とか」(3・126)
みさお「そういや、私がゲームやるのも意外そうだったよな」(3・135)
かがみ「いや、だってあの時はほんとに日下部がゲームやるとは思ってなかったし」
みさお「柊とはクリスマスも遊びに行ったことないんだよな」(4・82)
あやの「もうかれこれ数年の付き合いなのに」
みさお「ロト6は当ててくんねーし」(4・20)
かがみ「あれは私のせいじゃないだろ」
みさお「せっかく遊びに行ってんのに本読んでるし」(4・22)
かがみ「あんたがアポなしに急に来るからだろ」
みさお「プリンのカラメルの時なんか私のこと、思いっきりバカにしたし」(4・30)
かがみ「誰だって悩みなさそうに見えるだろ」
あやの「それ、前にも言ってたわよね?」(4・113)
みさお「ニボシとかムンクとか……」(4・54)
かがみ「っていうかさっきから多すぎだろ」
みさお「柊は私をバカにして愉しんでるんだ! あやの〜〜」
あやの「よしよし」
かがみ「べ、別にバカになんかしてないわよ!」
こなた「やふ〜」
みゆき「お邪魔します」
あやの「珍しいね。みんなでこっちに来るなんて」
つかさ「えへへ、一緒に帰ろうと思って」
みさお「チビッ子、聞いてくれよ。柊がさぁ——」
こなた「ふむふむ。つまりみさきちは度々かがみにバカにされて悔しい……と」
かがみ「だからバカにしてないって——」
みさお「かがみは結構ズバズバもの言うからね〜。遠慮しないっていうか」
あやの「泉ちゃんもそう思う?」
こなた「その時はあまり感じないけど、後になって振り返ってみたらヒドイなってのはよくあるよ」
かがみ「ちょ、ちょっと。こなたまで何言うのよ?」
つかさ「お姉ちゃん、落ち着いて……」
こなた「でもそれって私も同じなんだよね。だから、その、ごめん」
みさお「…………なんで私に謝るんだ?」
こなた「私もみさきちにヒドイこと言ったからね。それはちゃんと謝らないと」(5・46-47)
みさお「ああ、あのことか」
こなた「うん、ほんとにごめん」
みさお「へー、チビッ子もそういうの、一応気にするタイプなんだな」
あやの「それにしては謝るの遅すぎないかな? おまけに知り合って日も浅いのにあんなコト……」
みさお「あやの、いいって」
あやの「でも……」
みさお「悪いって思って謝ってるんだ。それ以上言う必要はないって」
あやの「う……ん……」
みゆき「峰岸さん」
あやの「…………?」
みゆき「泉さんが何を仰ったのかは存じませんが、非礼を詫びるというのはなかなか難しいものです。
    時間が経っていようともそういった気持ちを持つことが大切ではないでしょうか」
みさお「お、いま眼鏡ちゃんが良いこと言った」
あやの「そう、ね」
みさお「チビッ子も気にしなくていいぜ。あやのだって私の代わりに怒ってくれてるようなもんだし」
みゆき「お二人は本当に仲がよろしいのですね。羨ましいです」
みさお「小っちゃい頃から一緒だったからな」
あやの「ごめんね、泉ちゃん。私、みさちゃんの事になるとつい……」
こなた「いいよ。元々は私が悪いんだし」
みさお「チビッ子は悪いと思ったらちゃんと謝るんだな。ちょっと安心したぜ」
こなた「…………?」
あやの「……そういえば柊ちゃんが謝ったことなんて一度もなかったわよね」
かがみ「ちょっと待ってよ。なんでそこでまた私の話になるわけ?」
あやの「あら、大事なことじゃない」
こなた「かがみってやたらと他人にしっかりしろとか言うよね」
みさお「ああ、あるある。そのくせ自分はだらしなかったりするんだよな」
つかさ「う〜ん……言われてみれば確かに……。でも家ではしっかりしてるよ?」
こなた「しっかりしてたらダイエットダイエットって言わないよ」
みさお「だよな。間食やめられないのも結局はだらしないからだしさ」
みゆき「あの、かがみさんが口うるさく言われるのは皆さんを想ってのことかもしれませんよ?」
かがみ「みゆき……フォロー嬉しいけど、”口うるさい”ってのはやめてくれない?」
みゆき「はっ!? これは失礼しました」
みさお「これからやろうって時に宿題やったか? とか」(4・129)
こなた「受験生なんだからもっと自覚持て、ってよく言われたよ」
みさお「いや、チビッ子はほんとに自覚持ったほうがいいんじゃね?」
こなた「な、なにおぅ!?」
あやの「まあまあ……」
みさお「あ〜でも私たちだけじゃなかったんだな。柊にイラッとしてたの」
みゆき「く、日下部さん……!!」
つかさ「ごめんね。お姉ちゃんも悪いと思ってるんだろうけど言い方がキツイから」
かがみ「ちょっとちょっと! なんであんたが謝ってんのよ!」
みさお「チビッ子なんてしょっちゅう言われてそうだよな〜」
こなた「まあ実際、いろいろ言われてるけどね」
あやの「どんな?」
こなた「バレンタインの思い出はゲームの中だけだって言ったら、”あんたの将来が心配だ”って」(1・12)
みさお「言いそうだよな。ちなみにあやのはそのテのイベントの時は大忙しだぜ?」
あやの「み、みさちゃん!!」
こなた「そういえば風邪ひいたからってお見舞いに行ったら、第一声が”帰れ”だったよ」(1・19)
みさお「うわ……ひっでーな」
かがみ「違うわよ。こいつがおちょくりに来たからよ」
こなた「私のこと、社交性ゼロとも言ったよね?」(1・30)
みゆき「そんな事ありませんよ。泉さんはとても外向的な方ですし」
こなた「”私たちと知り合う前に友だちいたのか”っていうのにはさすがに傷ついたよ」(1・30)
みゆき「かがみさん……それはさすがに言いすぎなのでは……?」
つかさ「そういえばお姉ちゃん、こなちゃんにはずいぶん厳しいよね」
あやの「みさちゃんに対してもよ」
こなた「みさきちはどんなこと言われてるの?」
みさお「詳しい話は遡ってくれれば大体分かるぜ」
あやの「っていうのもあんまりだから、つい最近の話だと——」
かがみ「わざわざ思い出さなくていいっての」
あやの「みさちゃんを”アレ”呼ばわりしたのは許せなかったわ」(6・90)
みさお「なにぃーー!?」
あやの「笑って取り繕ったけど、本当はすごく悔しかったのよ? あの時は——」
こなた「調理実習の時だね。私もついついみさきちと張り合っちゃうんだよね」
つかさ「峰岸さん、お料理上手だもんね」
あやの「妹ちゃんもお菓子作るのが得意なんでしょ? 今度教えてほしいな」
つかさ「いつでもウチに来てよ。あ、でもお姉ちゃんがいない時のほうがいいかな……」
かがみ「つかさ、あんた気を遣うとこ間違ってるから。だいたいこいつらの話鵜呑みにしちゃ——」
みさお「柊には散々バカにされてるけど、決定的だったのはこの前のテストの時だな」
こなた「テスト?」
みさお「英語の長文読解のところで中国人がどうこうって例文あっただろ?」
こなた「そんなのあったっけ?」
みさお「……おいおい、どっちがバカキャラなんだよ?」
こなた「むぅ……」
みさお「でさ、漫画とかに出てくる中国人ってなんで皆、語尾が”〜アル”なのか気になったわけよ」
こなた「あ〜そういえばそだね」
あやの「その時に柊ちゃんが言ったのよね。試験中はもっと別のことに頭使えって」
こなた「それはそうなんだけど、もうちょっと言い方があってもいいよね」
みさお「いやさ、別にそれはいいんだよ。間違いじゃないし。柊、その後にこう言ったんだ」
こなた「…………?」
みさお「”ああ、考えても分からないのか”ってさ」(6・109)
つかさ「…………」
みゆき「…………」
こなた「いくら何でもヒドイよ。私とかつかさでも同じこと言ったんじゃない?」
みさお「それはどうか知んねーけど、柊はそういう奴だぜ」
みゆき「かがみさん……見損ないました」
かがみ「あ、そ、それは悪かったわ。確かにちょっと言い過ぎだったかも……」
みゆき「ちょっとどころではありませんよ。人を貶すなんて最低の行為ですよ」
かがみ「な、なんでみゆきにそこまで言われなきゃならないのよ!?
    だいたい私、あんたには何も言ってないじゃない」
つかさ「お姉ちゃん……そういうところが反感買ってるんじゃない……かな……」
かがみ「は? どういうところよ?」
つかさ「その、お姉ちゃんってさ、私も含めてこなちゃんや日下部さんにだけなんか冷たいよね」
みゆき「たしかに……」
つかさ「でもゆきちゃんや峰岸さんにはそういうところ無いでしょ?」
みさお「言われてみればそうだよな」
こなた「要はアレだね。かがみは自分より上か下か決めてるんでしょ」
かがみ「な、なにがよ?」
こなた「みゆきさんは頭良いし、峰岸さんはおっとりしてるから遠慮して強く出られないと」
みさお「で、私やチビッ子には遠慮なくズバズバ言うんだよな」
こなた「つかさは妹だからそれこそ好き放題言えるしね」
みゆき「そういえば……私が以前、眼鏡をかけなかったので皆さんにノートをお借りしましたが、
    その件でも失礼な発言をされてましたね」(1・104)
つかさ「ああ、あったね。あれって割れちゃったんだっけ?」
みゆき「そうなんです。それで最初はつかささんと泉さんにお借りしたわけですが……」
こなた「あの後、かがみに見せてもらったとか?」
みゆき「ええ……借りておいて申し訳ないのですが……」
かがみ「こなたのは字が汚くて読めないし、つかさのは最後までまとめきれてなかったからね」
みゆき「その際にあの……”あいつらは役に立たない”と……」
かがみ「それ、内密にしてくれって言ったの、みゆきよね? なんでここで喋るわけ?」
こなた「自分が失礼な発言しておいて話をすり替えるのはどうかな〜」
みさお「だよな」
かがみ「ちょっとあんたたち、ほんとにいい加減にしなさいよ。私に何の恨みがあるのよ?」
あやの「みんな柊ちゃんに不満があるのよ。それは分かってもらわないと」
かがみ「っていうか何でそんな急に槍玉に挙げられるわけ!?」
みさお「そんだけ我慢してたってことだろ?」
みゆき「皆さん、かがみさんにはそれぞれに憤懣があるかと思います。ストレスを溜め込むのはよくありません。
    折角ですからここで吐き出して気分を落ち着けてはどうでしょうか?」
あやの「賛成ね」
こなた「私も〜」
かがみ「お前らな……さっきから散々言っといて——っていうかみゆきもどういうつもりよ?」
つかさ「まあまあ、それで皆の気が済むんだから」
かがみ「ふん! どうせつかさも言いたい事があるんでしょ!?」
つかさ「え? ええっと……」
みさお「妹〜遠慮しなくていいぞ。柊には何度もバカにされてきたんだろ?」
つかさ「——うん」
みさお「じゃ決まりだ。あ、その前にちょっと気になってた事があるんだけどさ」
みゆき「なんでしょう?」
みさお「時々さ、括弧が付いてるのって何だ?」
みゆき「それはですね、話題として挙がっている内容が原作何巻の何ページかを示しているのですよ」
あやの「どういうこと?」
みゆき「たとえば(1・19)ですと、1巻の19ページの出来事を指しているわけですね」
つかさ「なるほど〜〜」
みさお「じゃあ柊が一度ならず二度までも私らと5年間同じクラスだったのを忘れてた、って話をした時は?」
みゆき「(6・85)となりますね。実際には日下部さんの発言の後ろに付きますが」
みさお「おお〜! さすが眼鏡ちゃん!」
こなた「違うよ、みさきち。”みwiki”さんだよ」
みゆき「いえ、あの……それほどでも……」
つかさ「ゆきちゃんは学年トップなんだよ」
みさお「じゃあその眼鏡ちゃんからいってみようか」
みゆき「へ? あ、えと……」
こなた「あ〜みさきち、さっきも言ったけどみゆきさんは何も言われてないんだよ」
みさお「あ、そっか。眼鏡ちゃんは柊より”上”なのか」
みゆき「ひとつだけ許せない事はありましたよ?」
あやの「高良ちゃんが静かに怒ってるわ……」
かがみ「みゆき……?」
みゆき「かがみさんが私を”平均以下”だと言ったことです」(2・135)
こなた「言ってたね」
みゆき「些細な話と思われるかもしれませんが、あんな屈辱を受けたことはありませんでした……」
あやの「高良ちゃん、人一倍努力してる感じだもんね。博識だし」
みさお「つまり柊が眼鏡ちゃんを”下”に見た瞬間だったわけだ」
こなた「だよね」
かがみ「そ、そんな目くじら立てるような話じゃないじゃない。みゆき、プライド高いだけじゃないの?」
あやの「プライドだったら柊ちゃんだってずいぶん高い気がするけど」
かがみ「ど、どこがよ!?」
あやの「私が知ってる限りでも相当みさちゃんのこと、扱き下ろしてるよね?」
かがみ「そ、それはだから……私も言い過ぎたってさっき——」
あやの「みさちゃんを叩いたの、憶えてるよね?」(4・114)
みさお「………………」
あやの「あの時、柊ちゃんに元気が無かったからみさちゃん、相談に乗ってあげようとしてたのよ?」(4・113)
かがみ「…………」
あやの「それを何? 毎日が楽しそうだの、悩みが無さそうだのなんてよく言えたわよね」
かがみ「うっ……それは……」
あやの「そのくせ柊ちゃんの悩みなんて結局ダイエットの事だったんでしょ? くだらないわ」
こなた「なんか峰岸さんってイメージと違って怖いね……」
つかさ「そ、そうだね……私たちの出番ないかも……」
かがみ「じゃ、じゃあ日下部が悩むことなんてあるの? いっつもお気楽そうにしてるじゃない」
あやの「知ったふうなこと言わないで。みさちゃんのコト、何も知らないくせに」
かがみ「…………!?」
あやの「5年も同じクラスだった事すら気付かない柊ちゃんに偉そうに言われたくないわ」
みさお「あ、あやの……」
みゆき「まさかこんな修羅場になるとは思いませんでした……」 
つかさ「あ、あの〜。こなちゃんも言いたい事があるんだって。だから——」
こなた「えっ!? 私ッ!?」
みさお「チビッ子、言っちゃえよ!!」
こなた「えと、え〜〜っと……」
かがみ「何よ? 言いたい事があるんならハッキリ言えば?」
こなた「うん、と、いま思い出したけどかがみってけっこう場を白けさせるよね」
つかさ「あるよね」
かがみ「……いつ?」
こなた「流れ星に願い事3回言えるかってつかさと話してた時さ。
    かがみ、”どう考えても現実的に無理だ”って言ってじゃん」(2・130)
みさお「夢がないよな〜。宝籤一等当てても貯金するって言うくらいだしな」(4・112)
つかさ「それで願い事を早く言う練習してたら、”そんなのより勉強したほうが早い”って言われたよ」(2・127)
みゆき「かがみさんは現実的なのですね」
つかさ「う〜ん、そうでもないかも」
みゆき「…………?」
つかさ「前の初詣の時にね、お姉ちゃん、熱心にお祈りしてたんだ」
みゆき「何をですか?」
つかさ「私たちと同じクラスになれますようにって。お姉ちゃんだけずっと違うクラスだったから」(2・16)
みゆき「そういえばそうですよね」
こなた「そのくせ御神籤は吉凶は本人の頑張り次第で所詮運試しでしかないって言ったり」(2・19)
みさお「矛盾してるよな。っていうか柊はそんなにうちらと同じクラスになりたくないのかよう?」
かがみ「べ、別にそんなんじゃないわよ!」
こなた「でさ、そう言っておきながら今年の初詣ではちゃっかり合格祈願したらしいよ」(6・27)
あやの「それで落ちても実力不足だって潔く認めるのかしら?」
かがみ「そ、そりゃ……誰だってそういうお願いくらいするじゃない」
こなた「現実的なのに?」
かがみ「あんただって一度くらい、”神様仏様”とか言ったことあるだろ?」
つかさ「私とこなちゃんは”今年も皆で仲良く出来ますように”ってお祈りしたけどね」
こなた「血液型診断の時もそんな感じだったな」(1・126)
つかさ「こなちゃんがバイト始めた時なんか、”よくあいつを採用する所があったな”とか、
    ”労働に勤しむ図が想像できない”とか言ってたよ」(1・38)
みさお「柊ってさ、うちらには厳しいのに自分にはけっこう甘いよな」
あやの「というより自分勝手なだけじゃないかしら」
かがみ「なによ皆して——」
みゆき「私もだんだんそんな気がしてきましたね」
こなた「あ、そうそう。みさきちさ」
みさお「ん?」
こなた「私のこと、チビッ子って呼ぶでしょ?」
みさお「ああ、ちっちゃいからそう呼んでるけど? 嫌ならやめるぜ」
こなた「そういうんじゃないよ。別に何とも思ってないし。そうじゃなくて」
みさお「うん」
こなた「実は私のこと、最初に”チビッ子”って言ったのはみさきちじゃないんだよ」
みさお「柊か?」
こなた「正解。よく分かったね」(2・7)
みさお「この話の流れじゃそれ以外ないだろ」
みゆき「泉さんはかがみさんからずいぶん手酷いことを言われていますよね」
こなた「つかさもだけどね〜」
あやの「どんなこと言われるの?」
こなた「家にベルを置いてた時期があってさ。ほら、メイドさん呼ぶ時みたいなやつ」
つかさ「ああ、あったね〜」
こなた「メイドさん来ないかな、なんて言ったら、”ホンモノのバカだろ?”って斬られたよ」(4・41)
みゆき「まぁ……」
こなた「成人式で振袖着るって言ったら、七五三みたいだとか」(2・28)
みさお「わはは。そりゃピッタリだな!」
こなた「みさきち、さっきからどっちの味方なのさ」
みさお「もちろん、あやのの味方だぜ」
あやの「みさちゃん……」
みゆき「こういうのをフラグが立った、というのでしょうか?」
こなた「お、みゆきさんも分かってきたねえ」
みゆき「私なりに勉強しましたから」
みさお「同じ勉強勉強でも柊とは違うよな」
かがみ「………………」
こなた「……? どったの、かがみん?」
かがみ「さっきから好き放題言ってくれるじゃない」
あやの「今まで散々好き放題言ってきたのは柊ちゃんでしょ?」
かがみ「そう? 私は至極真っ当なことを言ってきたつもりだけど」
こなた「だからって何でも言っていいわけじゃないじゃん」
かがみ「あんたには言われたくないわね」
こなた「なんでさ?」
かがみ「あんただって相当な毒舌家だろ? 自覚無いのか?」
みさお「まあそりゃ一理あるよな。現に私に——」
こなた「認めるけどさ、私はかがみみたいに後に引きずるような言い方はしないよ?」
みゆき「泉さんはユニークさがありますものね」
かがみ「へえ、私に宿題やら課題を任せておいてよくそんな図々しいこと言えるわね」
つかさ「そこ突かれると私も弱いかも……」
みさお「だよな……でも妹には眼鏡ちゃんがいるんだからさ、今度からそっちに頼めばいいんじゃね?」
つかさ「うん……そうする。日下部さんは?」
みさお「あやのがいるからな。頼りになるぜ」
こなた「とか何とか言ってさ、本当は優越感に浸ってたんじゃないの?」
かがみ「どういう意味よ?」
こなた「バカの面倒見て、自分は優秀なんだって思いたかったんでしょ?」
かがみ「………………」
あやの「柊ちゃんにそんな気がなくても、周りにはそう見えてるのよ」
みさお「だからさ、これからはもうちっと穏やかに行こうぜ。な?」
つかさ「私もそう思う、かな」
かがみ「ああそうよ。あんたたちの言うとおりよ!」
みゆき「か、かがみさん……?」
かがみ「グータラでどうしようもないあんたたちの面倒を見てあげてたのよ。
    そのおかげで無事に卒業できるんでしょうが」
あやの「ちょっ、柊ちゃん! いくらなんでもそれは言い過ぎ——」
かがみ「峰岸は彼氏と仲良くやってればいいでしょ? ロマンスの欠片もない連中なんて相手しないでさ」
みさお「今のは聞き捨てならないよな」
かがみ「ああ、悪かったわね。あんたたちは幼馴染だったもんね。固い絆で結ばれてるってやつでしょ?」
みさお「………………ッ!!」
こなた「かがみ……今のはちょっと……」
つかさ「そ、そうだよ。日下部さんと峰岸さんに謝って……」
かがみ「別に謝るようなことじゃないじゃない。あ〜いいわよね、女同士の友情って」
みゆき「貴女には失望しました……」
かがみ「失望? ずっと前からしてたんじゃないの?」
こなた「か、かがみ……それって完全な逆ギレじゃん」
かがみ「ふん、寄って集って勝手放題罵った挙句に逆ギレだって? あんた、何様のつもりよ?」
こなた「何様って……」
みさお「あ〜なんかバカバカしくなってきたぜ!」
あやの「私も」
みさお「しょっちゅう隣のクラス行って淋しいとか思ってたけど、もうどうでもいいや」
あやの「そうね。どうして柊ちゃんを中心に立てて背景なんて考えたのかしら」
みさお「あれだよ、ほら、気の迷いってやつ」
あやの「そうかもね」
みさお「ってわけだ。チビッ子、柊はお前にやるぜ」
こなた「えっ!?」
みさお「”うちのかがみ”って言ってただろ。私らもういいから」(4・115)
こなた「ちょっと待ってよ。こうなったら私だってもうどうでもいいよ」
かがみ「私をモノみたいに言って果てはそれか。あんたらに振り回されるのもうんざりだわ」
つかさ「お姉ちゃん!!」
かがみ「ねえ、みゆき。こんな連中放っておいて勉強会でもやらない? 医学部狙ってるんでしょ?」
みゆき「勉強も大切ですが皆さんとのお付き合いも大切ですので。それにかがみさん」
かがみ「…………?」
みゆき「仮にもご友人にこんな辛辣な言葉をかけるような方とはご一緒できそうにありません」
かがみ「あっそ。みゆきはこいつらと違って悧巧だと思ったけど、すっかり毒されちゃったみたいね」
みさお「何だと!?」
かがみ「つかさ、帰るわよ」
つかさ「え、あ……えっと…………」
かがみ「つかさ!!」
つかさ「あの……ご、ごめんね、みんな!!」
みさお「ちっ! なんだよ、柊のやつ」
こなた「あんな子だとは思わなかったよね」
みゆき「以前から空気の読めない方だとは思っていましたが」
あやの「いいのよ、これで。わざわざ私たちが合わせる必要なんてないわ」
こなた「なんかスッキリしないね。どう? これから皆でカラオケ行かない? 親睦を深める意味でもさ」
みゆき「いいですね」
あやの「ふふふ、いつもみさちゃんとばかりだから新鮮だわ」
みさお「チビッ子〜アニソンばっか歌うなよ〜〜」
こなた「私はかがみと違ってちゃんと空気読むからね」
みさお「でも皮肉だよな」
こなた「なにが?」
みさお「このメンバーって柊を通して知り合ったわけだろ」
あやの「確かにそうね」
みゆき「人の出会いは偶然の重なりです。そこは特に思いを巡らすところではないと思いますよ」
こなた「そだよ。いちいちかがみのお陰とか思う必要ないって」
みさお「う〜ん……だよな!」
こなた「そうそう」
あやの「じゃあ行きましょ」








ふと2年前の出来事を思い出す。
っていうか何度目よ、これ。
さっさと忘れ去りたい過去なのに、ついついあの時の事が頭に浮かんでくる。
おかげで記憶から消えるどころか、繰り返し思い返しているために却って鮮明に残ってしまった。
なんであんな風になったのかは今でも分からない。
あいつらが言うように、心の中では私の口調に棘があると思っていたのだろうか。
そんなつもりは全然無かったのに。
漫才みたいなあいつらのボケに、私はただ冷静に突っ込み役をやっていただけだ。
白けるとか意味が分からない。
だったら私もあいつらに合わせていたらよかったのだろうか。
一緒におどけて、一緒にバカなこと言っていればよかったのだろうか。
自分が優等生だなんて思ったことは一度もない。
ただ妹がいる手前、頼りになるお姉さんでありたかったのは事実だ。
だから勉強もした。スポーツも日下部には及ばなくても平均以上の成績を維持した。
こなたや日下部の面倒を見たのもその延長だった。
優越感に浸りたかったわけでも、見下していたわけでもない。
だけどあいつらは私がそう思っている、と思っていた。

『グータラでどうしようもないあんたたちの面倒を見てあげてたのよ。そのおかげで無事に卒業できるんでしょうが』

なんであんなこと言ってしまったんだろう。
代わる代わるに責められて、つい弾みで出てしまった一言だ。
あの時、すぐに謝っていればこうはならなかったのかもしれない。
「………………」
似たようなことを大学に入ってしばらくしてから言われた。
どういうわけか私の周りにはとりあえず法学部を選んだ者ばかりいて、何を目指しているのか、
将来どうありたいのかというヴィジョンを何ひとつ持っていなかった。
それこそこなたや日下部みたいな。
その時はそういう人もいるんだという程度に考えていた。
人生は長い。
皆が皆、私と同じ歳で将来の夢を決められるわけじゃない。
私だって小学校時代には、総理大臣になりたい、なんて卒業文集に書いていた。
頭では分かっていた。
だけど……。
仮にも大学に入ってこれから専門分野を学ぶというのに、自分の進路が決まっていない連中が危機感も持たず、
サークル活動やらコンパやらに明け暮れているのが不愉快だった。
どうしてもっと真剣に考えないんだろう。
自分のことなのに?
そんな私の想いが知らないうちに言葉に出ていたのだろうか。

”柊さんと喋ってるとバカにされてる気がする”
”固いよね、あんたって。だったら私らなんか相手にしないで勉強してればいいでしょ”
”つまんねー奴”

席が近かったというキッカケだけで話すようになった友人たちは、次々に私から離れていった。
自業自得……なのだろうか。
私は何も間違っていないのに?
そんな彼女たちだって危ない時には私に試験の範囲を聞いてきたり、ノートを写させてくれと頼んできたのに。
どうして私がしてあげた事はいつもいつも仇で返されるんだろう?

「………………」
携帯を開く。
誰かからメールでも来ないかと期待していたけど、件数は相変わらずゼロ。

「つかさ……」
妹とは疎遠になった。
つかさは料理学校で気の合う友人を見つけ、勉強と称して食べ歩きに出ることが多くなった。

「こなた……」
こなたとはあれ以来、やりとりをしていない。
噂で日下部と同じ大学に入ったと聞いたけど、本人からはそうした報告は一度もなかった。

「みゆき……」
みゆきは希望通り医学部への進学が叶ったらしい。
私は彼女に一度も勝てなかったわけだ。

「日下部……」
もちろん日下部との交わりも途絶えた。
今頃はこなたと仲良くやっているのだろうか。

「峰岸……」
彼女は去年、彼氏と結婚したらしい。
盛大な披露宴が開かれ、日下部はもちろんこなたたちも招待されたと人伝(ひとづて)に聞いた。
だけど私のところにはそんな誘いは来なかった。


正直、何をどう間違ったのかが今でも判然としない。
なんで私だけがこうなったのかが分からない。
何がいけなかったのだろう。
私はこなたみたいにゲームが上手くない。
つかさみたいに料理が得意じゃない。
みゆきほど頭が良いわけでもない。
日下部みたいにスポーツが得意なわけでもない。
峰岸みたいに彼氏がいたわけでもない。
「なんでよ……私の……どこが悪かったっていうのよ…………」
次の試験のためにノートの整理をしていた私は、開いていたページが濡れているのに気付いた。







  終

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最終更新:2009年10月28日 07:38
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