とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

14-31

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匿名ユーザー

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 気絶した佐天と絹旗を放置して、神裂と一緒に地上に上がってきた初春は少しだけ自己嫌悪に陥っていた。
 そこに先程までの冷酷な初春はおらず、そこに居るのはいつも通りのいじり甲斐があるようでしっかり者の初春だった。

「……はぁ、自分でもあそこまでやれるなんて思わなかったなぁ。涙子さんと最愛さんに後でちゃんと謝ろう」
「飾利、そこは別に貴女が謝る必要は無いのでは? それよりもやられた張本人の建宮にまだ謝ってませんよ? あの二人」
「それなら分かってますよ。二人がきちんと建宮さんに謝ってくれたら私は笑顔であの二人をハグしてあげたいですね♪」
(どうやら飾利たち三義妹の中で一番お姉ちゃんなのは見た目に反比例した飾利のようですね……。ですが私のがお姉ちゃんです♪)

 初春と神裂がリビングに入ると、そこには量こそ減ってるものの未だ形として健在中の五和のウエディングチョコケーキが強い存在感を示していた。
 なおウエディングチョコケーキを食べているのはインデックス、ステイル、月夜、途中参戦の美琴、シェリーだった。

「それにしても誰なんでしょうね? このような恥知らずなものを贈るとは。上条当麻、あなたは知らないのですか?」
「贈り主の住所も名前も書いてないから持込だとは思うけど……。最初は五和かと思ったけど、あいつなら本人一緒が当たり前だしなぁ」

 真実を知っている土御門は氷の中なので結局真実が当麻に伝わるのは土御門が復活してからのことになる(インデックス、ステイル、月夜は忘れている)。
 神裂は当麻の推論を聞いて、否定したいのに否定できない五和の人間性を思い出して落ち込んでしまう。
 そんな当麻と神裂をよそに初春はソファーの上で気絶中の建宮の体を引きずり始めると、当麻にちょっとしたお願いをする。

「当麻お兄ちゃん、少し和室借りてもいいですか? 建宮さんを介抱したいので」
「あ、あぁ、別に構わないぞ」
「ありがとうございます。それと火織お姉ちゃん、誰も和室に入らせないように見張ってくれますよね♪」
「……も、もちろんです。何せ私は飾利のお姉ちゃん、貴女の頼みごとならどんなことでも聞いてあげたいんですから……っ」

 初春は誰にも邪魔されずに建宮への『お父さんチョコ』を渡す為、神裂の性格を考えた上で行動を起こした。
 事実、神裂は先手を打たれて何も言えなくなり初春に頼まれるままに和室の番をする羽目に。
 建宮を引きずる初春の後ろを神裂、そして当麻が続く形でリビングを出る。

「どうしてあなたが付いて来るのですか? 上条当麻」
「いいじゃんか、別に。あそこに居たって暇なんだし。飾利も俺が神裂と一緒に見張りしてた方が心強いだろ?」
「ええ♪ でも絶対に誰も入れちゃダメですからね! 私はお二人のこと、とーっても信頼してますから」

 当麻がリビングを出た理由、それは単にあのチョコの甘ったるい匂いが充満してるリビングとウエディングチョコケーキから逃げたかったから。
 初春と建宮が和室へ入るのを確認した当麻と神裂、二人っきりの和室の門番さんの誕生である。



(……ん? 何でわし寝てるのよな……って思い出した! 確か絹旗のチョコ喰って口の中が爆発した……はずなんだが後頭部に柔らかい感……触……)
「あっ、ようやく目が覚めたんですね、建宮さん。よかったー、このまましばらく起きないかと……建宮さん?」

 長い気絶から回復した建宮が感じたものは初春の膝枕、建宮が目を覚まして初めて目にしたのは自分の顔を覗き込んでる初春の久しぶりの笑顔だった。
 人間、幸せになりすぎるとパニックになるわけで建宮も例外ではなく、ムックリと起き上がった後でまともに言葉も紡げずにあうあうしてしまう。

「(このまま放っておくのもそれはそれで面白いけど、渡す物渡さないとダメだもんね)こうやってまともに話すのは久しぶりですね、建宮さん」
「か、かかかか飾利姫こそお変わりなく……いやいやそんなことはプリエステスに嫌というほど聞かされたから……ぬぅ、何を話せばいいのか……」
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ? まずは落ち着いて、そしていつもの私の知ってる建宮さんに戻って下さい。それまで待ってますから」

 何だか冷静な対応をする初春に面食らった感じの建宮だが、彼女に言われるがままに深呼吸をし、気持ちを落ち着かせ始める。
 初春は初春で建宮を完全に『お父さんのような人』として対処出来てることに安堵していた。


 初春と建宮がほのぼのとした雰囲気を作ってる頃、当麻は神裂に突然差し出されたチョコに途惑っていた。

「あ、あの~、か、神裂、さん? 上条さんの目の前にあるこれは……?」
「チョコですが何か? ああ、勘違いしないで欲しいです。そのチョコは義理チョコより上の恩返しチョコですから」

 何を勘違いしろとか思った当麻だが、下手なことが言えない相手なだけに黙って包みを開けて、チョコを食べる。

「おっ、美味いじゃん。さっすが神裂って所だな、ありがとな」
「いえ……。でもこれだけであなたに受けた恩を返せたとは思っていませんのでまたいずれ……」
「(ここでそんなの要らねぇって言ったら怒るから言わないでおこう……)そ、そっか、それは楽しみ……なんだが美琴がやきもち焼かないレベルで是非」
「心得てます。私とて御坂美琴を怒らせるのは怖いですから」

 神裂の『恩返しチョコ』を齧りながら、和室内で何が起こってるのか気になった当麻は神裂に尋ねる。

「飾利と建宮、今頃何やってんだろうな? まさかとは思うけど」
「そのまさかを口にしたら上条当麻、あなたを病院送りにしますからそのつもりで」
「……はい」
(飾利が建宮になどと……有り得ません。それに建宮が飾利を押し倒すことも無いでしょう。あれでも私の信頼する教皇代理なのですから)

 神裂の予想、あくまで『現段階』では無いという意味では合っており、建宮に対する信頼も間違ってはいなかった。
 当麻と神裂は世間話をしながら防音が完璧な和室の前に座っていた、他の皆がこちらに来るまで。



 その頃、ようやく冷静さを取り戻した建宮の前に初春からシックな感じの包みが差し出される。
 状況が全く飲み込めていない建宮は包みと初春を交互に見ながら、バレンタインなのに間抜けな質問をしてみた。

「か、飾利姫。こ、これはま、まさかとは思うけど、この建宮斎字へのチョコでは……」
「そうですよ。これは涙子さんや最愛さん、他の皆さんに内緒で作った建宮さんへの『お父さんチョコ』です♪」
「いーーーやっはーーーーーーーーっ!! とうとう、とうとうわしにも春が、飾利姫から直々にお父さんチョコを……お父……さん?」
「ええ♪ お父さんチョコです♪ 覚えてますよね? 私、建宮さんのこと、お父さんみたいだって言ったこと」

 建宮が忘れるはずなど無かった、かつて初春に言われた嬉しいような残念なようなあのフレーズを。
 しかし今は少し驚きはしたが、残念な気持ちはまるで湧かず、嬉しさだけが心を占めているという不思議な感覚に陥っていた。

「さすがにその、建宮さんにお、お父さんチョコを他の人が居る前で渡すのは恥ずかしくって……迷惑でしたか?」
「そ、そんなことは絶対に有り得ないのよ! 確かに飾利姫の言うことはごもっとも。父親にチョコ渡すのはそれなりに勇気がいるはずなのよ。では、早速」

 建宮は丁寧に包装を取り、中の箱を開けるとそこにはトリュフチョコが入っていた。
 見た目の綺麗さに感動を覚えた建宮、少し視覚で楽しんだ後でトリュフチョコを口に入れると涙を流し、それに初春が驚く。

「ど、どうしたんですか! もしかしてすっごく不味かったんですか? あ、味見はちゃんとしたはず」
「ち、違うのよ……。飾利姫の作ったトリュフの美味しさについ感動しちまったのよな。このチョコを絹旗はわしの目の前で食べたのか……ちくしょう」

 建宮が喜んでくれて安心したのも束の間、三人で作った自分のチョコを絹旗が食べたことに少し怒った初春だが建宮はそのことに気付かない。
 それから初春のトリュフチョコを美味しそうに食べる建宮、それを楽しそうに眺める初春というほのぼの親子空間が形成される、乱入者達が現れるまでの話だが。



 一方、五和のウエディングチョコケーキの被害(中毒性という意味で)が少ない美琴は一旦食べるのを止めると、当麻、初春、神裂、建宮が居ないことにようやく気付く。


「あれ?当麻たちはどこ行ったの?」

美琴は当麻たちがどこ行ったのか探すためにリビングから移動した。
そして、数分で当麻を見つけた。

「あ、いたいた。当麻、そこで何しているの?」
「ん?美琴か。いやーこの中で飾利と建宮が居るから邪魔しないように俺と神裂の二人で監視していただけだ。」
「そうなの。じゃあ私も一緒にいて良い?」
「別に良いですけど、あのウエディングケーキはどうなったのでせうか?」

当麻は美琴も初春達の邪魔をしないように監視に入れると、当麻は話を変え、ウエディングケーキがどうなっているか聞いてみた。

「全然減らない。インデックス小いつものように早くないし、インデックスとシェリーさん以外の二人もそろそろ限界だと思うからさらに減らなくなると思う。」
「そうか。本当にあれ今日中に食べれるのか?もう4時半だしな。」
「分からないよ。まあ食べ終わったとしても匂いは当分の間残りそうだけど。」
「そうかもしれないな。とりあえず美琴、立ってると疲れるから座ろうぜ。」
「そうね。そうするわ。」

というと美琴は上条、神裂と同様に和室の前で座った。



その頃、気絶していた絹旗、佐天はやっと目を覚ました。


「……うぅ、超酷い目に遭いました。お仕置き自体よりも飾利に怒られたという事実の方が超精神的に来るものがありますね……」
「ホント、そうだよねぇ……。お仕置きの内容……お、思い出したくも無いけど飾利にはあとで誠心誠意謝らないとね」

 お仕置きのダメージよりも初春に怒られたことの方が堪えていた佐天と絹旗、彼女達二人もまた初春バカなのだ。
 そんな初春バカの二人だからこそ、建宮に対する結論がまた間違いまくってるわけで。

「ところでさ最愛。あたし達が飾利に怒られた理由だけどさ、一番悪いのは建宮だと思うんだ」
「確かに言われてみれば超その通りです。となると涙子、やることは超決まりましたね」
「飾利に怒られない程度に建宮をケチョンケチョンにする! 行こう最愛!」
「超了解です♪ 建宮を飾利の逆鱗に触れない程度に超ケチョンケチョンにしてやりましょう!」

 佐天と絹旗に初春を責めるという言葉は存在せず、代わりに建宮に当たるという選択肢を選ぶことに。
 地上に戻る二人だが思いもしないだろう、まさか初春と建宮がほのぼの親子空間を形成していることなど。



「お、二人とも無事か?」
やってきた絹旗たち二人に上条が声をかける。
「思い出すだけで身の毛がよだちます……」「今まで超一番死ぬかと思いました……」

「「「そんなに(やったのですか)!?」」」
神裂は耳栓をしていたので内容は知らなかったのである。

「それもこれも建宮のせいです!」「超そうです!あのおっさんは超今どこですか!?」

「「「ここだけど」」」
今は行かないほうがいいよ と言おうとした3人の話を最後まで聞かず、二人は突入し。




凍りついた。
建宮がこともあろうに初春と仲良くしているからである。


初春はそんな二人を見てにっこりと笑い、無言で耳栓を取り出して建宮の耳にはめ。


「火織お姉さん、そこ閉めてください。それと絶対開か無いように押さえててください。」
「わかりました。」

完全防音の戸が閉じられる。


15分後に初春が携帯で神裂に『もういいです。出ますから開けてください』と言って出てきたとき。


建宮と初春の二人以外は出てこなかったのは言うまでもない。
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