結果から言おう。
風神はテイルズ書き手の魔手から逃げることは出来た。
だが、魔手全てから逃げることは出来なかった。
次の会場。
即ちフォレストエリアに飛ばされたとき、テイルズ書き手たちの姿はなく。
ただ、暴走したまま襲い掛かるmn氏の姿だけが、風神の目の前にあった。
単純な距離の問題だ。テイルズ書き手達は風神から離れて食事を摂っていたが、mn氏はなんども、なんども、なんども風神に掴みかかり、近くにいた。
故にテイルズ書き手の転移場所は風神からずれ、mn氏の転移場所は、ずれなかった。
「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
「く、来るな! 落ち着くんだmn氏!」
なんども襲い掛かってくるmn氏を払いのける風神。
既に鬱のフォルスの影響は無い。だからmn氏の体はある程度真っ当な見栄えに戻っている。
だから、風神もある程度は落ち着くことはできた。
だが、mn氏は落ち着かない。既に、彼の姿は十分に傷つけられた。
理由は言うまでも無い――風神がやった。だから、襲い掛かる。
その事実が、落ち着いた風神の精神をダウナーにじわじわと苛んでいる……が、彼の精神を蝕んでいるのはそれだけではない。
こうして鬱展開を味わってしまえば、あの声が聞こえだしてしまう……!
『いやいや、ピンチですねぇ。
排撃を真っ向から当てようとしないからこうなるんですよ。急所に当てれば一撃で殺せたのに』
そして、とうとう聴こえ始めてしまった。
彼だけに聴こえる、鬱展開からの囁きが。
(殺す必要はない、幸い回復アイテムもある、なんとかして彼を止めて気持ちを落ち着かせて傷を癒して……)
『甘いですねぇ。それで、どうやって止める、どうやって落ち着かせるのよ?
出来もしないことを考えて私まで死なせないでほしいのよねぇ』
風神の脳内で二つの声が響く。
鬱は鬱の力で鬱力と化す。
鬱を恐れるが故に更に鬱となる、鬱スパイラル!
(私は
ニコロワβの書き手だ……同じ仲間を殺すことだけはできない……!)
『立場で人を殺すってわけですかぁ? 仲間でも傷つけるのはありだと!
そして他の書き手はSATSUGAIしたいと!』
(違う、彼は恐らくテイルズ書き手に何かされて……)
『何かしたのはあなたもでしょう……?』
脳内対話に苦しむ風神。ある意味、凄く邪気眼です……くっ、別の人格を持たぬ者にはわから――いや、他にもいたか?
だから当然だろう、気を逸らした隙にmn氏の接近を許したのは。
脳内から声が響き、首元にmn氏の腕が迫る。
『諦めなさい! 諦めて認めなさい! そいつを殺さなきゃ自分が死ぬと!』
「KOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
「ホ、ホワアアアアアアアアア!!!(※風神のセリフです)」
デデーン♪
「……GAAAAAAAAAAAAAAAA!?」
いかに暴走していたmn氏であろうと、一旦立ち止らざるを得なかった。
風が吹き荒れる。その向こうが、光に包まれている。その向こうにいる誰かが、mn氏の腹部に蹴りを決めていた。
蹴りを決めたのは、もはや先ほどまでとは違う、完全に別人となった誰か。
それでも体勢を戻したmn氏は風神へと掴みかかり、
「……来い! フラッグゥゥゥゥゥゥ!!!」
突如現れた黒い何かに銃撃され、倒れこんだ。
同時に光は収まり、晴れた視界から一人の女性が現れる。
「あややややや、感謝しますよ。
あなたたちが後押ししてくれたおかげで、私が表に出れました。
……あーあ、まったく。ぐだぐだ悩んでるせいでこの体ボロボロじゃないですか」
そうぼやいて、デイパックから強力グミセットを取り出してレモングミを口へと放り込む『彼女』。
目に見えて傷が回復していくその姿は強いて言えば、金髪の射命丸文。背格好も性別も声も服装も、まったく別のものとなっていた。
紛れもない別人。だが、彼女もまた間違いなく「風神」なのだ!
これは、風神の描く作品の二面性に端を発する。
一見すると熱血展開が売りであり、このロワでもそんな感じで対主催やっていた風神だが、それだけが風神の書くSSの特質ではない。
風神はその気になればキャラを無言死させるほどの無情・鬱担当書き手としての側面を表すのだ。
そして彼の周囲が鬱展開となったことで、風神自身のキャラはそれに合わせて「鬱担当の彼女」へと変化を開始したのだッ!
まぁ、ぶっちゃけるとこのロワで紹介されたときはまだF.E氏が鬱展開書いてなかったからなんだけどNE♪
さて、妖艶に笑う風神の後ろに聳えるは、黒く細長いモビルスーツ……
だが、そのモビルスーツは風神と比べれば大きいとは言え、とても人が乗れそうにはないサイズであった。
「私の能力はいつでもどこでも『グラハム・エーカーが乗ったMS』をスタンドとして呼び出せること!
そしてそのサイズは1/1サイズから私と同じくらいのサイズまで自由自在!
そう、私が、私達が、フラッグです!
……ま、私と同じくらいのサイズで呼び出さないと魔力を消費しちゃうんですけど」
1/8グラハム専用ユニオンフラッグカスタムを率い放たれる、ノリノリな風神の声。
そのセリフだとフラッグじゃなくてガンダムじゃんって突っ込みは禁句な。
しかし暴走したmn氏は、そんなセリフを意に介さず襲い掛かる。痛みを押し殺して。
「OOOKOOOMEEEEE――」
「うざい」
だが、そんな突撃が通用するはずもなく。
先ほどまでの躊躇はどこへやら、彼女がフラッグに迷わずソニックブレイドを振り下ろさせると共に……
mn氏は鬱モード風神の作品同様にろくな断末魔さえ与えられず、その熱によって両断された。
更にその死を悼むこともなく、風神は素早く持っていた荷物を剥いで我が物とする。
だが、それも当然。今の彼女は対主催でなければマーダーでもない。
自分の命を最優先し、生き残れるなら優勝だろうと脱出だろうと選り好みせず、自分以外の命は例え知己であろうとどうとも思わない……
いざとならば後ろから対主催を切り裂き、鬱展開に持ち込むようなキャラなのだから。
「さてと。邪魔者の処分も終わりましたし、人を探しに……」
そう呟いて飛び立とうとした風神の動きが止まる。
ガサガサという音を立て、木々から現れたのは間違いなく……
「なぜあなたがここに……おまけに一人だけ?」
「私の能力を忘れたか? しかし、貴様がそのような能力を隠していたとはな」
風神の言葉に、三度現れた菜梨はそう答える。
彼のみがここに現れたのは単純。被のフォルスの能力を、中間地点から次のフィールドに飛ばされるタイミングを見計らって使用したのだ。
そのため、他のテイルズ書き手が風神たちとは違う場所に飛ばされる中、一人だけ風神たちを追うことができた。
とはいえ流石に無理があったのか、位相がズレが生じ現れる誤差が大きなものとなっただが。
「……つまりお仲間からはぐれた上に、森で迷って私を見つけるのに手間取ったと」
「ち、違うもん!」
やれやれ、とばかりに肩を竦める風神。ちなみに言っておくと、テイルズ2ndのミクトランにとって森は鬼門です(方向音痴的な意味で)。
だが、その警戒は決して解かれてはいない。現に、彼女のスタンドは菜梨に対してリニアライフルを向けている。
「ま、いいですけどぉ。
そっちの能力は種が割れてるんです。私が呼び出せるのはフラッグだけじゃありませんしぃ、タイマンなら十分やりようがありますよ?」
「そこで問5だ。私の協力者となるか否か……改めて選べ」
「……は? なぜそんな質問を」
「なぜなら、今の貴様には私と同じ空気を感じるからだ」
ニヤリと。天上王ミクトランの顔で、菜梨が笑う。
「何よりも空気で感じ取った。
貴様が貴様であるためには、私達の生み出す『鬱』は大きな効力を発揮するだろう。
それに、フラッグにはレーダーくらいついているよね?
レーダーがあれば迷子にならないもん! せ、せめて森から出るまでは一緒にお願い!」
「…………」
色んな意味で考え込み、黙り込むF.E。
……かくして、事態はかつての局面に戻る。
ただし、かつて以上に凶悪な面子を揃えて。
【一日目 朝/フォレストエリア】
【
フラッグファイターF.E@ニコロワβ】
【状態】リジェクトダイアルの反動(グミで8割方回復)、鬱担当人格
【装備】排撃貝@〇ロワ
【所持品】支給品一式、DMカード(強制脱出装置)(使用不可)、強力グミセット@テイルズ&テイルズ2nd(残りパイン、ミラクル)
ラスカル@らきロワ、ねこねここねこ@テイルズロワ2nd
Xbox360@ニコロワ 、DMカード(聖なるバリア・ミラーフォース)(使用不可)
【思考】
基本思考:ともかく生き残る。優勝・脱出などの手段は問わない。
1:???
※決意を6/氏と勘違いしています
※熱血人格は風を操る程度の能力、鬱人格はモビルスーツをスタンドとして操る程度の能力。
あまりに両極端な熱血展開・鬱展開になるとそれぞれの人格がそれに合わせて表面化します。
また極端な状況でなくともある程度熱血展開・鬱展開になれば、埋もれている人格は顕在化している人格と会話が可能です。
【菜梨@
テイルズロワ2nd】
【状態】健康
【所持品】フランヴェルジュ@テイルズ2nd 不明支給品0~2
【思考】
基本思考:優勝し、萌えキャラじゃない天上王になる。
1:森から出るために風神を協力者にする。
※外見はミクトラン@TODです。SSの影響で方向音痴+萌えキャラになっています。
※特殊能力:被のフォルス
一定範囲内の相手が何かしらの行動を起こす時、その行動先に瞬間移動する。
多少の誤差はあるが、だいたい相手の行き先を塞ぐ形で移動する。
【mn氏は本当に熱いのか?@ニコニコβ 死亡】
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最終更新:2009年11月05日 21:34