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魑魅魍魎 美食の宴_第二章10

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nanaki(2006-11-23)


では久しぶりに。



烏天狗の森を小さな妖怪が走っている。

袋狢の伝吉である。

「金の…はぁっ…はぁっ…」

先刻からこの伝吉。同じ事を何度も何度も呟いている。

「天狐」に銀次組の襲撃を命令された伝吉は、森の中をただひたすら走っていた。
敵は近い。

やがて、遥か向こうから狐火の大群がチラチラと見えてきた。
「(敵は10…いや、20…か)」

伝吉は走る。先頭にいる銀色の狐の姿が見えてきた。

そして…




一方、時同じくして町をウロウロする妖怪が一匹。

天邪鬼である。

「ああ、道に迷っちまった…ええと…ここはどこだよ…」

天邪鬼はブツブツと独り言をいいながら、近くにあった掲示板を見る。


化け物町4丁目”


「随分と遠くまで来ちまったな…」

化け物町4丁目は、妖界で唯一の下町である。
ここに住む妖怪達はみな、楽しそうだ。


―俺にはあわねぇ…



すると突然、向こうの方から大きな怒号が響いた。

「おいっ!!なにすんだてめぇっ!!」

ドカンと何かが壊れる音が響く、辺りは騒然となった。

「しらばっくれるんじゃねぇぞ?コラ。アレは何処にあるんだ!」

倒れこんだ妖怪の胸倉を掴んだのは、ガタイのいい妖怪狸だった。

「知らねぇっていってんだろうがっ!このっ!!」

一方、胸倉を掴まれながらも抵抗するのは、妖怪狐のようだ。

狸「油揚げだよっ!!油揚げ!!あんたんとこにあるっていうのは分かっているんだよ!!」

狐「油揚げだぁ?そんなもん、そこらへんの豆腐屋で買いやがれっ!!」

狸「馬鹿か?ただの油揚げじゃねぇぞ?この妖怪界でたった一房しか採れねえ『金の大豆』で作られた油揚げだよっ!」

狐「はぁ?誰が馬鹿だ?コラ。大体なぁ、狸風情がなに油揚げ如きで大騒ぎしてんだよ!!」

どうやらこの二匹。「油揚げ」で揉めているらしい。
下町にはよく見られる光景だ。多分。

どうせ、商店街の店同士の他愛もない喧嘩だろうとは思っていた。
しかし…何だか様子がおかしい…。

通り過ぎる妖怪達は誰も近づこうとはせず、横目で見ながら早足で通り過ぎるばかりだ。

すると近くにいた老妖怪が…

「ああ…また300年前の闘争が始まっちまったかねぇ…」

と言った。

―闘争?

俺が訝しんでいるのに気付いた老妖怪は、 ああ。あんた知らないのかい。ここいらを牛耳る「目狐組」と「鬼一口組」の闘争だよ。 と話し始めた。


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