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上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/例えばこんな三人の関係/Part02 - (2010/06/06 (日) 13:38:01) の編集履歴(バックアップ)




流星に願う妹達の想い


午前2:55分、商店街入り口では既に美琴とミサカ10039号が立っていた。集合時間までは後5分あるのだが美琴はため息を付いていた。
美琴は常盤台の冬服に身を包み、その上こコートを着用している。首には赤いマフラーが巻かれている。
対してミサカ10039号は常盤台の制服といういつもの格好だ。

「ったく寒いわね~、それにしても当麻の奴、女の子二人を待たせるなんていい度胸してるわね。
 こういう時くらい時間前に来れないのかしら?それにしてもアンタ、いくらなんでもその格好は自殺行為じゃない?」
「生体電気をいじって体温を上げているので平気です、とミサカは返答します」

平然と答えるミサカ10039号だが、その表情は優れない。確かに自分は平気だが、
その他の妹達に関しては別だ、合流して美琴の能力を封じるまでは下手に能力を使えないのだ。
この寒空で既に15分近く、一部の妹達はそれ以上の時間をこの格好で行動している。

「一体何をやっているのでしょうか、とミサカは苛立ちながら彼らの来る方向を見つめます」
「当麻が遅れてくるなんて日常茶飯事よ、っていうか彼ら?どういう事?」

もはや遅れてくる事前提のようだ、苦笑いを浮かべる美琴だったが、彼らという言葉に反応したようだ。

「遅刻を回避する為にミサカ10032号が迎えに行ってます、とミサカは返答します」
「なんですってー!アンタまた当麻にちょっかい出そうっての!?」
「…話を聞いてましたか?とミサカは呆れてみます」

そうこうしている内に待ち人がやってきた。当麻と御坂妹である。時刻は3:00分、待ち合わせピッタリだ。
二人は並んで歩いていたが少しだけ離れている、御坂妹が気を使っていたのだ。

「ちょっと妹!当麻に変なちょかい出してないでしょうね?」
「…?ミサカはずっとこうして歩いてきましたが、とミサカは返答します」
「本当かしら?昨日の昼間の事もあるしあんま信用できないわね、その辺どうなの、当麻」
「ん?ずっとこんな感じだったぞ?寒そうだから手でも繋ぐか?って言ったら
 『お姉様が見てない時はお義兄様に手は出しませんよ』って言われてっておい!いきなりなにしやがる!」

当麻が言い終わる前に雷撃の槍が飛ぶも全て右手にかき消される。

「うっさい!勝手に妹に手を出そうとすんじゃないわよ!全く!」
「妹に手を出されるのも、妹が手を出すのもダメとは、とミサカ10039号はお姉様の独占欲の強さに呆れます」
「そんな事はどうでもいいので早速移動しましょう、とミサカ10032号は強引に話を進めてみます」

いつの間にか当麻に手を出すな!から妹に手を出すな!にシフトした美琴、それを聞いた妹達はそれぞれ呆れ、先に進もうとする。が

「大体当麻はいっつもいっつも待ち合わせに遅れてきては誰かにフラグ立ててくるし!
 こっちはなんか事件に巻き込まれたのかと思って心配してるのに!ちょっとは反省しなさいよね!」
「んな事言ったって困ってる人見捨てるわけにもいかねーだろうが!」
「逆切れすんな!」
「「痴話喧嘩はその辺にしていきますよ!とミサカ10023(10039)号は少々大声で先を促します」」

いい合いを続ける二人の会話を半ば強引に打ち切る妹達、これ以上時間を浪費するのはまずいので目的地へ歩き出す。
そして後ろを振り返ると手を繋がずに付いてくる二人の姿があった。それは妹達にとって見慣れた光景、しかしとても寂しい光景だった。
彼らが付き合い始めてもう数ヶ月経つが、未だに手を繋いで歩く光景を妹達は間近で見たことが無い。
たまに街で見かけても、妹達に気付くと手を離してしまうのだ。本人達はとぼけているが、妹達にはバレバレだ。
そして今この瞬間も二人は手を繋ぎたそうにしている。だが、妹達の存在によってそれは叶わない。

「仕方ありません、とミサカ10032号は大胆な行動に出ます」

ぎゅ、っと御坂妹が当麻の左腕に抱きついた。両手を巻きつけて寄り添うように身を寄せる。

「反対側も空いてますね、とミサカ10039号はお姉様を押しのけて右腕にしがみつきます」

更にぎゅっと右腕にも抱きつく妹達に抱きつかれた当麻は突然の事にパニックになり、
それ以上に自分の指定席を奪われた美琴はその光景を見ながら口をパクパクさせている。

「ちょっと御坂妹!?離れろって!!当たってる!当たってますからーー!!」
「な、ななな、何やってんのよあんた達!当麻から離れなさーーーい!!」
「何って、空いていたから抱きついたのですが何か問題でも?とミサカ10032号はお姉様を挑発します」
「それにこの格好は寒いのでこうしていれば暖かいのです、とミサカ10039号は白々しいことを言ってみます」
「アンタさっき生体電気いじって平気って言ってたでしょーが!!いいから離れろ!当麻もデレデレしてんじゃない!」
「なんでもいいから離れてー!両腕が気持ちいいけど視線が怖いからー!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ4名、数分間の戦いの末、妹達は当麻から離れ、当麻の前と左側をそれぞれ歩いている。
美琴は当麻の右手をしっかりと握り二人の妹を睨み付けていた。

「お姉様、いい加減機嫌を直して欲しいのですが、とミサカ10032号は」「うるさい!」
「やれやれ、完全に嫌われてしまいましたね、とミサカ10039号は少し悲しげに語ります」
「おい美琴、何時までむくれてんだー、まあ気持ちは分からなくもないがいい加減機嫌直せって」
「ふん!いいのよ!人の彼氏を奪おうとする奴等の事なんて!」

怒りを鎮めようとするも途中で遮られる、先ほどの行為に相当お怒りのようだ。

(さて、予定通りの展開に持ってきた訳ですが、お姉様の機嫌を大幅に損なってしまいました、とミサカ10032号は先ほどの行為を悔やみます)
(ですが、あそこで中途半端な行動を取っていたら現状には至らなかったでしょう、とミサカ10039号は前向きに考えてみます)

何とか美琴の機嫌を取り戻したい妹達だが、現状では難しいようだ。事情を知らない美琴にとっては自分の彼氏をデートに誘い、
一緒に待ち合わせ場所に現れ、挙句の果てには抱きついた妹達という存在は彼氏を奪おうとする『敵』になりつつある。
いや、もうなってしまったといってもいいだろう。寧ろこの状況で一緒に行動してくれている事自体が奇跡に近い。

(ここはお義兄様に頑張って立て直してもらうしかないようですね、とミサカ10032号は自らの無能っぷりにしょんぼりしつつお義兄様の力に期待します)
(ともあれ、まずは二人を無事に公園まで誘導するのが最優先でしょう、とミサカ10039号は現時点でやるべき事を再確認します)

前を歩くミサカ10039号は誘導を、左側を歩くミサカ10032号は二人の手が離れないように監視とそれぞれの役割をこなし公園へと歩みを進める。
張り詰めた空気の中、無言で歩いていた4人だが、沈黙に耐えかねた当麻が美琴をなだめる。

「なあ美琴、そろそろ許してやってもいいんじゃねーか?こうして久し振りに会ったんだしそんな顔してても面白くないだろ?」
「…当麻、妹には随分と甘いわね。こっちは目の前で彼氏といちゃつかれて頭にきてんのよ!」

それに、っと美琴は続ける

「大体アンタも二人に抱きつかれてデレデレしやがって!そんなに妹って響きが好きなのかコラーー!」
「意味不明な切れ方すんなって!そんなことあるわけ無いだろ!」
「だったら何ですぐに振りほどかないのよ!アンタがそんなんだからこっちは不安になるってのに!」
「急にそんなことしたら危ないだろうが、それに、そんなに不安にならなくても大丈夫だっていつも言ってるだろ!」

遂に美琴の怒りの矛先が当麻へと向かう。相変わらず手は繋いでいるが、その瞳は怒りに満ち溢れている。
いつもならここで当麻が安心させる言葉を言うのだか、今は妹達の前である為かいつもより遠まわしだ。
当然そんな言葉で機嫌が直る美琴ではなく、むくれ顔で歩みを進める。

(やはりミサカ達がいては上手くいきませんね、とミサカ10032号は二人の会話に耳を傾けます)
(ですがこのままでは収拾がつかなくなってしまいます、とミサカ10039号は軌道修正の方法を模索します)
(やはりここは王道の土下座しかありません、とミサカ10032号はお義兄様の得意技の投入を提案します)
(いやいやねーだろ、とミサカ10039号は即座に否定します)
(ではどうするのですか?とミサカ10032号は問いかけます)
(普通に頭を下げて謝るしかないでしょう、とミサカ10039号は返答します)

ミサカネットワーク上で最善の方法を模索したが、良い方法が浮ばず、素直に謝ることにする。
ミサカ10039号は振り返り御坂妹を見る。そして小さく頷くと今だ膨れっ面の美琴の方を見て頭を下げる。

「「お姉様、先ほどは申し訳ありませんでした、とミサカ10032(10039)号は先ほどの行為について謝罪します」」

先ほどとは打って変わって素直に謝罪する妹達、深々と頭を下げて謝罪の言葉を述べる二人、その行動にやや驚く美琴だが、
その怒りはまだ収まらない様だが、右手でグシャグシャと髪を掻くと、頭を下げ続ける妹達にため息を付く。

「ったく、謝るくらいなら最初からすんじゃないわよ」
「まあまあ美琴、こうして反省してるみたいだし今回はの辺で許してやれよ」
「そうやって当麻が甘やかすからこの子達が調子に乗るのよ!はぁ…もういいわ、さっさと頭上げなさい」
 何時までも怒ってても仕方ないしね、今回は『と・く・べ・つ』に許してあげるわ」
「「ありがとうございます、とミサカ10032(10039)号はお姉様の寛大さに感謝します」」

頭を上げつつ感謝の言葉を述べる妹達。先ほどの緊張感は少し緩和されたようだ。
だが、美琴は未だに警戒を解いてはいない。それに気付いている妹達は先程よりも少しだけ距離を置いて歩く。
そして程なくして公園に到着し奥にある展望台を目指し歩いていく。
展望台に到着するとベンチに座っている人影が見えた。

「ありゃ?先客がいたのか?」
「本当、でもこんな時間に一人なんて随分無用心ね」

人影気付いた当麻、美琴がそれぞれ言葉を発する。その声に気付き、人影は立ち上がり振り返る。

「こんばんわ、随分と遅かったですね、とミサカ19090号は予定を10分ほどオーバーしている事に腹を立てつつ挨拶します」
「また御坂妹!?お前等一体何人集まるんだよ?そもそも何時からここにいたんだ!?」
「2時55分からなので45分くらいでしょうか、とミサカ19090号は現在の時間を見つつ答えます」
「そんなに早くからこんなとこに来て何やってたのよ!?」
「場所取りと準備ですよ、とミサカ19090号は返答します」
「なんだってまたそんな事を?皆で一緒に来ればよかったんじゃねーか?一人で退屈だったろ?」
「はい、ですがそれがミサカの役割でしたので、それよりも寒くは無いですか?とミサカ19090号は冷えているであろう二人の体を心配します」

そう言うとミサカ19090号は今まで生体電気をいじって上げた体温で暖めていた毛布を二人に被せ、1.5リットルの容量を持つ水筒からお茶を注ぎ二人に渡す。

「あ、ありがと…」
「っと、悪いな、え~っと御坂妹?」

あっという間にベンチに座らされケアされる二人、ミサカ19090号の動きには無駄がなく余りの手際の良さに二人はされるがままになっていた。
当麻の方は何と呼んでいいか分からず、とりあえず御坂妹と呼ぶことにした。その様子を見ていた二人の妹がある物に気付き声を出す。

「そのお菓子はなんですか?とミサカ10032号はお菓子の袋を指差しながら問いかけます」
「むむ!そのお菓子は先日病院で支給されたものと同一のものでは!?っとミサカ10039号は問い詰めます!」

ベンチの上に置かれた複数のお菓子の袋を見て二人が詰め寄る。

「こ、コレはミサカがこっそり溜めていたお菓子で…、とミサカ19090号は苦しい言い訳を始めます」
「またかこの野郎、とミサカ10032号はある仮説を立てつつ睨み付けます」
「お姉様、こいつは痩身テクを隠しています、とミサカ10039号は19090号をお姉様に売り飛ばします」

ミサカ10039号の言葉に顔を見合わせる美琴と19090号、目が合った瞬間19090号は後ずさる。

「ミサカとお姉様は同一の遺伝子です。後は…分かりますね?とミサカ10032号はお姉様を焚き付けます」
「「 !!! 」」

御坂妹が煽った瞬間美琴は動く!後ずさっていたミサカ19090号は悲鳴を上げるまもなく捕らえれれた。
その速さはまさに超電磁砲を連想させるものであった。19090号を仰向けに倒し、馬乗りになりギャンギャン騒ぐ4人の姉妹。
その光景をやれやれっと肩をすくめて見つめていた当麻だったが口を開く。

「おーい!取り込み中悪いが、ここまで来たのはいいけどこれからどうすんだ?曇ってて何にも見えねーぞ?」
「…そうね、ちょっとアンタ達この後のこと考えてんの?」

当麻の言葉に動きを止める4人、下敷きになっている19090号を解放しながら美琴もこれからどうするのかを妹達に問いかける。
御坂妹と10039号も19090号から離れるが、19090号は少し涙目で「ミサカは…ミサカは…」と呟いている。
そんなミサカ19090号を無視して二人の妹達は答える。

「ですから昼間話した通りお姉様が超電磁砲で晴らすのですよ、とミサカ10039号はあそこの自販機を指差しながらお姉様の力に期待します」
「アンタね、無理って言ったでしょうが。他に方法は無いの?」
「ミサカ達にはそんな力はありません、っとミサカ10032号はお手上げであることを告げます」
「は?んじゃあこんなところまで何しに来たってんだ?」
「流星群観測ですよ、それと…っと時間のようです、とミサカ10039号はゴーグルを下ろしながら返答します」
「…?アンタ何言って…」

美琴疑問を口にしたその瞬間、轟!という激しい音と共に突風が駆け抜ける。
何が起こったかわからない二人だが咄嗟に当麻がベンチから駆け出し美琴を庇うように胸に抱き寄せ身を丸める。
そしてその二人を更に庇うように毛布を頭に被せ抱き込む御坂妹。

「ちょと!何?何?何が起こってんの!?」
「美琴!いいからじっとしてろ!御坂妹!お前達もこっち来て固まれ!」

突然の状況に混乱する美琴、当麻の方はこういった突発的な事態に慣れているためか、冷静に対応する。
だが妹達は当麻の台詞を無視して各自行動する。

「…っ!」

バチィ!!二人を庇う御坂妹を襲う小石や空き缶、ゴミなどを10039号、19090号が可能な限り迎撃する。
全てを捌くことは出来ず、御坂妹はその体に小さな傷を作っていく。
1分もしないうちに風は止むが、それと同時に今度は、ドン!っという音と共に地面が大きく揺れた。
一瞬浮いたような感覚があったが、揺れはすぐに収まり辺りに再び静寂が訪れる。

「全く、あのロリコンめ、少しは加減というものをしてもらいたいものです、とミサカ10032号はあのクソ野郎(一方通行)の見境のなさに呆れます」
「まあまあ、おかげでこうして無事に問題を解決できたのでいいではありませんか、とミサカ10039号はあのロリコンの所業を寛大な心で許してみます」
「折角掃除したのに散らかしやがって!あのロリコンめ!とミサカ19090号は散らかったゴミを片付けつつ憤慨します!」
「お二人とも、大丈夫ですか?とミサカ10032号は毛布を被ったままの二人に問いかけます」
「ちょっと!どうなってんのよ!真っ暗で何にも見えないんだけど!?」
「そりゃお前…毛布被ってんだから見えないだろ…。とりあえず御坂妹?毛布を除けてもらいたいんだが」
「そのままいちゃいちゃしてれば良いのでは?とミサカ10032号は茶化してみます」
「いいから早く除けなさい!それと当麻!どさくさに紛れて変なとこ触んな!」
「わー!違うんですよ!不可抗力ですよってごめんなさいごめんなさい―――ッ!」

毛布にくるまれた二人はバタバタと暴れだす、どうやら当麻のラッキースケベが発動したらしくどこかに触ってしまったらしい。
その二人を強引に押さえつける御坂妹、その間にミサカ10039号と19090号はに周辺のゴミを手早く片付ける。
ミサカネットワーク内で準備が出来たことを確認し、御坂妹は暴れる二人に声を掛ける。

「お待たせいたしました、それでは本日のメインイベント、流星群観測の始まりです、とミサカ10032号は毛布を取りながら宣言します」

バサァ!っと勢い良く毛布を取った御坂妹、突然視界の開けた美琴と当麻は思わず動きを止める。
辺りは真っ暗になり、街灯どころか、街の明かりが完全に消えている。
そして時折視界に入る明かりの元を辿り夜空を見上げると…
そこには満点の星空と、放射状に降り注ぐ流星の輝きがあった。
一瞬大きく輝く物、スーッと流れるように赤い尾を残す物、数え切れない程の流星が流れては消えていく幻想的な光景だ。

「う…っそ!?なんで?今の今まであんなに曇ってたのに!?」
「お!今の大きかったな!じゃなくて、一体どうなってんだ?」
「お二人の第一声は聞かなかったことにします、とミサカ10032号はムードのかけらも無い二人に嘆息します」
「いいから質問に答える!」
「まあ俺も気になってるが今は流星でも見ようぜ、こんな機会滅多にないぞ美琴」

目の前の流星に集中できていない二人にため息を付く御坂妹、仕方がないので簡単に状況を説明する。

「一方通行の仕業です、とミサカ10032号は二人の疑問を解消すべく分かりきった答えを告げます」
「あのロリコンは上位固体のお願いを聞き、能力を使って雲を晴らし、変電所を攻撃して停電を引き起こしたようです、とミサカ10039号は補足説明します」
「正直やりすぎ感が漂いますが…、それと水筒は死守しましたがお菓子は飛ばされてしまいました、とミサカ19090号は報告します。
 これが流れ星ならぬ流れ菓子というやつでしょうか?とミサカ19090号は飛んでいった方向を見つめうまい事を言ってみます」
「…一方通行ですって…?アイツこんなこと出来るの?」
「マジかよ…、一方通行の奴もうレベル6なんじゃねぇか?」
「…あのロリコンの事は捨て置いて今はこの時間を楽しみましょう、この光景は今しか見られないのですから、とミサカ10032号は促します」
「無視かよ!とミサカ19090号は渾身のツッコミを入れてみます」

一方通行の仕業だと知った二人は唖然とするが御坂妹の言葉を聞き夜空を見上げ始める。
暫く無言で眺めていた5人だが不意に御坂妹が口を開く。

「お二人はこんな話を知っていますか?とミサカは問いかけます」
「「 ? 」」
「流れ星が流れ終わる前に願い事を三回言うとその願いが叶うという話です、とミサカは説明します」
「それって都市伝説でしょ?結構有名だから知ってるわよ」
「っても早すぎて三回も言えなさそうだけどな」
「…実は今日ここに来たのは妹達の願い事を叶えて貰う為に来たのです、とミサカは赤裸々に告白します
 聞いていただけますか?とミサカはお姉様とお義兄様に確認を取ります」

固体番号を省き、妹達の総意であるかのように語る御坂妹は二人の前に立ち、真っ直ぐ見つるとお願い事を聞き届けて欲しいと打ち明ける。
二人もその真剣な言葉に頷く、毛布で包まれた二人の手は御坂妹からは見えないが、しっかりと握られていた。
この後、どんな事を言われても受け止めるために。
二人の覚悟を感じ取った御坂妹は「では」と言い夜空を見上げるそして妹達の願いを代表して口にする。

「お二人が何時までも笑顔で、そして幸せでありますように、とミサカは早口で一回目を口にします」
「お二人が何時までも笑顔で、そして幸せでありますように、とミサカはもう流れてしまった流星に二回目をお願いします」
「お二人が何時までも笑顔で、そして幸せでありますように、とミサカは半ばやけくそになりながら三回目を言います」

「「「「………………………………」」」」

どうやら台詞が長すぎて一度目の途中に流れきってしまったようだ。
中途半端な願い事になってしまいガックリと肩を落とす御坂妹。

「おい、この野郎、台無しじゃねーかよ、とミサカ10039号は怒りを露にします」

同時に全妹達の非難の声がミサカネットワーク上に流れる。

「待ってください!チャンスを!もう一度チャンスを!とミサカ10032号は懇願します!」
「こういうのは一発で決めないと意味が無いのです、とミサカ19090号はこのクソ野郎(10032号)の主張を切り捨てます」

今にも取っ組み合いの喧嘩を始めそうな妹達。しかしそれとは対照的に今だ沈黙する二人。

(え…?あの子達今何て言ったの?私達の幸せ?そんな筈…だってこの子達は当麻の事が…)
(聞き間違い…じゃあねぇよな…)

言葉はちゃんと聞き取れた二人だったが、その内容に驚き、信じる事が出来ていない。
何かを言おうとするも上手く言葉に出来ない。そんな沈黙を三人の妹達が破った。

「「「 お二人が幸せでありますように  」」」

短く放たれた言葉に顔を上げる二人、すると先ほどまで喧嘩していた妹達が真っ直ぐ二人を見つめて立っていた。

「どういう…事…?」
「先程の失敗を反省し、三人同時に簡潔な言葉でお願いする事で、お願い事を確実に」「そうじゃない!」

言い終わる前に美琴が遮る。

「なんで…なんでよ!だってあんた達は当麻の事が今でも好きなんでしょ!?
 私はあんた達に散々辛い思いをさせて、その上あんた達の大切な人を奪ったのよ!?何でそんなことが言えるのよ!?」

美琴が抱えていた悩みと共に今まで抑えていた気持ちが溢れる。
妹達を生み出し、悲惨な運命を辿らせ、その上大切な人まで奪ってしまった。
美琴は妹達が自分を恨んでいると思っていた。
かつては当麻の言葉で救われたが、罪悪感が完全に消えたわけではなかった。
だから妹達の前では当麻に甘えることを躊躇っていた。
なのに…妹達は…

「妹達はお姉様を恨んでいませんよ、ただ気になっていたのは、お二人が妹達に気を使ってぎこちなく接してくることです、
 とミサカは今までの二人の対応を思い出し表情を曇らせます。ミサカは、ミサカの大切なお二人が、
 何時でも笑顔で、そして幸せでいて欲しいのです。それを伝えるために今日、この場を設けさせてもらいました、とミサカはここに来た理由を語ります」
「…っ!!」
「お姉様、お義兄様、もし二人が少しでも妹達の幸せを思ってくれるのなら…笑ってください。 
 お二人が幸せであることが妹達にとっての幸せでもあるのですから、とミサカは真っ直ぐ二人を見つめてお願いをします」

純粋で素直な想いを紡ぐ『妹達』の言葉に心を打たれた美琴の頬に一滴の涙が零れる。堪えきれなくなった涙が次々と溢れ出し美琴は俯いてしまう。
両手で顔を覆い、嗚咽を漏らし肩を震わせる彼女を当麻は何も言わずに抱き寄せる。

「それでいいのですよ、ミサカはお義兄様の行動に満足します。
 それではミサカの用事は済みましたので後は二人で思う存分いちゃついてください、とミサカは空気を読んで退散することを伝えます」
「おい?何処に行く気だ?」
「今のお二人には時間が必要でしょう、別の場所で流星群を見ることにします。
 毛布と水筒は日の出前にこちらで回収しますので、お姉様が落ち着いたら風邪を引かないうちに帰るのが良いでしょう、とミサカは連絡事項と助言を述べます」

では、っと言い残し妹達は歩いていく、少し歩いた所で何かを思い出し御坂妹が当麻の元に歩み寄る。
そしてこっそりと耳打ちした。

「ミサカが出来るのはここまでです、後はお義兄様がしっかりと支えてあげてください、とミサカはお義兄様の力に期待します」

「お願いします」という言葉に「ああ」という短い返事を聞き届け、御坂妹は走り去る。
美琴は未だに俯き小さく嗚咽を漏らしている、そんな彼女の肩を抱き空を見上げる当麻。

「お二人が幸せでありますように…か…」

当麻は先ほどの妹達の言葉を思い返し、そう呟いていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

妹達が立ち去ってからどれほど時間がたっただろうか、ずっと俯いていた美琴が顔を上げる。

「大丈夫か、美琴」
「…うん」

あれからずっと泣いていた美琴は目を腫らし、顔を真っ赤にしながらも返事をする。

「それにしても驚いたな、まさかあいつ等があんな事考えてたなんて」
「…うん、ねえ当麻」
「ん?」
「私はずっとあの子達が怖かった。当麻を取られることもそうだけど、何処かで私のことを恨んでるんじゃないかってね…
 昔当麻に『お前は笑っててもいいんだよ』って言われて確かに心は軽くなったわ、でも、当麻と付き合うようになって、あの子と街で出会う度に胸が痛くなるの。
 私ばかりが幸せになっていいのか?あの子達の幸せを私が奪っていいのかって」
「…」

当麻は黙って美琴の言葉を聞く。

「当麻と付き合うようになって幸せなはずなのに、当麻といる時にあの子達に会うと怖くなる。
 だから正直な話、二人でいるときは会いたくないと思ってた、変な話よね、私とあの子は姉妹なのに…」

今彼女はこれまで当麻にも話してこなかった事を話している。きっとそれは美琴が今まで隠し、そしてこれからも隠していくはずだった心の淀み。

「だから今まで街で出会ってもよそよそしかったのか」
「…うん、当麻にも迷惑掛けてたよね、ゴメン」
「別に迷惑だなんて思ってねーぞ?まあ相談くらいはして欲しかったけどな。
 俺の方こそ美琴がこんなに辛い思いしてたのに何もしてやれなくてゴメンな」
「ううん!当麻は悪くないあれは私が」「美琴」

何かを言おうとした美琴の言葉を遮る。当麻はその後に言うであろう言葉を理解していた。
だがそれは言わせてはいけない。妹達の願いを無駄にしない為にも当麻は美琴に言う。

「美琴、俺は美琴と共に歩むと決めたんだ、だからもう一人で背負わなくていい、何か問題が起きれば一緒に解決して行こう」
「当麻…」
「それに、妹達の心はちゃんと届いたんだろ?ならもう悩むことは何も無いはずだ」

そうねっと美琴は呟く、そしてしばしの沈黙があり美琴が口を開く

「暖かいね…」
「ああ」

降り注ぐ流星を眺めながら二人は身を寄せ合う。

「…よし!もう大丈夫!」

顔を上げ、美琴が立ち上がる

「ようやく復活ですか?姫」
「なによー、いつまでも落ち込んでなんかいられないわよ、折角あの子達が二人っきりにしてくれたんだし楽しまないとね!」

そうだな、と言いながら当麻も立ち上がる

「それにしても綺麗よね、今日のことは一生の思い出になるわ」
「そうだなー、でも俺としては今の美琴の顔が見れないのが残念だ」
「な、なによそれ」
「さっき一番大きな悩みが解決したんだ、今絶対いい笑顔してそうだから、見てみたいと思ったんだよ」
「…じゃあ特別に見せてあげる。ううん、当麻に見て欲しい」

そういうと当麻から少しだけ離れる美琴、そしてパチパチと放電を始める。
すると、青白い光と共に彼女の体が暗闇から浮かび上がる。

「…えい!」

バチ!浮かび上がった顔を見ようとした当麻に弱い電撃が浴びせられる。
咄嗟の事にガードが間に合わなかった当麻は一歩下がろうとして躓き尻餅をつく

「あはは!引っかかった引っかかった!そんなに簡単に乙女の恥ずかしい顔が拝めると思うなよ~」
「テメェ!いきなり何しやがる!」
「こんな古典的な手にかかるなんて当麻もまだまだね~」

悪戯を成功させた美琴は両手を後ろに回し腰の辺りで手を組み舌を出しながら当麻からゆっくり離れる
やれやれと立ち上がった当麻は目の前の光景に心を奪われた。
そこには未だに輝く星空と降り注ぐ流星、そして妹達の祝福を受け、本当の笑顔を手に入れた御坂美琴の姿があった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…どうやら上手く行ったようですね、とミサカ10032号は二人の様子を見て安堵します」

二人から10mほど離れた所で御坂妹は物陰から覗いていた。美琴が能力を使用したために何かあったのではないかと危惧して様子を伺いに来たのだ。
御坂妹はあれから公園に押し寄せてきた『敵』の排除をしていた。
雲が晴れた後、公園の展望台に向かう『敵』が増えたためだ。
ある程度は予想していたが、一方通行のド派手な行動で寝ていた者たちが起きてしまったのも一因だろう。
それでも暗闇の中で軍用ゴーグル、連携を巧みに駆使して奇襲、搬送を繰り返していたが、搬送する数が多く、人手は足りていない。
しかも、もう少しすれば空は明るみ始める。そうなると軍用ゴーグルの有利性が減ってくる

「ここが正念場ですね、とミサカ10032号は二人の様子をミサカネットワークに流しつつ戦場に戻ります」
「戦場にいる全妹達に告げます、今しばらくあの空間を守りましょう、とミサカ10032号は疲れの見え始めた妹達を鼓舞します」

戦場に戻りながら夜空を見上げる御坂妹
そして『妹達』はもう一度流星に願う、これからも二人が幸せであるようにと。
そして『妹達』は誓う、二人の世界を守り続けていくことを。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

時刻は午前6時前、辺りはすっかり明るくなっていた。後10分もすれば太陽が昇ってくるだろう。
そんな公園内を展望台に向かって歩く御坂妹の姿があった。他の妹達は先ほど戦闘を終え、それぞれ体を休めに戦場を後にした。
そして毛布と水筒を回収しに来た御坂妹はベンチに並んで座る美琴と当麻の姿に気が付いた。

「何をしているのですか?とミサカは問いかけます」

思ったことが口に出ていた、御坂妹は流星が見えなくなる夜明けと共に二人が帰っていたと思っていたのだ。
そんな御坂妹に気付いた二人が声を掛ける。

「何って、アンタが戻ってくるのを待ってたのよ」
「何処に行ってたんだ?ってお前!あちこちボロボロじゃねぇか!どうしたんだ!?」

当麻の言葉に自分の体を見る御坂妹、その体には戦闘の影響であちこち汚れが付き、手足に擦り傷を作っていた。
しまった、と御坂妹は思う、折角いい雰囲気で終われたはずなのにこんな姿を見られては台無しだ。

「暗闇でうっかり転んでしまいました、大した傷では無いので大丈夫です、とミサカは…」

あ…
立ち上がった二人の姿を見て言葉が切れる。そこには御坂妹が、いや、『妹達』がずっと待っていた、ずっと見たかった光景があったのだ。
その光景を見た御坂妹の瞳から涙が溢れる、それを見た二人は慌てて駆け寄ってくる。

「どうした!?どっか悪いのか!?すぐ病院に!」

慌てる当麻に美琴は「違うわよ馬鹿」と言うと当麻から離れて御坂妹に抱きつく。

「ありがとね、妹達の想いはちゃんと受け取ったから安心しなさい、それと…ゴメンね」
「謝る…事は…ありません、と…ミサカは…」

泣き続ける御坂妹をやさしく抱きしめる美琴、その姿はもうすっかり『姉』に戻っていた。
暫く泣き続けた御坂妹だが、すぐに調子を取り戻し、顔を上げる。
美琴は落ち着いた妹の頭をよしよしと撫でると当麻の元へ戻る。

「お恥ずかしいところを見せてしまいました、とミサカは先ほどの行動を思い出し頬を赤らめます」
「本当に大丈夫なのか?」
「アンタって本当に乙女心が分かってないわね~、情けなさ過ぎて涙が出そうよ、本当…、それよりもありがと、当麻との時間を『守ってくれて』」
「…気付いていたのですか?とミサカはお姉様に問いかけます」
「そりゃーねー、アンタ私を誰だと思ってんのよ、アンタ達のお姉様なのよ?」
「いつ気付いたのですか?とミサカはお姉様の勘の鋭さに驚愕します」
「ここであの子(19090号)に飛び掛ったときよ、本当びっくりしたわ、アンタ達どれだけ大胆な事をしてるのよ」

そう、実は痩身テクの聞き出すためミサカ19090号飛び掛ったとき公園の周りが取り囲まれていることに気が付いていた。
その時は何をしていたかまでは分からなかったが、妹達が立ち去った後も誰一人としてこの場に来なければ嫌でも気付く。
美琴は気付いていた上で妹達の想いを汲み取り、必死で守っていた空間に包まれていたのだ。

「それにしても、今日みたいなことは今回限りにしなさいよ、次にこんなことしたら怒るからね?」
「ごめんなさい、とミサカは素直に謝ることにします」

こつん、と悪戯をした子供を嗜めるように軽くおでこを小突く美琴。
御坂妹は謝りながら小突かれた場所を両手で押さえるが、その顔はどこか嬉しそうだ。

「もしもーし、一体何の話をしてるんですかー?上条さんは完全に置いてきぼりなんですが?」
「…妹達が私たちの事を大切にしてくれてるって事よ」
「?」

何が何やら分からない当麻は?顔で首を傾げる。そんな彼を見た姉妹は顔を合わせ、クスッと笑う。
――丁度その時、眩い光を放ち朝日が昇ってきた。暫く日の出を見ていた三人だが美琴が口を開く。

「さ!帰りましょうか!」

そう言って当麻の右手を握る美琴、その手はしっかりと握られ恋人繋ぎになっていた。

「そうしますか、上条さんは眠いのですよ」
「む!お義兄様はミサカ達が頑張って作った時間が退屈で仕方なかったのですね!?とミサカは憤慨します!
 これは罰が必要ですね、とミサカはお義兄様の左手をおずおずと握ります」
「当麻!妹に酷い事言って…ってちょっと妹!ちゃっかり当麻の手を握ってんじゃない!」
「今日くらいいいじゃありませんか、とミサカはお姉様の心の狭さに嘆息します」
「ったくしょうがないわねー、今だけだからね!後!それ以上密着しようとしたら怒るからね!」
「ちっ、先手を打たれてしまいました、とミサカは舌打します」
「アンタ本当油断できないわね、さっきまでの私の感動を返せー!」
「あー!もう!お前等耳元で大声出すなー!」

ぎゃあぎゃあとわめき散らしながら朝日を背に歩く三人。
妹達の秘めていた願いを聞き届け、わだかまりが解けた三人の本当の関係は今日、ここから始まる。


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