キノウツン藩国 @ ウィキ

とな藩・akiharu藩国編

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kinoutun

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第一回


『となりの藩国は面白い~akiharu藩国編~』


 この国は大丈夫なのだろうか――
廃墟がありドラッガーがそこら中にいた。
 ドラッグ強化兵――ドラッガー自体はキノウツン国にもいるし、深刻な問題ではあるのだが、
 この国のドラッガーは明らかにそれを上回っている。

うじゃうじゃいる。

 我が国のドラッグはキノコだから副作用が少ない=大丈夫という理由らしい。

大丈夫なのだろうか。 

 聞くところによると、この国は藩王までもがドラッガーだという。ドラッガー天国である。

大丈夫なのだろうか。

 幽体が離脱するまでトリップする彼らはついに自らを魔法使いと名乗りだしたという。


本当に大丈夫なのだろうか。


 青い薔薇の刺青をしたイっちゃってる目の人が、奇声を上げて通り過ぎていった。

大...

 つい最近観光地が出来たと聞いたのでやって来たのだが、
この分ではキノコ園でキノコパーティーなんてことに成りかねない。
至る所に備え付けられた「泥棒猫注意」の看板も気になる。

「また泥棒猫だーーー高級猫缶が箱ごと盗まれたーーーー!!」
「またかぁああ!! ええい今度こそは捕まえて三味線にしてやるーーーー藩王命令だーーー!!」

 聞こえない、なにも聞こえない。
大丈夫、大丈夫。
 耳を折り畳んで、自分に言い聞かせるように呟き続ける。
ガキ(養女)をツン国に置いて来て良かった。
 今度はakiharu国に行ってくると告げたとき、
藩王付きメイドの浅田が必死になって止めた理由がようやく理解できた。 
 摂政のアシタスナオが「行くならお前1人で行ってこい」と言った理由も
(間違った方向に勘違いしていた)


 結論から言うと、観光地でのイベントはキノコパーティではなかった。

 あるいはキノコパーティーの方がよかったかもしれない...

 浅い湖の中、ワニに追いかけられていた。
全力で走る。水を蹴って背後で何かが跳躍する音。

「どあああぁあああっっ!」

 横をワニの歯が交差しながら通り抜けていく。
咄嗟に飛び退かなければ丸ごと喰われていただろう。
ジャングルのワニは俊敏だった。

「駄目ですよぉー逃げてばかりじゃー」

ガイドが旗を振りながらのほほんとそう言った。


 地図の示す観光地――そこはジャングルの入り口だった。
そこに、掘っ立て小屋のようなものが建ち並び、大きな垂れ幕が垂れ下がっている。

『ジャングル食べ歩きツアー~食べられても知りません。大自然の掟編~』

 垂れ幕を見た瞬間に帰ろうと思った。
その前に体に無数の蔦が絡まって身動きが取れなくなったが。

「うおっ?」
「ようこそ~! ジャングル食べ歩きツアー へ!!」

 旗と蔦を持った南国人の女性がにこやかに挨拶をする。
彼女の持つ蔦はまるで蔦自身が意志を持つかの如く自分に絡まっている。
遠くで悲鳴が上がった。足首に蔦を巻き付けた南国人が空高く舞い上がっている。
...どうやら、意志を持っているらしい。
 悲鳴を聞いて、女の人は少しだけ声の方を見た。「ああ」となにかに気づいて、

「ようこそ! ジャングル食べ歩きツアー~食べられても知りません。大自然の掟編~へ!」
「え、なんでいま言い直したの?」
「サブタイトルまでがツアー名であると言うことを十二分にご了承下さい」
「さりげに重要な了承を取ろうとしてないかっ!?」
「いえいえまさかまさか」

なにやら紙を取り出す女性、見るからに活発な女性だ。
たぶんガイドなのだろう。というか、旗にガイドと書いてある。

「ではでは、こちらの傷害保険及び免責事項を、さらっとお読みになった後サインを」
「いやまずツアーの内容から教えろよっ」
「あ、忘れてました。
このジャングル食べ歩きサバイバルー~食べられても死にません。大自然の掟編~ですが」
「死ぬわ! てか、さっきとサブタイ違くないっ?」
「豊かな動植物を誇るakiharu国の大密林を食べて食べられて歩み行く冒険ツアーで御座います。
わーお素敵」
「聞いてないし、さらっととんでもない受動態が混じってるし」

 逃げようともがくが、蔦が絡みついて一向に抜け出せない。
 先ほどから、ちらちらと見えるボードが気になる。
壁に貼られたそのボードにはでかでかと、「無事故達成日数105日」と書かれた文字が踊っていた。

「...」

ちなみに、その横には「安全第一」だった。
ガイドさんが、こちらの視線を追いかけて「ああ」と、得意げに胸を張った。

「ただいま記録樹立中ですよー」
「106日前に何があったかを、まず教えてくれ!」
「左に見えますのが選択コースと生還率表で御座います」
「聞けよ! そしてすげえ言葉きた!!」

確かに「安全第一」の張り紙の右にそれらしきものがある。


<極楽=99%><涅槃=85%><覚醒=70%><天空=25%>


「僕のお薦めは天空コースだねえ。大変お安くなってるよ」
「命か、命の値段がか。ちなみにこのパーセンテージってのは...」

ガイドさんはにっこりと笑った。

「統計データだよ」
「すごいっ! 目安値ですらない!!?」
「大丈夫だいじょうぶ、当病院の高い医療技術はにゃんにゃん共和国のお墨付きさ。
なので、ちょっとぐらい怪我をしても大丈夫」

ガイドが指をさすと、すぐそこに病院があった。
その病院にも垂れ幕が下がっており「24時間受付中」と書かれている。 

「この国の医療技術が異様に高い理由が解った気がする...」

もはや何も言うつもりはなかった。

「――極楽コースで」
「はーい! ではではサインが終わったらこの強化プロテクターを装着してね!
わからなかったら僕に聞くといいよ!!」


 そこから先は地獄だった。まさに極楽と地獄は紙一重である。
まずはじめに、蔦に巻き付かれ逆さ吊りにされた。
 その後、3mはあるかという巨大な壺型の花の中に蜜が美味しいのだと言って飛び込まされた。
 その後、御存知ピラニアに襲われそうになった。
 そこを、なんとか逃げ切ったところ、また蔦に巻き付かれて逆さ吊りにされた。

「あ、その蔦は持っておくといいことありますよ」

鉈で蔦を切りながら、ガイドさん。朗らかに言う。

「そ、そうなのか。食用とか?」
「その蔦を調合して飲みますと、あっというまにお目々がぐるぐるに」
「いらんっ!!」
「お土産として珍重されて」
「向こうの税関で捕まるわっ!!」


そして今、ワニに追いかけられ、喰われそうになっている。

「駄目ですよぉー逃げてばかりじゃー」

旗を振りながらのほほんと言うガイドさん。

「ほら、ちゃんと食べ返さないと」
「おかしいっ、その発想は、明らかにおかしい!!」
「背中のお肉が美味しいんですよぉ」
「背中ごと喰われそうになったわ!!」

 気配を感じて飛び退る。0.2秒前まで喉があった空間をワニの歯が噛み砕いた。
ぞっとする。
空振りしたワニは湖を浮く古木を蹴って空中で方向転換、そのまま水に潜り気配を消す。

「なんなんだ! あの地形を把握しきったような敏捷性は」
「密林補正+3でございます」
「やかましいわっ! んなバケもん、どうやって喰えって言うんだよ!!」

ガイドさんは鉈で、飛びながら迫るピラニアを叩き殺しながら「え~」と首を傾げた。

「すれ違い様にカウンターで」
「出来るか! そんな器用なことっ!」
「あ、うちの藩国のおまじないに手の平に器って言う字を三回書くと器用になれるって言うのが」
「んなおまじない信じてる奴はぜってー器用じゃねえっ!!!」
「失礼なー。うちの医師たちは有事には必ずこのおまじないをするんですよ」
「たすけてくれぇえええ!!」


 その後、ワニからは命からがらなんとか逃げられた。
さらにその後、巨大バナナに喰われそうになった。
 なんだか泣きたくなった。


「お土産はいかがっですかぁ」

 身体中包帯だらけでズタボロの自分の目の前で、
怪我一つ無いガイドさんが朗らかに土産物を勧めてくる。
 akiharu国特産と書かれた棚にはずらりと異種異様な物品が並べられていた。
干し怪鳥・沼の主カレー(レトルト)・ピラニア缶・元祖ワニ饅頭・断末魔バナナ
いつの間に撮られたのか、バナナに食われそうになっている自分の写真まである。

「あちらの少し妖しいかんじの屋台では藩王ご愛用のお薬や、かわいい吏族マスコット人形などもありますよ?」
「...」

結局。
 唯一まともそうなピラニア缶を選んでおいた。これならガキもなんとか食べられるだろう。
 いや、この際まずくてもいいが。
他は見るのも恐かった。

「またのおこしをー」

背後から、朗らかな、声。

「今回は半日コースだったから今度は一週間コースとかどうかなー」

耳を折り畳んで走り出す。
もう何も聞こえない聞きたくない。
途中、青い刺青をした目のイっちゃってる人が奇声を発しながら現れたが、そんなのはどうでもよかった。
あのガイドの朗らかな声の方がよっぽど恐かった。
そうして、俺は逃げるようにしてakiharu国を後にしたのだった。

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