「神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は対立しとったローマ教皇グレゴリウス7世に破門を
取り消してもらうために三日間もカノッサ城の前で待たされて、ようやく謝罪が受け
入れられた。これを『カノッサの屈辱』いうて、教皇権と王権の力関係を決定付けた
出来事として――」
ああ、眠い。春眠暁とかそんなことに関係なくて、眠い。
黒井先生の子守唄、じゃなくて授業がちょうどいい感じに私の思考力を奪って、瞼を
重くさせる。昨夜遅くまでネトゲをやっていたっていうのもあるけど、この授業――
かくっ
その勢いで少しだけ目が覚めた。でもそれはほんの数秒のことで、またすぐに――
かくっ
今度はいい揺れだった。このまま眠れるかも。
ああ、眠……
眠…………
だめ。このまま寝てはいけない。
寝ちゃいけないって決めてる。別に真面目に授業を聞くとかそんなことじゃなくて、
もっと別の理由があって……でもねむい……
かくっ
ちょうど目線を降ろしたら、先生の足が見えた。っていうことは先生がすぐそこに
いるっていうことであって――
「泉!」
いたっ!
「泉ー居眠りすなー」
「~~~っ」
痛くて返事できない。頭を抑えてうずくまってる。
「目ぇ覚めたか?」
覚めました。覚めましたとも。
「体罰が禁止のご時世で、先生けっこう普通に殴りますよね。別にいいですけど」
「せやな。けど、誰も彼もやなくて殴る相手は選んどるよ。いろんな意味で」
見上げると、先生は気持ちいいくらい爽やかな笑顔。
何気にすごいことを言ってると思う。
でも周りの皆は、あと黒井先生も気付いてないだろうな……先生に殴られて、私が
こんなにも胸をドキドキさせてること。
この授業の間は、もう寝ることはないと思う。頭が痛いからじゃなくて、胸がこんな
にも苦しいから。
先生とはプライベートでも付き合いがあるけど、いつの間にかそれだけじゃ飽き足ら
なくなって、授業中にも構ってほしいって思うようになった。授業中に私だけに構って
もらう方法は何か、私が思いついたのは、殴られればいいっていうことだった。それが、
いつからか殴られること自体が素敵だって思うようになって……。
先生。先生に殴られるとドキドキしちゃう、こんな生徒でごめんなさい。殴られる
ために居眠りしてしまってごめんなさい。
こんな気持ち、絶対に言えないから、せめて私が生徒でいる間は、私のことを殴って
ください。
取り消してもらうために三日間もカノッサ城の前で待たされて、ようやく謝罪が受け
入れられた。これを『カノッサの屈辱』いうて、教皇権と王権の力関係を決定付けた
出来事として――」
ああ、眠い。春眠暁とかそんなことに関係なくて、眠い。
黒井先生の子守唄、じゃなくて授業がちょうどいい感じに私の思考力を奪って、瞼を
重くさせる。昨夜遅くまでネトゲをやっていたっていうのもあるけど、この授業――
かくっ
その勢いで少しだけ目が覚めた。でもそれはほんの数秒のことで、またすぐに――
かくっ
今度はいい揺れだった。このまま眠れるかも。
ああ、眠……
眠…………
だめ。このまま寝てはいけない。
寝ちゃいけないって決めてる。別に真面目に授業を聞くとかそんなことじゃなくて、
もっと別の理由があって……でもねむい……
かくっ
ちょうど目線を降ろしたら、先生の足が見えた。っていうことは先生がすぐそこに
いるっていうことであって――
「泉!」
いたっ!
「泉ー居眠りすなー」
「~~~っ」
痛くて返事できない。頭を抑えてうずくまってる。
「目ぇ覚めたか?」
覚めました。覚めましたとも。
「体罰が禁止のご時世で、先生けっこう普通に殴りますよね。別にいいですけど」
「せやな。けど、誰も彼もやなくて殴る相手は選んどるよ。いろんな意味で」
見上げると、先生は気持ちいいくらい爽やかな笑顔。
何気にすごいことを言ってると思う。
でも周りの皆は、あと黒井先生も気付いてないだろうな……先生に殴られて、私が
こんなにも胸をドキドキさせてること。
この授業の間は、もう寝ることはないと思う。頭が痛いからじゃなくて、胸がこんな
にも苦しいから。
先生とはプライベートでも付き合いがあるけど、いつの間にかそれだけじゃ飽き足ら
なくなって、授業中にも構ってほしいって思うようになった。授業中に私だけに構って
もらう方法は何か、私が思いついたのは、殴られればいいっていうことだった。それが、
いつからか殴られること自体が素敵だって思うようになって……。
先生。先生に殴られるとドキドキしちゃう、こんな生徒でごめんなさい。殴られる
ために居眠りしてしまってごめんなさい。
こんな気持ち、絶対に言えないから、せめて私が生徒でいる間は、私のことを殴って
ください。
「神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世は対立しとったローマ教皇グレゴリウス7世に破門を
取り消してもらうために三日間もカノッサ城の前で待たされて、ようやく謝罪が受け
入れられた。これを『カノッサの屈辱』いうて、教皇権と王権の力関係を決定付けた
出来事として――」
自分の説明の中に出した人名や地名を黒板に書いて、それを線や矢印で結ぶ。
『カノッサの屈辱』の部分は赤字で。
「屈辱いうても、ローマ教皇が屈辱を与えたくて三日も放っぽっといたわけやないで。
ハインリヒ4世が武装しとるから自分が何かされるんやないかって思ったわけや」
この辺は別に知らなくてもええんやけどな。
ここで生徒を見るために教室を見回すと――
泉は案の定、寝とる。正確にはこれから寝るところなんやろうけど。
まったく、泉は毎回毎回。そんなにウチの授業がつまらんのか。
つかつかと、わざとらしく足音を立てながら近寄うても、泉は起きる気配なし。
なら、ウチのすることはただ一つ。
「泉!」
ゴスッ
なかなかええ音がした。
「泉ー居眠りすなー」
「~~~っ」
泉は頭を抱えとる。
「目ぇ覚めたか?」
「体罰が禁止のご時世で、先生けっこう普通に殴りますよね。別にいいですけど」
ああ、泉……。そんな上目遣いで見られるとウチは……。
「せやな。けど、誰も彼もやなくて殴る相手は選んどるよ。いろんな意味で」
生徒たちのリアクションを見るに、ウチの心の内には気付いとらんはずや。
知られるわけにはいかん。泉を殴ると、こんなに胸が高鳴るなんて。
初恋だとか思春期だとか、そんな時期はとっくに過ぎとるはずやのに、泉を殴ると
目眩がするくらい苦しくなるんや。平静を装うのに精一杯で授業を続けられん。とり
あえずの雑談でなんとか間をもたせとる。
ウチも変やってことはわかっとる。授業中はずっと泉に見つめてほしくてただ起こす
ために殴っとったはずやのに、なぜか殴ること自体が気持ちよくなった。
泉。ウチは泉の一番になりたいんや。このままこうしていれば、きっとウチはずっと
泉に覚えていてもらえるはずやから……こんなことでしか気持ちを表現できない先生で
すまん。ウチは悪い先生やな……。
取り消してもらうために三日間もカノッサ城の前で待たされて、ようやく謝罪が受け
入れられた。これを『カノッサの屈辱』いうて、教皇権と王権の力関係を決定付けた
出来事として――」
自分の説明の中に出した人名や地名を黒板に書いて、それを線や矢印で結ぶ。
『カノッサの屈辱』の部分は赤字で。
「屈辱いうても、ローマ教皇が屈辱を与えたくて三日も放っぽっといたわけやないで。
ハインリヒ4世が武装しとるから自分が何かされるんやないかって思ったわけや」
この辺は別に知らなくてもええんやけどな。
ここで生徒を見るために教室を見回すと――
泉は案の定、寝とる。正確にはこれから寝るところなんやろうけど。
まったく、泉は毎回毎回。そんなにウチの授業がつまらんのか。
つかつかと、わざとらしく足音を立てながら近寄うても、泉は起きる気配なし。
なら、ウチのすることはただ一つ。
「泉!」
ゴスッ
なかなかええ音がした。
「泉ー居眠りすなー」
「~~~っ」
泉は頭を抱えとる。
「目ぇ覚めたか?」
「体罰が禁止のご時世で、先生けっこう普通に殴りますよね。別にいいですけど」
ああ、泉……。そんな上目遣いで見られるとウチは……。
「せやな。けど、誰も彼もやなくて殴る相手は選んどるよ。いろんな意味で」
生徒たちのリアクションを見るに、ウチの心の内には気付いとらんはずや。
知られるわけにはいかん。泉を殴ると、こんなに胸が高鳴るなんて。
初恋だとか思春期だとか、そんな時期はとっくに過ぎとるはずやのに、泉を殴ると
目眩がするくらい苦しくなるんや。平静を装うのに精一杯で授業を続けられん。とり
あえずの雑談でなんとか間をもたせとる。
ウチも変やってことはわかっとる。授業中はずっと泉に見つめてほしくてただ起こす
ために殴っとったはずやのに、なぜか殴ること自体が気持ちよくなった。
泉。ウチは泉の一番になりたいんや。このままこうしていれば、きっとウチはずっと
泉に覚えていてもらえるはずやから……こんなことでしか気持ちを表現できない先生で
すまん。ウチは悪い先生やな……。
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- なんか新しいなw -- 名無しさん (2008-03-13 03:48:23)
- 続編希望 -- 名無しさん (2008-03-12 18:55:09)