「私たちって、浮いた話ないよね」
昼休みのいつもの四人組。こなたも女子高生なのだから、そんな話題を振ってくること
自体はおかしくない。
「あんた、彼氏作ろうともしてないだろ」
おかしくはないのだが、やはりこなたにこんな話は似合わないような気がして、かがみ
はつっけんどんに言い返した。
「つかさなんて男受けしそうじゃん。今まで声かけられたことないの?」
「私はそんな……」
「つかさはこれで人見知りするからね」
困惑気味のつかさに、かがみは助け舟を出した。
「お姉ちゃんがガードしてるから手を出せないわけだ」
「確かに、かがみさんを見てるとそんな感じですね」
「うっ……」
こなただけでなく、みゆきにまで言われてしまっては反論できなかった。
「なるほどね、つかさを攻略したかったらかがみに認めてもらわないといけないわけだ」
「攻略言うな。それにそんな、私が頑固親父みたいな言い方……。確かに、信用できない
やつにつかさを任せたくはないけどさ……」
「かがみの気持ちもわかるけどね。つかさってドジっ子だし」
「はうっ!?」
そう、つかさは抜けてるところがあるから、目を離せない。生まれてこの方、つかさか
ら目を離したことはない。
「でも、かがみのハードルって高そうだよね」
「そりゃあね、よほどのものじゃなきゃつかさは任せられないわよ」
「私、そんなに……」
よくよく考えてみれば、つかさに酷い物言いをしたような気がしないでもない。
「あえて言うならみゆきぐらいなものね」
「私、信用されてないの!?」
「こなただって、どっちかと言えば誰かが世話してやるタイプじゃない」
「うっ……」
つかさが困っているときにこなたが助けたのがきっかけで、二人は友達になったと聞い
ている。多少の勘違いはともかく、こなたのつかさを助けようとした行動と精神は本物で、
そこは信用している。だけど、この二人ではどこまでも堕落しそうな気がしてならない。
「しばらくは諦めたほうがいいよ、つかさ」
「え、え?」
そんなこんなでチャイムが鳴って、この話は終わりとなった。
終わりとなった、はずだった。
昼休みのいつもの四人組。こなたも女子高生なのだから、そんな話題を振ってくること
自体はおかしくない。
「あんた、彼氏作ろうともしてないだろ」
おかしくはないのだが、やはりこなたにこんな話は似合わないような気がして、かがみ
はつっけんどんに言い返した。
「つかさなんて男受けしそうじゃん。今まで声かけられたことないの?」
「私はそんな……」
「つかさはこれで人見知りするからね」
困惑気味のつかさに、かがみは助け舟を出した。
「お姉ちゃんがガードしてるから手を出せないわけだ」
「確かに、かがみさんを見てるとそんな感じですね」
「うっ……」
こなただけでなく、みゆきにまで言われてしまっては反論できなかった。
「なるほどね、つかさを攻略したかったらかがみに認めてもらわないといけないわけだ」
「攻略言うな。それにそんな、私が頑固親父みたいな言い方……。確かに、信用できない
やつにつかさを任せたくはないけどさ……」
「かがみの気持ちもわかるけどね。つかさってドジっ子だし」
「はうっ!?」
そう、つかさは抜けてるところがあるから、目を離せない。生まれてこの方、つかさか
ら目を離したことはない。
「でも、かがみのハードルって高そうだよね」
「そりゃあね、よほどのものじゃなきゃつかさは任せられないわよ」
「私、そんなに……」
よくよく考えてみれば、つかさに酷い物言いをしたような気がしないでもない。
「あえて言うならみゆきぐらいなものね」
「私、信用されてないの!?」
「こなただって、どっちかと言えば誰かが世話してやるタイプじゃない」
「うっ……」
つかさが困っているときにこなたが助けたのがきっかけで、二人は友達になったと聞い
ている。多少の勘違いはともかく、こなたのつかさを助けようとした行動と精神は本物で、
そこは信用している。だけど、この二人ではどこまでも堕落しそうな気がしてならない。
「しばらくは諦めたほうがいいよ、つかさ」
「え、え?」
そんなこんなでチャイムが鳴って、この話は終わりとなった。
終わりとなった、はずだった。
「すいません……こんなところまでお呼び立てして……」
放課後、みゆきからこっそり二人きりになって欲しいといわれ、かがみはそれに応じた。
「どうしたの? みゆきがこんなことするなんて、珍しいわね」
みゆきは親友だと思っているから素直に二人きりになったのだが、その理由が気になる
というのも大きかった。
「一つ相談が……いえ、相談とは違いますね。お願いと言いますか……」
歯切れが悪い。頬を赤らめて、目線が定まらない。一体何がみゆきをそうさせるのか。
「あの……その……つかささんとの交際を認めて下さいっ!」
「え……?」
思いも寄らぬ申し出に、かがみの思考が停止した。脳と身体が完全に停止して、時間の
経過さえも止まってしまったかのように、一切の動きを見せない。
「すいません、御幣がありましたね。私はまだつかささんに気持ちを告げていないので、
まだ私の片思いなんです。私が言いたいのは、もしつかささんが私の気持ちに答えてくれ
るならそれをかがみさんに認めてほしいということです。それと、少々身勝手なお願いな
のですが、かがみさんさえよければ私とつかささんがなるべく二人きりになるように協力
していただけないかと……かがみさん、どうなさいましたか?」
「あ、うん、ちゃんと聞いてるわよ」
聞いてはいたが、対応はできてないというのが正しい。
「それで、かがみさん……お願いできますでしょうか」
訴えてくるみゆきの表情は真剣そのもの。
「みゆき……本気なの?」
それでも確認してしまうのは、自分が信じていないからなのか。
「本気です。私はつかささんを愛してしまったんです」
確かにみゆきになら任せられると言った。決してそういう意味ではなかったのだが。
「なるべく二人きりになるようにすればいいのね……?」
「はい。つかささんを振り向かせるのは私自身が努力します」
親友の真摯な瞳にあてられて断れるほど、かがみは薄情にはなれなかった。
「そ、それ以上の協力はできないからね」
「ありがとうございます。それとこの話は泉さん以外には内密にお願いします」
深々と頭を下げるみゆきは、やっぱり誠実な人間なのだとかがみは思った。
放課後、みゆきからこっそり二人きりになって欲しいといわれ、かがみはそれに応じた。
「どうしたの? みゆきがこんなことするなんて、珍しいわね」
みゆきは親友だと思っているから素直に二人きりになったのだが、その理由が気になる
というのも大きかった。
「一つ相談が……いえ、相談とは違いますね。お願いと言いますか……」
歯切れが悪い。頬を赤らめて、目線が定まらない。一体何がみゆきをそうさせるのか。
「あの……その……つかささんとの交際を認めて下さいっ!」
「え……?」
思いも寄らぬ申し出に、かがみの思考が停止した。脳と身体が完全に停止して、時間の
経過さえも止まってしまったかのように、一切の動きを見せない。
「すいません、御幣がありましたね。私はまだつかささんに気持ちを告げていないので、
まだ私の片思いなんです。私が言いたいのは、もしつかささんが私の気持ちに答えてくれ
るならそれをかがみさんに認めてほしいということです。それと、少々身勝手なお願いな
のですが、かがみさんさえよければ私とつかささんがなるべく二人きりになるように協力
していただけないかと……かがみさん、どうなさいましたか?」
「あ、うん、ちゃんと聞いてるわよ」
聞いてはいたが、対応はできてないというのが正しい。
「それで、かがみさん……お願いできますでしょうか」
訴えてくるみゆきの表情は真剣そのもの。
「みゆき……本気なの?」
それでも確認してしまうのは、自分が信じていないからなのか。
「本気です。私はつかささんを愛してしまったんです」
確かにみゆきになら任せられると言った。決してそういう意味ではなかったのだが。
「なるべく二人きりになるようにすればいいのね……?」
「はい。つかささんを振り向かせるのは私自身が努力します」
親友の真摯な瞳にあてられて断れるほど、かがみは薄情にはなれなかった。
「そ、それ以上の協力はできないからね」
「ありがとうございます。それとこの話は泉さん以外には内密にお願いします」
深々と頭を下げるみゆきは、やっぱり誠実な人間なのだとかがみは思った。
「それで私ん家に来たってわけだ」
「今頃みゆきがつかさの部屋にいるわ。勉強会ってことでね」
こなた以外には内緒ということは、こなたには話してもいいということ。かがみは一人、
こなたの部屋に訪れていた。
先日のあの件以来、どうにもすっきりしなかった。勉強しても何も頭に入らず、好きな
本を読んでも面白いと感じず、今こうしてこなたの部屋に上がりこんでゲームをやってい
ても、どこか空しさを感じる。
「みゆきさんがねえ。いつの間にそんなフラグが」
「フラグ言うな」
そんなオタク用語ばかりで会話されても困る。少しは一般人にも配慮してほしい。
「かがみは、ハッピーエンドになると思う? それともバッドエンド?」
「そんなのわからないわよ……。エンドされても困るし」
漫画にしろゲームにしろ、恋人がくっついたところで物語は終わる。しかし、現実には
まだまだ人生は続くし、物語の中の彼らだってそこから幸せに暮らすはずだ。
「じゃあさ、かがみは二人のこと認めるの?」
「認めるって……」
「やっぱりいろいろと問題があるじゃん」
「それはそうだけど……」
かがみにとってはある意味不意打ちだった。こなたがそんなことを言ってくるとは思わ
なかった。さっきまで攻略だとかフラグだとか言ってたくせに、考えているところは考え
ているらしい。
「今までお姉ちゃんのものだったつかさにコイビトができちゃうんだよ」
「何言ってんのよ! 私はそんな」
かがみは言葉に詰まった。そんな、なんなのだろう。
「ねえ……今までつかさに恋人ができなかったのって、私のせい?」
今までなら、平然と彼氏という言葉を使っていたはずだった。おそらくこなたも同様に。
「ただフラグがなかっただけじゃない? よく知らないけど」
かがみやつかさとは付き合いが浅くてよく知らないから、完全に否定はできない。多分、
こなたはそんな意味で言ったはずだった。
つかさの姉として、いつもつかさを守ってきた。双子なんだから姉や妹は関係ないと口
では言っていたものの、つかさはいつもかがみを頼ってきて、かがみはいつもつかさを可
愛いと思っていた。双子だからこそいつも一緒にいられて、それを理由にいつも二人は傍
にいた。
でも、本当にそれはいいことなのか?
いつか自分が恋人を作るということを、真剣に考えていなかった。それはつかさがいた
からかもしれない。だからといって、それをつかさにも強要していいものなのか?
「まあ、みゆきさんなら任せられるわけだし」
確かにみゆきになら任せられると言った。決してそういう意味ではなかったのだが。
なかったのだが、みゆきならばつかさを幸せにしてくれるのだろうか。
「みゆきさんなら二人きりだからって悪いコトしないだろうしね」
「うちには姉さんたちがいるわよ」
悪いことって何だと突っ込みたかったが、墓穴を掘りそうなのでやめておいた。
「今頃みゆきがつかさの部屋にいるわ。勉強会ってことでね」
こなた以外には内緒ということは、こなたには話してもいいということ。かがみは一人、
こなたの部屋に訪れていた。
先日のあの件以来、どうにもすっきりしなかった。勉強しても何も頭に入らず、好きな
本を読んでも面白いと感じず、今こうしてこなたの部屋に上がりこんでゲームをやってい
ても、どこか空しさを感じる。
「みゆきさんがねえ。いつの間にそんなフラグが」
「フラグ言うな」
そんなオタク用語ばかりで会話されても困る。少しは一般人にも配慮してほしい。
「かがみは、ハッピーエンドになると思う? それともバッドエンド?」
「そんなのわからないわよ……。エンドされても困るし」
漫画にしろゲームにしろ、恋人がくっついたところで物語は終わる。しかし、現実には
まだまだ人生は続くし、物語の中の彼らだってそこから幸せに暮らすはずだ。
「じゃあさ、かがみは二人のこと認めるの?」
「認めるって……」
「やっぱりいろいろと問題があるじゃん」
「それはそうだけど……」
かがみにとってはある意味不意打ちだった。こなたがそんなことを言ってくるとは思わ
なかった。さっきまで攻略だとかフラグだとか言ってたくせに、考えているところは考え
ているらしい。
「今までお姉ちゃんのものだったつかさにコイビトができちゃうんだよ」
「何言ってんのよ! 私はそんな」
かがみは言葉に詰まった。そんな、なんなのだろう。
「ねえ……今までつかさに恋人ができなかったのって、私のせい?」
今までなら、平然と彼氏という言葉を使っていたはずだった。おそらくこなたも同様に。
「ただフラグがなかっただけじゃない? よく知らないけど」
かがみやつかさとは付き合いが浅くてよく知らないから、完全に否定はできない。多分、
こなたはそんな意味で言ったはずだった。
つかさの姉として、いつもつかさを守ってきた。双子なんだから姉や妹は関係ないと口
では言っていたものの、つかさはいつもかがみを頼ってきて、かがみはいつもつかさを可
愛いと思っていた。双子だからこそいつも一緒にいられて、それを理由にいつも二人は傍
にいた。
でも、本当にそれはいいことなのか?
いつか自分が恋人を作るということを、真剣に考えていなかった。それはつかさがいた
からかもしれない。だからといって、それをつかさにも強要していいものなのか?
「まあ、みゆきさんなら任せられるわけだし」
確かにみゆきになら任せられると言った。決してそういう意味ではなかったのだが。
なかったのだが、みゆきならばつかさを幸せにしてくれるのだろうか。
「みゆきさんなら二人きりだからって悪いコトしないだろうしね」
「うちには姉さんたちがいるわよ」
悪いことって何だと突っ込みたかったが、墓穴を掘りそうなのでやめておいた。
「みゆきは……まだいるみたいね」
帰宅して、玄関の靴を確認してかがみは呟いた。みゆきの邪魔をするまいと思ってただ
いまを言わずに自分の部屋に篭る。
とりあえず勉強をすることにしたが、やはり集中できず、いまいち成果があがらない。
つかさは今頃勉強しているだろうに。……いや、勉強しているとは限らない。つかさが
長続きする保証はどこにもないし、もしかしたらみゆきといい雰囲気になっているかもし
れない。仲のいい二人が勉強会の途中で、というのはラブコメでもよくある展開だ。
みゆきがそんな早まった真似をするとは思えない。しかし、みゆきはつかさを愛してい
るのだ。もしつかさがみゆきのことを受け入れるなら、キスの一つでもしているかもしれ
ない。若い二人のこと、止める者がいないのなら、もしかしたらもっと先のこともしてい
るかもしれない。もしかしたらもしかしたら――
「こなたじゃあるまいし」
かがみは自分の発想に思わず苦笑いした。もはや完全にペンは止まっている。
「それじゃ、またねー」
部屋の外からつかさの声が聞こえてきた。もうすぐみゆきが帰るはずだから、つかさか
ら直接話を聞くこともできるが、それは野暮というものだろう。
またしばらく引きこもると、夕食の時間になって母に呼ばれた。
「いただきまーす」
家族が一斉に唱和する。かがみは口だけ動かしたが、それを声に出せなかった。喉の奥
から自分の知らない声が出てきそうな気がして怖かった。
隣につかさが座っているが、そちらの方を見ることができなかった。つかさがさっきの
出来事で何か変化を遂げてしまったのではないか、それを見るのが怖かった。
同じ食卓に座っても、つかさに話かけることはできなかった。つかさが自分の知らない
何かを知ってしまったのではないか、それを確かめるのが怖かった。
始終黙ったままのかがみは口を食べることだけに使って、いち早く食事を終えた。
「ごちそうさま」
自分の分の食器をさっさと片付ける。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「別に」
妹を振り返らずに、自分の部屋に戻った。
帰宅して、玄関の靴を確認してかがみは呟いた。みゆきの邪魔をするまいと思ってただ
いまを言わずに自分の部屋に篭る。
とりあえず勉強をすることにしたが、やはり集中できず、いまいち成果があがらない。
つかさは今頃勉強しているだろうに。……いや、勉強しているとは限らない。つかさが
長続きする保証はどこにもないし、もしかしたらみゆきといい雰囲気になっているかもし
れない。仲のいい二人が勉強会の途中で、というのはラブコメでもよくある展開だ。
みゆきがそんな早まった真似をするとは思えない。しかし、みゆきはつかさを愛してい
るのだ。もしつかさがみゆきのことを受け入れるなら、キスの一つでもしているかもしれ
ない。若い二人のこと、止める者がいないのなら、もしかしたらもっと先のこともしてい
るかもしれない。もしかしたらもしかしたら――
「こなたじゃあるまいし」
かがみは自分の発想に思わず苦笑いした。もはや完全にペンは止まっている。
「それじゃ、またねー」
部屋の外からつかさの声が聞こえてきた。もうすぐみゆきが帰るはずだから、つかさか
ら直接話を聞くこともできるが、それは野暮というものだろう。
またしばらく引きこもると、夕食の時間になって母に呼ばれた。
「いただきまーす」
家族が一斉に唱和する。かがみは口だけ動かしたが、それを声に出せなかった。喉の奥
から自分の知らない声が出てきそうな気がして怖かった。
隣につかさが座っているが、そちらの方を見ることができなかった。つかさがさっきの
出来事で何か変化を遂げてしまったのではないか、それを見るのが怖かった。
同じ食卓に座っても、つかさに話かけることはできなかった。つかさが自分の知らない
何かを知ってしまったのではないか、それを確かめるのが怖かった。
始終黙ったままのかがみは口を食べることだけに使って、いち早く食事を終えた。
「ごちそうさま」
自分の分の食器をさっさと片付ける。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「別に」
妹を振り返らずに、自分の部屋に戻った。
「それでその、つかさとはどうなのよ?」
「ど、どうと言われましても……」
みゆきとかがみの二人きり。
結局、つかさには聞けなかった。つかさの口から聞いたらどんな結果だろうとダメージ
を受けそうな気がした。
「勉強会よ、勉強会」
いくらなんでも『みゆき、まさかあんた二人きりなのに乗じてつかさにあれやこれやし
たんじゃないでしょうね?』などと聞くわけにもいかず、曖昧な質問になってしまった。
「つかささんのおかげで大変楽しいひと時を過ごさせていただきました。あのあどけない
笑顔で見つめられるとどうしようもなく胸が高鳴ってしまいまして、やっぱり私はつかさ
さんのことが好きなのだと……いえ、それ以上のことはしていませんよ。勉強はきちんと
やりましたので」
聞かれてもいないのにそんなことまで逐一答えるあたり、やはりみゆきは真面目なのだ
と思った。そんなみゆきを疑っていたことにかがみは罪悪感を覚えた。
親友だと思っている。信用している。それは間違いない。
しかし、薄っぺらかった。簡単に翻ってしまうほど薄っぺらかったのだと思い知らされ
た。みゆきに何と言って詫びればいいのかわからない。
「今度の日曜日につかささんと遊園地に行く約束をいたしまして……かがみさんからもご
家族のほうによろしくお願いいたします」
「そう……」
よろしくというのが何のことなのかかがみにはよくわからなかった。『つかさは友達と
遊びに行ってる』と言えばいいのか、『つかさはデートしてる』と言えばいいのか。
いずれにしろ、みゆきのことを疑うのは絶対にやめようと誓った。親友を疑うようなこ
とはもうしたくないし、つかさの身を心配していたらきりがない。
もし相手が欲の強い男だったらとっくにすることされていたかもしれない。そう思えば
相手がみゆきでよかったと思うべきなのだろう。
「みゆきに口出しはしないけど……もし結果が出たら最初に私に教えてよね」
「はい、そうさせていただきます」
これでいくらかすっきりしそうだった。
「ど、どうと言われましても……」
みゆきとかがみの二人きり。
結局、つかさには聞けなかった。つかさの口から聞いたらどんな結果だろうとダメージ
を受けそうな気がした。
「勉強会よ、勉強会」
いくらなんでも『みゆき、まさかあんた二人きりなのに乗じてつかさにあれやこれやし
たんじゃないでしょうね?』などと聞くわけにもいかず、曖昧な質問になってしまった。
「つかささんのおかげで大変楽しいひと時を過ごさせていただきました。あのあどけない
笑顔で見つめられるとどうしようもなく胸が高鳴ってしまいまして、やっぱり私はつかさ
さんのことが好きなのだと……いえ、それ以上のことはしていませんよ。勉強はきちんと
やりましたので」
聞かれてもいないのにそんなことまで逐一答えるあたり、やはりみゆきは真面目なのだ
と思った。そんなみゆきを疑っていたことにかがみは罪悪感を覚えた。
親友だと思っている。信用している。それは間違いない。
しかし、薄っぺらかった。簡単に翻ってしまうほど薄っぺらかったのだと思い知らされ
た。みゆきに何と言って詫びればいいのかわからない。
「今度の日曜日につかささんと遊園地に行く約束をいたしまして……かがみさんからもご
家族のほうによろしくお願いいたします」
「そう……」
よろしくというのが何のことなのかかがみにはよくわからなかった。『つかさは友達と
遊びに行ってる』と言えばいいのか、『つかさはデートしてる』と言えばいいのか。
いずれにしろ、みゆきのことを疑うのは絶対にやめようと誓った。親友を疑うようなこ
とはもうしたくないし、つかさの身を心配していたらきりがない。
もし相手が欲の強い男だったらとっくにすることされていたかもしれない。そう思えば
相手がみゆきでよかったと思うべきなのだろう。
「みゆきに口出しはしないけど……もし結果が出たら最初に私に教えてよね」
「はい、そうさせていただきます」
これでいくらかすっきりしそうだった。
気に入らない。では何が気に入らないのか。自分で考えてみた。
まず、つかさに恋人ができるのが気に入らない。それは認めざるをえなかった。しかし
恋愛は個人の自由。つかさにだって恋をする権利はある。
相手が同性であることが気に入らない。だが、相手が見知らぬ男だったらイラつきは今
の比ではなかっただろう。そんな自分が容易に想像できた。
よくよく考えてみれば、今の事態が気に入らないというのは己の身勝手でしかないのだ。
つかさの気持ちがわからないからどうしようもないが、もしうまくいったら祝福してあげ
よう。妹が幸せになるのはいいことなのだから。
今の段階では、ただみゆきの気持ちを応援するしかない。
「何やってんのかしら、私は」
いちいち悩まなくても、こんな答えは一秒で辿り着けるはずだった。親友を裏切らず、
妹を見捨てることにもならない、シンプルな答えだった。
学校から帰るなり自室でこんな考えに耽るには不毛な気がしたが、気にしたら負けだ。
「お姉ちゃん」
「なによ」
つかさにお姉ちゃんと呼ばれるのは何度目のことか。そのときは大抵かがみに助けを求
めてくるのだが、これからはみゆきにそれが行くことになるのだろう。そんなことを考え
ながら、かがみは目を合わせずに答えた。
「今度ゆきちゃんと遊園地に行くんだけどね、お姉ちゃんは」
「ああ、それパス。こなたと出かける用事があるのよ」
後でこなたと口裏を合わせなければならない。心の中でメモをつけておいた。というか
みゆきは二人きりって約束にしなかったのか、とやはり心の中で突っ込む。
「一緒にどう? 今度の日曜日なんだけど……って、なんで知ってるの?」
「みゆきから聞いたのよ」
つかさが鈍いことを今更ながら確認した。この期に及んで他人を誘っているようでは、
好意に気づかれてないわけで、みゆきも苦労することだろう。
「そうなんだ……それじゃあ、その前の土曜日に」
「ごめん、それもパス」
「なんで?」
しまった、と思った。反射的に答えたものの、理由を用意していなかった。
「とにかくダメなの」
「うん……」
それっきり用は済んだのか、少し落ち込んだ様子のまま、つかさは部屋を出ていった。
みゆきと一緒になれば、もしならなくてもいつかの未来には、二人はべったりというわ
けにはいかなくなる。お互いのためにも、今から慣らしていってもいいはずだ。
――それにしても。かがみは思う。つかさがみゆきをどう思っているのかは全くわから
ない。つかさに恋愛経験はないし、好みのタイプすら知らない。だから想像しようにも手
がかりすらない。
自分が一番よく知っているはずだと思っていた妹。本当は何も知らなかったのだ。
つかさはかがみだけのものではない。今更ながらそれを思い知った。
まず、つかさに恋人ができるのが気に入らない。それは認めざるをえなかった。しかし
恋愛は個人の自由。つかさにだって恋をする権利はある。
相手が同性であることが気に入らない。だが、相手が見知らぬ男だったらイラつきは今
の比ではなかっただろう。そんな自分が容易に想像できた。
よくよく考えてみれば、今の事態が気に入らないというのは己の身勝手でしかないのだ。
つかさの気持ちがわからないからどうしようもないが、もしうまくいったら祝福してあげ
よう。妹が幸せになるのはいいことなのだから。
今の段階では、ただみゆきの気持ちを応援するしかない。
「何やってんのかしら、私は」
いちいち悩まなくても、こんな答えは一秒で辿り着けるはずだった。親友を裏切らず、
妹を見捨てることにもならない、シンプルな答えだった。
学校から帰るなり自室でこんな考えに耽るには不毛な気がしたが、気にしたら負けだ。
「お姉ちゃん」
「なによ」
つかさにお姉ちゃんと呼ばれるのは何度目のことか。そのときは大抵かがみに助けを求
めてくるのだが、これからはみゆきにそれが行くことになるのだろう。そんなことを考え
ながら、かがみは目を合わせずに答えた。
「今度ゆきちゃんと遊園地に行くんだけどね、お姉ちゃんは」
「ああ、それパス。こなたと出かける用事があるのよ」
後でこなたと口裏を合わせなければならない。心の中でメモをつけておいた。というか
みゆきは二人きりって約束にしなかったのか、とやはり心の中で突っ込む。
「一緒にどう? 今度の日曜日なんだけど……って、なんで知ってるの?」
「みゆきから聞いたのよ」
つかさが鈍いことを今更ながら確認した。この期に及んで他人を誘っているようでは、
好意に気づかれてないわけで、みゆきも苦労することだろう。
「そうなんだ……それじゃあ、その前の土曜日に」
「ごめん、それもパス」
「なんで?」
しまった、と思った。反射的に答えたものの、理由を用意していなかった。
「とにかくダメなの」
「うん……」
それっきり用は済んだのか、少し落ち込んだ様子のまま、つかさは部屋を出ていった。
みゆきと一緒になれば、もしならなくてもいつかの未来には、二人はべったりというわ
けにはいかなくなる。お互いのためにも、今から慣らしていってもいいはずだ。
――それにしても。かがみは思う。つかさがみゆきをどう思っているのかは全くわから
ない。つかさに恋愛経験はないし、好みのタイプすら知らない。だから想像しようにも手
がかりすらない。
自分が一番よく知っているはずだと思っていた妹。本当は何も知らなかったのだ。
つかさはかがみだけのものではない。今更ながらそれを思い知った。
その次の土曜日。つまり遊園地の前日。
「それで私ん家に来たってわけだ」
この日は都合が悪いという嘘を現実にするため、かがみはこなたの部屋に来ていた。
「私としては嬉しいんだけど、私を口実にするってどうよ」
「しょうがないじゃない。これしか思いつかなかったんだから」
「かがみが来てくれるのは嬉しいんだよ。でも勉強会はやめよーよ」
ついに耐え切れなくなったようで、こなたは机に突っ伏した。二時間はこなたにしては
よくもった方だ。
「今頃つかさとみゆきだって頑張ってるのよ」
日曜日にちゃんと遊ぶために土曜日は頑張るらしい。そうみゆきから聞いた。
「それはどーかな?」
こなたは顎に手をやって怪しげな笑みを浮かべた。机に突っ伏したままなので様になら
なかったが。
「二人っきりだよ二人っきり。もしかしたら別のことを頑張ってるかも」
「やめろ」
まるっきりこなたと同じことを考えていたわけで、それが恥ずかしくなった。
「ん? かがみ赤いよ。何考えてるのかナ?」
「何も考えてないわよ!」
考えていないというのは本当だ。それなのに必要以上にうろたえて誤解を与えてしまう。
「私たちもお年頃だからね。何かあってもおかしくないよ」
「やめろって言ってんでしょ!」
このまま不毛な争いが続くかとも思ったが、インターホンとそれを鳴らした来客が二人
を止めさせた。
止めざるをえなかった。やってきたみゆきは泣き崩れていたのだから。
「まさか、みゆき……」
うまくいかなかったのか、と思った。つかさのことを好きな人がいるというのが気に入
らなかったはずなのに、こうして泣き崩れるみゆきを見ると、自分の心が何かで締め付け
られるような感覚を覚えた。
「かがみさん、ごめんなさい……私のせいでこんなことに……」
「どういうこと?」
「つかささんが泣いてたんです……最近お姉ちゃんが冷たいって……」
「――っ!」
全くの予想外だった。
「かがみさんたちの仲を裂くつもりはなかったんです……ごめんなさい……」
妹離れしようと決意した。
間接的にみゆきの恋を応援した。
つかさが誰かと幸せになれればいいと思っていた。
みゆきが幸せになれればいいと思っていた。
つかさのために。みゆきのために。そのはずだった。
そのはずだったのに。
「私がつかささんを好きになったせいで、こんな……」
「みゆきさんは悪くないよ」
こなたはみゆきを胸に抱き寄せ、頭を撫でた。こなたの方が小さいのに、みゆきが幼子
に見えてしまうような、そんな錯覚がした。
「かがみとつかさのことは私に任せて……みゆきさんは自分のことを頑張って」
かがみには何も言えなかった。なんで私がこなたに任されなきゃいけないんだ、などと
いう疑問はわいてこなかった。
みゆきは悪くない。悪いのは、自分だ。――そんな思いが頭から離れない。
「はい……でもこれ以上引き伸ばしたくありませんから……」
みゆきは涙を流したまま、決意を表明した。
「明日、つかささんに告白します」
「それで私ん家に来たってわけだ」
この日は都合が悪いという嘘を現実にするため、かがみはこなたの部屋に来ていた。
「私としては嬉しいんだけど、私を口実にするってどうよ」
「しょうがないじゃない。これしか思いつかなかったんだから」
「かがみが来てくれるのは嬉しいんだよ。でも勉強会はやめよーよ」
ついに耐え切れなくなったようで、こなたは机に突っ伏した。二時間はこなたにしては
よくもった方だ。
「今頃つかさとみゆきだって頑張ってるのよ」
日曜日にちゃんと遊ぶために土曜日は頑張るらしい。そうみゆきから聞いた。
「それはどーかな?」
こなたは顎に手をやって怪しげな笑みを浮かべた。机に突っ伏したままなので様になら
なかったが。
「二人っきりだよ二人っきり。もしかしたら別のことを頑張ってるかも」
「やめろ」
まるっきりこなたと同じことを考えていたわけで、それが恥ずかしくなった。
「ん? かがみ赤いよ。何考えてるのかナ?」
「何も考えてないわよ!」
考えていないというのは本当だ。それなのに必要以上にうろたえて誤解を与えてしまう。
「私たちもお年頃だからね。何かあってもおかしくないよ」
「やめろって言ってんでしょ!」
このまま不毛な争いが続くかとも思ったが、インターホンとそれを鳴らした来客が二人
を止めさせた。
止めざるをえなかった。やってきたみゆきは泣き崩れていたのだから。
「まさか、みゆき……」
うまくいかなかったのか、と思った。つかさのことを好きな人がいるというのが気に入
らなかったはずなのに、こうして泣き崩れるみゆきを見ると、自分の心が何かで締め付け
られるような感覚を覚えた。
「かがみさん、ごめんなさい……私のせいでこんなことに……」
「どういうこと?」
「つかささんが泣いてたんです……最近お姉ちゃんが冷たいって……」
「――っ!」
全くの予想外だった。
「かがみさんたちの仲を裂くつもりはなかったんです……ごめんなさい……」
妹離れしようと決意した。
間接的にみゆきの恋を応援した。
つかさが誰かと幸せになれればいいと思っていた。
みゆきが幸せになれればいいと思っていた。
つかさのために。みゆきのために。そのはずだった。
そのはずだったのに。
「私がつかささんを好きになったせいで、こんな……」
「みゆきさんは悪くないよ」
こなたはみゆきを胸に抱き寄せ、頭を撫でた。こなたの方が小さいのに、みゆきが幼子
に見えてしまうような、そんな錯覚がした。
「かがみとつかさのことは私に任せて……みゆきさんは自分のことを頑張って」
かがみには何も言えなかった。なんで私がこなたに任されなきゃいけないんだ、などと
いう疑問はわいてこなかった。
みゆきは悪くない。悪いのは、自分だ。――そんな思いが頭から離れない。
「はい……でもこれ以上引き伸ばしたくありませんから……」
みゆきは涙を流したまま、決意を表明した。
「明日、つかささんに告白します」
「で、結局つかさに何て言ったのよ」
その翌日、みゆきとつかさが遊園地に行く日、かがみはやはりこなたの部屋に来ていた。
今では自分の部屋よりこなたの家のほうが居心地がよかった。
もっとも、自分の部屋の居心地を悪くしたのは自分自身――かがみは自嘲した。
「かがみのことは私に任せて、遊園地を楽しんでって、それだけだよ」
「その任せるってのをどうするのかって聞いてんのよ」
「収まるように収まるよ」
そんなんでいいのか。かがみは不安になってきた。
「つかさから聞いたよ。お姉ちゃんと話しても上の空だとか頼みごとを聞いてすらくれな
いとかお姉ちゃんのほうからは全然話しかけてこないとか」
「それは、つかさのためなんだから……」
はぁ、とこなたはため息をついた。
「かがみってほんっと、不器用だよね」
「……悪かったわね」
その必要もないのに妹と親友の板挟みに悩んで、行動が全て空回りした挙句にその二人
を苦しめてしまった。つまりは不器用である。
「ツンとデレを上手く使い分けられないんだよね、かがみは」
「ツンデレじゃないっつの」
「つかさは誰かがフォローしてあげなきゃいけないけど、かがみはいつも誰かをフォロー
してなきゃいけないんだよね。その役目をみゆきさんにとられちゃうかもしれないから、
こんなふうになってたんだよ」
ツンデレ云々はともかく、多分こっちは正しいのだと思った。
「みゆきさんがハッピーエンドかトゥルーエンドを迎えたらかがみはどうする?」
「トゥルーって何よ」
それを言うなら、何がハッピーなのだろうか。恋が成就するのは幸せなことだが、それ
はかがみにとっては妹が離れてしまうことでもあるのだ。
恋愛が全ての人間にとって幸せとは限らないから、こんなにもかがみは悩んでいる。
「私は、みゆきさんがつかさとうまくいっても私たち四人がいつもどおりでいられるのが
トゥルーエンドだと思う」
こなたは真面目に言っているようだった。この親友は時々底が知れない。
「もちろんうまくいかなかったとしても元通りになれたらいいって思うよ。そうなれるよ
うにかがみがフォローしてやってよ」
「無理よ。もう少しでみゆきの気持ちを台無しにしてたところだったのよ」
「大丈夫だって。私も協力するし」
こなたの口からそんな言葉が出てきたのは意外だった。それでもなんとなく嬉しかった。
一人で悩み続けて荒れ気味だった心に、すっと染み込んでいったような気がした。
「……うまく行ったらどうするのよ」
「かがみは誰かをフォローしてなきゃいけないからさ、私をフォローしてよ」
「――ったく、あんたってやつは」
かがみは苦笑いを浮かべた。時々どうしようもないヤツだとも思うが、こんなヤツだか
らこそ友達でいられるのだろう。
妹が離れるんじゃないかとか、親友を傷つけてしまうんじゃないかとか、さんざん悩ん
できたけれど、そんなことはかがみがどうにかすればどうにかなる。こなたはそう言って
くれている。
その翌日、みゆきとつかさが遊園地に行く日、かがみはやはりこなたの部屋に来ていた。
今では自分の部屋よりこなたの家のほうが居心地がよかった。
もっとも、自分の部屋の居心地を悪くしたのは自分自身――かがみは自嘲した。
「かがみのことは私に任せて、遊園地を楽しんでって、それだけだよ」
「その任せるってのをどうするのかって聞いてんのよ」
「収まるように収まるよ」
そんなんでいいのか。かがみは不安になってきた。
「つかさから聞いたよ。お姉ちゃんと話しても上の空だとか頼みごとを聞いてすらくれな
いとかお姉ちゃんのほうからは全然話しかけてこないとか」
「それは、つかさのためなんだから……」
はぁ、とこなたはため息をついた。
「かがみってほんっと、不器用だよね」
「……悪かったわね」
その必要もないのに妹と親友の板挟みに悩んで、行動が全て空回りした挙句にその二人
を苦しめてしまった。つまりは不器用である。
「ツンとデレを上手く使い分けられないんだよね、かがみは」
「ツンデレじゃないっつの」
「つかさは誰かがフォローしてあげなきゃいけないけど、かがみはいつも誰かをフォロー
してなきゃいけないんだよね。その役目をみゆきさんにとられちゃうかもしれないから、
こんなふうになってたんだよ」
ツンデレ云々はともかく、多分こっちは正しいのだと思った。
「みゆきさんがハッピーエンドかトゥルーエンドを迎えたらかがみはどうする?」
「トゥルーって何よ」
それを言うなら、何がハッピーなのだろうか。恋が成就するのは幸せなことだが、それ
はかがみにとっては妹が離れてしまうことでもあるのだ。
恋愛が全ての人間にとって幸せとは限らないから、こんなにもかがみは悩んでいる。
「私は、みゆきさんがつかさとうまくいっても私たち四人がいつもどおりでいられるのが
トゥルーエンドだと思う」
こなたは真面目に言っているようだった。この親友は時々底が知れない。
「もちろんうまくいかなかったとしても元通りになれたらいいって思うよ。そうなれるよ
うにかがみがフォローしてやってよ」
「無理よ。もう少しでみゆきの気持ちを台無しにしてたところだったのよ」
「大丈夫だって。私も協力するし」
こなたの口からそんな言葉が出てきたのは意外だった。それでもなんとなく嬉しかった。
一人で悩み続けて荒れ気味だった心に、すっと染み込んでいったような気がした。
「……うまく行ったらどうするのよ」
「かがみは誰かをフォローしてなきゃいけないからさ、私をフォローしてよ」
「――ったく、あんたってやつは」
かがみは苦笑いを浮かべた。時々どうしようもないヤツだとも思うが、こんなヤツだか
らこそ友達でいられるのだろう。
妹が離れるんじゃないかとか、親友を傷つけてしまうんじゃないかとか、さんざん悩ん
できたけれど、そんなことはかがみがどうにかすればどうにかなる。こなたはそう言って
くれている。
「なんかさ、今のあんたは気が利いてるわよね。利きすぎなくらい」
そのおかげで助かったとは言えない。照れくさくて。
「決意したことがあるんだ。もしみゆきさんがうまくいったら私もやろうって」
「それで張り切ってるのね」
かがみは再び苦笑した。現金なやつだと。
「それで、決意って何よ。何するつもり?」
「……姉妹揃って鈍いよね。私も苦労するかも」
「はあ?」
かがみには何のことだかわからなかった。
「いずれにしてもみゆきさん待ちなわけだよ。実はさっきからドキドキしてるんだよね」
「あんたでもそんなことがあるのね。……結果が出たら真っ先に私に知らせるようにって
言ってあるけど」
かがみも言われたら急に気になってきた。態度には出さないがそわそわし始める。
「かがみはうまくいってほしいって思ってるの?」
「……今はそう思ってるわよ」
「でも、女の子同士だよ? いいの?」
「つかさがいいんなら、それでいいわよ」
つかさが幸せになれれば何でもいい。随分と遠回りしたあとにようやくその答えに辿り
ついた。もし親から反対されたら自分が助けてやろうかとも思っている。
そんなふうに思うようになるまでの、何が最終的な決め手になったかと考えてみれば、
みゆきの涙だった。我ながら単純だと思った。
「認めるんだね……いい傾向だ」
「何がいい傾向なのよ?」
「いや、こっちの話」
またもや、かがみには何のことだかわからなかった。
「まあ、みゆきになら任せられるって言ったの私だしね」
「今にして思えばあれがフラグだったね」
「あのな――」
反論しかけたそのとき、かがみの携帯電話に着信があった。発信者はみゆきだった。
「みゆきからよ」
恐らく、結果を報告してくれるのだろう。こなたではないがドキドキしてきた。うまく
いっていたらおめでとうって言ってやろう。うまくいかなかったら――
「うまくいってなかったら何て言おうかしら」
「そんなの考えなくていいよ。早く」
結果を聞くのは楽しみではあるが不安でもある。なんといっても事は妹と親友に関わる
のだから。少し躊躇ったあと、こなたに再び急かされ、親指で着信ボタンを押した。
「もしもし――」
つかさのために。みゆきのために。
何かをするために、かがみはみゆきの答えを待った。
そのおかげで助かったとは言えない。照れくさくて。
「決意したことがあるんだ。もしみゆきさんがうまくいったら私もやろうって」
「それで張り切ってるのね」
かがみは再び苦笑した。現金なやつだと。
「それで、決意って何よ。何するつもり?」
「……姉妹揃って鈍いよね。私も苦労するかも」
「はあ?」
かがみには何のことだかわからなかった。
「いずれにしてもみゆきさん待ちなわけだよ。実はさっきからドキドキしてるんだよね」
「あんたでもそんなことがあるのね。……結果が出たら真っ先に私に知らせるようにって
言ってあるけど」
かがみも言われたら急に気になってきた。態度には出さないがそわそわし始める。
「かがみはうまくいってほしいって思ってるの?」
「……今はそう思ってるわよ」
「でも、女の子同士だよ? いいの?」
「つかさがいいんなら、それでいいわよ」
つかさが幸せになれれば何でもいい。随分と遠回りしたあとにようやくその答えに辿り
ついた。もし親から反対されたら自分が助けてやろうかとも思っている。
そんなふうに思うようになるまでの、何が最終的な決め手になったかと考えてみれば、
みゆきの涙だった。我ながら単純だと思った。
「認めるんだね……いい傾向だ」
「何がいい傾向なのよ?」
「いや、こっちの話」
またもや、かがみには何のことだかわからなかった。
「まあ、みゆきになら任せられるって言ったの私だしね」
「今にして思えばあれがフラグだったね」
「あのな――」
反論しかけたそのとき、かがみの携帯電話に着信があった。発信者はみゆきだった。
「みゆきからよ」
恐らく、結果を報告してくれるのだろう。こなたではないがドキドキしてきた。うまく
いっていたらおめでとうって言ってやろう。うまくいかなかったら――
「うまくいってなかったら何て言おうかしら」
「そんなの考えなくていいよ。早く」
結果を聞くのは楽しみではあるが不安でもある。なんといっても事は妹と親友に関わる
のだから。少し躊躇ったあと、こなたに再び急かされ、親指で着信ボタンを押した。
「もしもし――」
つかさのために。みゆきのために。
何かをするために、かがみはみゆきの答えを待った。
-おわり-
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- 私には見える…これは2カプ誕生の後、トゥルーエンドになると! -- 名無しさん (2011-04-29 20:49:09)
- これって続きないかな? メッチャ気になる... -- 名無しさん (2010-10-28 17:02:05)
- タイトルでキノの旅が浮かんだw -- 名無しさん (2008-04-05 07:15:42)