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寂しいウサギ

by 6-755

四月に大学に入って、今はもう六月。毎日じめじめしてすごく鬱陶しい。
ぐずついた天気のように、私もずっともやもやしてる。
いつものように大学に行って、一番前の席で真面目に授業聞いてる。
後ろでは授業も聞かずに騒いでる子がたくさんいる。
今も後ろから紙ヒコーキが飛んできた。静かに目の前に着陸する紙ヒコーキ。
先生は相手にもせず、聞き取れない声で何かぼそそぼそいってるだけ・・・
騒いでる子の中には、少しだけお話したことのある子もいる。
でも今は、挨拶もしない・・・何を話していいか分からないから。
飲み会に誘われて、行ってみたけど、だんだんよばれなくなった。
私が行くと、場が白けるから。だから全然友達がいない。私「KY」なんだ、きっと。
午前の授業が終わると、図書館に逃げ込む。みんな食堂に行っちゃうから、お昼時の図書館はとても静か。
少しほっとする。本の匂いが、私を包み込んでくれる。
私は、資料室のドアを開けて、そっと中に入る。そして鞄から持ってきたラノベを取り出して、静かにページをめくる。
以前教室で読んでたら、遠くからこっちを見て何か言ってる子がいた。
気のせいかもしれないけど、そう思いたいけど・・・それ以来教室で読まないようにしてる。

昼下がり。図書館の外で、みんなの楽しそうな声がする。耳にわずかに届く声が辛い。
でも、私は、その声を聞きたがってる。せめて、思い込みでも・・・みんなと一緒にいる気分になりたいから。
声を聞いてるだけでよかった。
聴くのがつらいくせに、声はすごく聞きたいと思ってるバカな自分がいやだ。
さっきから・・・全然ページが進まない。


午後の授業にでても、私はやっぱり一人。
最近は授業のことも頭に入らない。周りにどう思われてるのか、そればっかりが気になってしまう。
一日の授業が終わると、足早に教室を去る。
周りからみると、私はどんなに滑稽だろう。黙って授業を受けて、いつも一人で・・・
一人、部屋に帰り、ベットに潜り込む。
何も聞きたくなかった・・・何も見たくなかった・・・何も考えたくなかった。


最近あまり眠れない。


気がつくと、時計は六時を指し、窓から差し込む光がオレンジ色になっていた。
「寝っちゃったのか・・・そーだ、晩御飯買いに行かなきゃ」
私は、布団から這い出ると、財布を持って部屋を出る。
さっきまで寝てたせいか、なんだか涼しく感じる。この時間が私はとても好きだった。
夕暮れは、どこか懐かしい気がするから・・・高校の帰り道を思い出せるから。
スーパーには、夕食のメニューを選ンでる人がたくさんいる。
私は、まだ・・・料理がうまくならない。


お弁当を買って、部屋に戻る。
レンジに入れて温めているうちに、部屋着に着替えてる
そういえば一度だけ、友達を部屋に呼んだときがある。
すごく可愛い女の子。明るくて、華やかな子だった。
仲良くなったと思ってたけど・・・しばらく話さなくなった。
トイレで、私のことを「ウザい」って言ってるのを、たまたま聞いてしまったから。
あの子は、私が聞いてるのに気づいても悪びれる様子もなく、周りのこと笑いながら行ってしまった。
何が悪かったのか全然わからなかった。

「偉そうだし、一緒にいてちょっと疲れる。正直ウザいんだー柊さんって」

あの時聞いた言葉が、頭から離れない。
思い出すたびに、叫びたくなる衝動に駆られてしまう。
私は、自分がもっと器用な人間だと思ってた。


レンジで温められた並ぶ食卓。なんて味気ないんだろう。
でも、私が作っても朝ごはんみたいな晩御飯になるだけ・・・結局味気ないんだ。
お弁当は美味しい。でもつかさの作ったご飯の方がもっと美味しかった。
肉じゃがだって、唐揚げだって、野菜炒めだって、お菓子だって・・・

「お姉ちゃん、ケーキ作ってみたんだけどー」
「今、ダイエット中だって言ったじゃん。」
「あ、そっかーそうだよね・・・」
「で、でも、ちょっとくらいならいいよね。」
「お姉ちゃん・・・ダイエットは?」

最近、すごく昔のことを思い出てしまう。

「いつでも返せる相手には返さないことにしてるから」
「あんた、友達なくすぞ」

「あんたリアルの友達いるの?」

「お、まーた同じクラスじゃーん。」
「え?」

でも、ときどき思う。
あ、私、もしかして嫌な奴だったかな・・・嫌な言い方だったかなって
思い出ぐらいは奇麗なままにしていたいのに。

「こいつらは周りにもっと感謝すべきだよな・・・」

いつか、日下部に言った言葉が
自分に返ってきたきがする。
感謝しないといけなかったのは、私だったんだ・・・


お弁当を食べ終わると、PCを立ち上げる。
mixi・・・でも大学の友達はいない。ほとんどが高校の時の友達。
名前の後の()内の数字が空しい。
日記もほとんど書かなくなった。書くことがないから。
コミュニティもはいらない。意味がないから。一度、こなたが
「大学の友達はあんまりマイミクいないね。かがみんはリア友は入れにくタイプ?」
って聞いてきたことがある。
「うん。それに日記とかもあまり書かないし」
って答えたけど、ホントは誰とも付き合いがないだけなんだ。
もしかしたら、こなたは、私に気を使ったのかも。
もし逆の立場なら、私は絶対に
「あんた、やっぱりリアルの友達いないのね・・・」
とか言ってる・・・ホント嫌な奴だ・・・私。
だから「KY」とか「偉そう」って言われるんだろうな。
もう、ヤダな・・・こんなの。

      • 誰も日記を書いてないみたい。書いててもまぶしすぎて見えないけど・・・なんて・・・
私は早々にmixiを閉じた。別にみたいサイトがあるわけじゃなかったけど
とりあえずつけっぱなし、繋ぎっぱなし。


こなた・・・はやくメッセンジャーにサインインしてくれないかな・・・


こなた がサインインしました。

PCにナビが写し出されると、私は読んでいた本を捨てた。
「早く送ってきなさいよ・・・」
画面の前で苛々している。「おっす、こなた」
たった一言、そう送ればいいだけなのに・・・
この数ヵ月で、無駄にプライドが高くなった。自分を守りたくて。
周りのレベルが低いんだって、自分は高みにいるんだって思って、自分を庇ってた。
でも、誰か私に教えて欲しい。
こなた相手に、そんなに肩肘はらなくていいんだよって。無理しなくていいって。
自分で気付いててもどうしようもないから、いまさら変われないから・・・


だから、お願い・・・


こなた・・・


早く「はろー、かがみん」って、送って・・・


「はろー、かがみん」
そのとき、画面にいつもの文字が表れた。
(全く・・・遅いっての)
心で不満を呟きながらま、私の胸は踊っていた。
「おっす、こなた」
いつもの調子で挨拶をかわす。
「いやーかがみん。最近、懸賞が連勝続きでねー」
「あんた、まだハガキとか送ってるわけ?もっと別の方向にも力入れなさいよー」
こなたと話してる時の私は、すごく自然体。さっきまで肩肘はってたのが嘘みたいに。
「かがみんも、力入れて彼氏でも作ればーww」
「うっさいわねー、二次元気相手に私の嫁とか言ってる、あんたに言われたくないわ」
「彼氏がいない、かがみんは明日からの三連休はどうするの?」
「明日は夕方から友達と買い物行って、ご飯食べようかなーって。
それで、そのまま泊まりで遊ぶわ」
「そかーリア充だねー」

ホントはリア充じゃないよ、こなた・・・

「昼はどうするの?」
「うーん、部屋で本読むわ。フルメタ新刊でたし」
「へー。相変わらずだねー。」
「あんたは?」
「私は明日色々用事があるのだよー(`・ω・´)だから今日はこのへんでーノシ」
そう言って、こなたはサインアウトした・・・

短かったな、今日。
小さなことで、すごく落ち込みやすくなってる自分に気付く。

・・・やだな、また嘘ついてる

こなたとのメッセは、今の私の
何よりも大切な時間なのに・・・


こなたとのメッセを終えて、私はシャワーをあびる。
お風呂にお湯は張らない。ゆっくりつかってると、いやなこと思い出す方が多いから。
すごく静かで、ただじっとしてると、体の疲れはとれるのに。
でも、静かすぎて考えたくことないことまで考えてしまう。
今日の私はどうだったんだろう・・・明日はどうだろう
もしかして、明日起きたら・・・友達もいて、彼氏もいて・・・
ハハ、そんなわけないよ・・・ベタすぎ。ありえない

でも変よねー
ベタっていうなら、何で私も同じ生活してないんだろう・・・

お風呂からあがってもテレビはつけない。
最近ちっともテレビが面白くなくなった。多分、見た内容を誰とも話せないから。
ドラマも全然見てない。
布団にもぐりこんで早く眠りたくなる。
部屋の電気を消した、その真っ暗な世界の中で、私は早く眠りたいと思う。
けれど、布団に入った途端にいろんな思いが交錯する。

昔のこと、今のこと
昔のことばっかりきれいに見えて、今のことは嫌なことしか思いだせなくて・・・
そして後悔ばかり。
あ、あの時はこう言えばよかった。こうすればよかった。
どうしようもないことばかり考える。次はどうしようって考えない。
だって、大学の友達と仲良くしてる自分が、想像もできないから・・・


泣きたくなる気持ちと一緒に、少し眠気がでてきた。


そういえば、夢に出てくるのも、昔の友達ばかりだ・・・


(もう1人はいや……)
私は寂しさで死んでしまうウサギなのかもしれない。
あいつが云う「ツンデレ」を気取って自分から動こうとはしなかったけれど、
もう限界。大学ではいつも1人。家に帰っても1人。ネットでも1人。
寂しい。つらい。アンタと話がしたい。アンタの声が聞きたい。

私は携帯を取ると、震える指先で、アドレス帳からアイツの名前を選ぶ。
なのに、私は躊躇する。コールボタンを押せない。
もしアイツが出てくれなかったら。
もしアイツが誘いを断ってきたら。
ううん、そんなことない。だって、この間お喋りした時、
アイツの近況は把握してる。アイツも私と同じく「ぼっち」なんだから。
携帯のコール音が重なる。なんで出ないのよ!? 10回ぐらい鳴らして、ようやくアイツが出た。
他愛ない挨拶と最新アニメの情報交換のあと、私は声が上ずるのを抑えて
本題を打ち明ける。週末、一緒に秋葉へ行こう、と。

『週末? ごめーん、かがみ。先約があってね。かがみとは行けないんだ。
 え、相手? 実はさぁ。一昨日、告白されちゃって、私いま付き合ってるんだよね~
 いわゆる彼氏ってやつだよ! いやぁ、オトコっていいねぇ。かがみもオトコつくんなよ!
 ……ごめんかがみ。今彼氏といるんだ。じゃね!』

顔を上げると、ふと部屋の片隅の鏡台が目に止まった。
見たくない。泣いてる私の顔なんて見たくない。
思い切り携帯を投げつけ、それを壊す。鏡の断片が散らばる。
あれ、おかしいな。鏡の破片に、ウサギが何匹もいるじゃない。
血より赤い眼をしたウサギ。寂しさで死んでしまうウサギ。
私は破片を手に取り、首筋に当てた。

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最終更新:2008年02月07日 01:42
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