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てけてけかなたさん"おかわり" その2・たーんえーたーん

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 1・すねーく

「こなたの胸、やっぱり私と同じぐらいなのね」
 セーラー服を着ていると、お母さんがPCの中でそんなことをぽつりと呟いた。
「そりゃ、私はお母さんとそっくりだからねー」
「ううっ、そんなところまで遺伝しなくても……」
「まあしょうがないよ、ステータスだと思うしか」
 そう思わないとやりきれないってのも、ちょっとはあるけどね。
「血筋は違うけど、ゆーちゃんもぺたぺただし」
「お父さんのほうの家系もそうなのかも……って、ゆい姉さんがいるから違うか。ばーんでぼーんだし」
「昨日ゆーちゃんの部屋で着替えてるのを見たけど、ずいぶん立派になっちゃって」
「そりゃあ、お母さんが見たのはゆい姉さんが子供の頃のだからねー」
 オトナになってれば、そりゃ少しは違いますって。いろいろな意味で。
「……ところでさ、お母さん」
「なに?」
「今、ゆーちゃんとゆい姉さんのを見たとか聞き捨てならないことを聞いたんだケド」
「あっ」
 こら、なんでそこで『しまった』って顔をしますか。
「あの、ほら、ちょっとした不可抗力っていうか、突然着替え始めちゃったりしたら――」
「まさか、お父さんの部屋でもやってたりしないよね?」
「…………」
「しないよね?」
「……ちょ、ちょこっと」
 うわ、顔が真っ赤だなんて生々しすぎるヨ。
「お母さん、そこに正座」
「えっ? で、でもこれから夏期講習――」
「いいから正座っ!」
「……はい」
 まったくもー、いくら動き回れるからって勝手に覗いちゃだめじゃん! 合意か説得の上じゃなきゃ!


--- てけてけかなたさん"おかわり" その2・たーんえーたーん ---



 2・なかま

 夏休みということもあって、たまにお出かけするゆーちゃん。本当なら、今日もお出かけのはずだったんですけど、
「ごめんね、みなみちゃん……ちょっと、熱が下がらなくて」
「ううん……ゆたかの体のほうが、ずっと大事」
 昨日の暑さに少しあてられてしまったみたいで、いっしょにお出かけするはずだった岩崎さんに看てもらっています。
「……それに、お買い物だったらいつでも行けるから」
「うん……また、今度行こうね」
 ゆーちゃんの言葉に、ちょっとだけ微笑みながらうなずく岩崎さん。少しかたい表情ですが、
ゆーちゃんを見るその瞳はとってもやさしげです。
「ところで、ゆたか……このノートパソコンは?」
 ぎくっ。
「あ、えっと、友達とパソコンでメールのやりとりをしてたから、枕元でも見られるようにっておじさんが貸してくれたの」
「そう……でも、寝るときはちゃんと寝てなきゃだめ」
 ……ほっ。ゆーちゃん、ナイスフォローです。
 夏期講習でいないこなたと、お仕事中のそう君の代理っていうことでここで看てあげて
いたんですけど、そう君ってば岩崎さんが来る前に回収するのを忘れちゃって……今はただ、
普通のデスクトップマスコットとして振る舞っています。
 ……あ、なんだか目が合ってしまったような。
「このキャラクターは、泉先輩?」
「ううん。でも、そっくりでしょ? 『かなたさん』っていうマスコットキャラなの」
「かなた、さん……」
 そう呟く岩崎さんは、私の……む、胸? 胸を見てるんですかっ?
 それからゆーちゃんのことを見て、今はいないこなたの部屋のほうを見て、それから
また私のほうを見て、自分の胸をぽふんっと触って……って、ぽ、ぽふんっ? 背は高いのに?
「……仲間」
 ……ええっ、仲間ですっ! 仲間ですともっ! 皆まで言わずともわかりますともっ!
 今はしゃべれない私は、ただ心の中で泣きながらうんうんとうなずき続けました。


 3・ぜんかあり

 時間はもうすぐお昼。本当なら、そろそろお出かけの時間のはずなのですが……
「そう君、起きて。もうそろそろ起きないと、担当さんが待ってるんでしょう?」
「んー……あとごふーん」
 いくら起こしても、そう君はこうやって寝ぼけてなかなか起きてくれません。
 パソコンデスクに突っ伏して熟睡だなんて、健康に悪いんじゃないんでしょうか。でも、
今はそれ以前にちゃんと起きてもらわないと。
「スケジュールには14時から○川書店って書いてあるし……ほら、そろそろ行かないと間に合わないわよ?」
「くふふふ……かなたがおこしてくれてるなんて、しあわせだなー」
「な、なにを言ってるんですかっ!」
 それは、私もこうやって起こせるのは嬉しいけど……ああっ、そんなこと考えてる場合じゃなくてっ!
「寝ぼけてる場合じゃないですよ。いい加減起きてくださいっ!」
「だってー、ねたりないしー」
「……その割には、昨日もゲームをしてから寝てたわよね」
「あーあーきこえなーい」
 こうなったら、クリア直前にフリーズさせちゃいましょうか。いや、今すぐ消しちゃいましょう。
 そう思いながら「プログラムの追加と削除」を開いてリストを見ていると……あら? 
FAX用のソフトなんてインストールされてるんですね。しかも電話のソフトまで。
多分、お仕事に使っているんでしょうけど……しょうがないですね、久しぶりにやってみますか。
 私はさっそく電話用のソフトを立ち上げて、ずっと暗記していたあの番号に電話をかけてみました。

 ピッポッポッパッピッポッポッパッポッポッ トゥルルルルルル……

「あ、すいません。○日本印刷さんですか? いつもお世話になっています、○川書店で
書いてる泉の身内の者ですが、今回またデッドラインを越えてしまいそうで、輪転機を――」
「だぁぁぁぁぁっ!! な、なんでいきなり版元すっ飛ばして印刷所に行くかなぁ?!」
 あら、すっかりお目覚めみたいですね。
「こうすれば、そう君は起きてくれるかなって思って」
「やめてくれっ。それはトラウマが、トラウマが……」
 まったく、最初から起きてくれればこんなことはしないのに。でも、最初に「117」
を押してあとはデタラメに押してみただなんて、そう君にはヒミツですよ?



 4・やることはみんないっしょ

「はあ……暇ですねー」
 スマートビジョンで「必殺仕業人」のスタッフロールを見ながら、ぼそっとひとりごちる。
 こなたは夏期講習で、ゆーちゃんはまだお休み中。そう君もお仕事で、私は一人さみしく
PCの中でテレビを見ていました。
「デフラグもしちゃいましたし、録りだめしたビデオも見ましたし……何か無いですかねー」
『スタート』ボタンを押して「すべてのプログラム」を見ると、ゲームは確かにあるけれど、
その、なんというか……そーゆーものが多いですし、一人でやるにはちょっとあれですから。
 一つずつ見てみても、最近入れたものは特には……と思っていたら、見慣れないタイトルが
目に飛び込んできました。『執事たちとの楽園』って、珍しいですね。こなたがこんな
タイトルのゲームをインストールするだなんて。ちょっと真面目そうな感じですし、
試しに遊んでみましょうか。
 アイコンをクリックすると……なるほど、一人のお嬢様と執事さんたちとのお話なんですね。
執事さんたちも、子供っぽい人からダンディな人まで4人ほどいます。この人たちと仲良く
なることが目的なのでしょう。それでは、さっそくスタートと。

 ――あらあら、怪我しても強がっちゃって。まるでかがみちゃんそっくり。
 ――お料理勝負……男の子同士で勝負っていうのは珍しいですね。
 ――女の子視点での恋愛観があるゲームっていうのは、なんだか新鮮です。
 ――あら? なんだかちょっと雰囲気が変わってきましたよ?
 ――えっ? いえ、恋愛モードに入ったならわかるんですけど、えっ、あ、あのっ?!
 ――わーっ! わーっ! わーっ?! こ、このゲームも結局そうだったんですかー?!

「……あの、お母さん。昨日入れたばっかりのゲームがもう消えてるんだけど」
「し、知りませんっ! 執事さんたちにやられるゲームなんて知りませんっ!!」
















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  • あの10日間の日常ですね。
    何気ないエピソード、まだあると嬉しいな。 -- 名無しさん (2011-04-15 09:30:09)
  • もっと番外編書いてほしいですね☆ -- 名無しさん (2010-01-24 23:30:41)

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