kairakunoza @ ウィキ

或るアシスタントの受難

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匿名ユーザー

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「ねぇねぇ、みのるおにーさん?」
らっきー☆ちゃんねる出演者控え室。
現在この部屋の主である小神あきらが、直立不動の姿勢で待機しているアシスタントの白石ににこやかに声を掛けた。バリッバリの仕事用ブリッ子モードである。
「え?は…はい、何でしょうかあきら様?」
それに対してマジビビリで、答える白石。声のトーンもいつもより半音高い。
それはそうだろう、未だかつて二人きりの時にブリッ子モードで話掛けられた事など、一度も無かったのだから。普段のあきらの声の掛け方は、「おいコラ白石ぃ!!」がデフォである。もっとも、「白石」の部分はあきらの気分によって変わるのだが。「そこのクソボケ」とか。
「ちょっとあきら寂しいー。みのるおにーさんに隣に来て、座ってほしいな?」
それを聞いて、みのるの精神状態が、「マジビビリ」から「恐慌」にレベルアップした。

え?え?何この状況?あきら様が?僕に?寂しいから隣に来て欲しい?
ちょっと待ってちょっと待って。ありえない。それはありえない。
だって「あきら様」だぞ?ありえない理由なんてそれで充分だろう。
しかし現に、あきら様は僕に隣に座って欲しいと言っている。
しかも理由は、「寂しいから」。となると……

あきら様、僕 に ホ レ て る ?

いやいやいやいや。無い。無いって白石。クールになれ白石。そんな事有る訳ないだろ。常識的に考えて。
しかし待て白石。
マジでそうだったらどうする?
いやまぁ、無いとは思うよ?無いとは。けどさ、仮にマジだったらどうよ?
ほら、あきら様は実は僕の事好きで好きでしょうがないけど恥ずかしいからキツく当たってただけで、ホントはいつも隣に座って欲しがってたとか。けどそれを素のキャラで僕に伝えるのは恥ずかしすぎるから敢えて仕事用ブリッ子キャラで来たとか。

いやいやいやいやいやいやいやいや。
妄想に逃げるのは止めろ白石。このままホイホイ隣に座ってみろ。
絶対何かされる。賭けてもいい。絶対に何かとんでもない事が起こる。
しかししかし万が一あきら様が本気だったら
「白石いいいぃいぃぃいぃぃっっっ!!!!」
「うわぉぇあああ!!?」
「てめぇコラこの天下の大女優小神あきら様が話しかけてやってんのにシカトとはいい度胸じゃねえかあぁん!?あんたいつからそんなに偉くなったのよ言ってみなさいよこのクソ白石がぁぁ!!」
「すすすすみませんすみませんっ!!」
「大体アンタ最近ちょっと仕事増えて来たからって調子乗りすぎなのよ!あんたがいくら仕事こなしたってね、この小神あきらさまに敵うわけねーっつーのよ!!」
「はいぃ、おっしゃる通りでございますぅぅっ!!」
完全に素に戻って白石を罵倒しまくるあきら。
それはそうだろう、白石があきらの命令をシカトするなど、あきらにとっては万死に値する行為だ。白石がなじられるのも無理は無い。
罵倒する内容が途中から関係ないことになるのはお約束だ。一分ほどあきらの罵倒が続き、さしもの悪口マシンガンも弾が切れたようで、
「ったく……いいからこっち来なさいっつーの。あんたはつべこべ言わずにここに座ればいいのよ。」
自分の隣の椅子をトレードマークのだぼだぼの袖でぱたぱたと振って示し、白石が座るよう促す。
「えーっとですねあきら様?申し訳ありませんが、その、理由を…」
「理由なんてどーーでもいいのよさっさと座りなさいっつってんのが分かんないワケぇ!?」
「はっ、はいぃぃぃ!」
ダッシュで椅子に座る白石。普段はそれほど素早い訳ではない白石だが、あきらの命令に関してはプロのアスリートもかくやという程の瞬発力を発揮する。主にパシリとか。
飼い犬の悲しい性である。
「えっと、あきら様?座りましたが……?」
「ん、それでいいのよそれで。」
「…………」
「…………」
「…………。」
「…………。」
非常に気まずい沈黙。
完全に「何かされる」と身構えていた白石は、何となく肩透かしを喰らった気分になる。
別に期待していたワケでは無いが、何もされなかったら何もされなかったで不安というか、物足りないというか。
無意識にちょっとガッカリしているあたり、完全にあきらに調教されきっている白石である。


やがて白石が沈黙に耐え切れなくなったようで、何をするでも無く椅子に腰掛けているあきらに声を掛ける。
「あ、あの……あきら様?」
「……何よ。」
「これから僕は、何をすればいいのでしょうか?」
「別に何にもしなくていいわよ。ただ座ってくれてたらそれで。」
「座ってるだけ……ですか。」
「ええ、座ってるだけ。何、何か文句でもあるわけぇ?」
「いえいえそんな滅相もありませんっ!!」
「だったらいいのよ。黙って座ってなさい。」
「は、はぁ……。」
再び流れる沈黙。
先程の沈黙の際はどちらかというと肩透かし感や物足りなさが先に立ったのだが、流石にこれだけ沈黙が続くとどんどん不安が増してくる。というか不気味だ。
これほど口数の少ないあきらを白石は知らない。
いつもならあきらが何もしていない時は、暇潰しだとでも言うように白石をイジり倒しているのだが。何だか調子が狂ってしまう。
数分の沈黙の後、あきらが口を開いた。
「ねぇ、白石?」
「は、はい。何でしょうあきら様?」
やっと再開した会話に、白石は溺れている最中に藁が流れてきたかのように縋りつく。
「あんたさぁ……。さっきもちょっと言ったけど、仕事増えてきたじゃない?本編の収録もそうだしさ。」
「ええ、それはもう。全てあきら様のお陰で御座います。」
「そ。それは別にいいんだけど……」
「あきら様?何か?」
「いやね。ほら、あんたが収録とかで出張っててさ、この控え室にあんたが居ない事も結構増えたな……って。
実際、こうやって控え室に二人ってのも割と久しぶりじゃない?」
「そうですね、確かに。」
「だからね、まぁ、何つーか……ものたんないワケよ。私としては。」
「はぁ……。」
「いや、ホラ、寂しいとかそーゆーのじゃ無いわよ?ただ、ほら、やっぱアンタがそばにいないと落ち着かないっつーか……」
「え?でもあきら様最初に『寂しい』って……。
 それにその言い方じゃまるで、あきら様が僕の事を」
「黙れ白石ぃぃいぃぃぃっっっ!!!!」
「ぐぶぉえああぁっ!?あ、あきら様、ナイス右ストレ……がく。」
壁際まで吹っ飛び、顔面がいい感じに歪んで気絶した白石を見て、
「はぁ、はぁ、はぁ……。ったく、そーゆーのは思っても口に出すなっての馬鹿白石が……。」
誰が見ても分かるくらいに赤面+狼狽したあきらが、肩で息をしながら言った。
「あちゃ…気絶しちゃってる?ま、いいか。どうせ白石だしね。
 ……あ、そうだ。せっかくだからこの機会に、口に出して言っとこうかな。」
すぅ、と息を吸い込んで、小さい声で、だがはっきりとあきらは白石に伝えた。
「あんたがそばにいてくれないと、なんか嫌なの。寂しいの。わたしのワガママを文句一つ言わず聞いてくれたのって、あんただけだから。
あんたといたら楽しいし、何だかんだ言って、あんたは私の最高のアシスタントなのよ。本当に感謝してる。
本当はもっと一緒に居て欲しいけど、今仕事頑張らなきゃ育たないもんね…。
あんたみたいな、すぐに潰れちゃうようなヘタレは。だから、もう少し我慢してあげるわ。
 私がもう少し大きくなって、あんたももっと成長していい男になったら、その時は……」
そこまで言って、急に言葉を止めるあきら。
「……。やっぱし、ここから先は起きてるときに言わなきゃね。気絶して馬鹿面晒してるアホに言っても虚しいだけだわ。さっさと起こすか。」
そう言って、白石の頬をぺちぺちと叩いて覚醒を促すあきら。
もし先程までのあきらのセリフを聞いていたら泣いて喜んでいたであろう白石は、完全にオチてしまっている。
いくらあきらが叩いても、覚醒するのはもうすこし先だろう。
そして、あきらのセリフの続きを聞けるのも。




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  • ↓それは私だってヴ ァ -- 名無しさん (2010-06-08 23:20:25)
  • ↓イヤイヤ俺の事だろう。 -- 名無しさん (2010-06-08 12:48:28)
  • ↓俺のことかい? -- 名無しさん (2008-11-25 07:37:37)
  • ナイスツンデレ -- もかもか (2008-01-12 08:26:35)

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