とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

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 一方通行とフィアンマが激突する少し前、フィアンマに吹き飛ばされた教会の面々は全員無事で、今はこの惨状を作った切っ掛けの神裂へのお説教タイムの真っ最中だった。


「まったく神裂、お前は常識的に物事を捉えすぎだってーの。フィアンマの言ってたことが事実なら平和的に解決出来たってーのに」
「も、申し訳ありません、キャーリサ様……」
「私もキャーリサさんに同意です。フィアンマさんって結構分かりやすい人でしたから、私もちょっといい案思い浮かんでたのに火織お姉ちゃんったら……」
「か、飾利まで~~~」


 お説教タイムといってもキャーリサ一人しか説教していないわけで、初春はちょっと神裂を嗜める程度、他の面々はただただ見守るだけだった。
 しょげてる神裂を見た初春は心の中で「うっ……」と呻き、罪悪感に駆られながら神裂の頭を撫でながらキャーリサに相談する。


「でもどうしましょう? 一方通行さんが一人で行っちゃいましたから今頃、二人の周りはその、じ、地獄絵図に……」
「まーそーなったらそーなっただな♪ それに急げばまだ間に合うかもしれん。お前にもフィアンマを上手くコントロールする策があるのだろー?」
「こ、コントロールというかあくまで上手く纏まるかもって思っただけでキャアッ!」


 策があるといっても成功する確率は絶対的なものではないので、不安そうな初春をキャーリサはお姫様抱っこする。
 いきなりのことで途惑っている初春の表情を楽しげに見た後で、キャーリサは迅速に命令を下す。


「私、騎士団長、神裂、初春はフィアンマ達を追う。初春、お前はフィアンマ達と合流する前にその策とやらの準備をするよーに。他の者は教会の後片付けならびに待機だ」


 キャーリサの凛としてそれでいて有無を言わせない物言いにそこにいる全員が黙って従うことに。


「よーし、では行こーか♪」
「あ、あの~キャーリサ、さん。わ、私は降ろしてはもらえない……んですか?」
「あーダメだ♪ それに王女たる私がお姫様抱っこしてやってるんだ、光栄に思うよーに」


 初春は思った、この人には何を言ってもほとんどスルーされるだろうと。
 そして一方通行達のもとへと向かう途中、初春は電話で第二区の兵器試験場の使用許可を土御門に依頼するのだった。
 それからすぐにキャーリサ一行は一方通行とフィアンマと合流、二人の戦いの仲裁に入る。





「そこまでだバカ者ども。血気盛んなのは嫌いじゃーないが、時と場所を弁えないのは私は好かんぞ」
「第二王女ごときが俺様に意見するとはいい度胸だな。下がれ、これは幻想殺しの右腕ライバルの俺様への試練が先だ、このセロリっ娘の後で相手してやろう」
「へェ、俺を殺すだァ? てめェ中々ユニークなジョークかましてくれてンじゃねェか。そんなに死に急ぎてェのか? トウガラシ」
「だから少しは落ち着けってーの。特にフィアンマ、お前は上条当麻のライバルとしてここに来たんだろー? あいつが人様に迷惑をかけるよーな男をライバルと認めてくれるのか?」


 キャーリサの『上条当麻のライバル』というフレーズにフィアンマはピタリと動きを止め、戦闘態勢を解除して考え始める。
 初春はキャーリサの発言で自分とキャーリサが同じ考えを持ってるかもと思うと、そこへさらに畳み掛ける。


「フィアンマさん、当麻お兄ちゃんとライバルと言う名の大親友になりたいんですよね?」
「そうだ。幻想殺しは俺様が唯一ライバルと認めてやった男だ。奴の右手と俺様の右腕がやがて最高の友情ストーリーを作り出すのだからな」
「わあっ、それは素晴らしいですね。でも知ってます? 当麻お兄ちゃんにはこの学園都市で一番のライバルと認めた人がいるってことを」
「何? それは聞き捨てならんな。幻想殺しのライバルは俺様一人だというのに。それで? どこのどいつだ?」


 フィアンマが見事に食いついてきたのを見た初春とキャーリサは内心でガッツポーズを取り、神裂と騎士団長は自分ではとハラハラしていた。
 初春がキャーリサから降ろされてトコトコと歩くと、一方通行をポンと叩いた。


「この人です♪ 一方通行さんは学園都市最強で当麻お兄ちゃんと何度か戦った仲です。どうでしょう? 当麻お兄ちゃんへの挑戦権を賭けて戦ってみては?」
「成程な、奴がライバルと認めた男を倒してこそ真のライバルになれるということか。面白い、その話に乗ってやろう」


 当麻へのライバルとしての執着が強いフィアンマは初春に乗せられてると分かっていても、彼女の提案を嬉々として受け入れた。
 それに納得していないのは一方通行が反発しようとするが彼は知らない、騎士団長の口車に乗せられることになろうとは。



「女性は強い騎士に憧れる……あなたのところの少女もそうなのでは?」


この言葉を聞いた瞬間一方通行がニヤリと笑う。どうやら成功したらしい。
だが、この二人の戦闘を許す……それは崩壊の始まりだと言うことに考えていなかったのがまずかった。
一方通行の目に本気の目が宿る、それを見てフィアンマもうっすらと笑う。



直後、半径100mをも吹き飛ばす余波が発生した。



それは科学と魔術が激突した結果だった。だが、それは



まだ小手調べの段階だった。



二人はまだぶつかり合う。その度に何かが飛んでいく。
二人はそのままどこかに行ってしまった。





その光景を見て吹き飛ばされた四人……神裂、初春、キャーリサ、騎士団長はと言うと、


「ったく、相変わらず化け物だな……それにたいこーしていたシロモヤシもすごいがな」
「そんな気軽な事を言っている場合ではありません!!右方のフィアンマが動き出したんです!!……キャーリサ様、いい加減私の剣を返して下さい!!」
「……はぁ、ほれ、さっさといくの」


ポイッと、子供がおもちゃに飽きたような感じで投げて返した。


「ありがとうございます。神裂、キャーリサ様と花飾りの少女をつれて逃げなさい!!」
「わかりました……飾利?どうしたんですか?」
「あ……大丈夫です。……ちょっと怖かっただけなので」
「ちょっとどころじゃないでしょう!!体全身が震えています!!早くここから離れましょう!!」
「……わかりました」


そう言うと神裂はキャーリサと初春を背負い、教会に急いだ。





そのころ、激戦を繰り広げている二人は第二十二学区に向かっていた。
ただただ、何かに引き付けられるように……



そしてその第二十二学区にはツンツン頭をしている上条当麻一行が『武蔵野牛乳』を一気飲みしていた。
……と言っても美琴は上条が服を着せてぐっすりとベンチの上で寝ているのだが……


「いやー!!やっぱり牛乳は武蔵野牛乳ですなー!!」
「そうだな上条、何てったって真夜と私はこれを飲んで育ったからな!!」
「……なのに胸は大きくならないよね」


最後の言葉は真夜がボソッと、言った一言なのだが……どうやら真昼には聞こえていたらしい。


「しーんーやー?なんか言ったか?」
「いや!?何も、何も言ってないから!!」
「いや、でも真夜君確かに『それなのにつるペッタンだよね……』って言ってたよ?」
「この愚弟がァァァああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!調子にのるなァァァああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


真夜は能力は強い方だとおもうが、姉と卍固めには弱いのだ。


「ぎゃァァァああああああああああああああああああああああああ!!痛い痛い痛い!!でもこの落ち着く感じは何だ!?」


ああ井ノ原弟は実はMだったのか、と適当な感想を持ち、美琴を背負って帰るかなーと、ふと思った。
だが、



その瞬間大きな爆発音が第二十二学区に響いた。



「うぎゃ!!耳が!!耳が割れるー!!」
「何だこの音!?」
「うぎゃァァァああああああああああああああああああああああああ!!驚いて力を強くしないで!!さすがに死ぬ、死ぬ死ぬ死ぬ!!」


最初の発言はお前が言うかと突っ込む所だが、今はそれどころではない。
そして今さらだがこの音にはさすがに美琴も起きた。


「ふにゃ!?何!?何の音!?」
「落ち着け美琴!!よし、俺は音にあった方見てくるから美琴達は逃げてくれ!!」


そしてすぐに走り出そうとするが、真夜が上条を止めた。


「待て、お前も行くなら俺も行く!!お前一人じゃ危険だ!!」


上条はその言葉を聞き、何かを考えているらしい。だが、結論は早く決まったらしい。


「わかったよ真夜、だから歯を食い縛っとけよ。結構痛いからな」


直後、幻想殺しが真夜の顔を突き立てた。
真夜はゴロゴロ転がっていき自販機にぶつかり、気を失った。
真夜は幻想殺しには勝てないのだ。


「んじゃ、こうなりたくないやつは真夜を担いでさっさと行け」


真昼と赤音はしぶしぶとうなづき、『様子みたらすぐ帰ってこいよ!!』と言って地上に上っていった。


「ねえ……何か凄くヤバイ感じがするんだけど?当麻、もしかして魔術師?」
「ああ、だから美琴も地上に帰ってくれ。お前を守るのが夫の務めだ」
「バカ!!私も行く!!絶対行く!!当麻が心配だから絶対に行くから!!」


上条は考える必要も無く、美琴を守るためだけに事実を伝える。


「……美琴、俺は必ず帰ってくる。だから先に家にかえってろ、夕飯の準備でもしててくれ」
「アンタバカ!?絶対にい………!!」


直後、上条の唇を美琴に押し付けた。いつもより、熱く、激しく……


「いきにゃりにゃにしゅるのよ!!」


美琴はキスの直後にしゃべるとふにゃけてしまい、噛みまくってしまう。
だが上条は真剣に話す。


「俺の言う事を信用できないか?だったら今度はキズ一つ無しに帰ってくる。信じてくれ」
「…………わかった、その変わりに絶対無傷で帰って来なさいよ?」
「わかった、行ってくる」
「行ってらっしゃい」


いつもどおりにキスをすると上条は走り出す。
しばらく美琴はただそこに立っていた。
だが、


「信用ゼロよ、当麻は何回病院送りになってるねよ!!」


美琴は上条の後を追った。



そして数分後、当麻は音があったところに着いていた。


「な、何が起きたんだ?」


当麻が見たもの、それはすさまじい光景だった。


「にしても誰がこんな事にしたんだ?」


当麻はこの惨劇を誰がしたのかと思った。
そんな事を考えてたら戦っている二人の光景を見つけた。


「ん?あそこで戦っているのは…アクセラと……誰だ?」


当麻は一方通行はすぐ分かったが、もう一人は分かってなかった。
そしてその後、二人の声が聞こえた。


『上条当麻のライバルは俺様一人で十分だ。とっとと失せろセロリっ娘。』
『なに言ってンだァ!!あいつのライバルは俺だけで十分なンだよォ!!そっちこそ失せろ。』


「ん?どっかで聞いたことがある様な…」


当麻はフィアンマの声を聞いた後聞いたことがある様なと思っていた。
そして、当麻はやっとフィアンマの顔が見えた。


「フィ、フィアンマ!!??」


当麻はもう一人が分かると、大声で叫んでいた。
そして、アクセラとフィアンマは、当麻の大声を聞いて、当麻がいる方向に向いた。





 こちらは上琴と別れたトライアングルカップル、真昼は一人浮かない顔をしていた、美琴が当麻に向けていた感情のベクトルのせいで。
 そのことに気付いたのは当麻の一撃から早々に復活していた真夜だった。


「真昼さんどうかした? 何だかすごく不安そうな顔してるけど」
「真夜! お前上条にやられたのにもう回復してるのかよ!」
「何だか能力使ってるうちに俺の基本能力の方も上がってるみたいだね。……ってそんなことより何が不安なの?」
「……上条の恋人だよ。あの子の上条に向けてたベクトルな、水色とピンクと青と赤が入り混じった色してたんだよ」


 真昼の言ってるベクトルの色の意味が分からない真夜と赤音がキョトンとしてることに気付き、慌てて真昼が分かりやすく解説する。


「あー、つまりだな上条のことが心配で心配でたまらねーから無理矢理付いてくって感じだ。だから俺……」
「真昼ちゃんは要するに上条君の恋人さんが心配なんだね? 無茶と分かってても放っておけないってことかな?」


 真昼のことを真夜ほどではないが理解し始めてる赤音に真昼は黙って頷く。
 赤音も真昼と同意見らしく真夜に視線を送ると、真夜は散々悩みぬいた挙句に結論を出す。


「……分かった。じゃあ今から上条と上条の恋人の様子を見に行こう。ただし、決して無茶だけはしないこと。危険だと分かったらすぐに逃げる、いいね?」
「ああ! 俺に何が出来るか分からねーけどさ、このままってのも寝覚め悪いからな。それに真夜が守ってくれるから心強いし♪」
「私も出来るかぎりのことはやるからね! 月夜ちゃんや真夜君じゃないけど困ってる人は見捨てて置けないから!」


 恋人二人の決意を聞いた真夜は【瞬間超人(リーンフォースセレクション)】で強化可能な五箇所を彼の全力の80ずつに配分、真昼と赤音を両脇に抱えて上琴を追いかけた。
 しかし当麻以外の感情のベクトルが見える真昼の存在が、事態を思ったよりも円滑にすることなど誰も予測など出来るわけがなかった。





 一方、一方通行とフィアンマに一番早く追いつきそうな騎士団長の携帯に土御門から連絡が入る。
 内容は初春に依頼された『第二学区の兵器試験場の使用許可』が認められたことについてだった。


『騎士団長、悪いがアクセラとフィアンマを俺の指定した場所に誘導してくれ。初春ちゃんから事情は聞いて、俺なりの策を練ってみた』


 土御門は一方通行とフィアンマの性格を把握した上の作戦を騎士団長に進言、騎士団長は走りながら彼の頭の回転の速さに感嘆を覚える。


「さすがは土御門、いい作戦を思いつく。分かった、お前の言う通りに彼らを乗せてみよう。だが第二学区の兵器試験場とはどこにあるんだ?」
『そこはアクセラにでも聞いてくれ。俺も今から兵器試験場に向かう、そこで落ち合おう』


 そう言って土御門が電話を切るのと確認した騎士団長は思う、トリックスターの掌で踊るあの二人が少し可哀想だと。





 そしてこちらは当麻の声に大きく反応したフィアンマが彼なりの笑顔で当麻に応える。


「久しいな幻想殺し、いや俺様最大のライバル当麻。この俺様がわざわざ出向いてやったんだ、もう少し嬉しそうにしたらどうだ? 未来の大親友よ」
「何でお前を見て俺が喜ばなきゃいけないんだよ! 何しに来たのか知らんがこんなに被害出しやがっ……未来の大親友? 誰が?」
「お前のことだ、当麻。待っているがいい、俺様がお前のライバルの座についてるこのセロリっ娘を叩き潰してお前のライバルと言う名の大親友の座に付く瞬間を」
「フッざけンじゃねェ! 上条の一番のダチはこの俺だァ! 待ってろ上条、この腐れトウガラシをぶちのめしてお前の一番のダチってことを証明してやンぜ!」


 当麻はパニックに陥った、フィアンマの言動と一方通行の熱いお言葉、そして二人の男が自分を巡って争ってる構図に。
 そこに更なる混乱の種を引っさげて美琴が現れる。


「当麻大丈夫? どこも怪我は無い? 言っとくけどお説教なら後で聞くから!」
「美琴……お前って奴は。ゴメン、すっげー嬉しい。いきなりで悪いんだけどキスしていいか?」
「当麻が望むならいくらでも♪」


 こんな状況下でもキスを始める最強バカップルに見慣れてる一方通行は呆れるだけだったが、フィアンマだけは違った。
 フィアンマの中にあるもの、それは当麻への羨望(彼女がいること)&自分を差し置いていちゃつき始めたライバルとして不甲斐無い当麻への怒りのみ。



「その娘、ロシアにもいたな……貴様の恋人だったか……俺様のライバルでありながら公衆の場でイチャイチャとは!!!」


フィアンマの第三の右腕から閃光がはしる。
伏線どおりフィアンマは第二十二学区を木っ端微塵にしようとした。
だが、



上条当麻はそんな伏線すらぶち殺す。



上条はフィアンマの巨大な右腕を真正面から掴み、投げ飛ばす。
それだけで閃光は消え、フィアンマも右腕と一緒に投げ飛ばされる。


「ほう、さすが上条当麻、俺様にふさわしいライバル……今日は本当にラッキーデイだな」
「俺は美琴が隣にいるだけで幸せだ。だけどな……」


上条はフィアンマに一歩一歩歩み寄る。


「だけど、美琴に危害を加えようとすんなら容赦しねえ!!いいぜ右方のフィアンマ!!お前は俺のライバル(親友)だなんて最高の位置にはつけない!!
いい加減決着つけようぜ!!お前が俺に勝てる……そんなありえない幻想があるなら……その幻想をお前ごとぶっ殺す!!」
「そうだ、そうだそうだそうだ!!俺様になんてふさわしいライバルだ!!さあ!!今日の今、この時間!!お前との右手の因縁に決着をつけようじゃないか!!」


そんなことを言った瞬間、黒い閃光がフィアンマに走った。


「ッ!?」


思わずそれを避けるフィアンマ、その黒い閃光が走った方向から声がした。


「シカトしてンじゃねェよホモガラシ!!小手調べは終わりだろォ?俺との勝負から逃げンですかァ!?それからアイツでもいいだろォが。まァ、俺にスクラップにされてなきゃなァ!!」
「すまないな上条当麻、一回このセロリっ娘を『最後の審判』に連れて行ってからお前を血に染めるとしよう」


再び、科学と魔術の最強がぶつかる。この戦いは、あらゆる異能の力を打ち消す、右腕を持つものにしか止められない。



「死ねェええええええええええええええっ! こンの腐れトウガラシがァあああああああああああっ!」
「お前こそ死ね、セロリっ娘。俺様と当麻の友情を育むことを邪魔する者は誰だろうと容赦はしない」


 一方通行とフィアンマ、理不尽とも言える二人の力の激突が生み出すもの、それは圧倒的な戦いだった。
 お互いの最高にして絶対の信頼を寄せる右腕同士が激突するたびに辺りの地面や建物が抉れ、破片が周囲へと飛び散る。
 当然ながら破片の被害に遭うのは周囲に居る人間、つまり上琴なわけだが反応が遅れてしまいピンチに陥る。


「しまっ……!」


 上琴が回避不能な多くの瓦礫を悉く破壊したのは赤音の衝撃波だった。
 駆けつけたトライアングルカップルに驚く当麻だったが、それ以上に問題なのは魔術を使ってるフィアンマの存在だった。


「お前ら何で……? いや、助けてくれたことには礼を言うけど……」
「悪いな上条。俺が真夜と赤音に無理言って連れて来てもらったんだ。お前の彼女がすっげー心配そうにしてたからさ。ところでアクセラと戦ってるのって誰だ?」
「えっ? あ、あいつはだな、えっと、その……」


 フィアンマのことをどう言えばいいのか悩む当麻だったが、そこに真夜が思いがけない言葉を投げかける。


「いいよ上条、言いたくないなら言わなくてさ。二人はともかく俺は無理に聞こうと思わないから。お前が言いたいなら聞くし、言いたくないなら聞かない。それで充分だろ?」
「……ありがとな真夜……って後ろ後ろ!」


 魔術のことを詮索する気ゼロの真夜に感謝する当麻は真昼と赤音の方を見ると、真夜の意見に同意するように頷いたのを見て感謝を覚える。
 そんな中、真夜の後ろに瓦礫が飛んできたので慌てて注意する当麻だが簡単に瓦礫を破壊する真夜に唖然とする。


「ああ、これか? 能力で強化してるからこれくらいなら問題なく砕けるぞ。上条と真昼さんは下がっててくれ。飛んでくる瓦礫はこっちで片付けるから」
「そーよ当麻♪ あんたの右手が有効なのは異能の力だけなんだから。普通の瓦礫をどうこう出来るわけじゃないから無茶しないで見守ってなさい♪」
「上条君と真昼ちゃんはアクセラ君と真っ赤な人のバトルでも観戦しててね~♪ こっちは私達だけで充分だから」


 本当なら一方通行とフィアンマの間に割って入ってバトルを中断させたい当麻だが、二人の戦いの余波が生み出す強大な風のせいで近づくことが出来ないのだ。
 当麻と真昼が暇を持て余してる中、美琴は電撃、真夜は強化された肉体による拳打と蹴り、赤音は衝撃波で押し寄せる瓦礫を蹴散らしていた。
 そんな中、先ほどから「殺す」とか「死ね」のような言葉を連発する一方通行とフィアンマを見ていた真昼が、不思議そうに当麻に尋ねる。


「なあ上条。あいつらの言ってる殺すとか死ねってのさ、本気で言ってるのか?」
「あ、ああ、多分な。二人とも結構そうゆうの躊躇い無いからさ。どうしてそんなこと聞くんだ? 井ノ原姉」
「だってよ、あいつらの互いに向けてるベクトルに殺意とか憎しみが一切入ってねーんだよ。倒したいってのは本当だと思うけど、それも認めさせたいって感じだぞ」
(あの二人が? まさか口ではああ言ってるけど本心は無意識にそんなこと考えてるってのか? ……何か不気味だな)


 真昼に見える感情のベクトルの前では本心を偽れないし嘘も無駄になる、たとえそれが嘘を吐く事を得意としてる人間相手でも。
 当麻は真昼の言葉を信じ、一方通行とフィアンマの内心の変わりように驚きと共にますます二人を止めたいと思うようになる。


「上条当麻! どうして君がここに?」
「騎士団長こそ! ……ちょうど良かった! アクセラとフィアンマを止めるのを手伝ってくれ!」
「分かった。私もあの二人を兵器実験場に連れて行くという用事があるからな。協力させてもらおう。止めるのならそれほど難しくはないだろうしな」
「助かった! じゃあ早速……って騎士団長。どうしてあの二人を兵器実験場に連れてくんだ?」
「ああ、ちょっとな(上条当麻には言えないな、土御門のプランに君も組み込まれてるとは……)」


 一方通行とフィアンマの戦いを中断させる為に当麻と騎士団長がコンビを組み、戦いの暴風域へと走り出す。
 結局、騎士団長は最後まで言えなかったのだ、当麻に自分が一方通行とフィアンマのどちらかと戦わされることなど。



「「ストォォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおップ!!!!」」


上条は騎士団長の剣に乗り、いつもどおりに音速の数倍で放たれる。
上条の右手はフィアンマの顔に突き刺さり、その反動で一方通行に裏拳を放つ。
二人は上条の拳を食らうと、凶悪な力は消えバタッ、と倒れた。それを見ていたトライアングルバカップルは、


「「「(しゅ、瞬殺ゥゥゥうううううううううううううううううう!?)」」」


はっきり言って驚いていた。その前にいろいろと突っ込むところがあるだろう。


「まてまて!!はっきり言っておかしい!!俺の能力使っても、あれくらいのスピードで飛ばされていたとしたら、いろんな意味で死んでるだろ!!」
「それにあのおっさんのブツブツの剣とか筋力とかありえねえだろ!!上条も上条でゴキィイイ!!とか骨の折れる音しなかったし!!」
「しかもふつー、っていうか、『あー、またか、まあいつもの事だし』みたいな感じの顔だったよね!?平然と、いつもの草むしりやるみたいな顔だった!!」


ババッ!!と、上条と騎士団長に問いかけるように振り向く、
たいして二人は……


「……なぜと聞かれても……なあ……」
「……慣れてるから……かな?」
「「「理由になってねえから!!」」」
「それが当麻だからじゃない?」


何故か美琴の最後の言葉に、一同は納得してしまうのだった。
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