関連文書

A.P.235/10/25、市街地区東北部工業地区にて身元不明の変死体は発見される。遺体の身元情報を情報部管轄にて調査を進めるも所属シップ、戸籍情報さえも削除済みであった事が判明。メディアにて報道されるも彼についての手掛かりは何一つ発見されなかった。以下は彼の端末データに唯一保存されていた文書である。

A.P.235/10/17。本日は私の誕生日であり、人生の終着点を発見してしまった日でもある。気分は最悪だ、ひたすら逃げ続ける日々は懲り懲りだ、いっそ早く殺されたい。命の灯を激しく散らせたい。しかし、この文書が見つかる頃には私の全ての情報は既に消えている事だろう。私は生粋の美食家だった。様々な惑星の自然の奇跡を愛していた。それも当時の話であり、追い求めていた先は禁忌の領域だった。彼が切っ掛けとなった事を私は後悔していない。だからこそ、ここに書き残しておく必要がある。身元も分からない人間の残す文書に何の意味がある?そう言われても死人に口なしとも言うだろう。慈善家の様な青年がいた。彼は誰もが愛するような食事を提供し、善意で与える事もある。そんな典型的で愚かなお人よしだ。彼の作る食事が好きだった。私は人肉が好物だった。最初に食べたのは惑星ナベリウスの凍土で仲間と遭難した時だっただろうか。大人しい新人の娘と素行の悪い中年、ベテラン風を吹かせる卑怯者とロクなメンツじゃなかった。遭難時、激しい吹雪でキャンプシップもテレパイプもまともに機能してくれない、それ程に酷い状況だった。洞穴で凍えながら救援を待っている中、男二人は娘が何も言えないだろうと考え、鬱憤晴らしにしようとしたんだろう。二人を止める為にも仕方がなかった、あの時は気が動転していた。二人を殺めてしまい、新人は怯え続けていた。それから何日経っても天候は変わってくれなかった。空腹に飢えて私は、一人の肉を試しに焼いて食べる事にした。新人は私を制止するから何度も痛めつけて大人しくさせた。冷静さを失って食べたソレは今まで食していた物を否定されるかの様な味だった。新人は頭を抱え怯え続ける中、無我夢中に食べた。私は狂っていなかった。本能に従ったまでだ、三大欲求の一つは美食家だった私にとって掛け替えのない重要な何かだったに違いないのだ。そして何日、何日経っても救援は来なかった。途中エネミーの襲撃に遭う事はあったが、雑魚だけだったので問題は無かった。だが、彼女にとって私が一番のバケモノに見えたんだろう。それを証明するものは既にない、あの時彼女も食べてしまったからだ。それ以来、私はあの感動を求め続けていた。人の肉でもどの様にしたら美味なのか、幼く柔らかい肉だけでは物足りず食べ応えのある大人の肉もとても良かった。探求心を追求する事が如何に新鮮で充実したものなのか考えさせられた。だからこそ、彼の作る料理は私にとって絶品とも言うべき料理だったのだ。彼の料理から大きなヒントも得る事が出来た。効率良く食材を手に入れる事、そして同志を得る事だった。まさに神の啓示そのものだ、しかし彼は私を見て悲しんだ。今でもそれを理解する事は出来ない。私は、同志を集め、食する事の素晴らしさを謳歌してきたのに、彼はただただ悲しみ、咎めるだけだった。何を言っているんだ?と私は疑問を抱え込んだ。だって彼も人を食し、その人を愛しみ感謝をしているだろう。私は種族から外れた彼らを私たちの中に宿す事で彼らを人と一体化させる、その意味を込めて同志達と共に食事をしているのだというのに。だが私は彼を嫌う事は一切無いだろう、何故なら彼によって私の人生は輝いたのだから。もし彼に殺されてもそれは本望だろう。私の全てを消去しても、私は彼の事について漏洩する事は決してしない。彼の料理を愛していたから。どうか、どうか彼を責めないでくれ。彼は誰かの幸福の為に動いた結果だったのだ。他者の幸せを願う彼を、私を殺す彼を責めないでくれ。


参考:非概念の恵み
この団体の首謀者は【異食様】と呼ばれており、首謀者自体の身元情報は不明です。
結成及び活動確認日→AP.234
情報部管理官ヘリック率いる対策チームによりほぼ壊滅→AP.235
小規模的に活動を確認→AP.238

参考:ネームレスと思われる犯罪者【収穫者】
過程として、この文書に関連した人物であれば犯行は以前より行っていたと考えられ、行方不明者に関した情報を整理する必要があります。
活動を確認→AP.239
最終更新:2017年09月15日 02:44