nanaki(2006-11-26)
≪魑魅魍魎 美食の宴≫ 第二章 天狐
「おいおい、お前ら何やってんだ」
先ほどから続いている狐と狸の喧嘩に突然割って入ったのが、ガタイのいい真っ黒な狐だった。左目は何かで怪我をしたらしく傷痕が痛々しい。
「あ…修さん…いっいや…若頭…」
「お前怪我してるんじゃねぇのか…本部にもどれ」
「いやぁ…こんなの大したことないですよ。それよりも…」
「ああ?」
黒い狐は同じく隣に倒れている狸を見る。
「お前…鬼一口組…ふん。狸が何の用だ!」
狸「油揚げだよ。金の…金の油揚げだ…。お前ら目狐組が持っているというのはなぁ、もう確認済みなんだよ…」
吟「だからっ!さっきからしらねえっていってんじゃねぇかよっ!」
吟、待て。と黒い狐は吟と呼ばれた狐を手で制す。
修「金の油揚げだ?そんなもの今更…」
黒い狐はそういった後、しばらく考え込んだ。
そして、
そして、
「金の油揚げはここにはないよ。先代の組長の息子が持ち出したんだ。あいつとは連絡が未だにとれない」
狸「ふん…お前のところも大変だなぁ…まぁ、いい。いつか化けの皮剥いでみせるわ」
妖怪狸はそういって立ち去ろうした。そして、
「この間銀狐集団が全滅したってなぁ…」
と言った。
俺は、すぐさま伝吉がやったんだと直感した。
「目狐組」と「鬼一口組」化け物町では1.2を争う集団である。
目狐組は地域の治安を守る、いわば用心棒だ。
目狐組は地域の治安を守る、いわば用心棒だ。
一方「鬼一口組」は目的のためなら手段を選ばない非道な妖怪狸集団で、何かあるたびに目狐組にちょっかいを出しているそうだ。
先ほどの若頭と呼ばれた黒い狐は「黒狐の修太郎」と呼ばれる、無駄な戦いを好まないが怒ると怖いという黒狐で、子分達から篤い信頼を受けている。
そして「吟」と呼ばれていた狐は「銀狐の吟」組の中で一番喧嘩っ早く、修太郎を支えている。
「それにしても、金の油揚げってなんだ…」
俺は、すぐさまお頭(天狐)に報告しようと天狗山に戻ることにした。
俺が踵を返したとき、後ろからバタバタと走ってくる音がした。
「しゅ…修太郎さん! 大変です!!」
「おお、お前はヨリヤス」
「ぼっ…ぼかぁ、すごいの見つけちまったんでさぁ…」
「何だよ、すごいのって…」
「ぼっ…僕が以前紹介した物件のですねぇ…中にですねぇ…」
「もったいぶってねえでさっさと言え」
「へっへぇ…。あのキツネ亭が…」
「は?キツネ亭?」
「さっ…三凶の…キツネ亭ですよ!!修太郎さん!!」
「まさか…宗旦狐の…そうか…これでようやく…」
俺は耳を疑った。まさか「宗旦狐」という名前をこんな所で聞くとは思わなかったのだから。
俺達が企む三凶潰し、妖怪狐協会から派遣された銀時組、キツネ亭、そして金の油揚げ…目狐組と鬼一口組…
何か1本の線で繋がりそうな、そんな気がした。