「次回も見てくれないと、火星に代わってお説教よ」
「ふもっふ!!」
あーっ、もう。調子乗ってるんじゃないのよ。白石。
らっきー☆ちゃんねるは私が主役なんだから、私よりアンタがめだってるってどういうこと!!
お疲れ様でした~、の声とともに、私たちの声しか聞こえなかったスタジオにざわめきが戻る。
ううっ、大声で叫んだから身体が重い……
「あ、あきら様。大丈夫ですか?そんなに無理しなくても……」
うるさい。せっかくのレギュラーなのだから、休むわけにはいかないでしょ!!
それに、白石一人にこの場を任せるなんてことができるわけないじゃない。
「すみません、僕が至らないばかりに……あきら様に無理させてしまって」
本当にそうよ。大晦日のコミケすら休んだっていうのに。
でも、私もヤキがまわったもんだわ。
体調管理すらできないなんて、アイドル失格じゃない。
あ~、やっぱり疲れがまわって新幹線で口開けっ放しで寝てたのが悪かったのか。
ラジオの収録もあるから大阪と東京の往復の繰り返しだったし。
「あきら様、楽屋まで戻れますか?」
うっさい。あんたの手を借りるまでもないわよ。
重い身体を引きずって立ち上がる。
くらっとする視界。照明のライトに当てられたか?
バランスを崩して倒れこむ視界。
「あっ、あきら様!!」
地面に倒れこむ瞬間、暖かいものに包み込まれる感触があったけれど……もう、どうでもいいや。眠いし。
「ふもっふ!!」
あーっ、もう。調子乗ってるんじゃないのよ。白石。
らっきー☆ちゃんねるは私が主役なんだから、私よりアンタがめだってるってどういうこと!!
お疲れ様でした~、の声とともに、私たちの声しか聞こえなかったスタジオにざわめきが戻る。
ううっ、大声で叫んだから身体が重い……
「あ、あきら様。大丈夫ですか?そんなに無理しなくても……」
うるさい。せっかくのレギュラーなのだから、休むわけにはいかないでしょ!!
それに、白石一人にこの場を任せるなんてことができるわけないじゃない。
「すみません、僕が至らないばかりに……あきら様に無理させてしまって」
本当にそうよ。大晦日のコミケすら休んだっていうのに。
でも、私もヤキがまわったもんだわ。
体調管理すらできないなんて、アイドル失格じゃない。
あ~、やっぱり疲れがまわって新幹線で口開けっ放しで寝てたのが悪かったのか。
ラジオの収録もあるから大阪と東京の往復の繰り返しだったし。
「あきら様、楽屋まで戻れますか?」
うっさい。あんたの手を借りるまでもないわよ。
重い身体を引きずって立ち上がる。
くらっとする視界。照明のライトに当てられたか?
バランスを崩して倒れこむ視界。
「あっ、あきら様!!」
地面に倒れこむ瞬間、暖かいものに包み込まれる感触があったけれど……もう、どうでもいいや。眠いし。
「お父さん、どこかいっちゃうの?」
それは、私がまだこっちの業界に入ったばかりの頃。
ただでさえ喧嘩の絶えなかったうちの両親の仲は、私のデビューによってさらに決定的な傷を負ってしまった。
その頃の私はまだ幼かったけれど、でも大きな荷物を抱えた父に、異様な雰囲気を感じ取っていた。
「嫌だよ、お父さん。私もついてくの」
お父さんの大きな足に抱きつく。
お父さんの顔は逆光になってあまりよく見えない。
大きな手が伸びる。くしゃっと私の頭を撫でる、その手。
ひんやりとした、大きな手の感触が、私はお気に入りだった。
お父さんが私に向かって何か声をかける。
何を言ったのか覚えていない。きっと迎えに来るとか、そんな事だったと思う。
事情を知らない私は素直に頷き、精一杯の笑顔でお父さんを見送った。
それが、お父さんに関する、最後の記憶。
それは、私がまだこっちの業界に入ったばかりの頃。
ただでさえ喧嘩の絶えなかったうちの両親の仲は、私のデビューによってさらに決定的な傷を負ってしまった。
その頃の私はまだ幼かったけれど、でも大きな荷物を抱えた父に、異様な雰囲気を感じ取っていた。
「嫌だよ、お父さん。私もついてくの」
お父さんの大きな足に抱きつく。
お父さんの顔は逆光になってあまりよく見えない。
大きな手が伸びる。くしゃっと私の頭を撫でる、その手。
ひんやりとした、大きな手の感触が、私はお気に入りだった。
お父さんが私に向かって何か声をかける。
何を言ったのか覚えていない。きっと迎えに来るとか、そんな事だったと思う。
事情を知らない私は素直に頷き、精一杯の笑顔でお父さんを見送った。
それが、お父さんに関する、最後の記憶。
目が覚める。
ぼんやりとかすむ目に浮かぶのは、いつもの天井。
今日が何日か思い出そうとして、そういえばスタジオで倒れたのを思い出して……
「げ……」
白石がベッドにもたれかかって眠っているのに気がついた。
「ふわぁぁ、あ、あきら様。よく眠れまし……ごふっ……」
白石の顔に蹴りが炸裂する。
床に転げ落ちた白石の顔には真っ赤な足型。
「勝手に乙女の部屋に入ってるんじゃねぇ!!」
白石は涙目になり、鼻を押さえて立ち上がる。
「だ、だってご家族の方は誰もいなかったし、あきら様が苦しそうにしてましたから、その……」
あ~、そういや今日は母親はいなかったっけ? 妹も友達の家に泊まりに行くとか言ってたし。
私が病気だってのに、薄情なやつらばかりだ。
「あきら様、身体の方は大丈夫ですか?」
「あ~、まあ多少はね」
眠る前に比べれば大分楽になった。まともに声が出るようになったし。
枕元についた手に、くしゃっと湿った感触、濡れタオル。
おでこの上のひんやりとした感触はこれによるものだったんだろう。
「白石……」
「ひぃっ、ごめんなさい。そんなつもりじゃ」
低い声で声をかけるだけで縮み上がる白石。
そんなひどい事、やった覚えはないんだけれどね、とため息をつく。
「あんた、こんな遅い時間までいて、終電大丈夫なの?」
はっ、と白石は時計を見上げる。
時間はもうすぐ12時。終電も近い。
「す、すみませんあきら様。でも、お体のほうは大丈夫ですか?」
「アンタに心配されるほど、落ちぶれちゃいないわよ。明後日のラジオ収録、遅れるんじゃないわよ」
「は、はいっ。お疲れ様でしたっ!!」
慌てて部屋を飛び出していく白石。
白石が階段を駆け下りていく音が聞こえ、やがて静かになる。
「ばーか」
終電がなくなっても、うちに泊まっていけばいいのに。
誰にともなく悪態をついて、私は布団にもぐりこんだ。
ぼんやりとかすむ目に浮かぶのは、いつもの天井。
今日が何日か思い出そうとして、そういえばスタジオで倒れたのを思い出して……
「げ……」
白石がベッドにもたれかかって眠っているのに気がついた。
「ふわぁぁ、あ、あきら様。よく眠れまし……ごふっ……」
白石の顔に蹴りが炸裂する。
床に転げ落ちた白石の顔には真っ赤な足型。
「勝手に乙女の部屋に入ってるんじゃねぇ!!」
白石は涙目になり、鼻を押さえて立ち上がる。
「だ、だってご家族の方は誰もいなかったし、あきら様が苦しそうにしてましたから、その……」
あ~、そういや今日は母親はいなかったっけ? 妹も友達の家に泊まりに行くとか言ってたし。
私が病気だってのに、薄情なやつらばかりだ。
「あきら様、身体の方は大丈夫ですか?」
「あ~、まあ多少はね」
眠る前に比べれば大分楽になった。まともに声が出るようになったし。
枕元についた手に、くしゃっと湿った感触、濡れタオル。
おでこの上のひんやりとした感触はこれによるものだったんだろう。
「白石……」
「ひぃっ、ごめんなさい。そんなつもりじゃ」
低い声で声をかけるだけで縮み上がる白石。
そんなひどい事、やった覚えはないんだけれどね、とため息をつく。
「あんた、こんな遅い時間までいて、終電大丈夫なの?」
はっ、と白石は時計を見上げる。
時間はもうすぐ12時。終電も近い。
「す、すみませんあきら様。でも、お体のほうは大丈夫ですか?」
「アンタに心配されるほど、落ちぶれちゃいないわよ。明後日のラジオ収録、遅れるんじゃないわよ」
「は、はいっ。お疲れ様でしたっ!!」
慌てて部屋を飛び出していく白石。
白石が階段を駆け下りていく音が聞こえ、やがて静かになる。
「ばーか」
終電がなくなっても、うちに泊まっていけばいいのに。
誰にともなく悪態をついて、私は布団にもぐりこんだ。
ラジオ収録当日。
長引いた風邪はあの日を境にすっかりよくなった。
何とか仕事に間に合ってよかった。これ以上の失態は芸能生命にも関わるし。
「おはよーございます」
かわいらしく挨拶。スタッフの顔もにやけている。
媚売り成功。ふっ、ちょろいもんよ。
一通り挨拶して回ろうと思ったけれど、白石が見当たらない。
「あれ?白石さんは?」
「ああ、彼は風邪で休むらしいよ。まったく、仕事を何だと心得ているんだか」
ディレクターが吐き出すように言う。
あのバカが、風邪? バカは風邪を引かないっていうのに。
ただ、一つだけの心当たり。私の側で看病してくれた彼は……
「まったく、そろそろ降板も考えるべきだな。今日は一人になるけど、いいね」
「いやです」
私の一言に、ディレクターは凍りつく。
てっきり「いいです」とでも言うと思って?
「視聴者は私と白石さんの掛け合いを求めているんです。片方かけてしまってはラジオが成り立ちません」
「だが、しかし放送日も近づいて……」
ああん?融通のきかねぇジジイだな。
ディレクターが一番偉いとでも思ってるのか?
「ディレクターさん。ちょっとしゃがんでもらってもいいですか?」
ディレクターは首をかしげながらも私の視線にあわせてしゃがみこむ。
周りの角度、O.K。他のスタッフの視界には入らない。
ディレクターの首元に手を伸ばし……
「調子こいてんじゃねぇぞ、コラ。この小神あきら様の言う事、おとなしく聞いとけや」
ネクタイを掴み上げ、ドスを聞かせた声で目の前で言い放った。
ネクタイを離すと、ディレクターは尻餅をつき、おびえた表情でこっちを見上げる。
「ごめんなさい。私、白石お兄さんがいないとどうしても不安なんです。絶対つれてきますから、ちょっと待ってもらえますか?」
ディレクターは壊れた人形のようにカクカクと首を振っている。
ふっ、ちょろいもんよ。
「じゃ、行ってきますね。スタッフの皆さん。ご迷惑かけて申し訳ありません」
かわいい声で媚を売る。スタッフも「いいよ。行ってらっしゃい」とにこやかな表情で送り出す。
待ってろよ、白石。病欠なんて許さないんだから。
長引いた風邪はあの日を境にすっかりよくなった。
何とか仕事に間に合ってよかった。これ以上の失態は芸能生命にも関わるし。
「おはよーございます」
かわいらしく挨拶。スタッフの顔もにやけている。
媚売り成功。ふっ、ちょろいもんよ。
一通り挨拶して回ろうと思ったけれど、白石が見当たらない。
「あれ?白石さんは?」
「ああ、彼は風邪で休むらしいよ。まったく、仕事を何だと心得ているんだか」
ディレクターが吐き出すように言う。
あのバカが、風邪? バカは風邪を引かないっていうのに。
ただ、一つだけの心当たり。私の側で看病してくれた彼は……
「まったく、そろそろ降板も考えるべきだな。今日は一人になるけど、いいね」
「いやです」
私の一言に、ディレクターは凍りつく。
てっきり「いいです」とでも言うと思って?
「視聴者は私と白石さんの掛け合いを求めているんです。片方かけてしまってはラジオが成り立ちません」
「だが、しかし放送日も近づいて……」
ああん?融通のきかねぇジジイだな。
ディレクターが一番偉いとでも思ってるのか?
「ディレクターさん。ちょっとしゃがんでもらってもいいですか?」
ディレクターは首をかしげながらも私の視線にあわせてしゃがみこむ。
周りの角度、O.K。他のスタッフの視界には入らない。
ディレクターの首元に手を伸ばし……
「調子こいてんじゃねぇぞ、コラ。この小神あきら様の言う事、おとなしく聞いとけや」
ネクタイを掴み上げ、ドスを聞かせた声で目の前で言い放った。
ネクタイを離すと、ディレクターは尻餅をつき、おびえた表情でこっちを見上げる。
「ごめんなさい。私、白石お兄さんがいないとどうしても不安なんです。絶対つれてきますから、ちょっと待ってもらえますか?」
ディレクターは壊れた人形のようにカクカクと首を振っている。
ふっ、ちょろいもんよ。
「じゃ、行ってきますね。スタッフの皆さん。ご迷惑かけて申し訳ありません」
かわいい声で媚を売る。スタッフも「いいよ。行ってらっしゃい」とにこやかな表情で送り出す。
待ってろよ、白石。病欠なんて許さないんだから。
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- このあと何が -- 名無しさん (2009-06-23 15:06:49)
- 怖っ -- 名無しさん (2009-06-10 16:33:48)